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Target この記事の主なターゲット
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- 家庭電化製品の購入を検討している人
- 延長保証の加入について考えている消費者
- 家電のメンテナンスやトラブルシューティングに関心がある人
- 家庭の家電製品の寿命や保証について理解を深めたい人
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Point この記事を読んで得られる知識
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この記事を読むことで、読者は電化製品購入時に勧められる延長保証の落とし穴について理解を深めることができます。まず、通常の製品保証は1年ですが、延長保証により3年、5年、7年といった期間での保証が得られる一方で、保証会社自体が倒産する場合があることがリスクであると説明されています。この記事では特に、筆者の体験談を通じて保証会社が民事再生法の適用を受け、保証が無効になった実例が紹介されています。保証会社が先に倒産してしまうことで、故障した製品の修理費用が自己負担になり、高額になることも指摘されています。さらに、現代の家電製品は技術的に複雑になったことで安定的な動作が難しく、小さなエラーが致命的な故障につながる可能性が増えていることも解説されています。つまり、高度化した家電製品の延長保証は、経済的な面だけでなく、その保証会社の信頼性も重要な考慮事項であることに注意する必要があります。
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Text AI要約の元文章
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tech
「延長保証」の落とし穴にハマる──コデラ総研 家庭部(65)
テクニカルライター/コラムニストの小寺信良さんによる「techな人が家事、子育てをすると」というテーマの連載(ほぼ隔週木曜日)の第65回(これまでの連載一覧)。今回のお題は「「延長保証」の落とし穴にハマる」。
文・写真:小寺 信良
店頭でもネットでも、電気製品を購入すると、延長保証への加入を勧められることがよくある。通常のメーカー保証は1年だが、それ以降の故障に備えて修理代金を負担してくれるサービスだ。購入時には数千円の保証料を追加で払うことにはなるが、3年、5年、7年といった期間で保証が受けられる。
買い換えサイクルの短い製品や、単価の安い製品なら、延長保証への加入はそれほどメリットがない。だがそこそこ価格が高いものは、できるかぎり長く使いたいと思うのは当然だろう。
さらに大型家電が故障したとなれば、気軽に修理に送るわけにもいかず、出張修理をお願いするしかない。そうすると出張費もかかってくるので、通常の修理よりもだいぶ高くつくことは間違いない。そういうときに延長保証に入っていると、出張修理であっても保証会社が負担してくれるわけだ。
修理し放題、とは言い過ぎだが、ちょっと調子が悪くなったらこまめに修理を頼めるのは助かる。そんなわけでうちでは冷蔵庫、エアコン、洗濯機といった大型家電は、延長保証に入ることにしている。
今年の1月、斜めドラム型の洗濯乾燥機が、きちんと乾燥できなくなってしまった。ユーザーがメンテナンスすべきフィルターはマメに掃除をしているのだが、それとは関係ないようだ。購入して2年半経過していたが、7年の延長保証に入っていたので、修理をお願いした。
修理はきちんとメーカーの人がやってくれるので、間違いはない。そのときは、分解しないと手が届かないパイプ部分にホコリが詰まっていたので、それをクリーニングして元通りの性能に戻った。
そこから4カ月後に、事件は起こるのである。
寿命が尽きる……
ある日を境にして、全自動コースで洗濯していると、すすぎのところでエラーを出して止まるようになってしまった。いつもタイマーを使って夜寝ている間に洗濯しているので、途中で止まってもすぐには気がつかない。ずっとエラーを出したままで朝を迎え、起きてきたら洗濯ができていないという状況である。
エラー番号によると、給水不足だという。だが水栓は開いており、洗濯までは普通に給水できる。すすぎだけをやらせてみると、きちんと給水はしているものの、いつまでも水が内部に溜まらず、どんどん排水溝から出ている。何かのエラーで、ドラム内の排水弁が閉じられなくなっているようだ。
たまにうまく動くときもあるのだが、それでは困る。もう一度延長保証会社に連絡して、修理を依頼することにした。ところが、何度電話しても話し中でちっとも繋がらない。2日ほど粘ったのだが、何かおかしいと思い、延長保証会社の名前をネットで調べたところ、なんと4月に民事再生法の適用を受けていることが分かった。製品よりも先に、保証会社の寿命が尽きてしまった。
負債を引き受けて事業を継続する会社が現われれば別だが、一般的にはこのまま倒産と考えていいだろう。事業も当然中止されており、2020年まであった延長保証がパーになってしまった。自腹で出張修理を頼むといくらになるのか、サイトで調べてみたところ、3万円から4万円かかるという。これはイタい。
そもそも延長保証会社のビジネスというのは、掛け捨ての保険のようなものだ。先払いで保険料を支払い、延長期間の間に修理がなければ、保証会社の丸儲けである。だが出張修理が多い製品が出れば、それだけ修理費は保証会社持ちとなる。
経済紙の分析によれば、家電量販店での売上の減少により、延長保証の売上が減ったと見ているが、実際にはネット通販のほうに延長保証ビジネスが移っただけで、数としてはそれほど変わっていないのではないかと思われる。
そうではなく、今の家電はモーターやコンプレッサーをゼンマイタイマーで動かすようなシンプルなものではなく、様々な機能をセンサーを使ってマイコン制御するものに変わっており、それだけ長期に渡って安定動作するのが難しくなってきているのではないか、というのが筆者の見方だ。すなわち、センサーの汚れなどによる小さなエラーが、機器が誤動作する、止まるといった致命的なエラーを引き起こすようになってきており、それだけ修理する機会が増加してきているということではないだろうか。
出張修理が頻発すれば、それだけで数万円が飛んでいくわけであり、家電1台あたり5000円程度を徴収するような保証会社が耐えられなくなるのは当然だ。ただそうは言っても、保証製品よりも保証会社のほうが寿命が短いというのでは、シャレにならない。延長保証会社は購入時にいくつかの候補から選べるわけでもなく、消費者には選択権がない。このような形で消費者に不利益が発生する仕組みというのは、どう考えてもマズいだろう。
とはいえ、最近はメーカーでさえ、いつまでもあるとは限らない状況になってきている。シャープや東芝の白物家電は、いつまでメーカー保証が得られるだろうか。国が老いるとはこういうことなのだなぁと、実感させられる。(了)
本連載では、読者の皆さんからの、ご意見、ご質問、取り上げてほしいトピックなどを、広く募集しています。編集部、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)
この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
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