サイボウズ株式会社

「サイボウズで複業しませんか?」 複業採用のQ&Aを社長に直接聞いてみた

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業の経営者
  • 人事担当者
  • 働き方に興味があるビジネスパーソン
  • 副業や複業を考えている従業員
  • 社会経済学者
  • 働くことに多様性を求める人々
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むと、サイボウズが提唱する「複業採用」についての考え方やその背景が理解できます。サイボウズの社長である青野慶久は、副業と複業を区別し、複業は誰もが実践できることを前提とする新しい働き方であると述べています。また、複業とは個人が複数の活動を持ちながら生きていくことを指し、従来の「副業」のイメージとは異なり、収益を得る目的以外にも個人の成長や多面的な活動を重視しています。

同社が2017年に発表した複業採用に対する反響やその意義についても触れられ、青野社長が複業は社員が一社にフルコミットするのが難しい現代における働き方の一つの形として捉えていることがわかります。複業を通じて社員はサイボウズのみならず、他社や家庭でも活動を広げることができ、企業と社員が理想を共有しながらも相互にサポートし合うことで新たな価値創造が可能であることが示唆されています。また、青野社長は複業採用を通じて企業がフルタイムの雇用形態に縛られない新しい人材活用の方法を模索していることも伝えています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

経営層から見て、複業ってどうなの?

「サイボウズで複業しませんか?」 複業採用のQ&Aを社長に直接聞いてみた

「サイボウズで複業しませんか?」

2017年1月17日、サイボウズが「複業採用」を発表し、多くの反響がありました。新しい働き方に対する共感もあれば、本当に複業採用ができるの? なんて声も。そこで、ソーシャルメディア上でいただいた反響を直接、サイボウズ 代表取締役社長の青野慶久にぶつけてみることにしました。

副業ではなく「複業」採用──「そもそも誰もが複業している」ことが前提

複業採用、結構反響ありましたね。

ありましたね~。最初は「サイボウズで複業したい人を採用する」という取り組みがおもしろいかどうか分からなかったんですけど、今回の反響を見ると、世の中には複業をしてみたい人がいっぱいいるんだと思いました。

サイボウズでは社員の副業を認めていて、それをより拡大したという感じですかね。かつ、今回の採用は「副」業ではなく、「複」業に関するものだと。

そうですね。副業と複業で言葉は似ていますが、僕はとらえかたが違うと思っています。 まずは「副業」について話します。例えばどこかの会社にフルタイムで働く「主業」があるんだけど、空き時間で株の売買や不動産投資をするといったことは、副業としてイメージしやすい。 副業という言葉だけを見るとどうしても「会社に雇われたり、金銭の授受が発生したりする」と思いがちですが、僕の解釈はそれだけではない。

「副業」は副収入といった「Sub」の意味合いをもつイメージですね。

ええ。最近、経済産業省の副業の会合に行った時に「副業ができる人は意欲が高く、スキルもある人じゃないか?」という議論になりました。 いや違う、ちょっと待てと。僕は副業ではなく「複業」のスタンスです。意欲やスキルに関係なく、複業はできるじゃないかと。

今回は「複業」採用ということもあり、複数という「Multi」の意味合いを持たせているのかなと思います。

そうなんです。そこは前提として話しておきたいなと。 僕の思う複業は「2つの会社で同時に働く」を、もう少し広げたものなんです。家事や育児だって外注すればお金が掛かるでしょう。これも立派な仕事じゃないですか。これも複業だといえるんじゃないでしょうか。

そうすると、誰もが複業をしている状態ともいえます。

そうですね。会社で働いていなくてもみんな何かしらの仕事をしているし、現実的に複業をしていない人はいないはず。だからこそ、「副業採用」ではなく「複業採用」と言っています

これがサイボウズの複業採用に対する前提でもありますね。

会社の仕事しかしていません、という人はいないはずですから、広い意味ではすべての人々が複業している。むしろ複業が当たり前だと思っています。 そしてどのように複業するかは本人の意思に任されているので、複業を増やしたければ増やしてもいいし、減らしたいなら減らせばいい。

分かりました。ではこの後の質問に対する答えは、すべて「副業」ではなく、「複業」に対する答えになってくることを踏まえた上で、実際の反響を青野さんにぶつけてみたいと思います。

「人は会社1社にフルコミットしなければいけない」ではなく、誰もが「複、複、複」で生きている

では、最初のコメントから。こんな状態になったら、どうしますか?

もしも弁護士が、サイボウズの法務に複業採用で入社したとして、M&Aのディールが緊迫している時期に 「明日は副業の大事なお客と面談するので会社に行きません」となったらどうするのか。

うーん、どうもならないんですけど……(笑)。この方は「主業」と「副業」という見方のようですね。 ただ、この副業を会社の仕事ではなく、家族の仕事に置き換えてみるとどうでしょう。大事な仕事があるけど、子どもが熱を出してしまったとする。この場合だと、仕事よりも子ども、よくあるケースですよね。複業の発想です。 仕事と家庭に優劣はないですし、みんな「複、複、複」で生きている。それを踏まえた上で、今回のようなケースのときでも、その時々で対応するしかないのでは。

「会社で仕事をすることが大事」という美徳があるがゆえに、「本業に差し支えがないように」といった意識が働くのかもしれません。

生きていれば、普通にみんな差し支えていますよね。熱が出れば休むし(笑)。「人は会社1社にフルコミットしないといけない」ではなく、「そもそも人は会社1社にフルコミットすることはできない」と見方を変えてみるのがいいのかも。

サイボウズで仕事をするかしないか、というゼロイチでは考えていない

次の質問は採用戦略について。

「サイボウズは単純に利益、給料が低い会社なので、身の丈に合った報酬では雇えない人材を副業でディスカウントしたり、時間売り的な形で採用したりしたいのだろうと思います」

うーん……これは否定できないな。それ(報酬のこと)もなくはない、という感じですよね。 ただ今回の複業採用のポイントはそこではなく、サイボウズの理想に共感して、いっしょに実現してくれる人、手伝ってくれる人が増えてほしいという意図です。

サイボウズにフルコミットしてくれなくても、少しでも力を貸してくれる人といっしょにやりたいと。

そうそう。1人の人を会社でフルに囲う必要はないと思っていますし、サイボウズの仕事をするかしないかという「0か1か(ゼロイチ)」では考えていないんですよね。 複業であってもそうでなくても、僕はそもそもその人に会社にフルコミットしてほしいとは思っていない。むしろ0.1の割合の人がいてもいい。そういう人がタスクをシェアして、わたしがここまでやりますと言い、ほかの人が助ける。それがチームワークだと思います。

フルコミットする人の時間や成果の割合を1として、0.1でもいっしょにやってくれる仲間が増えるといいと。

そういう感じで、その総量が増えていくといいですね。ただ0.1の時間しかコミットしてくれない複業の方が、0.1しかアウトプットを出せないとは思っていません。

コミットする時間では見ていないと。

その人は残りの0.9の時間を、会社なり家庭なりで別の仕事をしています。サイボウズとは別の場所で、サイボウズの複業に関するインプットや思考をしてくれているとも考えられる。また、時間的には0.1しかコミットしてくれなくても、その人が0.1以上の人脈をサイボウズにもたらしてくれるかもしれない。 複業ではないですが、サイボウズでチーフブランディングオフィサーをしているプロデューサーのおちまさとさんは、月に数時間しかサイボウズに時間を使ってくれないけど、その時間以上の提案や人脈をもたらしてくれています。

サイボウズで働きながら、ダンクソフトという会社でも働いている龍太さん(サイボウズ 社長室の中村龍太)みたいなイメージですか?

そういうイメージです。複業でかつ長期間のコミットとなると、スキルの高いプロフェッショナル人材が想定しやすいかもしれませんね。 けど、今回の複業採用で出しているのは、もっと軽く「半サイボウズ社員になりませんか」ということ。若くてこれからスキルを伸ばしていく人でも、その分給料は安くなるかもしれないけど、それでもいいなら複業にチャレンジしてみてほしいですね。

長時間労働との兼ね合いは? 「本業の時間を短くして複業をするのも1つ」

長時間労働と複業の兼ね合いについて。辛辣……。

「過労死を問題視しつつ、副業を歓迎している方のアタマの中身を見てみたいものだ(笑)」

このコメントは、「本業はフルタイムで働き、本業以外の空いた時間で副業をする」という前提があるのかもしれないね。 そういう働き方を否定はしないんだけど、僕は「フルタイムの本業の時間を短くして、その時間を複業に当ててもいい」と思っている。副業ではなく、複業ですね。

会社がフルタイムで長期間働く人を想定して、人を評価してきたのかなと。もし複業をしたいという人がいても、本業側の会社がその雇用形態や時間の使い方を許さないかもしれませんね。

フルタイムで働いてほしい、ではなく、少しでも時間を見つけて同じ理想に向かって働いてくれたらありがたい。そんな気持ちかな。そういう社会を作りたいです。

業務委託・アウトソーシングと複業採用の違いって?

複業採用と業務委託の違いについての指摘もありました。

「フルタイムでの雇用は企業、人材ともにコミットへの責任が重い。一方でアウトソーシングだといくらいい仕事でも完全にその場きりの関係になってしまう」

そうですね。業務委託とすると、受発注の関係というものが出て、下請けといった感じが出てくるかもしれない。けど、複業だといっしょに理想を目指していくイメージですね。

当然、雇用形態も変わってきます。

その時の契約はどうなるんだろうね。この2つの違いは、業務委託は契約の形態や期日が決まっているものだけど、複業採用は契約形態にこだわらないという点かな。 僕たちが魅力的であり続けないと、長期的な複業先として選択したいという人は出てきてくれないと思います。

最後は、複業採用で来る人材に関するコメントです。

「副業=主が疎かになる。という発想って、社員を「意思を持たない駒/歯車」としてとらえる企業側の論理な気がする。それが幸せな人は、会社に入ることが目的=ゴールの人。副業を収入目的以外で望む人もいるはず。例えば成長したい人、多角的に活動したい人。どちらがこれからの時代に優秀な人材と言えるのか?」

複業に、報酬以外の何かを求める人も多いと思うんです。例えば大企業に勤めていてそこそこ報酬をもらっている人が、さらに自分を磨きたくて、収入以外の目的で、サイボウズで複業したいと思ってくれるなど。 そういう人にとっては、今回の複業採用にマッチするはずだし、きっと貢献してくれるはず。僕らにとってもうれしいですね。そういう人が来てくれるには、僕らが魅力的なビジョンを持っているかが大事なんですよね。

自分のリソースを1とした場合、0.1や0.2などフルでリソースを割けない人といっしょに、理想を目指すことが大事になってきます。

その点では、僕たちが試されているともいえますよね。時間に制約がある人をいかに生かせるか。フルタイムで働けない育児や介護をしている人などをマネジメントできないと、日本企業の経営で社会を良くするための次のステージに行けないですから。

サイボウズの複業採用について、気になった点があれば、ソーシャルメディア上でコメントを付けてぜひお知らせください。また直接、社長の青野に聞いてみたいなと思います(サイボウズ式 編集部)

写真:すしぱく(PAKUTASO)

2017年1月19日副業禁止で「会社栄えて国滅びる」。歴史ある企業こそ、人材を社会に解放すべき──ロート製薬 山田邦雄×サイボウズ 青野慶久
2016年6月30日青野さん、「副業禁止は経営リスク」って本当ですか?
2016年11月 8日社長から「副業したら?」と言われてショックだった──会社一筋の執行役員が副業を始めるまでの話

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すしぱく

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編集部

藤村 能光

サイボウズ式2代目編集長。新生サイボウズ式をどうぞよろしくお願いします。

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