この人が書いた記事をもっと読む
サイボウズって本当にいい会社ですか? 組織コンサルタントが社会人インターンとして潜入してみた
-
-
- 企業の人事担当者
- マネジメントに関心のあるビジネスパーソン
- 組織運営に携わる経営者
- 働き方改革に興味がある個人
- サイボウズ社に関心のある求職者
-
-
この記事を読むことで、読者はサイボウズ社の組織運営や会社文化についての具体的な知識を得ることができます。社会人インターンとしてサイボウズに参画した組織コンサルタントが、サイボウズを「理想的な普通の会社」と評価した理由を明らかにし、会社の運営がいかに合理的であるかを説明しています。特に、組織の進化モデルを使ってサイボウズの進化段階を評価し、同社が合理的な運営をしつつも創造性を発揮できる余地を残している点が指摘されています。
また、サイボウズの情報共有の度合いや、ヒエラルキー構造に工夫を凝らした独自の組織運営を学ぶことができます。具体的には、ヒエラルキー型でありながらも、縦横の交流を重視したマトリクス組織として機能していることが挙げられ、組織内でのコミュニケーションや調整がどのように行われているのかを知ることができます。
さらに、サイボウズが重視する「公明正大」という考え方や、社内での「質問責任」の文化についても取り上げられ、これがどのようにして会社内の透明性と信頼性を維持しているかを理解することができます。それにより、サイボウズのような組織が持つ運営の特徴を他社と比較し、どのように自社の運営に応用できるかの視点を得ることができます。したがって、この記事は組織運営や働き方に関心のあるビジネスパーソンにとって、実践的かつ参考になる内容を提供しています。
-
-
サイボウズ
サイボウズって本当にいい会社ですか? 組織コンサルタントが社会人インターンとして潜入してみた
滝口健史(たきぐち・たけし)。組織コンサルタント。株式会社日経リサーチに入社後、ワークライフバランスやマネジメントに関心をもち、早稲田大学ビジネススクールに進学。事業企画や組織論などを中心に学ぶ。株式会社スコラ・コンサルトに入社後はリサーチ部門の運営やワークショップ開発などを担当。2017年より社会人インターンとしてサイボウズに参画。現在、育児休暇を取得中。
滝口 健史サイボウズっておもしろい会社ですよね。いろいろ研究してみたいんですよ。藤村 能光じゃあ、社会人インターンとしてサイボウズに潜入して、サイボウズを分析、調査してみてはどうです?滝口 健史え、いいんですか。では、ぜひ!世間で「いい会社」と言われることもあるサイボウズ。しかし、それは本当なのでしょうか? そもそも「いい会社」ってどんな会社?
普段さまざまな企業の分析をしている組織コンサルタントの滝口健史が、サイボウズに社会人インターンシップとして参加。2017年5月から10月までの間で、9つの会議に参加、20人の社員にインタビューをして、「本当にいい会社なのか」を調査してみました。その結果について、サイボウズ式編集長の藤村とディスカッションします。
「サイボウズに潜入して、本当にいい会社なのかを見極めてみませんか」
藤村 能光数カ月にわたる社会人インターン、お疲れ様でした!滝口 健史藤村さんから「サイボウズで社会人インターンをしてみませんか?」と言われたときは驚きましたが、やってみてよかったです。藤村 能光滝口さんは、サイボウズ式とダイヤモンド社の企画「ハーバード・ビジネス・レビュー読者と考える『働きたくなる会社』とは」に参加したんですよね。滝口 健史はい。まさかその縁で、サイボウズに潜入調査をすることになるとは……。藤村 能光実際に潜入して、数カ月間サイボウズを見ていただいた結果、「いい会社」でしたか?滝口 健史結論から言うと「理想的な普通の会社」でした。藤村 能光「理想的な普通の会社」……?サイボウズは合理的な運営だが、創造性は発揮できていない? そもそも「いい会社」とは
滝口 健史では、その結論を出した調査について説明します。わたしが普段企業を分析する際に使っているのが、「組織の進化モデル」というフレームです。組織の進化の段階を見立てるフレームワーク。社員が本来もつ創造性を発揮しながら環境変化に適応し、自ら変化を生み出せる組織を「いい会社」と定義している。3つの組織に分類するというよりも、各要素がどう配分されているかを見ることが目的
滝口 健史このフレームは、会社がどういうレベルにあるかを、目指している姿や組織の構造、コミュニケーションの特徴などから明らかにするもので、インタビューやアンケート結果を参考に診断しています。
潜入前のわたしの見立てでは、サイボウズは「合理的組織」以上のレベルにはあるだろうとは思っていました。仕事においては本質的に必要なことを効率よく進め、会社としては社員を大事にしている印象があったためです。藤村 能光ふむふむ。滝口 健史一方で、新しいものを生み出す「創造性」をどれほど発揮できているのかが、気になっていました。調査して得た情報を整理した図がこれです。経営システムを見る4つの視点(ビジョン、戦略・製品、仕組み、風土)。各視点のレベル感や全体の整合性から組織の進化段階を判断している。
滝口 健史サイボウズはここ10年くらいで、「チームワークあふれる社会」のビジョンを達成するために、戦略を実行し、制度を整えてきました。大事にすべき風土作りも徹底されています。
この実態から、合理的組織として好循環になっていると感じました。藤村 能光まずは「合理的」という点は予想通りですね。滝口 健史はい。そして「創造性」については、サイボウズのメンバーの全員が大きな事業提案や戦略づくりに長けているという感じではないのかもしれないと思いました。
そういうことをリードできる人がいつつ、そのほかのいい意味で「普通の人」がまじめに形にしていっている感じかなと。藤村 能光ああ、そうかもしれません。滝口 健史大きくなっていく企業としては、とても参考になる事例だと思います。ただ、各所のリーダーによる牽引型ではなく、対話型で創造することはまだできる余地がまだまだ残されているのではないかとも思います。
自分の担当する仕事をきっちりやりつつ、それぞれの仕事の中で創造性を発揮している人が多いのかなと思いました。イメージと違う? サイボウズの組織構造はフラットではなく、ヒエラルキー
滝口 健史ここからは、潜入してみて意外だったことをお話しようと思います。
それは、サイボウズの組織構造がヒエラルキー(階層型)組織だったことです。なんとなく、階層のないフラットな組織で、おのおのが自由にやっているイメージがありました。藤村 能光働きやすい会社というイメージが、その印象を持たせているのかもしれません。滝口 健史たしかに。そしてサイボウズでは、ヒエラルキー構造は若干アレンジされていました。
通常のヒエラルキー構造では、縦割り組織として仕事が進み、指示は上から下へと降りることが多いです。
ですが、サイボウズでは、グループウェアの開発やマーケティングは、開発やマーケティングを超えた部署、すなわちチームで取り組むことが多いと感じました。藤村 能光「人材育成や評価」は部署といった縦のライン、「グループウェアの開発やマーケティング」は部署を超えた横のラインで実行されています。滝口 健史その縦横のラインを示したのがこちらです。サイボウズのヒエラルキー構造。一般的な階層型組織とは違い、横のラインでのやりとりもあり、マトリクス組織の要素が含まれている
滝口 健史階層型の組織の中で、日々の仕事上の問題を解決する場合は、開発PM(開発の責任者)と販売PM(営業・マーケティングの責任者)がすり合わせながら結論を出しているとお聞きしました。この独特な組織構造が「サイボウズらしさ」を作っていますね。
もし、ほかの企業のヒエラルキー構造と同じように事業部制や製品別の縦のラインだけで問題を解決しようとする場合は、上位から統制する面が強くなるはずです。藤村 能光サイボウズは、横のラインの調整機能を働かせることで、運営が独裁にならないようにしているんです。サイボウズの上司は、直属の部下を超えて現場に口出しをしない
滝口 健史その点では、サイボウズの上司って、直属の部下を超えて現場に口出しをしないことが多いと感じました。
これがちゃんとできている企業って、意外と少ないんですよ。藤村 能光そうですね。社長の青野も、指揮系統を飛び越えて現場に指示を出すことはないです。滝口 健史サイボウズでは、より上役の位置にいる方ほど「自分の役割は、組織の方向性を示すことやメンバーのキャスティングである」と明確に認識しているように感じました。藤村 能光ほかの企業では違うんですか?滝口 健史上役が直属の部下を飛び越えて、直接指示を出すことで、現場の混乱につながっている例も結構ありますね。藤村 能光そういうことが起こり続けると、飛び越えられた中間管理職は、自分の持っている権限や責任がどこまでなのかあいまいになってしまいますよね……。滝口 健史サイボウズの場合は縦のラインがしっかりありつつ、一方向的な指示ではなく、双方向的なやりとりの機会を作っているので、部下から上司に相談しやすくていいなと感じました。インターンにこんなことまで見せていいの? 驚きの情報共有度
滝口 健史潜入して驚いたのが、サイボウズの情報共有度の高さです。藤村 能光自社のグループウェア「kintone」や「Garoon」ではあらゆる情報が共有されていて、全社情報のほとんどにアクセスできますね。滝口 健史「各チームのプロジェクトや経営に関する情報など、こんな情報も見させてもらえるのか」と思うくらい、インターンのわたしもかなりアクセス可能な状態でした。
この情報共有度の高さは、サイボウズが大事にしている「公明正大」という考え方に基づくものですよね。藤村 能光はい。その例として、社長の青野はよく「アホはいいけど、ウソはダメ」と言っています。滝口 健史なんですか、それは。藤村 能光例えば、二度寝して遅刻するときには、それをごまかさずに共有しようという考え方ですね。嘘をつかないで公明正大を貫くと、チームメンバーから、二度寝しない方法をアドバイスされたりするんですよ。滝口 健史正直に報告すれば、失敗を責められるのではなく、改善するためのヒントを得られるということですね。藤村 能光はい。滝口 健史サイボウズでは公明正大さを担保することで自浄作用がはたらくので、他社のような隠蔽や不祥事は起こりにくいでしょうね。
もう1つおもしろいと思ったのが「質問責任」です。「説明責任」という言葉は耳にしますが、「質問責任」はサイボウズで初めて聞きました。藤村 能光情報を受け取るだけではなく、誰にでも質問する責任があるという考え方です。何か問題や疑問があれば、自分から質問をして、説明をしてもらって、その問題にかかわらなければいけません。滝口 健史おかしいと感じたことがあれば問い直して、よい状態にしていく参画者としての義務があるということですね。2017年2月21日理不尽を受け入れること──質問責任と説明責任が大事 潜入調査したコンサルタントはどう感じた? サイボウズの現状
藤村 能光ここまでの分析をまとめると、サイボウズってどんな会社でしょうか?滝口 健史こんな感じです。統制と自由のバランス
統一的な目的・ビジョンに邁進しています。意外と統制的な要素もありますが、自由でいいところは自由にしてあり、個人や部署ごとのやり方に任されています。結果的にはバランスが良く、社員の人たちも「仕事の中で自分の色を出せる」と肯定的に受け止めているようです。
「自己革新力」がある
公明正大が重視され、グループウェアを使って事実を表に出す習慣があります。議論の中では目的(ビジョンや理想の姿)が問われます。問題があっても自浄作用が働くので、自ら解決する「自己革新力」がある組織です。滝口 健史サイボウズは、目指している姿に対して、組織の運営、必要な人材の整合性が取れていると感じました。藤村 能光冒頭で滝口さんがおっしゃった「サイボウズは理想的な普通の会社」という点はどうですか?滝口 健史それはですね……。(つづきます)
2018年2月22日アクセルを踏みたい社長とブレーキを踏みたい副社長──かみ合わなかったふたりは今、「会社さんなんていない」と思っている 執筆:滝口健史 撮影:橋本美花 編集:田島里奈/ノオト 企画:藤村能光
2018年2月13日サイボウズが「ゆるくても勝ってしまう会社」の実例になってほしい──組織コンサルが社会人インターンで感じたこと 2016年3月18日「転職したらいくらで給料を決める」は通過点──「働きたくなる会社」をサイボウズの人事制度から考えてみたら 2016年4月 8日「働きがいより個人の生きがい」を大事にする会社の方が、イノベーションは起きやすいのか? 2016年4月27日会社の果たすべき責任は、会社がなくなっても個人が生きていけるようにすること──誰もが「働きたくなる会社」は存在しない SNSシェア
- シェア
- Tweet
執筆
撮影・イラスト
写真家橋本 美花
主に人物写真を撮らせていただいているカメラマンです。お仕事以外では海外へ行ってスナップ写真を撮ることが大好きです。自転車に乗りながら歌うことも好きです。
この人が撮影した記事をもっと読む
編集
ライターー
この人が編集した記事をもっと読む