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- 家庭でお米を精米したい人
- 技術に興味がある家庭の主婦や主夫
- DIY精神を持つ家庭人
- 家庭での農業プロセスに興味がある人
- 籾米から食卓までの過程に興味がある人
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この記事を読むことで、読者は家庭での米の精米過程について具体的なステップを理解できます。まず、籾米を玄米にするための籾すりには専用の機器が必要であり、一般的な家庭には普及していないことがわかります。筆者は、近隣の米店で籾すりをしてもらい、その後購入した家庭用精米機で玄米を白米に加工する手順を紹介しています。精米機の使い方は、米を入れて精米コースを選ぶだけで簡単ですが、精米過程で米の約10%がぬかとして除去されるため、適切な量を使う必要があります。さらに、籾殻は水に浮くため、洗米時に除去できることも説明されています。精米したての新鮮な米は香りが良く、炊き方によって適切な硬さに調整可能であることが述べられています。全体を通して日本の米文化の背後にある労力とそれを省力化してきた過程の意義についても触れられています。この知識は、家庭でのDIY精米を試みたい人や、日本の伝統的な米への理解を深めたい人にとって有益です。
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tech
ようやく籾から玄米へ──コデラ総研 家庭部(25)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(隔週木曜日)の第25回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「ようやく籾から玄米へ」。
文・写真:小寺 信良
前回は大量の籾米を前に、途方に暮れたところまで書いた。今回はその続きである。
ハンドル型の籾すり器を買ってはみたものの、毎食毎食これをやっている暇はない。玄米から白米にする精米機は買ってあるので、少なくとも玄米にまでたどり着ければなんとかなる。
コイン精米所の情報を一生懸命探し、大手ホームセンターの「ジョイフル本田」の一部の店舗には、籾すりからできる精米機があることは突き止めた。ただし場所が千葉、群馬、茨城のため、それだけのために行くには遠すぎる。
方針を変えて、籾すりから対応してくれるお米屋さんを検索したところ、朝霞市の「ヨシクニ米穀」というお米屋さんで、籾から玄米へ加工して貰えることが分かった。朝霞市なら隣の市なので、車で30分ぐらいの距離である。さっそく電話して、土曜日の午前中にお願いすることにした。
住所で検索すると、「あいざわ保険事務所」で出てくるが、お米屋さんと兼業でやられているようである。さっそく持ち込んだ籾米23kgを、精米機で玄米にしていただく(写真1、写真2)。
写真1 力強い看板の文字に安堵する
写真2 これが籾から精米できるマシン
業務用の精米機は昔の二層式洗濯機ぐらいのサイズで、片側から籾を流し込むと、反対側に玄米と籾殻が分離されて出てくる。この同じ機械で白米までできるそうだ。あとで調べたところ、細川製作所というところの「いまずり MR1900E」というモデルのようだ。価格は24万1715円。日本テレホンショッピングで買えるらしいが、いやそんなカジュアルに買えちゃっても。
ようやく旨い「米」に到達
「ヨシクニ米穀」のご主人の話によれば、やはりこの地域では籾から精米するケースは少なく、近隣の小学校が田植えから稲刈りまでの実習で、最期に精米をお手伝いする程度になったという。それも量的には2~3kgだというので、「いまずり」も稼働率は高くなさそうだ。
さて実際の籾すり作業は、23kg分で15分程度で終わった。玄米のまま食べる人には、籾殻が残らないようにもう1回籾すり器にかけるそうだが、うちで精米するのであれば多少残っても精米時に取れてしまうので、問題ないでしょうということであった。
出来上がりは、16kgの玄米と7kgの籾殻に分離される。せっかくなので、籾殻も持って帰ることにした。籾殻の使い道についてはまたあとで検討するとして、持ち帰った玄米をさっそく精米機にかける。今は1万円弱から3万円ぐらいまで、幅広く小型の精米機が販売されている。僕が購入したのは真ん中ぐらいの価格帯で、山本電気の「MB-RC23W」というモデルである(写真3)。
写真3 かねてから購入済みの精米機
使い方は簡単で、中に玄米を入れ、分量と精米コースを選択してボタンを押すだけだ。内部のフィンが高速回転して、玄米を金網にこすりつける。これで米を削り、精米するというわけだ。どれぐらい削るかで、上白米から胚芽米まで調整が可能になっている(動画1)。
動画1 精米の過程をタイムラプスで。玄米がみるみる白くなっていく。
精米が終わると、米のおよそ10%がぬかとして金網の外側に吹き飛ばされる。つまり1合の玄米を精米しても、実際に得られる白米は90%だ。したがって仕上がりを丁度1合にしたければ、玄米の量を200ml程度に増やして精米する必要がある。付属の計量カップは、1合(180ml)ではなく、200mlになっている。
精米したての米にも、まだ多少籾殻が残っている。だが籾殻は水に浮くので、米を研ぐ段階でいったんボウルに米を入れ、上から流水をかけておくと、あふれた水と一緒に籾殻が流れていってしまう。あとはいったんザルで水を切って、米を研げばいい。
炊きあがった米は、周囲が酸化していないため香りが高く、また内部の水分量も多いので、やわらかく炊きあがる。普通よりも少し水を少なくして、固めのつもりで炊くと丁度いいようだ。
今回籾にまつわるあれこれを勉強したことで、日本人の米に対する思い、米の一粒までといった教育の根幹が垣間見えたように思う。今はすべてが機械化、合理化されているが、これを手動でやると、とてつもなくめんどくさいのだ。よくこれを主食として、数千年も食ってきたものである。
かつては手動で精米する機械もあった。だが今となっては、それも博物館や資料館に展示してあるだけで、実際に使えるものは少ない。そもそも現代人が手動でやっても、時間効率が悪すぎてお話にならない。米を炊き始めるまで小一時間かかるのでは、現代社会のペースには合わないわけである。
つまり籾から米を食うまでのプロセスの合理化が、多くの人を食事の支度時間から解放し、それが近代社会の基盤となっているとも言える。(つづく)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、とりあげて欲しいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
変更履歴:
2015年10月2日:記事末が「(了)」となっていましたが、正しくは「(つづく)」でした(次回も「玄米脱穀」シリーズなので)。お詫びして訂正いたします。
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