サイボウズ株式会社

保育園は1日100ドル以上、移民の国で頼れる親族もいない……。「夫婦はチーム、稼げる方が稼ぐ」シドニー流の働き方

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 働くママ
  • 共働き家庭
  • 日本の企業経営者
  • ワークライフバランスに関心のある人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事は、オーストラリアのシドニーに住む働く母親たちのワークスタイルと日本の状況を比較する内容になっている。シドニーでは、共働き家庭が主流であり、保育園の利用には高額の費用がかかるが、政府からの補助金などがあるため、多くの人は週2〜3日働く傾向にある。また、シドニーでは働き方に柔軟性があり、夫婦がチームとなり稼げる方が働くという考えが一般的だ。仕事や育児、家庭における夫婦間の役割は「チームワーク」として捉えられており、男性も積極的に育児に参加している。学校の教師がジョブシェアをするなど、仕事の分担は職場だけでなく、学校でも行われている点が特徴的である。対して日本では、フルタイム勤務が基本となっており、労働時間も長く、育児負担が女性に偏りがちであるため、シドニーの働き方が進んでいると感じる人も少なくない。また、シドニーでは柔軟な働き方を許容する文化があり、職を転々としたり起業することも一般的で、年功序列などの制度に縛られることが少ない。そのため、子育てをしながらでもキャリアを築いていくことができる。

一方で、シドニーにも保育所の不足という問題があり、待機児童問題が存在する。それでも、政府の補助や地域コミュニティのサポートのおかげで育児環境は良いとされている。さらに、オーストラリアでは出産や検診が無料で行われ、国から補助金が支払われるため、安心して子育てができる環境が提供されている。シドニーの家庭では、家事も夫婦で分担し、全体としての生活水準向上を目指している。これらの状況から、日本の企業もより柔軟な働き方を模索し、家庭と仕事の両立を支援する方向性を見習う必要があると感じられる。

Text AI要約の元文章
家族と仕事

保育園は1日100ドル以上、移民の国で頼れる親族もいない……。「夫婦はチーム、稼げる方が稼ぐ」シドニー流の働き方

左から遠藤明日香さん、淑子さん、サイボウズ社長 青野慶久、Karen Spencerさん、池田亜希子さん、楳村郁子さん

長時間労働の夫を頼ることもできず、子育てと仕事に孤軍奮闘する働くママ。共働き家庭が半数を超える日本では一般的であるこんな姿は、世界の働くママからどのように映るのでしょうか? シドニー在住の働くママ5人にサイボウズのワークスタイルムービー「大丈夫」を見てもらい、シドニーでの夫婦の働き方や子育て、夫婦関係について、サイボウズ社長の青野慶久が聞きました。 日本では働き方やすい企業を目指して様々な取り組みをしているサイボウズですが、実はオーストラリアでは当たり前のこと、どころかもっと先を行っていたのです。

学校も担任の先生が2人、週5のフルタイムの仕事を2人でジョブシェア

みなさん、子育てと仕事の両立って、どのようにされているのですか?

私は子どもたちを保育園(デイケア)に預けながら、週2日と子供の就寝後に働いています。保育園は世帯年収など状況にもよりますが1日100ドルがだいたいの相場なので、よっぽどしっかりした仕事をしていないと、週5で預けるのはなかなか難しいんですよね。月にすると2,000ドルくらいにもなってしまうので。

池田亜希子さん。在豪12年。夫と3歳、5歳の娘と犬一匹との5人家族。シドニー大学院を卒業後フルタイムで企業に就職。長女出産後は夫と始めたデザイン事業にキャリアチェンジ。週2回子供を預け在宅で勤務。

シドニーでは、それが普通ですよね。むしろ私の周りだと、週5日フルタイムで働いている人には会ったことありません。

遠藤明日香さん。在豪6年。在豪20年の日本人の夫と4歳、2歳の子供の4人家族。子どもを出産前まではダンサー、ヨガティーチャーとして15年ほど活動。子どもを出産後、自宅でヨガスタジオを始める。オーストラリアの日系新聞「NICHIGO PRESS」にて毎月ヨガの記事を連載中。また、2016年に食品用エコ蜜蝋ラップの会社KoKeBeeを設立し、主に自宅から仕事をしている。 2015年から始め、現在会員が約720人ほどになるシドニー日本人ママ会の会長も務める。

金額の上限があるものの、週2日以上仕事をしていると、保育園の助成金が50%ほど出るので、みんな週5ではなくて2~3日働くとかそんな感じですよね。私も子どもが生まれてからは週に2日間しか働いていないです。

淑子さん。在豪16年。夫と5歳、7歳、9歳の3人の子どもの5人家族。日本では看護師として、オーストラリアでは、パートタイムで助産師として週2日勤務で働いている。

私は週に3日間働いていますが、2日間は在宅で、1日だけ会社に出るという形です。

Karen Spencer(カレン・スペンサー)さん。日本に在住したこともある親日派のオーストラリア人。夫と7歳、11歳、13歳の子供との5人家族。出産前は国際交流基金や日本国総領事館に勤務。その後ファイナンシャルプランナーとして独立し、障害や病気を持つ子どもを支援する取り組みも行っている夫の仕事のサポートをしている。今年から週3日勤務(週2回在宅、週1回出社)。

えっ。日本では基本フルタイムで週5日働くのが大前提ですが、シドニーではそこからまず違うんですか?!

そうですね。働き方は日本と少し違いますね。最長2年まで産休が取れるのですが、それでも保育園が見つからなかったりして戻れなかったら、交渉次第で自分の席はキープできるんです。

楳村郁子さん。在豪23年。日本人の夫、高校2年生の娘と中学3年生の息子の4人家族。15年間ワーキングマザーとして会社勤めをし、2013年に退社。実父の介護のため2年間日本で過ごした後シドニーに戻り、2016年より遠藤明日香さんらと未来の地球を守るべく、洗って繰り返し使える食品保存用ミツロウラップ「KoKeBee」を立ち上げ、主に自宅で仕事をしている。

青野 慶久(あおの よしひさ)。1971年生まれ。愛媛県今治市出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現 パナソニック)を経て、1997年8月愛媛県松山市でサイボウズを設立。2005年4月代表取締役社長に就任(現任)。社内のワークスタイル変革を推進し離職率を6分の1に低減するとともに、3児の父として3度の育児休暇を取得。2011年から事業のクラウド化を進める。総務省、厚労省、経産省、内閣府、内閣官房の働き方変革プロジェクトの外部アドバイザーや CSAJ(一般社団法人コンピュータソフトウェア協会)の副会長を務める。著書に『ちょいデキ!』(文春新書)、『チームのことだけ、考えた。』(ダイヤモンド社)がある。

ただ日系企業だと、やっぱり週5日のフルタイムじゃないとダメですよね。私が働いていたところもそうだったので、本当は戻りたかったんですけど、仕方なくやめました。

私も日系企業だったので、そんな気軽に戻れる職場ではなかったですね。

それって契約形態はどうなっているんですか?

週5日の「フルタイム」とバイトのような「カジュアルジョブ」、その中間に「パートタイムジョブ」があるんですけど、無期限契約のパーマネントパートタイムだと、フルタイムと同様の有給休暇や病欠といった福利厚生がついています。

こっちだと在宅勤務も多いですよね。

男性で在宅勤務してる人もいるし。

そうですね。ジョブシェアもありますし。

そうそう。学校も担任の先生が2人いて、曜日によって代わるんです。

学校の先生が曜日交代なんですか?! すごいなぁ。

週5日のフルタイムの仕事を2人でシェアするっていうのは、多いですね。

「日本のママは、みんなシングルマザーみたい」

サイボウズが2014年に制作した「大丈夫」が日本では、働くママを中心に様々な議論を呼んだのですが、みなさんから見てどう思いましたか?

あれが日本の典型的な旦那さんですよね。子どもが病気なら奥さんが迎えに行くのが当たり前っていう。

そんな夫婦チームじゃないですよ。チームワークがないじゃないですか!

シドニーでは、男性も育児に協力するのが当たり前ですか?

そうですね。オーストラリアは病児保育もないし、移民の国だから夫婦以外に子どもを見てもらえる人がいない人が多いので、逆に旦那さんのサポートがないと、この国ではやっていけないんじゃないかな。

在宅してる人も多いから、お父さんがお迎えに行けるっていう恩恵もありますよね。

だから昼間の公園にもお父さんが多くて、「何曜日はあのお父さんが来る」ってみんなわかってる感じです。

平日の昼間に男性が子どもと公園にいると怪しまれる、なんていう日本である問題がないんですね(笑)。男性が週5日働いていないというケースもあるんですか?

ありますね。奥さんが稼いで旦那さんが働かないっていう人も結構いるし。主夫もいます。

夫婦は「チーム」という考えなので、稼げる方が稼ぎに行く。 私の主人は下の子が生まれたばかりの頃は週4日勤務にして、私たちは新生児と2歳児の時期を過ごしました。

最近は子どもが生まれてからお父さんが休みを取るケースって多いですよ。ロングサービス(長年勤めると取得できる長期有給休暇)とつなげて6ヶ月間休んだり。

えぇっ! 日本では男性の育児休暇の取得率は2%ちょっと(2015年度の雇用均等基本調査より)しかなくて、ほとんど伸びていないのに。シドニーでは長時間労働もあまりないのですか?

うちの旦那は広告代理店勤務なので、プロジェクトによっては残業が続く時もありますが、毎日ではないですね。

やっぱりこれも日系企業では残業がすごいですよ。ローカルの会社だと、みんな17時になったらパッと帰っちゃいますけどね。

金融系だと19時くらいまで残業がありますけどね。

19時で長いなんて、信じられない…。

長いですよ! (笑)。

日本では土日でも仕事に行く旦那さんもいるし。日本の奥さんは、みんなシングルマザーみたいな感じがします。

シドニーでは週末は家族みんなで集まることが多いですけど、日本では友達と遊んでも旦那さんも一緒に来ることはほとんどないですしね。

あと、こっちの人は学校の行事も夫婦で行きますよね。

すごいなぁ。私の長男の小学校の説明会に行ってみたら、男性比率2%くらいでしたよ。何なんでしょうね、この違い…。

ちょっと気になったんですけど、「大丈夫」に出てきた彼女は、本当に大丈夫なんですか? 疲れや本心を隠してニコニコしてるけど、絶対に「大丈夫」じゃないと思う。ママのストレスは子どもにも伝わりますよね。

大丈夫じゃないでしょうねぇ…。

自分に「大丈夫」って言い聞かせて、どうやったら大丈夫になるかをすごく考えているんだと思います。

こんなママの姿を見て、大丈夫だと思う男性がいることが信じられないです。

男性は「きちんと言葉で言ってくれないとわかんないよー!」って人多いですからね…。

シドニーにもあった待機児童問題、2~3年待ちは当たり前

逆に、シドニーで不満に思っていることって、保育園が高いという以外に、何かありますか?

高いだけじゃなく空きがないんですよね。妊娠がわかって待機児童のリストに載せてもらっても、実際に入れるのは3歳とか。

地域によって違いがありますね。私が以前住んでいた地域では2〜3年待ちって言われたけど、今の家の周辺ではいつでも入れるよと言われましたからね。

入れなかったらどうするんですか?

ベビーシッターに頼んだり。

ベビーシッターだとだいたい相場は1日120ドルくらいですね。それで子ども2人みてくれるならまぁ…それでも高いですけど。

私はずっとワーキングホリデーでシドニーに来ている子にベビーシッターお願いしてましたよ。保育園にお迎えに行ってもらって、家に連れて帰って寝かしつけまでしてもらって。

あと学童も空きがないですね。しかもこっちは15時に学校が終わって、親がお迎えに行かないといけないんです。

日本みたいに「勝手に行って来い!」って感じじゃなくて、学校まで送り迎えしないといけなくて。

それは大変ですね。

朝も保護者がいないと先生に子どもを引き渡せないシステムなので。

小学校いっぱいくらいまでは、子どもの送り迎えが必要なんです。

転職は年齢制限なし、パートや在宅でも管理職、気軽に起業、大企業ブランドにしがみつかない働き方

日本では「マミートラック」と言って、子供を産んで男性のように働けないと出世コースから外れてしまうというのが問題になっていますが、こちらではそういったことはないんですか?

会社によりますけど、やっぱりそれはありますよ。週2〜3日勤務だと、いい仕事は他の人に行ってしまうっていうので辞めてしまう人もいますし。キャリアチェンジする人も多いです。

こっちでは大人になってから学校に行くのも、結構普通ですからね。

そうですね。企業で広報の仕事をしてた人が、突然学校に通って介護福祉士になったり。

そうそう。あと、こちらでは起業する人も多いですよね。

カメラが得意だから赤ちゃん専門のカメラマンになるとか、お絵描き教室とか体操教室を始めたり…私の周りでは赤ちゃん関連か自分の趣味や特技だったもので起業する人は多いです。私は主人がデザインしたものを商品にして、小売や卸をやっています。

日本よりややこしい手続きも少なくて、結構簡単に起業できますからね。

日本人は大企業のブランドがとても強いし、長くいると得する年功序列なので、みんな会社にしがみついてしまいがちなんですかね。

こっちは3〜4年で転々と職を変えるのが当たり前の感覚だから、そんなにこだわりがないんだと思います。

同じ会社に何十年もいるメリットがないから。お給料が上がって今よりいいポジションなら違う会社に行こうという発想なので。

年功序列もこっちにはないですね。他のところから来た人がボスになることもあるし。

起業してもしビジネスがうまくいかなくて続けられなくなっても、それを一つの経験として、それから新しい職を探すことも可能ですし。

転職の際に、年齢制限もありませんからね。

出戻りも普通にあるんですか?

辞め方にもよると思いますけど、ポジションや雇用形態を変えて戻る人はいましたよ。

パートタイムで管理職をする人もいるんですか?

います、います。週2日オフィスに来て、残りは在宅でっていう人もいますし。

そもそも管理職は出張が多いので、オフィスにいなきゃいけないわけじゃないですからね。結果さえ出せば管理職は裁量権があるので。

子どもを産むのも検診もタダ、それどころか国からお金をもらえる

日本の出生率は現在1.46(2015)ですが、オーストラリアの出生率はそれより高いんですよね?

1.9(2015)くらいですね。

でも3〜4人子どもがいる人、周りで多くないですか? なので、感覚的にはもっと多い感じがします。

都市部の方が子育ては大変ですか?

そうですね。家も狭いし、保育園も入れないし。

それでも子育てにはいい国だと思います。

子どもを産む時もタダですからね。

そうそう。出産だけじゃなく、検診にもお金がかからないんですよ。(※)

※永住権をもち、メディケア(Medicare/オーストラリアの国民保険)保持者の場合、公立病院での出産や定期健診は基本的に無料。

しかも手当を国が補助金を出してくれるから、タダな上にもらえちゃうっていう。

それにこっちでは普通の家庭でも掃除屋さんに頼んだりベビーシッターを頼んだりして、奥さんが家事に縛られていないのがいいのかも。

日本でそれを言うと、「えっ!」って言われますけどね。

みなさん、旦那さんとデートしてますか?

しますよ。

(頭をさげる…)

ちゃんとデートしないと! ママとパパの関係は一番大事にしなきゃいけません。

必要ですよね。

もう何年もしてないなぁ…。どれくらいの頻度ですか?

月に1回くらいですけどね。

映画とかディナーとか。

カップル同士のディナーとかもありますしね。そういう日はベビーシッターに頼んで、大人だけで行きます。近所のバーに行くと、ママ友の女子会を見かけることも、よくありますよ。

日本は活用できるサービスがあるのに、「夫婦だけで育てる」というか、「みんなで育てればいいじゃん」っていう発想が欠けている気がしますね。

「夫婦で育てる」って言っても、結局は奥さんだけになってるじゃないですか。夫婦でっていうならまだしも、一人でっていうのは、ちょっと…。

男性が料理をすることもあるんですか?

うちは毎週します。

うちも金土日は主人が料理しますね。料理が好きなので、リラクゼーションになるそうで。

うちの主人も週末は料理担当です。魚を三枚下ろしにしたり魚 や肉の処理も全部やってくれますね。

そういうお父さんを子どもたちは見ているので当たり前の感覚になって、自分たちも料理したりしますよね。私の息子は2人ともケーキやディナーを作ってくれます。私が働くようになってから、子どもたちも自分でいろいろやろうとするようになったので、仕事をしてよかったと思います。

日本ではサイボウズの働き方は進んでいるとけっこう自信を持ってきたんですが、シドニーの話を聞いてるとまだまだ全然だなと実感しましたね。すごく面白かったです! ありがとうございました。

文:野本 纏花/編集:小原弓佳


2016年8月 2日大事な商談の日なのに、保育園に預けられない──両親の代わりに営業チームで子守をした話
2016年7月 5日40代の元ワーキングママがインターンをして感じた「復職時に乗り越えたい3つのこと」
2016年8月10日「キャリアブランクがあってごめんなさい」なんて謝らなくていい──再就職するママへ、あなたは自信を持って踏み出せる

タグ一覧

  • 青野慶久

SNSシェア

  • シェア
  • Tweet

執筆

ライター

野本 纏花

デジタルマーケティングを専門とする元マーケターのフリーライター。ビジネスメディアを中心に多数のWebメディアで執筆中。

この人が書いた記事をもっと読む

編集

編集部

小原 弓佳

この人が編集した記事をもっと読む

Pick Up人気の記事