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保育園だけではないひとりひとりにあった育児の選択肢も──カラーズ経沢香保子×サイボウズ青野慶久

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 日本の育児問題に関心がある親や保護者
  • 育児支援の新しい選択肢を模索する企業家やビジネスパーソン
  • サイボウズやカラーズのビジネスモデルに興味がある人
  • 男女共同参画や働き方改革に興味を持つ政策立案者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むと、日本における待機児童問題の現状や、ベビーシッター文化を根付かせる経沢香保子さんの取り組みについて詳しく知ることができます。経沢さんは、オンラインでベビーシッターを手配できるサービス「キッズライン」を通じて、この文化を広めることに注力しています。

日本とアメリカの育児支援の違いも指摘されています。アメリカでは保育園のような施設は少なく、多くの家庭がベビーシッターを日常的に利用しているのに対し、日本では保育園の不足が待機児童問題を引き起こしており、保育士不足によって手厚い行政の補助金が必要とされています。

また、サイボウズの青野慶久氏と経沢香保子さんとの対談を通じて、育児支援だけでなく、企業経営における人材管理や理念形成への思い、そして再起業の挑戦についての見解が得られます。この記事を通じて、日本における育児制度の問題点とその解決策の一つとしてのベビーシッタービジネスの可能性について深く考えるきっかけが得られます。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

保育園だけではないひとりひとりにあった育児の選択肢も──カラーズ経沢香保子×サイボウズ青野慶久

匿名のブログの「保育園落ちた日本死ね!!!」という投稿がきっかけで波紋を呼び、待機児童問題が大きな話題となっています。

日本では大々的に取り上げられている待機児童園問題ですが、アメリカでは日本でいう保育園という概念がなく、ベビーシッターが育児支援として根付いているそうです。そんなベビーシッター文化を日本にも根付かせようと2度目の起業をした代表の経沢香保子さん。

今回は、サイボウズ代表の青野慶久の著書『チームのことだけ、考えた。』を経沢さんが読んだことがきっかけとなり、対談が実現。前編では待機児童問題や、経営者同士、起業に関する苦悩や喜びについて意見を交わします。

「サイボウズ式」とカラーズの「 Up to you! 」のコラボレーションでお届けしています。「男性育休=“育児インターン” 男性育休がもたらす本当のメリット」「“保育園落ちた死ね”から“手伝おうかにキレる妻”まで育児の役割分担のあり方とは」も合わせてどうぞ。

保育園だけではないひとりひとりにあった育児の選択肢も

「病児保育」と「待機児童問題」が一向に解消されないので、「日本死ね」というブログが話題になりましたよね。一連の流れを見て、本当にすごくお困りの方がたくさんいらっしゃるんだなと改めて思いました。

そして、青野さんにお礼を。先日は弊社がチャレンジしたベビーシッターサービス「キッズライン」のクラウドファウンディングにご協力いただき、ありがとうございました!

ありがとうございます。ぜひ、頑張っていただきたいです。

「キッズライン」の目指すところは「日本でベビーシッターを文化にする」ことです。

ベビーシッターでも育児の悩みは解決できるということを世の中に知らせたかったんです。病児保育と待機児童の問題って重大ではあるのですが、まだみなさん、あまりご存知ない。

知っていても、乗り越えて、喉元過ぎれば忘れてしまう、といった感じですよね。

そうですよね。小学校に入学すると、小学校での勉強の問題や、学校が終わった後の学童保育など別の問題があるから、待機児童問題は忘れちゃう。

私も当時は、とにかく保育園に入れなきゃと、なんとか入れたすごく遠い保育園に毎朝車で連れて行って大変でした。

保育園を作るのに、保育士も足りないし、実は保育園への補助金は毎月1人あたり20万円以上かかるんですよ。

高いっ! 維持費だけでそんなに。

とても高いんですよ。5歳になれば多少補助金は安くなるんですけど、0歳だと1人あたり20万円以上かかるので。

なるほど。なぜ保育園だけ頑張って作るのかと。

ベビーシッターだったら、補助金なしでシッターさんを1人雇えばいいだけの話です、送り迎えもしなくていいです。

もちろん、集団保育の良いところはあると思うんですけど、0歳1歳など、乳児のときは別に保育園だけにこだわらなくてもいいのかなと。

経沢香保子(つねざわ・かほこ)さん。株式会社カラーズ代表取締役社長。桜蔭高校・慶應義塾大学卒業。リクルート、楽天を経て26歳の時に自宅でトレンダーズを設立し、2012年、当時女性最年少で東証マザーズ上場。2014年に再びカラーズを創業し、「日本にベビーシッターの文化」を広め、女性が輝く社会を実現するべく、1時間1000円~即日手配も可能な 安全・安心のオンラインベビーシッターサービス「キッズライン」を運営中。最新の著書に、『すべての女は、自由である。』(ダイヤモンド社)がある

確かにそうですよね。やっぱり、待機児童問題がどーんと出ちゃうと、「保育園作らなきゃダメだ」みたいな発想になるんですよね。

そうなんです。改善しなきゃいけない根本的なものは少子化で、作った箱(保育園)は少子化で用途がなくなったら、高齢者用の施設にすればいいと考えている方が多い印象です。そして多くの方は「箱」思考だなと感じます。

そうですよね。

アメリカで「保育園問題」は聞いたことがない

ベビーシッター事情って、日本と海外とでは差があるんでしょうか?

かなりあります。アメリカは日本の保育園のような施設があまりないんです。かわりに、乳幼児を預かってくれる「デイケア」がありますが、日本の保育園のようにお遊戯をしたり歌を歌ったりするのではなく、オムツ替えやミルクを与えるなど、子どものお世話だけをしてくれる施設です。でも、そこは2歳までしか預かってくれません。

えっ!? では2歳以上の子どもを預けられる場所がないということですか?

2歳以上は幼稚園に入れるのが主流のようです。でも、アメリカではほとんどの家庭でベビーシッターを雇って世話をしてもらっているので、「保育園問題」なんて一度も聞いたことがないですよ。

アメリカのワーキングマザーには、日本でいう「保育園」という言葉はピンと来ないと思います。

ということは、シッターさんを安く雇えるということですか?

高い人もいますが、だいたい値段は1時間10ドルくらい。ニューヨークのマンハッタンともなると、ベビーシッターバブルです。アメリカでは夫婦で出かけることを大事にするので、クリスマスにはシッターさんの時給が60ドルくらいになることもあります。

前にハワイに行ったときに、トイザらスで子どもを遊ばせておいて「ちょっとこの辺にいてね」と言って離れようとしたら、「ダメです、それは捕まります」と店員さんから言われたことがあって。

青野 慶久(あおの よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。2011年から事業のクラウド化を進める。総務省ワークスタイル変革プロジェクトの外部アドバイザーやCSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある

そうです。海外では法律により12歳以下の子どもを大人なしで放置してはいけない州もあるので、なおさらベビーシッターという発想があるのかもしれません。

保育園もいい部分はたくさんありますが、基本的にはお母さんが時短勤務をすることを前提としていたり、お母さんが保育園に合わせるという概念なので、対応しきれないことはあると思います。

社員がやめるのは失恋したような気分

青野さんの著書『チームのことだけ、考えた。』を読ませていただいたのですが、同じ経営者としての目線で読んでしまうので、超泣きました!

ありがとうございます。

特に、サイボウズの離職率が高くて毎週のように社員が辞めていったころのお話とか。社員が辞めるのって、失恋したような気分になるじゃないですか。 その会社のことが嫌で人が去って行くのは、自分の存在価値やアイディアを全て否定されたように思ってしまう。私は創業した会社を去る側でしたが、青野さんのように、会社のメンバーが去る中、自分は経営者として続けるという、残された側だって大変だろうなとすごく思いました。 一番共感したのは、実は問題に立ち向かうことの方が、生きていることより辛いという時期があったという点です。私にもありました。私はあまり苦労した話って人にしたくないなって。青野さんはなぜそれをあえてお書きになったのかが気になります。

書いたのは、実は半分以上はサイボウズの社員に向けての気持ちがあるんです。サイボウズの中で現在使っている言葉や、その考えに至った背景などをまとめて社員にきちんと説明したくて。

理念や制度がどこから生まれたかということですか?

そうですね。社員も増えてきて、研修で伝えていくことには限界があるので。一度、本にまとめていれば手軽に読めて筋が分かるし、繰り返し確認できますから。 そして、なぜ苦労話も書いたかというと、多分それが僕のスタイルなんです。あまり「僕、すごいだろ」って口では言えないタイプでして。それが似合う人ならいいのですが、僕はそういうキャラではないので……。

確かに、自分のよさをアピールするのが上手で、そうやって人を引っ張っていくタイプの人もいますよね。

2回目の起業は、1回目にできなかったことを全部盛り込める

経沢さんにお聞きしたかったのは、起業された会社を辞め、なぜもう一度起業をチャレンジし、カラーズを作ったんですか?

私にとっての目標は、上場して「女性が輝く社会の実現」をすることだったのですが、以前の会社の各役員はそれぞれやりたいことが頭の中にあったのかもしれません。 上場をまず目指して、実現してからさらに次のステージに向かおうと考えていたのかもしれず、それは未熟だったと反省しています。

そうだったんですね。

前の会社でもベビーシッター事業はやりたかったのですが、社内のリソースを社長の権限で集めることに遠慮している自分もいました。 会社を辞めてしばらくは表舞台ではなく育児に徹しようと思っていたときに、作家のはあちゅうさんとオンラインサロンを始めたら、予想以上にたくさん人が集まったんです。 社長業を辞めたらテレビの依頼ももうなくなると思っていたのに、減らなかったことにびっくりして。「社長」という立場を失っても、実は私は何も変わらないんだなと思いました。 だんだん個人の仕事が忙しくなってきたので、サポートしてもらう秘書を募集し、それから会社にすることにしました。もともとやりたかったベビーシッタービジネスを会社としてスタートさせたという流れです。

すごい!

本当に運が良かったと思います。私の中では神様から「もう一度やってみてごらん」とチャンスをいただけたのかな、と思っているくらい。やり残したことがあるから、もう1回やれということなのかなと思って、2回目の起業をしました。

そうだったんですね。起業した会社を辞め、その後すぐに2社目の会社を起業されたんですね。休み続けなかった理由はなんでしょう?

結局、私は最初に起業した会社を辞めることになり、納得のいく形で最後までまっとうすることができませんでした。でも、社員のことは大事でした。 私としては本当にやりたいベビーシッターという事業があり、それを成功させることができれば、前の会社の社員も「やっぱり経沢さんはビジョンの実現にこだわっていたんだな」と納得してくれるし、責任を果たすことになるかなと思っているんです。

前の会社でできなかったことを実現させて、納得し喜んでもらうと。

そうですね。あと、日本の育児支援に対する危機感がすごく大きいです。インターネットの力を使って、格安でベビーシッターを雇うというビジネスは、私がやらなかったらほかの人はきっとやらないなと。こんなに大変なことだし(苦笑) 誰もやっていないことなので、最初はお客様にていねいに説明していくことがすごく大切だし必要なんですよね。 0から会社を作り上げる大変さは変わらないですが、起業は2回目なので、1回目にできなかったことを全部盛り込めるというメリットもあります。

なるほど。

私は、前回の起業の反省を踏まえて新しく会社を立ち上げましたが、青野さんは一度停滞した後に再び成長を遂げたのがすごいって思うんですよ。再生するよりも、0からやった方が実は最短距離で実現できるかもしれないと思って。

起業も何回もやっているとコツがつかめてくるとか?

1回目の起業の時は26歳とまだ若かったこともあり、大変だよ、うまくいかないよなど、厳しいアドバイスをいただくことも多かったです。手探り状態でうまくいくか不安だし、若いし、実績もないという。まるで、「見えない・聞こえない・話せない」の三重苦に苦しんでいたヘレンケラーになったような気分で取り組まないといけなかった。 今は、1度経験しているのでコツのようなものは分かります。でも、それに甘えないようにしようと思っています。

なるほど。

前回はITの世界で事業をして、BtoBが中心でしたが、今回は「ママ」という人たちと「育児」という、人の感情とも深くかかわる部分の事業です。 自分が経営者として学んできたことを常識として持ちすぎてしまうと、ママたちが求めているサービスから離れてしまうので、気をつけています。 起業という経験を通じて、人より少しはビジネスの世界のことも分かっていると思いますし、私自身子どもがいてママでもあるので、「ビジネス」と「ママ」の2つをつなげられるのは自分だけだと自負もあります。 女性が女性のための事業をやると、自分たちの視界で大きく広げにくかったりするので、自分の強みをいかせばそこを突破できるかなと思っています。

後編につづく(5月18日公開予定)



文:姫野ケイ/写真:谷川真紀子/編集:小原弓佳


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