サイボウズ株式会社

デジタルツールだけでチームの生産性が上がると思い込んでいませんか?

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • ビジネスマン
  • チームリーダー
  • 企業の管理職
  • 企業の人事担当者
  • 組織の業務効率化担当者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事では、コラボレーションやチームビルディングにおけるデジタルツールの限界と感情の重要性を取り上げています。記事では、コクヨ株式会社の山崎篤氏の考え方を紹介し、デジタルツールだけでチームがうまく機能するわけではなく、感情を共有することが重要だとしています。コクヨでは、社員同士が感謝を表現し合うことで感情を共有するための制度が活用されています。この制度により社員の貢献意識を高めるだけでなく、感情のやり取りを可視化し、チームの一体感を深めていることがわかります。

また、チームビルディングにおいては、自然と集まれる場や、ライトな動機付けが重要であることが言及されています。こうした施策は、社員同士の直接的なコミュニケーションを促進し、デジタルとアナログの手法を両立させることで、チームの一体感を醸成しているという実例が示されています。さらに、コミュニケーションツールの選択においては、一方的な情報伝達だけでなく、双方向性や感情の伝達を重視した選択が大切であることが強調されています。

この記事を読むことで、単なるデジタルツールの導入だけではチームの生産性向上には繋がらないという視点を得、一方で感情や単なる効率性を超えた人間的つながりを創出することの重要性を理解することができます。この知識は、現代のビジネスシーンにおけるチームワークに対する理解を深めるための参考になります。

Text AI要約の元文章

あのチームのコラボ術

デジタルツールだけでチームの生産性が上がると思い込んでいませんか?

チームが大きくなればなるほど難しくなる「チームビルディング」。効率的に業務を進められるツールはたくさんありますが、ツールだけで本当にチームは結びつくのか。そんな疑問を抱えたサイボウズ式編集部がたずねたのは、コクヨ株式会社の山崎篤さん。

「CamiApp」の開発を指揮した山崎さんは、デジタルツールをバリバリ使って仕事をこなします。一方チームリーダとしてメンバーと接するときは、アナログな手段での感情共有を大切にしています。感情を共有するチームビルディングの勘所を聞きました。

(1)感情を働かせる「チームのルール」があるか

コクヨでは、社員がお互いに感謝を伝え合う「39数珠つなぎ」制度があると聞きました。

はい。誰かの行動に感謝したときに「ありがとうシール」をあげ、シート1枚分集まると記念品がもらえるものです。

この感謝のやりとりはデータベース上に記録され、150件を超えたら3万9000円を慈善事業に寄付する仕組みです。

それで39(サンキュー)なのですね。

はい。私もスキャナをセットアップしてあげた事業本部長秘書から、御礼のシールをもらいました。

わたしは日常からスキャナを使っているのですが、秘書の方にもスキャナをきちんと使いこなしてもらうことで、作業時間も短くなり、名刺整理の仕事もはかどるようになりましたよ。こういったちょっとしたことが、みんなに見えるようになります。

感情のやりとりがデータベース化されているんですね。

データベース上で「ありがとう」が集まっている人は、詳細までわからなくても「すごいな」というイメージがつきますよ。

貢献意識の高い人が自然と理解できるわけですね。どんないきさつでできたんですか?

当時の社長(コクヨS&T株式会社森川卓也社長)が持っていた「人は感情でしか動かない」という考え方をベースに生まれたものなんです。

こういった施策は現場、特に若手がプロジェクト的に立ち上げることが多いと思うんですが、このケースの場合は「トップの思い」を若手が形にしたんだと思います。

山崎篤さん。1973年生まれ。文具メーカーコクヨ株式会社でIT系ビジネス企画を推進。クラウド伝票サービス「@Tovas」で、2009年ASP・SaaSアワード 総合グランプリ受賞。2011年スマホノート「CamiApp」企画リリース。NPO法人ASP・SaaS・クラウドコンソーシアム理事、MIJSコンソーシアム副委員長、ソーシャルおじさんズ25号としても活動中。

トップの考えや施策って、浸透しにくいですよね…? 39数珠つなぎはなぜ使われるようになっていったのでしょう?

強制までいかないレベルの「軽い動機付け」が1番だと思ってます。特に具体的な見返りがあるわけじゃないけど、人って良く思われたらうれしいじゃないですか。

だから、データベース化して見えるようにしていることが、「軽い動機付け」になっているのではと、わたしは思ってます。

は~、そう考えるとシンプルすぎるくらいですね。

(2)社内で「なんとなく集まれる場所」があるか

「チームの一体感」はどうやって作っているんですか?

大事なのは「集まる場所」の設計ですね。みんな自分の業務を最適にするべく、思い思いのワークスタイルをとっている。

そのせいもあり、「なんとなく集まりましょう」というコミュニケーションが多いんですが、そうなると同じ場所にいない働き方をしている人たちが孤立してしまう。

だから「集まる場所」が重要になると。

ええ。例としては「アメ置き場」を作ったりしています。たばこ部屋の代替、というイメージですね。

なるほど。

ちなみに、「直接の情報共有」にこだわって、社内システムのカレンダーを使わない部署もあります。本人たちによると「予定表のホワイトボードのほうが合理的」だそうです。

情報伝達とコミュニケーションは違うし、リテラシが上がれば上がるほど、文字面だけではなく体温がわかるほうがいい、という意識になるようで、「最後は電話」になっていく傾向がありますね。

勤怠管理からファイル共有、チャットのコミュニケーションなど、あらゆるツールがある中で、あえて電話などの直接の情報共有になるのが示唆深いです。

はい、一見すると逆戻りで不便になっているように見えますよね。コミュニケーションの手法や伝え方はいろいろありますが、その奥の理念や、経営の信条を伝える方法って変わらないと思うんです。

コクヨの場合は「人は感情で動く」を大切にしていますので、直接の情報共有に行きつくんでしょうね。

(3)社内外メンバーと一体感を生むツールがあるか

社内コミュニケーションでは、あまりデジタルツールは使わない方針なんですか?

いえ、そんなことはなくて、逆に「内輪感」を出せるツールは大事だと思っています。例えば、タブレットタイムレコーダーで動画メッセージを送りあうとか。

コクヨは私の入社当初からタイムレコーダーなんてなかったし、スーパーフレックスで「自律」がテーマの会社でした。ですので、タイムレコーダーは「管理」というより、「コミュニケーションツール」としての使い方をしています。

社内のコミュニケーションに使われているタブレットタイムレコーダー

「社内にいない、外回りしている人」とのコミュニケーションはどうしているんですか?

週に1度くらいしか顔を合わせないメンバーとのコミュニケーションには、チャットツールのSlackとWebサービスのIFTTTを組み合わせて、拠点の近くに来たことを自動投稿する設定にしてあります。

メンバー間の連絡ではSlackを使っていたのですが、IFTTT+位置情報を組み合わせることで、まるですぐその場にいるかのように感じられます。別の事務所にいるメンバーからも「あの人、今近くにいるんだ」という親近感が生まれていると思います。

(4)「誰でも手を挙げられる場」があるか

最近サイボウズ式のインターンチームで課題がありまして……。

何ですか?

チームの人数が6,7人になって増えた分、ほかの人に甘える・頼り過ぎるようになっている感じがして……。どう解消していけばいいんでしょうか。

「いつまでに誰が何を」を決めることですよね。フラットなチームは、全員が「これ自分がやります!」と気づかいができればいいのですが。何も言わずに、物事が勝手に進んでいくことはめったにありません。

ですよね。

めったにと言ったのは、そういう阿吽の呼吸の最高のチーム状態も経験済みですが、そうでない時の動かし方を考えないといけないなと、考えるようになったからです。

そうでないチームでは、メンバー間で共通の価値感覚は、なかなか持てないケースが多いです。なので、誰でも手を挙げられる場所をつくるのが重要になります。たとえ短い時間でもいいので、立場や年齢に関係なく、手を挙げることができる場をつくることです。

そんな場は、どうすれば作れるのでしょうか。

ボトムアップでやろうと思っても難しいですね。マネージャーやリーダーにあたる立場の人が率先して「自分も含め、誰にも何でもフラットに意見できること」をルールに設定するのがよいと思いますよ。

とはいえ、作った後の運用ができなければ意味はないので、いかに現場がルールに沿って動いていけるか、が本当のキモですね。

(5)「相手のために」という心構えがあるか

もう1つ相談させてください。いっしょに働く仲間には、「相手のためにやる」というスタンスが大事だと思うんですが、無理なくお互いが「相手のために」とできるようにするには、どうしたらよいのでしょうか。

相手に3つギブして、0.5くらい返ってくればちょうどいい」。それくらいの心構えでいると無理なくできるんじゃないでしょうか。これも当時の社長(コクヨS&T株式会社森川社長)の考えで、ギブアンドテイクではなく、「ギブギブギブテ」という人事評価基準にもなっている言葉なんです。

社会人になると、他人への行動がすべて自分に返ってくるということが分かるようになります。騙されたと思って、最後はすべて自分のためになると考えて、相手のことばかりやってみるのもいいと思いますよ。

ポイントの1つ1つはとてもシンプルですが、きちんと実行できているチームは少なそうです。この5箇条を実践したことで、チームはどのように変わりましたか?

それまでに比べて、スピードは明らかに早くなりましたね。特にオンラインとオフラインのツールが混在することで、みんな結果として合理的になっていくんですよ。

私自身があまり席にいないので、チャットやTV電話でいろんな集まりに割り込んでいったり、逆にちゃんと感情を伝えるために個々の電話でのフォローを入れる気づかいが自然と生まれていったり。

なるほど。

対面のコミュニケーションだけにこだわりすぎると、情報の共有度が不足する人が生まれてしまうし、ツールにこだわるとモチベーションが下がってしまいます。

そんな感情の動きを大切にすることで、生産性が上がる。これが5箇条の本質なのかなと思いますよ。特に外回りと社内のような環境、営業と開発のような役割の違いは、気づかないうちにすれ違いを生みがちですから。

外回りの人が中と情報共有できずに孤立してしまったり、コミュニケ―ションがうまくとれなかったことで、メンバーが思うように活躍できない時期もあったので、余計に感情の大切さに気付きました。

実感のこもったお話ですね…。仕組みやツール、精神論だけでもない、「つながり」を生んで、感情を動かしていけるチームづくりのヒントになりそうです。

文:岡山史興/写真:尾木司

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