ミノシマ タカコ
WEBを中心に執筆・編集・運用などを行っている。日本参道狛犬研究会会員。
この人が書いた記事をもっと読む
この記事を読んで得られる知識として、就職活動において多くの人が直面する「やりたいことが見つからない」という問題について、どのように対処するべきかについて語られている。記事では、「やりたいこと」が見つからないのは一般的なことであり、それを個人の問題と捉える必要はないとしています。さらに、人には「やりたいこと」タイプと「ありたいすがた」タイプがあり、後者は抽象的な価値観を持つため、具体的な「やりたいこと」を見つけることが難しいと説明しています。
その中で、自分の過去の経験から「ありたいすがた」を言語化し、そこから具体的な「やりたいこと」に落とし込む方法が提案されています。また、その過程で「シーズ(自分ができること)」、「ニーズ(世の中から求められていること)」、「ウォンツ(自分がやりたいかもしれないこと)」という3つの視点を持って自己分析を進めることの重要性が指摘されています。
この手法を用いることで、就活生は自分自身の過去の経験を振り返りながら、他人との関わりやこれからの仕事の方向性を具体的に考えることができるようになります。最終的に、やりたいことを見つけるプロセスは、自分自身の過去を理解し、今の自分を知り、未来を決定することであるとのメッセージが届けられています。
インターン大学生の疑問
「将来何がやりたいの?」
子どものころから繰り返し聞かれるこの質問にいつから答えられなくなったのだろう──。いつか見つかるはずと思っていたのに、答えは見つからないまま、気づけばもう就活生になっていました。
仕事を選ぶために「やりたいこと」は欠かせない要素です。しかし、誰もが「やりたいこと」を持っているわけではありません。
「やりたいことがない」人が、それでも就活の中で「やりたいこと」について考えなければいけない時、どうしたら答えが見つかるのでしょうか。悩む就活中のサイボウズ式インターン生が森一貴さんに疑問をぶつけました。
就職活動の中で「やりたいこと」を求められるのですが、正直私は「やりたいこと」がないんです。そのときに森さんのブログを拝見しました。
早速ですが、なぜ「やりたいこと」が見つからない人がいるのでしょうか?
僕は「やりたいこと」ってない方が普通だろうなと思っているんですよね。
えっ……?
左:森一貴さん。探究・創造型学習塾「ハルキャンパス」代表。東大卒業後、東京でコンサルタントとして働いた後、現在は福井県鯖江市に移住し、教育・コンサルティング事業を行う。自身のブログで「やりたいことなんかないけど、しあわせでいたい人の話」というエントリーを書いている。その内容によると、「やりたいことがない」人は意外に多いのだそう。右:悩める就活生、ゆきまーぬ。
そんな問題意識は強烈なトラウマをかかえていたり、被害をうけたりしたことがある人にしか生まれてこないと思うんです。
たしかに……。
僕も「やりたいこと」なんてないですよ。ブログにも書いたのですが、人間には「やりたいこと」タイプと「ありたいすがた」タイプという2つがあって、僕は「ありたいすがた」タイプなんです。
「やりたいこと」タイプは、やりたいことが先にある人たちで登山に近いイメージ。このタイプの人は、目標や理想に対して近づいていくことに対して幸せを感じ、自分と「やりたいこと」につながりがあるパターンが多い。対して「ありたいすがた」タイプの人たちは、「自分の幸せはこれ」というふんわりとした価値観を持っている。この価値観がどの程度満たされているかが幸せの基準になる。(画像は森さんのブログより)
世の中の人は、だいたい「ありたいすがた」タイプだと僕は思っています。
なぜ「やりたいことがない」のが普通なのに、就職活動などでは「やりたいこと」を求められるのでしょうか。
就活や仕事において、「あなたは世の中にどんな価値を提供するのですか」という視点で話をされますよね。そうなると「具体的に何をするのか」「やりたいことは何なのか」ということを落とし込む必要がでてくるのです。
さらに意思の疎通を円滑にするためには結論から話をすることが良しとされるので、「僕は〇〇がやりたい」と話をすることが求められてくるのだと思います。
「やりたいこと」を求められるのは、結論から言うのが好ましいとされているからなんですね。
それに「ありたいすがた」タイプの人たちにとって、「やりたいこと」は抽象的なものを具体化したものなんです。コミュニケーションをとるときに、「ありたいすがた」を伝えても成立しない。だからわかりやすく伝えるために、具体的な形に落とし込んだ「やりたいこと」が必要になってくるのだと思います。
ということは、「ありたいすがた」タイプの人も「やりたいこと」は必要なのですね……。
そうですね。「やりたいこと」は必要ですし、誰もが見つけられます。
私も自分自身のことを「ありたいすがた」タイプだと思っているんです。「やりたいこと」が必要なのもわかりました。でも、どうしたら見つけられるのでしょうか。
結構簡単なんですよ。「ありたいすがた」を言語化し、それを「やりたいこと」に落とし込めばいいのです。
まず、「ありたいすがた」については自分の過去の中に答えが眠っているんじゃないかと思っています。
過去の中……? 具体的にどうしたらよいのですか?
まずはテーマごとに書き出すという作業が必要です。今までの楽しかったこと、許せないこと、辛かったこと……それぞれを書き出します。ブレストなので、ひたすら書いて広げていきます。
時系列じゃなくてよいのですね。
はい。次にそれぞれのエピソードに対して深堀りをすること。例えば、僕は音楽のライブが好きなので「好き」を掘り下げてみます。でもただ「ライブに行く」ことだけが好きなわけじゃないし、実は特定のアーティストじゃなくてもいいということがわかってきます。
なるほど。
僕にとっては、その場にいる人たちが、アーティストを通じて一体になっていることが大事なんですよね。
そこまで落とし込むと、「偶然に出会った人々が一体になることが好きなんだ」という共通点がわかるんです。なので、細かい個人的な感情まで具体化してあげることが2段階目になります。
このようにエピソードの中から共通要素を取り出していったら、「ありたいすがた」が出てくると思います。
ここで出てきた「ありたいすがた」を「やりたいこと」に変換するにはどうしたらよいでしょうか?
僕は最終的に5つのキーワードに落とし込んでいます。
5つのキーワード?
例えば僕の場合は、「自由・余裕・可能性・好奇心・構造理解」。この5つが大事で、それを満たすものは何かを考えて「やりたいこと」を探しました。
「ありたいすがた」から具体的なキーワードに落とし込んで、そこから「やりたいこと」を探すんですね。
そうですね、そのやり方がいいかと思います。ただし、「自由」と掲げるだけではぼんやりしてしまいますよね。自分が掲げる「自由」とは何か、定義しておく必要もあります。
なるほど。そうすると、「やってみたいこと」が何個か生まれる気がします。その中からどうやって「やりたいこと」を選び出せばよいのでしょうか?
僕がやりたいことを決めるときの軸として持っていたのが、「Seeds(シーズ)」と「Needs(ニーズ)」と「Wants(ウォンツ)」です。世の中のマーケティングの用語とはWANTSの言葉の使い方が少し違いますが。聞いたこと、ありますか?
シーズとニーズとウォンツ? 初めて聞きました。
かんたんに言うと、シーズは「自分ができること」、ニーズは「世の中から求められていること」、ウォンツは「自分がやりたいかもしれないこと」。僕は、この視点を利用して「やりたいこと」を決めています。
ふむ、ふむ。
「世の中から求められていること」は「世の中に対して感じている、自分の問題意識」とも言い換えられるかもしれないですね。この3点で選ぶと、きれいに決まります。
なるほどー!
要するに、自分が単純にやりたいのではなく、こんな力もあるし、世の中も求めている。さらに自分も「やりたいかも」と思えるなら完璧ですよね。この方法なら自分を納得させることができるし、世の中にも価値を与えられる論理になっている。そういう選び方ができるといいんじゃないかな。
シーズ、ニーズ、ウォンツ。この3点セットが大事なんですね。サイボウズの「できること、やりたいこと、やるべきこと」の3つに似ています。
世の中の就活本には「自分の提供価値と企業が何を求めてるかを組み合わせることが大事」、と書かれているのですが、自分のやりたいことを含めて記載されていることがあまりなくて、そこが問題だなと思っているんですよね。
たしかにそうですね。私もつい、貢献できそうなことや、会社で必要とされそうなことばかり探してしまって、自分の気持ちには目がいってませんでした。
このように考えて、教育事業のお仕事を選ばれたのですね。森さんの「偶然に出会った人々が一体になること」というありたいすがたと教育とでは、どんな共通点があるのですか?
誰かが偶然、なにかを生み出していく可能性の場を自分でつくるのって最高に幸せだな、と思ったんです。教育というシーンだと、そのクラスにいる人たちは、偶然その場にいるわけですよね。
そうですね。
例えば、その場にいるみんなが考え、新しい可能性を生み出していく。僕の働きだけで、「気づきがあった」と言われる。新しい出会いや可能性を作ってあげられるのが、僕にとってのクラスと言う場なんです。
なるほど。「ありたいすがた」から「やりたいこと」はこうやって見つけ出すのですね。非常に参考になりました!
最後に「やりたいこと」がなくて困っている就活生に、メッセージをいただけますか。
ひとつめは、「やりたいこと」にとらわれるのではなく、あなたはどうなったら幸せですかということをきちんと考えてほしいですね。ふたつめは、問題意識で安易にやりたいことを決めないでほしいと思います。
本日はどうもありがとうございました。やりたいことを見つける目的がわかったので、まずは自分の過去をふりかえることから始めてみます!
文:ミノシマタカコ/イラスト:山里 將樹
タグ一覧
SNSシェア
WEBを中心に執筆・編集・運用などを行っている。日本参道狛犬研究会会員。
この人が書いた記事をもっと読む