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副業で身の程を知り、やがて副業を卒業した話

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • フリーランスのライターや編集者
  • メディア業界で働く若手プロフェッショナル
  • 副業に関心がある社会人
  • キャリアの見直しを考えている人
  • 自己成長を追求するビジネスパーソン
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、副業を通じて「勉強したい」という欲求を満たそうとする著者の経験を知ることができる。具体的には、副業は新しいスキルを獲得し、自分の実力や限界を理解するための手軽な方法とされている。メディア業界においては、自社で得たスキルが必ずしも他の場で通用するわけではないことや、即戦力とされる人材がしばしば周囲に依存される環境にあることを踏まえ、自己成長にはチャレンジが不可欠であることが語られる。さらに、キャリアの中で高いレベルの環境に身を置くことの重要性が強調され、副業から得られるものは限定的であるため、最終的には本業でのチャレンジを目指すべきと結論付けられる。副業を通じて得た経験を元に転職することで、本業でより多くの学びを得る環境を求めることが推奨される。この記事は、自己成長を志す読者に対して、副業の意義と限界についての洞察を提供し、キャリアにおける次のステップを考えるきっかけを与える。

Text AI要約の元文章

ブロガーズ・コラム

副業で身の程を知り、やがて副業を卒業した話

サイボウズ式編集部より:著名ブロガーによるチームワークや働き方に関するコラム「ブロガーズ・コラム」。今回は特集として、最近関心を集めている「副業」から、働き方を考えてみようと思います。ブロガーズ・コラム チーム4人で1週間ごとにお届けします。最終回は、朽木誠一郎さんです。

仕事についてお話する機会をいただくと、僕は「勉強したい」的なことをよく口にします。かと言って、じゃあ「編集者・ライターにとっての勉強って何?(僕の仕事は編集者・ライターです)」と聞かれると困ります。勉強ってなんだろう……?

メディア論を学びに大学に入り直す、というのはちょっとちがう。お金を払って講座などに行く、これが勉強になるのは間違いないけど、自分がしたい勉強ってそういうことだっけとは思う。

自己分析をしてみたところ、たぶん僕は、いつでも自分よりレベルが高い人と仕事をして、学べるものを学び続けたいのだと思います。わがままではありますが、多かれ少なかれ、このような欲求はみなさんにもあるのではないでしょうか。

この「勉強したい」という欲求を、一番手っ取り早く満たせるのが、僕は副業だと思っています。しかし、いつまでも副業で勉強しているようでは、実は成長していないのではないか、とも。これからするのは、僕が副業で身の程を知り、やがて副業を卒業した話です。

ちなみに、僕は以前、本業としてWebメディアの運営(ライティングから編集まで)をしていました。ここでいう「副業」とは、ライティング・編集という自分の職能において、朽木誠一郎という個人の名前で、他媒体のライター・編集者をしていたことです。

今回の企画では、これまで3人の書き手がそれぞれの立場から副業についてお話してくれていますが、僕の場合は本業と副業の職能が同じ、という前提でお話することについて、あらかじめご承知おきください。

副業をして、身の程を知るまで

そもそも副業を始めたいきさつですが、当時勤務していた会社が副業OKで、返済しなければいけない奨学金に追われていた、みたいな、リアルな事情ももちろんあります。でも、一番の理由は前述の「勉強したいから」でした。というのも、誤解を恐れずに言えば、そのメディアには自分の職能について、自分以上の知見を持った人がいなかったのです。

これだけだと大変おこがましい発言のようですが、理由は単純で、その運営チームでは、ライター・編集者でプロ経験があるのがほぼ唯一、自分だったというだけ。とはいえ、まだまだ業界歴1〜2年の駆け出しです。孤軍奮闘の日々の中で競合他社を見渡すと、どうやら自分がやっている仕事がガラパゴスなものであることにも薄々気が付きはじめます。

次第に「実力を外で試してみたい」という思いが強くなっていきました。折良く、知り合いの編集プロダクションから「世間的に名の通ったとあるメディアが、実力のあるライターを探している」という連絡が。ぜひ自分に担当させてほしい、とお返事をして、そのメディアに寄稿することになりました。

結果は散々、自社で通用したスキルは、ほかのメディアの仕事では通用しませんでした。それだけではなく、本来であれば先輩方から教わるはずの基本レベルの事項も、抜け落ちてしまっていることを思い知らされたのです。僕が提出した原稿はほとんど別の原稿に生まれ変わり、それが自分のものよりも遥かに良くなっていることがわかり、ショックでした。

駆け出しが即戦力になると陥りがちな罠

ライター・編集者というのは、おそらく副業がしやすい仕事でしょう。特殊な業界と思われてしまうかもしれませんが、デザイナー・エンジニアさんなどのフリーランス的な動きが可能なクリエイター職には、似たような経験がある方もいらっしゃるかもしれません。また、より一層注意が必要になるのは、職種にかかわらず「即戦力」と自他が認める存在でしょう。

即戦力を即戦力たらしめるのは、相対的な周囲の戦力のなさです。つまり、即戦力は企業の中で、周囲をカバーすることにそのリソースを費やす場合も多々あるのではないか、と僕は思っています。特に、人材が流動化する現代社会においては、企業の教育コストへの投資が減少し、その結果、少しでも使える人材を次々に消費しているようにも見えます。

しかし、現実的に、今の社会で余裕を持って教育に取り組める企業は、特に中小レベルではそうはない、ということも理解しています。それでも「勉強をする」ために手っ取り早いのが、自分の職能の範囲で「副業をする」という方法です。もちろん仕事ですから、手取り足取り何かを教えてもらえるわけではありませんが、自分の身の程を知ることはできます。

自分の能力のなさや偏りを発見したら、それを埋め、整えればいいだけのことです。同じ枠の中でルーティーンをこなすだけではそれができませんが、外に広く、多く機会を求めれば、自分のスキルは確実に上がっていくことでしょう。これが、僕が「勉強したい」という欲求を満たすには、副業が手っ取り早いと言ったゆえんです。

試行錯誤の結果、スキルが身に付くことはあるかも知れません。しかし、これは経験的な感想ですが、その程度のスキルを身に付けるためのノウハウはとっくに外部にあるものです。まだまだ技術が未熟なうちは、誰かからそれを学ぶほうがよっぽど効率がいい。自分自身が大きな回り道をした今、僕はそう思っています。

レベルが低い所にレベルが高い人は来ない

それから、僕はいろいろなメディアで副業をしました。やがてわかったのが、残酷ではありますが、(相対的に)レベルが低い所にレベルが高い人は来ないし、来てもモチベーションが低いなどの問題を抱えているということです。一方、レベルが高い所にはレベルが高い人が集まり、質の高いアウトプットをしていました。

そこでハタと気が付いたのは、「レベルが高い所や人と副業でかかわっていたとしても、副業だけで高いレベルに辿り着くことはできない」ということでした。副業には時間など、物理的な制約が存在します。また、勉強する場をどれだけ副業に求めたとしても、本業はそのままです。駆け出しの自分には、本業のレベルを引き上げることは無理でした。

副業で得られるノウハウというのは、あくまで自分が外の人間である以上、それほど重要なものではないように思います。それ以上に重要なのは、自分の身の程を知ることができることです。その上で、本業の会社の中にいるメリットがあるのならば副業を続ければいいのですが、もし、それがないのであれば、副業を本業にするべきです。

副業で経験を重ねることで、自分のスキルを把握できたら、より高いレベルの環境に移動するためのチャレンジをする。もし、副業をしたい理由が僕の「勉強がしたい」というのに似た欲求なのであれば、いずれは副業を卒業する必要もあるのではないか、と思います。たくさんの副業を経験し、僕は転職をしました。

そして、副業からの卒業

僕は今、副業をしたい欲求がまったくありません。自分よりもレベルの高い所で仕事をしている状態では、副業をしているヒマもないからです。そして一番びっくりしたのは、レベルが高い人たちもまた、中でお互いがお互いから学んで、より高いレベルになる、そんな循環ができていることでした。逃げる背中を追いかける毎日です。

副業より本業のほうが勉強になるなら、それが一番いいですよね。もし、自分の現状に満足できない思いを抱えているのであれば、まずは副業からスタートし、いずれはそれを卒業するのがおすすめです。「仕事は一生勉強」そう思っている人たちといっしょに働くのであれば、どんな理想にも、いつかは到達できるような気がしませんか。

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イラスト:マツナガエイコ

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執筆

ライター

朽木 誠一郎

地方の国立大学医学部を卒業後、新卒でメディア運営企業に入社。その後、編集プロダクション・有限会社ノオトで基礎からライティング・編集を学び直す。現在は報道機関に勤務しながら、フリーライターとしても執筆中。

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撮影・イラスト

イラストレーター

松永 映子

イラストレーター、Webデザイナー。サイボウズ式ブロガーズコラム/長くはたらく、地方で(一部)挿絵担当。登山大好き。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。

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