サイボウズ株式会社

ここまで見せていいの?──サイボウズの「給与評価」と「キャリアパス」の裏側を、人事が赤裸々に語る

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 人事担当者
  • 経営者
  • 企業文化に興味がある人
  • 給与体系に関心のある社員
  • キャリアパスについて考えている人
  • 柔軟な働き方を目指しているビジネスパーソン
Point この記事を読んで得られる知識

サイボウズは多様な働き方をサポートし、社員の給与は市場価値を基準に決定しています。市場価値の測定は転職支援会社のデータや前職の給与情報を活用し、社内価値も加味して行われます。市場価値の正確な測定は難しいため、社員には給与交渉の機会が与えられ、自分の価値を主張することが推奨されています。

また、キャリアパスに関しても決められた出世コースは存在せず、社員は自分の希望に基づいてキャリアを選択します。社内では「やくわリスト」と呼ばれる社内求人票のような仕組みがあり、他部署の仕事をお試しで体験できる「大人の体験入部」や、異動希望を表明できる「Myキャリ」という制度があります。これにより、社員は自分のキャリアを積極的に構築することができます。

サイボウズではこのような制度運用をクラウドサービス「キントーン」で効率よく管理しており、一人ひとりの希望に応じた柔軟な対応が可能です。結果的に、社員の自立を促し、個別のニーズに応じた働き方を可能にしています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

サイボウズのつくりかた

ここまで見せていいの?──サイボウズの「給与評価」と「キャリアパス」の裏側を、人事が赤裸々に語る

一人ひとりに合わせた、多様な働き方を実現しているサイボウズ。しかし、こんなに働き方が自由だと「社員の給与はどうやって決めているの?」「もしかしてキャリアパスも自由なの?」という疑問が浮かび上がります。

サイボウズの給与は市場価値というけれど、正確な市場価値なんて人事は分かっているのだろうか──。今回はサイボウズの「給与評価」と「キャリアパス」の裏側について、人事部 マネージャーの青野誠さんにお話を伺いました。「ここまで見せてしまっていいの?」と焦るぐらい赤裸々な給与決定のリアルをお届けします!

サイボウズの給与は「市場価値で決まる」と言うけど、どうやって測っているんですか?

サイボウズで人事マネージャーを担当されている、青野誠さん

多田
サイボウズ式の「エンジニアが給与交渉した話」の記事を読みました。

サイボウズでは、一般的な企業でよく見られる「給与テーブル」がなく、社員の給与は「その人の市場価値」で決まるんですよね。
青野
はい。働き方が多様化しているので、いわゆる一律の職級やグレードはなく、給与モデルもありません。シンプルに「あなたが転職したらいくら?」という市場価値で給与が決まります。
多田
市場価値を測るのは難しそうですが、どうやって給与を決定しているのでしょうか?
青野
世の中の転職支援会社のデータや、サイボウズへ中途入社した人の前職年収や年齢のデータを活用して算出しています。
青野
例えば「”30代・東京勤務のエンジニアで○○のスキルがある人”であれば、だいたいこの金額レンジだな」という相場があるんですね。そのレンジの中で、社内価値も加味して給与を決めています。
多田
金額のレンジはデータを活用すれば、ある程度の相場はわかるものなのですね。

ただ社員の方からすると「これがあなたの市場価値です」といきなり給与を告げられても、あまり納得感がないのでは……? というか、市場価値なんて正しく測定できるものなのでしょうか?
青野
いい質問ですね。究極のところ、正確な市場価値なんて測れないと思っています。
多田
えっ、どういうことですか?
青野
例えば目の前にお皿があったとします。値札が貼られていないお皿です。あなただったら、それを買おうと思いますか?
多田
うーん、値段がわからないから判断できないですね……。金額に見合っていたら買うだろうし、高すぎたら買わないし。
青野
そうなんです。売り手が商品に値段をつけないと、商品を買いようがないですよね。給与もそれと同じなんです。

市場では「私はこの値段で売りたい」「私はこの値段で買いたい」が一致したときに、取引が成立します。なので言い換えると、給与額に納得いかない場合は「私の価値は○百万円だと思います。理由は~」と交渉をしないと、給与を上げるチャンスを手にできないということです。
多田
自分が売りたい価格を主張しないと、そのままの値段で買われてしまう……。たしかにそうですね。

サイボウズ式の記事では、給与交渉したエンジニアの話が話題になっていましたが、給与交渉する人は最近増えているのでしょうか?
青野
増えていますね。「転職サイトに登録したら年収700万円の価値があると診断されたから、もっと給与を上げてほしい」など、その面談で希望を言ってもらっています。

中には「この年収にならなければ転職します」と強気な交渉をする人もいますね。
多田
信じられない光景ですね……。

サイボウズでは、みんなが給与交渉できるようになってほしい

多田
ただ、いくらサイボウズが自立を大事にしているといっても、自分の希望を声に出して言えない人もいるのではないでしょうか。また、全員が全員給与交渉するようになると、人事マネージャーの青野さんも困るのでは……?
青野
逆ですね。最終的には全員が給与交渉できるようになってほしいと思っていて。昨年からは、マネージャーから全社員に希望給与額を聞くようにしています。給与だけではなく、希望する働き方などもあわせて聞いていますね。
多田
全員が給与交渉……。
青野
よく若手メンバーだと自分の市場価値がわからなくて「給与は、まあ上がればうれしいです……」と具体的な金額を言わない人も多いのですが、そういうところも含めて自立してもらいたいんです。
多田
入社時から「自分はいくらなのか」を考えさせられる……。とてもシビアですね。ちなみに、給与額に納得できない場合は声を上げることもできるのですか?
青野
もちろんです。納得いかなければ人事の説明を求めることもできます。あまりないのですが、「もし揉めれば柔軟に考える」という姿勢は徹底しています。

社員が働き方を変更するのもしょっちゅうなので、決めたことを柔軟に変えるということには慣れていますよ(笑)。

給与も100人100通りって、運用は大変じゃないんですか?

多田
でも給与グレードがなくて、実際の給与も100人100通り。給与交渉してくる人もいるとなると、社員一人ひとりの給与を決めるのにもいちいち工数がかかって大変なのではないでしょうか?
青野
そこはクラウドサービスのキントーンを使って管理しているので、全く問題ないですね。例えばこれは、入社する社員のお給与を決めるアプリです。
多田
給与を決めるアプリ……!
青野
キントーンなら、内定した社員の給与額をどうするかをコメント欄で相談したり、給与額が決まったらすぐに関係者に共有したりすることができます。

コメント欄で、人事部長に合意をとったり総務に手続きの連絡をしたりできるので、会議を開かなくてもオンラインで意思決定できるんですよね。
多田
給与額を決めるのがオンラインなのが驚きです。ということは、来期の給与を決めるアプリなんかもあるんですか?
青野
もちろんです。「来期はその人の年収をいくらにするのか」とか、「本人の報酬に対する希望」といった情報も、全部キントーンにデータとして溜めています。
多田
ここまで見てしまっていいのだろうか……(笑)「そんなに給与は高くなくてよい」というコメントもあるんですね。
青野
そうなんです。「報酬」の形にもいろいろあります。みんながみんな、お金が欲しいわけじゃない。給与を第一優先とする人もいるし、「給与はそこそこでいいから、楽しく働きたい」「柔軟に働きたい」という人もいます。
多田
たしかに、お金だけが「働く報酬」ではないですもんね。この100人100通りの報酬制度を支えているのが、キントーンというわけですね。
青野
そうですね。最近では社員がより希望の給与を言いやすいように、給与希望アプリも作っています
多田
さきほど「全員に給与交渉してほしい」とおっしゃっていましたが、まさにそのメッセージがあらわれていますね。でも、これ全く関係ない部署の人に見られたら困るのでは……?
青野
キントーンはアクセス権を柔軟に設定できるので、給与アプリの内容はマネージャーと人事部しか見られないようになっています。
多田
なるほど、セキュリティも担保されているんですね。
青野
社員の希望を一人ひとり聞いて、市場価値に応じた給与を決める。エクセルや紙でやっていたら大変なことになりそうですが、キントーンなら自分たちでさくっとシステムを作れて関係者とすぐに共有できるのでそんなに苦労はしていないですね。

自立、自立というけど、社員のキャリア育成はどう考えているんですか?

多田
先ほどのお話で、サイボウズでは徹底的に自立を重視していることがわかりました。

社員のキャリア育成についてはどうお考えですか? それもまさか「自分で考えてね」という感じなのでしょうか。
青野
サイボウズではいわゆる「決められた出世コース」のようなものはないので、キャリアについても基本的には自分で考えてもらいたいですね。ただ、社員がキャリア選択しやすような仕組みも整えています。

その一つが「やくわリスト」です。
多田
「やくわリスト」……?
青野
「やくわリスト」は社内の求人票のようなもので、メンバーを募集している部署をキントーン上で簡単に見ることができます。
多田
ここをチェックしていれば、目当ての部署が人を募集しているかわかるんですね!
青野
はい。またやりたい仕事を考える機会として、他部署の仕事を一定期間お試しで体験できる「大人の体験入部」という制度も設けています。
青野
異動先を検討する目的で申し込む人もいれば、「異動したいわけじゃないんだけど、今の業務に活かすために他部署の動きを知りたい」という理由で体験入部を希望する人もいます。
多田
なるほど。ただ、大人の体験入部は他部署との調整が大変そうですね……。だいたいどれくらいで体験入部が実現されるのですか?
青野
体験したい部署の内容にもよりますが、早い人だと登録したその日のうちに承認されて、次の日には体験入部を開始している場合もありますよ
多田
次の日に体験入部できる人も……! なぜそんなに早く調整を進められるのでしょうか?
青野
体験入部の受付も、実はキントーンで行っています。キントーン上には隣にコメント欄がついていて、他部署のマネージャーとのやりとりもこちらで完結させればいいので、わざわざ会議を開かなくても調整がつくんです。
多田
そういえば先ほどの内定者のお給与を決めるアプリでも、キントーンのコメント欄で関係者に確認をとっていましたね。
青野
そうです。マネージャーといってもみんな出社時間が違うし、在宅勤務をする人もいるので、基本的にやりとりはキントーン上で済ませてしまうことが多いですね。

キントーンだと体験入部の進捗具合が「他部署の承認待ち」なのか「体験入部の実施待ち」なのかステータス管理できるので便利です。
多田
効率的だ……。

行きたい部署は自分で宣言する!Myキャリ制度

多田
仮に、体験入部を経て「実際にその部署に異動したい!」となった場合はどうするんですか? 「サイボウズでは部署異動がしやすいのか」も気になるところです。
青野
「Myキャリ」という異動の意思表示ができる制度があります。これがキントーン上にある「Myキャリ」アプリです。
青野
「どんな部署に行きたいか」「どれくらいやりたいか」「いつ行きたいか」を入力できるようになっていて、「いつ行きたいか」に関しては「1年以内、3年以内、いつか」から選べるようになっています。

なお、このアプリは全社公開になっていて、誰がどんな部署に行きたいかは誰でも閲覧できるようになっています。
多田
自分の希望するキャリアが全社に丸見えなのはすごいですね。
青野
はい。社員のやりたいことを、上長だけでなく多くの人に認識してもらいたいのでオープンにしています。サイボウズの社風であれば、他人の目が気になって書きづらいということもないんじゃないでしょうか。
多田
なるほど。
青野
そして、この選択肢を「ぜひやりたい」「1年以内に行きたい」にすると……。
青野
緊急案件として関係するマネージャーと人事が集まり、すぐに異動希望を実現できるか会議を開くことになっています。そして結果は異動の実現可否に関わらず、必ず本人にフィードバックするようにしています。
多田
それは本人にとってもうれしいですね。異動希望が通らない場合もあるんですか?
青野
もちろんあります。今いる部署が「今、この人に抜けられたら困るんだけど……」という状態だったり、異動先の部署がまだ受け入れ体制が整っていなかったり。

そういう場合は本人の意向で「社内兼務」する人も増えていますね。法務とエンジニアを兼務している人や、営業とマーケティングを兼務している人もいます。

ただ社内兼務が増えるとより市場価値を測るのが難しくなってくるので、それはそれで悩みどころですね(笑)。
多田
たしかに「法務とエンジニアを兼務している人」の市場価値を測るの難しそうですね……。キャリアパスも多様だからこその課題ですね。

ウォーターフォールから、アジャイル型の人事へ

多田
サイボウズでは一律の給与グレードやキャリアパスがあるわけではなく、給与額や異動したい部署までも本人が自由に宣言する仕組みがあることがわかりました。働き方だけでなく、給与やキャリアパスも100人100通りなんですね。
青野
そうですね。サイボウズでは「あなたはどうしたいの?」という問いを大事にしています。もちろんすべての希望が実現できるわけではないですが、社員一人ひとりが気持ちよく働けるように、できる限りのことはしたいです。
多田
それを裏で調整されている人事もすごいなと思いました。サイボウズ人事の特徴を一言であらわすとしたら、何ですか?
青野
アジャイル型人事ですね。きちんと担当を決めて、綿密な計画を練るというよりは、「まずはやってみる」「早く実行して改善する」ということを大事にしています。
青野
例えばリモートワークも今は当たり前にやっていますが、最初は「在宅勤務制度(仮)」という(仮)つきの制度からはじまったんです。

綿密にプランを立てていると懸念事項がたくさん出てきて進まないことも多いのですが、サイボウズでは「まずは運用してみて、アップデートしていく」を大切にしている気がしますね。
多田
なるほど。常にアップデートし続けられるためには、どのようなことが必要だと思いますか?
青野
今のやり方にとらわれず、常に変化していく覚悟を持つこと。そして自分たちでやりたいことを実現できるツールを持つことですね。

私たちの場合、それがキントーンです。「大人の体験入部やりたいね」「じゃあ受付システム作ろうか」という感じで、情シスに頼まなくてもすぐに自分たちの作りたいシステムを作れる。これが、私たち人事がすぐに新しい取り組みを始められる理由だと思います。もうこれがない人事生活には戻れないですね。
多田
柔軟な姿勢とツールで、今の人事制度が運用されているということですね。ありがとうございました!
執筆:多田慎介 / 撮影:内田明人 / 企画編集:熱田優香
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執筆

ライター

多田 慎介

1983年、石川県金沢市生まれ。求人広告代理店、編集プロダクションを経て2015年よりフリーランス。個人の働き方やキャリア形成、教育、企業の採用コンテンツなど、いろいろなテーマで執筆中。

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撮影・イラスト

写真家

内田 明人

主に人物撮影を中心に活動をしており、会社案内、社内報、人材採用広告等の経験が豊富です。

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編集

編集部

熱田 優香

1993年生まれ。サイボウズ製品の価値をおもしろいコンテンツとともに伝えるプロモーションに挑戦中。

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