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「文化をつくるスキル」がないリーダーは、多様な働き方を実現できない

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業のリーダーやマネージャー
  • 働き方改革に興味があるビジネスパーソン
  • 多様性に基づく職場文化を築きたいと考える人
  • 人事担当者や組織開発の専門家
  • 経営者や企業のトップマネジメント層
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、読者はリーダーやマネージャーが働き方の多様化に対応するためには、既存の「均一性」を重んじる文化から「多様性を受け入れる文化」への転換が必要であることを理解できます。リーダーやマネージャーの役割は、全員を同じ方向に向かわせることではなく、個々の働き方の違いを尊重しながら、共通のビジョンや目標をチーム全体で追求することに変わります。

多様な働き方を可能にする制度を導入しても、それだけでは十分ではなく、それを支える文化が職場に根付く必要があります。そのためには、リーダーやマネージャー自身が多様な働き方を体現し、またその価値をチーム内外に繰り返し発信する必要があります。こうした努力により、チーム全体として「多様性」を重要な価値として認識し、内外にその文化を広めていくことが可能になります。

さらに、この記事では、多様性を重んじるチーム文化を築くために必要とされる「文化創造スキル」や「発信力」として、リーダーやマネージャーが文化を作り上げるためにどのように意識と行動を実践すべきかについても具体的な方策が示されています。

Text AI要約の元文章
カイシャ・組織

ブロガーズ・コラム

「文化をつくるスキル」がないリーダーは、多様な働き方を実現できない

サイボウズ式編集部より:チームワークや働き方に関するコラム「ブロガーズ・コラム」。先月、読者のみなさまからご相談を募集したところ、たくさんのお悩みが届きました(まだまだ募集中!)。届いたご質問やご相談をいくつか取り上げて、ブロガーのみなさまに回答していただきます。今回は、日野瑛太郎さんからの回答です。

ご相談内容


働き方の多様化に向けて、リーダーやマネジメントする側に求められるであろうスキルはどんなものでしょうか?(ミドリムシ/リーダー・マネジメント層)



今回の回答者:日野瑛太郎。ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。ブログはたちまち月間約50万PVの有名ブログになり、現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。

働き方の多様化で、リーダーやマネージャーの役割はどう変わるか?

「働き方の多様化」というキーワードを耳にする機会が、最近とても多くなりました。ニュースなどでも、リモートワークや時短勤務、転勤がなく仕事内容も変わらない限定正社員といった、メンバーがそれぞれの事情に応じて柔軟に働き方を変えるという話がよく取り上げられています。古い制度をなかなか崩すことができない会社も多いものの、中長期的な流れとして今後ますます多様な働き方が普及していくことは間違いないでしょう。

このような働き方の多様化という大きな流れの中で、リーダーやマネージャーにはどんなスキルが必要なのか、という今回のご質問は、今後の新しい働き方を考える上でとても重要な論点だと思います。働き方が変化すれば、当然リーダーシップのとり方やマネジメントの仕方も変化します。働き方の多様化に対応するために、リーダーやマネージャーはどんなスキルを身につける必要があるのでしょうか?

「違いを修正する」のではなく「違いを尊重する文化をつくる」

まず議論の前提として、働き方の多様化によってリーダーやマネージャーの役割がどのように変化するのかについて少し考えてみましょう。

働き方が多様化する以前、つまり全員が同じ働き方をしていた時代には、リーダーやマネージャーの役割は「全員に同じ方向を向かせ、チーム内の不公平をなくす」ことが中心になっていました。このような状況下では、他と違うことをしようとする人は排除されるか修正されます。

たとえば、家で仕事をしたいという社員がいた場合、リーダーやマネージャーは「みんな会社に来て仕事をしてるんだから、自分だけ勝手なこと言わないでちゃんと会社に来ようよ」と説得することが求められますし、「自分は週3日しか働けません」という人がいれば、「それじゃ他のメンバーに示しがつかないよ」と言ってチーム内の不公平を修正しにかかります。

一方、多様な働き方を肯定するチームの場合、リーダーやマネージャーの役割は「チームメンバー間の違いを尊重しつつ、全員に同じ方向を向かせる」ことに変化します。この場合、ビジョンや目標についてはチームメンバー全員に同じ方向を向いてもらう必要があるものの、仕事のやり方やコミットメントの差については修正するのではなく可能な範囲で尊重することになります。仮に、チーム内にそのような違いを不公平だと感じる空気が生じるのであれば、リーダーやマネージャーはその空気自体を変えていかなければなりません。

たとえば、リモートワークを実践しているメンバーを不公平だと思う人がチーム内にいるのであれば、「そのようなことを不公平だと思うべきではない」という考えを啓蒙することが求められます。チームメンバー間で仕事へのコミット量に差があったとしても、それぞれ事情はあるのだから受け入れようと全員が自然に思えるような空気を、チーム内に作っていかなければなりません。

新たなミッションは「多様性を受け入れる文化」をチーム内に根付かせること

つまり、働き方の多様化時代におけるリーダーやマネージャーの新たなミッションは、「多様性を受け入れる文化」をチーム内に根付かせることです。

取り組んでみるとわかりますが、これはかなり難しいミッションです。多様な働き方を実現するための制度を導入している企業は増えてきていますが、実際には制度があるだけで回っていないという企業も少なくありません。いくら制度としてリモートワークや時短勤務が用意されていても、チーム内にそのような働き方を尊重する文化がなければ、他のメンバーからの「あの人だけズルい」という指摘で容易に過去の画一的な働き方に戻ってしまいます。リーダーやマネージャーは、このようなことが起こらないようにチーム内の空気を変えていかなければなりません。

要するに、新時代のリーダーやマネージャーには「空気や文化をつくるスキル」が必要です。チーム内の雰囲気を良くするよう努めることは以前からリーダーやマネージャーの重要な仕事でしたが、働き方の多様化時代では単に良い雰囲気をつくるというだけでなく、「多様なことは大事な価値であり、多様性を犠牲にせずにチームは目標を達成していく」という考えをメンバー全員に啓蒙し、それが実践できるような環境をつくっていくことが求められるのです。

チームの内外に多様な働き方を「発信」していく力が必要

もっとも、「空気や文化をつくるスキル」と言っても漠然としすぎていてどういうものかイメージが湧きづらいと思います。多様性を重んじる空気や文化をつくる方法はそれこそ人それぞれいろんなやり方があり、唯一の正解があるわけではありません。そんな中で、僕が個人的に「空気や文化をつくる」ことに結びつきそうだと考えているスキルのひとつが「発信力」です。

「自分たちは多様な働き方を肯定するチームだ」というメッセージは、黙っていては伝わりません。リーダーやマネージャーがメンバーに折にふれて発信し、何度も何度も言葉を変えて伝えていくことでチーム内に浸透していきます。

また、発信はチームの内にだけでなく、チームの外に対しても行っていくべきです。チームの外に対して「自分たちの価値観」を示すことで、同じような多様性を重んじる価値観を持った仲間を集めることができます。

このようにチームの内外に対して自分たちのチームの文化を発信する力を持つことが、空気や文化をつくることにつながっていくのではないでしょうか。

リーダーやマネージャーが自ら実践してみせることも大事

また、多様な働き方を実現するチームのリーダーやマネージャーは、自ら多様な働き方を実践して見せることも大事です。

最近は企業の社長でも育休を取ったりする人が少しずつ出てきましたが、求められるのはまさにこのような行動です。リーダーやマネージャーが自らリモートワークや時短勤務を実践して見せることができれば、その下で働く他のメンバーも多様な働き方をする心理的な障壁が大きく下がります。ある意味では、これもひとつの「発信」の方法です。

多様な働き方が会社やチームに根付くかどうかは、リーダーやマネージャーの実際の行動にかかっている部分が少なくありません。働き方の多様化を単なる理想論で終わらせないためにも、ぜひリーダーやマネージャーはチームの内外にその価値を発信し続けてほしいと思います。

イラスト:マツナガエイコ

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2017年2月15日仕事への「フルコミット」を全員に求めていては、多様な働き方は実現しない
2017年2月22日成果を「労働時間」で評価する会社には限界がきている

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執筆

ライター

日野 瑛太郎

ブロガー/「脱社畜ブログ」管理人。著書に『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)などがある

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撮影・イラスト

イラストレーター

松永 映子

イラストレーター、Webデザイナー。サイボウズ式ブロガーズコラム/長くはたらく、地方で(一部)挿絵担当。登山大好き。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。

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