サイボウズ株式会社

海外でも「会社という存在に対する疑問」はあるのか? サイボウズ式がグローバル向け発信をはじめる狙い

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業経営者
  • マーケティング担当者
  • グローバル展開を目指す企業の担当者
  • 組織文化に興味がある人
  • 働き方改革に関心がある人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を通じて、サイボウズがグローバル展開に際して直面している課題や、それに対するアプローチについて知ることができます。サイボウズは、日本の企業文化とは異なるアプローチを持つ企業で、特にチームワークを中心にしたボトムアップの組織文化を強調しています。アメリカ市場での競争が激しい中、製品単独ではなく、企業の理念や文化をアピールすることが重要であると考えています。さらに、サイボウズが目指すのは、多様性ではなくそれぞれの個性を重視する「Individuality」に基づいた社会で、これはすべての従業員が自分のやりたいことを追求し、チームに貢献するという考え方に基づいていることが伝わります。記事では、スイス出身のアレックスがサイボウズに加わり、グローバルな視点から企業の理念を英語圏に広めようとしている様子も描かれています。そして、サイボウズが海外進出においてどのように社内のメッセージを発信するか、また多様なアイデアを取り入れることの重要性も強調されています。最後に、企業の存在意義を問い直すような記事を作成し、世界中の人々とのコミュニケーションを図ろうとしていることが示されています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

海外でも「会社という存在に対する疑問」はあるのか? サイボウズ式がグローバル向け発信をはじめる狙い

サイボウズ式では今後、全世界へ向けて英語記事や、海外の事例や専門家を取材した記事を積極的に発信していくことになりました。サイボウズは現在、キントーンをアメリカ市場で展開すべく奮闘中。そこで自社メディアであるサイボウズ式でも、私たちの思いを伝えていきたいと考えています。

そのためのキーマンとして編集部に加わったのが、スイス出身のアレックス。スイス外務省と慶応義塾大学職員を経てサイボウズに入社した、異色のキャリアの持ち主でもあります。

サイボウズ式はこれから、世界へ向けてどんなメッセージを発信していくのか? アレックスとコーポレートブランディング部長の大槻幸夫(サイボウズ式初代編集長)の2人で、ざっくばらんに語り合ってもらいました。

スイスではサイボウズの名前を聞いたことがなかった

大槻
最初にアレックスからの応募書類を見たときは、そのキャリアに驚いたんですよ。

アレックス
そうですか?

大槻
スイス外務省から大学職員を経て……。労働政策について関わってきた経歴があり、それは僕たちが扱うことの多い働き方というテーマにも通じると思ったんですよね。

あと、実際に会ってみたら「日本人と話しているのかな?」と思うくらいコミュニケーションが自然でした。日本語はとても上手だし、謙虚さと落ち着きがあって会話もしやすいし。

大槻 幸夫(おおつき・ゆきお)。サイボウズ株式会社 コーポレートブランディング部長。「サイボウズ式」の初代編集長。

アレックス
とんでもない。日本語はまだ上手だとは思えないです……。

大槻
「謙虚」って、まさにそういうところですよ(笑)。

ちなみに、スイスを出て日本に行くことはいつ頃から考えていたんですか?

アレックス
アニメの影響で、子どもの頃から日本に興味を持っていました。学生時代に日本から来た留学生と友だちになったり、スイス外務省時代には日本の外務省の方と接することがあったり。

それでさらに興味を持ち、旅行で何度か実際に日本を訪れる中で「ここに住んでみたいな」と。外務省を辞めて日本へ来たんです。

Alexander Steullet(通称アレックス)。サイボウズ式のグローバルコンテンツ担当として、2018年11月にサイボウズへ入社。 ソ連生まれ、スイス出身。

大槻
サイボウズへ応募した理由は何だったんですか? 外務省も大学職員も、割とパブリック寄りの職務経歴だと思うんです。サイボウズは随分と文化の違う組織だと思いますが……。

アレックス
はい、こういう会社は初めてです。正直に言うと、お世話になっていたエージェント会社のリクルーターさんに勧められて、初めてサイボウズを知ったんです。スイスではサイボウズの名前を聞いたことがなくて。

大槻
そうでしょうね(笑)。

アレックス
もともと希望していたのは日本の大手企業だったんですが、ただ日本語を翻訳するだけではなく、自分で記事を書いて発信するような仕事もしてみたいと思っていました。

そんなときにリクルーターさんが、「サイボウズにはコーポレートブランディングでオウンドメディアを手がける部署がある」と教えてくれたんです。

サイボウズは早く、世界レベルでの会話に参加すべき

アレックス
サイボウズはなぜ、海外でのブランディングを強化しようと考えたんですか?

大槻
サイボウズはアメリカに現地会社の「Kintone Corporation(サイボウズアメリカ)」を立ち上げ、副社長の山田が社長となってキントーンの展開を進めています。

ただ、アメリカはITの本場だけあって競合がとても多いんです。キントーンと同じカテゴリーの製品が毎週1つは誕生しているような印象です。

アレックス
非常にスピード感があり、厳しい市場だと。

大槻
製品プロモーションも大事ですが、それだけでは差別化しきれないと感じていました。

それでは、僕たちは何を売りにするべきなのか。考えた結果、サイボウズの理念や文化をアメリカでも伝えていくべきだと思ったんです。

アレックス
「チームワークあふれる社会をつくる」という理念ですね。私がサイボウズを知ったときも、この理念が強く印象に残りました。

大槻
アメリカ製の製品はトップダウンなところがあって、マネジャーが「みんなの動きを把握したいからこのツールを使う」ために便利な製品が多いようですね。

対して、サイボウズのキントーンの売りは、ボトムアップで「みんながチームのコミュニケーションを良くしたいから導入する」ツールだといえます。


これはサイボウズが持つ働き方へのこだわりにもつながっています。僕たちが『サイボウズ式』で発信してきたメッセージを海外にも届けていくことが、競合との差別化になると考えているんです。

アレックス
私もぜひ、サイボウズの理念を海外へ発信していきたいと思っています。

ただ今のサイボウズ式を見ていると、日本の有名人のインタビューや日本の文化を紹介するような「日本フォーカス」の記事が多いですよね。

大槻
そうですね。

アレックス
本当にチームワークあふれる社会をつくるなら、日本のアイデアだけではなく、世界中のアイデアを集めて良いものを取り入れていくべきじゃないかと思います。

日本に限らず、海外の先進的な事例を取材して、そこから学んでいく必要があります。いつか国内外で先進的な思想を持った企業が生まれてくると思いますが、そこから学んでアップデートしていかないと、サイボウズはイノベーティブな存在だとは言えなくなります。


そうなってしまうのはとてももったいない。私たちは早く、世界レベルでの会話に参加をしなければいけないと思うんです。

サイボウズが大切にする「多様性」って?

アレックス
サイボウズではかなり自由な働き方ができますよね。
2018年6月20日自由すぎる……! サイボウズが最近はじめた新しい「働き方制度」について聞いてみた

大槻
はい。

アレックス
世界的にも進んでいる企業の一つだと思います。

もちろん、海外のテック系企業にも柔軟なところは多いです。フレックスタイム制や在宅勤務といったポイントだけを見れば、サイボウズが特別というわけでもない。


でも、理念と制度と風土があるという点では、唯一の会社だと思うんです。

大槻
理念と制度と風土。

アレックス
チームワークあふれる社会をつくるために、自分たちがチームワークあふれる会社であろうとしていますよね。

そのためにいろいろな制度があるし、働いているみんなは「制度があるから乗っかろう」という感じではなく、「自分がやりたいことをやって、チームに貢献するために制度を利用しよう」と考えています。

大槻
そうですね。だからこそ働き方が「100人100通り」になるんです。

アレックス
そうして理念と制度と風土から生まれるメッセージは、サイボウズにしか発信できないと思います。

でも、サイボウズの考え方という点では、私は入社前にちょっと疑っていた部分もありました。

大槻
疑っていた?

アレックス
はい。サイボウズは「多様性」を大切にしていますよね。それがよくわからなかったんです。

海外の、例えばアメリカの企業であれば働く人は人種も宗教もさまざまなので、自然と多様性について考えることになります。でも日本の企業の場合、働いている人はほとんど日本人ですよね。背景が全然違うと思いました。


そうした中で語る「多様性」ってなんなのだろう?と。

大槻
ああ、なるほど。

アレックス
でも入社後にいろいろな方から教えてもらって、少しずつわかってきました。サイボウズが言う「多様性」って、「みんながそれぞれの働き方で働ける」ということですね。

大槻
はい。

そういえばこの間、アレックスがツイッターで発信しているのを見て新しい発見があったんですよ。

サイボウズって多様性に拘っている会社とよく言われる。英語で多様性はdiversityですね。
でも青野さんの説明を聞くと、実はdiversityではなく、individualityという言葉の方がサイボウズの理念と近いんじゃない、と個人的に思っちゃいます。

— AlexSt (@SwissBozu) December 20, 2018

アレックス
発見?

大槻
「サイボウズの多様性って、よく言われる“Diversity”ではなく“Individuality” (個性)なんじゃないか」ということを言ってくれていて……。

つまり、ここで働く一人ひとりの個性を大切にするということですよね。「たしかに!」と思いました。


実際にサイボウズで働く人を見て、多様だと感じますか?

アレックス
そうですね。なんと言うか、変わった人が集まっていますよね。

大槻
(笑)。

アレックス
日本の会社には「みんなが同じように働かなければいけない」というイメージを持っていましたが、サイボウズにはそうした考え方がないと思いました。

みんな、「自分の個性が魅力になるんだ」と考えていて。同じように進むのではなく、「自分の個性をどう発揮するか」ということを考えて動いていますよね。

海外にも「会社という存在に対する疑問」がある

大槻
ちなみにアレックスは、海外へ向けてどのような記事を作りたいと考えているんですか?

アレックス
いろいろあります。まずは、すでに公開されている記事の中から海外にも響きそうなものを選んで、翻訳していきたいと思っています。

大槻
これまでの記事だとどんなものが響きそうですか?

アレックス
サイボウズの社内から生まれたストーリーがおもしろいです。

例えば『大事な商談の日なのに、保育園に預けられない─両親の代わりに営業チームで子守をした話』。

2016年8月 2日大事な商談の日なのに、保育園に預けられない──両親の代わりに営業チームで子守をした話

大槻
これは本当にたくさんの人に読んでもらえた記事ですね。

アレックス
この記事にある人間関係のエモーショナルな部分は、海外の人々にも届くと思います。こうした記事をどんどん翻訳していきたいですね。

オリジナルコンテンツとしては、今のサイボウズ式の中心である「100人100通りの働き方」についての考え方も発信していきたいです。海外向けの記事では、もっと幅を広げるチャンスもあるかもしれません。

大槻
というと?

アレックス
会社という存在に対するさまざまな疑問に答えたいんです。

会社は儲けを追いかけるだけでいいのか? 個人と会社はどんな関係を築くべきなのか? 会社とはただ出社して仕事をするだけの場所でいいのか? 今の時代に必要なリーダーシップは?

大槻
海外でも、会社という存在に対する考え方はどんどん変わってきていますよね。

アレックス
はい。こうした疑問を考えるきっかけを作り、コミュニケーションが生まれるような記事にしていきたいですね。日本に紹介できるものは、どんどん和訳していきたいと思います。

大槻
アメリカでのインタビュー取材なんかも?

アレックス
はい。働き方に関する専門家はアメリカにたくさんいます。アメリカで出版された本が翻訳されて日本に入ってくるケースも多いですよね。「これは」と思う方にインタビューしていきたいです。

ヨーロッパにもおもしろい専門家がたくさんいますし、労働問題に関する専門機関の本部は私のふるさとのスイスにあるので、取材してみたいですね。

大槻
アレックスのすごいコネクションが発揮されそう……!

アレックス
いやいや、それは期待しすぎですよ。

大槻
この「謙遜のワンクッション」が実に日本的だなぁ。

アレックス
新しく海外で一から挑戦することにワクワクしていますか?

大槻
それはもう、思いきり。

サイボウズ式を立ち上げたときのように、僕たち自身もさまざまな社会課題に触れ、悩みながら進んでいく姿を見せていきたい。めちゃくちゃ気合いが入ってます!

執筆:多田 慎介 / 写真:明石 悠佳 / 編集:大槻 幸夫 ・ Alex Steullet
2019年2月 5日「あれっ、日本語学校で教わったことと違うじゃん!」──スイス人がサイボウズの面接を受けて感じたこと

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執筆

ライター

多田 慎介

1983年、石川県金沢市生まれ。求人広告代理店、編集プロダクションを経て2015年よりフリーランス。個人の働き方やキャリア形成、教育、企業の採用コンテンツなど、いろいろなテーマで執筆中。

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撮影・イラスト

ライター

あかしゆか

1992年生まれ、京都出身、東京在住。 大学時代に本屋で働いた経験から、文章に関わる仕事がしたいと編集者を目指すように。2015年サイボウズへ新卒で入社。製品プロモーション、サイボウズ式編集部での経験を経て、2020年フリーランスへ。現在は、ウェブや紙など媒体を問わず、編集者・ライターとして活動をしている。

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