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節電か節約か、それが問題だ──コデラ総研 家庭部(76)

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 家庭の電力料金を節約したい人
  • 電力自由化に興味がある人
  • ピーク電力の管理に関心がある人
  • 環境問題に関心がある人
  • テクニカルライターの記事に興味がある人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事では、電力自由化によって一般家庭で利用できる電力会社の選択肢が広がったことを解説しています。地域の電力会社以外からも電力を購入することができ、様々なプランが選べるようになりました。筆者は、東京電力のピークシフトプランに加入しており、このプランではピーク時の料金が高い一方で、夜間の料金が非常に安く設定されています。電力消費のパターンを見直すことで電気代を抑えることができ、さらに電力消費が少ない家電への転換による節約についても触れられています。電力会社やプランの選択時には、年間を通した電力消費の傾向を把握することが重要であることが強調されています。また、安易な電力会社選びが電力需要のバランスを崩す可能性があることや、節電意識の向上が個人の利だけでなく、社会全体の利益にもつながることを考慮するべきだという視点も提供されています。家庭内での電力使用の分析と見直しを通じて、より良いエネルギー利用を心掛けることが推奨されています。

Text AI要約の元文章

tech

節電か節約か、それが問題だ──コデラ総研 家庭部(76)

テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第76回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「節電か節約か、それが問題だ」。

文・写真:小寺 信良

電力自由化により、家庭の電力はエリアの電力会社以外からも購入できるようになった。携帯キャリアが抱き合わせでポイントを付けたり、ガス会社がサービスを提供しているのはよくご存じだろうと思う。

それに加えて、各地域の電力会社からもプランを選べるようになっている。例えば筆者の住む埼玉県では、中部電力や北陸電力、東北電力からも電気が買えるのだ。実際にはそんな遠くから電線を引っぱってくるわけではなく、各電力会社間の電力融通によって実現するわけだが、面白い仕組みである。

筆者宅はこれまで、東京電力の「ピークシフトプラン」というのに加入してきた(コデラ総研 第43回「家電の機能をフルに使ってピークシフト」)。7月〜9月の午後1時〜4時のピーク時のみ料金が割高になるが、それ以外の時間帯は安くなる。特に午後11時〜午前7時までの夜間はほぼ半額で使えるというプランだ。

図1:現在契約中のピークシフトプラン

これに変えたわけは、原発稼働停止により毎年夏の昼間には電力がひっ迫するため、その間は節電しようと思ったからである。また洗濯機や食洗機は深夜に使うことが多いため、電気料金的にもお得な面が多い。

東京電力では、「でんき家計簿」というサービスを提供しており、ここで年間を通した使用量の変化を確認することができる。このプランに変更して1年半が過ぎ、夏場を越えたところで、生活の変化に伴う電力変化の様子が見えてきたところだ。

図2:約1年半の電力利用量の変化。薄いグラフが昨年のデータ

同じ料金プランの平均からすると、ほぼ平均並みといったところである。ただ、うちの家庭が2人暮らしであることを考えると、相対的には電気を多く使うと言えるだろう。仕事部屋のPCは常時電源が入り、NASも複数台動いている。また昼間もずっと家で仕事していることが多いので、そこは仕方がないところである。

毎年8月は、一般家庭よりも突出して電気代が高かったのだが、今年は大幅に節約でき、ほぼ一般家庭並みとなった。理由は明確で、仕事部屋のエアコンを買い換えたからである。

これまで使っていたエアコンは10年前のモデルで、今の家に引っ越したときに一番安くて納期が一番早いというだけで選んだものだったので、冷房専用機だった。しかしその実、家庭内では一番稼働率が高かった。

これを思い切って昨年発売の高級モデルに買い換えたところ、消費電力が大幅に下がった。また小まめに付けたり消したりするより、付けっぱなしの方が消費電力が少ないという噂があったのはご存じだろうか。それを検証すべく、夏場はずっと付けっぱなしにしたところ、みごとに消費電力が減ったのである。本体の低消費電力化と運用の工夫で、このような結果となった。

プランの乗り換えを検討する

この料金プランに概ね満足はしているものの、すでにこのプランは新規申し込みを終了している。今はもっと新しいプランがあるのだ。ただしケータイキャリアの契約同様、2年縛りや1年縛りといったプランとなっている。

家庭内の消費電力量は1年通して変動が大きいので、年単位で見ていかなければならないのは分かるが、こうも新料金プランが次々と発表されるとなれば、やはり1年程度で乗り換えができるプランが望ましいだろう。プラン選びに失敗したことが分かっても、最悪1年我慢すれば最適なプランに乗り換えられる。

家電製品の価格比較サイト「価格.com」では、電気料金プランのシミュレーションにより、比較検討もできる。東京電力のサービス内も含めて幅広く検討できるというので、さっそくやってみた。

図3:電気料金シミュレーションの結果

筆者宅の使用量からすると、中部電力で契約すれば、年間で3万円ほどお得になるそうである。ただこのシミュレーションは、1年を通して一般家庭の平均値と近いのか遠いのかでずいぶん結果が変わってくるものと思われる。さらにはその電力会社で、オンサイトで月単位の使用量を分析するようなサービスを提供しているのかも重要だ。なぜならば、次の乗り換え先を検討する際に比較が簡単になるからである。

その一方で、慌てて単価が安い電力会社を探して乗り換えるのも、それでいいのかという気がする。電力需要は1年の中で波があるだけでなく、1日の中でも波がある。みんなが安くなった分だけバンバン電気を使いだすと、需要が底上げされた格好になり、また電力がひっ迫する。そのうち自由化による競争の限界が来るだろう。

反原発運動も最近はすっかりニュースにならなくなってきたが、自分だけが得をすればいいといった生き方は、果たして正しいことなのか、今だからこそ自問自答するべきだろう。関東地方で輪番停電までやって得た知識と教訓を、忘れてしまっていいのだろうか。

生活パターンを見直してピークをずらしたり、節電意識を高めたりしつつ、誰かのために譲るという気持ちを持ちながら暮らすことは、人生にとって意味のあることだ。そういう点でも、まずは自分の家の電力需要の傾向を細かく分析していくというのは、悪くないことである。(つづく)


本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


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