サイボウズ株式会社

「サイボウズはなぜ在宅勤務用PCまで支給するんですか?」情シスに聞いたら、理念へのこだわりがすごかった

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業の人事担当者
  • 在宅勤務を検討している企業の経営者
  • 情報システム部門のスタッフ
  • 勤務環境の改善を考える従業員
  • ITツールの選定を担当する担当者
Point この記事を読んで得られる知識

記事を読んで得られる知識は、サイボウズという会社が柔軟な働き方を実現するために、非常に個別化されたIT環境を社員に提供していることについてである。具体的には、個々の社員が仕事の効率を最大化できるよう、PCや周辺機器を選ぶ自由を提供しており、その選択肢はMacでもWindowsでも選べるという点で多様性に富んでいる。また、在宅勤務を支援するために、専用PCや必要な周辺機器を支給し、物理的な制約を取り除いている。

情報システム部門にとっては、多様なデバイスを管理することは負担が大きいが、社員の生産性向上のためには必要な投資と捉え、公明正大な方針の下で社内システムを運用している。一方で、無制限なIT投資が社員のモチベーション向上と業務効率化をもたらし、結果的に合理的な投資と見なされていることも示されている。また、在宅勤務を推進する一環として、社員が自身の働き方に合った環境を選べる制度を悪用する人が少ないのは、オープンな申請システムによる相互監視の効果があるためである。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

どうする? 在宅勤務

「サイボウズはなぜ在宅勤務用PCまで支給するんですか?」情シスに聞いたら、理念へのこだわりがすごかった

100人100通りの働き方を実現しているサイボウズ。自由な働き方の裏には「在宅勤務用PCを支給」「マウス・キーボードは好きなものを選択可能」など、個人の要望にあわせてシステム環境を整える文化があります。

とはいえ「やりすぎじゃないの?」「制度を悪用する人はいないの?」「情シスは大変じゃないの?」という疑問も浮かび上がります。

今回はサイボウズを支える情報システム部を直撃。情報システム部の青木哲朗さんと鶴村修二さんに、情シスのあり方について語ってもらいました。

全社員がMacもWindowsも選べて、在宅用PCも配布って本当ですか?

仁田坂
サイボウズは週3日勤務の方やリモートワークの方など、かなり多様な働き方をしている社員がいますよね。

柔軟な働き方を実現させるには、情報システム部門の支えも必要となります。今日は情シスのお二人が日々どのように100人100通りの働き方を支えているかを聞かせてください。
青木
よろしくお願いします!

100人100通りの働き方のシステム面でいうと、サイボウズでは個人の要望に合わせてデバイスを支給していますね。

青木哲朗(あおき・てつろう)。大学卒業後、事業会社のSEとして10年以上インフラ構築に携わる。サイボウズには2014年7月に中途入社。以来情シス一筋。

仁田坂
働き方だけでなく、会社支給のデバイスも100人100通りということですか。
青木
はい。まず、PC標準機は4〜6種類の中から自由に選べます。

サイボウズの標準機PC。MacもWindowsも選べるようになっている。

仁田坂
めっちゃいっぱいある……。
鶴村
全社員がMacもWindowsも選べるようになっていて、4種類の中から選択できます。

開発職であれば、それにプラスしてデスクトップ1種と、開発向けMacBook Pro1種類の6パターンを用意しています。
青木
これまで新入社員の方にはひとまずWindowsを支給し、配属後に好きなPCを選択可能としていたのですが、今年から入社前に選んでもらうようにしたところ、Macばかりになりました(笑)

来週、4月入社予定の新人さんのPCの準備が完了しました。例年新人さんPCはWindows一択だったけど、今年はWindows/Macどちらかを選べるようにした(普段から使い慣れているPCを選択してもらった)ところ、圧倒的にMac!みんなMac好きなのね。。。 pic.twitter.com/E8WQkctzXF

— あおてつ (@ao_Tetsu) 2019年3月29日
仁田坂
すごい。PCの種類を限定したほうが、情シス的にはコストがかからなさそうですが……。
鶴村
おっしゃる通りです。正直PCの種類が少ない方が調達コストが安いですし、故障時の対応も楽なんです。

でも、業務に必要なシステムは人それぞれ違うので。社員が最高のパフォーマンスを出せるよう、最大6種類から選べるようにしています。

鶴村修二(つるむら・しゅうじ)。サイボウズに新卒で入社。営業を経験した後に情シスへ異動。

仁田坂
うーん、懐が広い。
青木
PCってふつう与えられるもので、選ぶという概念はないじゃないですか。僕もサイボウズに中途入社してびっくりしました(笑)。
仁田坂
ただ、そんなにいろいろなメーカーのPCが選べる場合、情シスとしては大変じゃないですか?

MacとWindowsで挙動が違うので、マニュアルを2種類用意しなければいけなかったり。トラブルの切り分けもやることが多くなりそうです。
鶴村
正直、大変なことも多いです(笑)。でも、Macの方が効率よく仕事できる方もいるので今の運用にしています。

何か社内システムを導入する時も「Macでも使えるかどうか」を必ず要件に入れていますね。
仁田坂
徹底されていますね。

あと、サイボウズではふだんオフィスに出社している方でも「ノートPCを家に持ち帰るのが大変だから」と言えば、在宅勤務用のPCも追加で支給してもらえると聞いたのですが…
鶴村
支給していますね。オフィスと家用で、会社支給のPCを2台使っている社員は多いです。

在宅勤務用のディスプレイも希望があれば支給します。
仁田坂
なんと! なぜそこまでするのでしょうか?
鶴村
サイボウズでは「誰でも好きな場所で働けるようにすること」を会社として推進しています。

「在宅勤務をするたびにPCを持ち帰るのが面倒だから」「在宅勤務だとモニターがなくてやりづらいから」という理由で、在宅勤務をしづらくなってしまうのはよくないですよね。

コストはかかりますが、100人100通りの働き方ができるサイボウズだからこそ、いつどこでも最高の仕事ができる情報システムを提供する。それが、サイボウズ情シスのミッションなんです。
仁田坂
あくまでも理念にもとづいているということですね。

マウスやキーボードも価格上限なしで購入OK。やりすぎじゃないんですか?

鶴村
ちなみに、マウスやキーボードも本人の希望があれば上長への申請なしで好きなものを買うことができます。
仁田坂
価格制限もないんですか?
鶴村
ないです。

先ほど言ったように、サイボウズの情シスの仕事は「社員が最高のパフォーマンスを出せるシステム環境を提供すること」。

生産性が上がるのであれば、高いキーボードやマウスの購入も大歓迎です。
仁田坂
やりすぎな気もしますが、あくまでも理念の実現のためだと。
鶴村
そうです。トラックボール、指への負担が少ない静電容量無接点方式のキーボード、好みのパームレストなど、さまざまな要望がありますよ。

Happy Hacking Keyboard Professional2 (24,990円のキーボード)。特に開発職は、好みのキーボードを購入する人が多い。

仁田坂
エンジニアからすると、楽園のような環境ではないでしょうか。
青木
厳しい面もあると思いますよ。サイボウズだと自分の業務を円滑に進めるにはどんなツールが必要なのか自分で考えなければいけません。

「自分の成果が出ないのは、PCのスペックが悪いから」「ディスプレイがないから」と会社のせいにすることができないですからね。
仁田坂
たしかに……!

ちょっと気になるのは、予算です。「サイボウズはお金があるからそんなことできるんでしょ?」と思う方もいらっしゃるのかなと。

IT投資にすごく積極的な気がするのですが、実際はどうなのでしょうか?
青木
一応、売上に対するIT投資の比率は見ていますね。

サイボウズの場合、多様な働き方を実現するためにIT投資が他社より若干多いのかもしれませんが、その投資が必要かどうかの判断は必ずしていますし、お金を湯水のように使っているわけではないです。
仁田坂
売上とのバランスは見ているんですね。

ちなみにITへの投資って効果が見えにくいと思うんですが、定量的に効果測定はしているんですか?
鶴村
定量的な測定はしていないですね。
仁田坂
ええっ。「この社員の希望で買った3万円分のキーボードって、正しくアウトプットされてるのかな。ムダだったんじゃないのかな」とはならないんですか?
青木
ムダかどうかというより、社員のパフォーマンスやモチベーションが定性的にどれだけ上がるかを考えています。

たとえば社員の希望で3万円の良いキーボードを買ったとしても、使う年数でいうと2〜3年ですよね。

500日使うと考えれば、1日60円くらいなんですよ。それで社員のパフォーマンスやモチベーションが向上するのであれば、安い投資です。
仁田坂
うーん、たしかに。そう言われてみると、妥当な投資のように思えてきました。

制度を悪用する、欲張りな社員はいないんですか?

仁田坂
とはいえ、キーボードやマウスは好きなものを選び放題、価格制限もないとなると、「あれもこれもたくさん買いたい」という欲張りな社員も出てくるかと思います。そういった場合はどう対応しているのでしょうか?
青木
「いろいろ買いたい」という欲張りなケースでも対応していますね(笑)。

実際にあったケースだと、「PC4台と使いやすいキーボードを2つ用意してほしい」という要望がありました。
仁田坂
ん? 1人の社員に対してですよね?
青木
はい。その方はエンジニアの社員で、業務の都合でもともと2台のデスクトップ端末を使っていたんです。

なので「在宅勤務をするときにも今のPCを追加で2台ほしい」「使いやすいキーボードも、在宅用と会社用で2台ほしい」ということでした。
仁田坂
それはさすがにNGですよね……?
青木
いえ、OKです。
仁田坂
えーっ!
青木
業務に必要なら支給しますし、それで本人がパフォーマンスを発揮できるのであればいいと思っています。この場合はさすがに、上長に確認を取った上でそろえましたが(笑)。
仁田坂
情シスの現場を担当されているお二人は、この状況をぶっちゃけどう思っているんですか?
青木
個人的には、やりすぎでしょって思うときもあります(笑)。 
仁田坂
やっぱり!
青木
でも、みんなの働きやすさを考えて理想を追求するのが、サイボウズの情シスの特徴なんです。

サイボウズの理念である「チームワークあふれる社会を創る」ためには、まず自分たち自身が「チームワークあふれる会社」でなければいけない。そのために必要なシステムを提供しているだけという認識です。
仁田坂
ビジョンを達成するために必要なことをしているだけだと。
鶴村
そうですね。情シスのミッションが明確なので、現場の仕事はやりやすいです。

そこまで個人の要望に対応していたら、情シスは大変じゃないんですか?

仁田坂
サイボウズの情シスが目指す姿はわかりました。

ただ、そこまで個人の希望に合わせて端末を貸し出していると、依頼の対応や、端末管理も相当大変なんじゃないでしょうか。情シスだけずっと残業している……とか。
鶴村
そんなことないですよ。

電話やメールで要望に対応していたらたしかにキリがないかもしれませんが、サイボウズではキントーンを使って依頼を効率化しているので、大変だと思ったことはないですね。
仁田坂
出ました、キントーン。キントーンは日々の業務を円滑にするクラウドサービスですよね。
鶴村
はい。「このマウスがほしい」「在宅用PCを希望します」などの問い合わせはキントーンですべて受け付けて、ステータス管理をしています。

マウスやキーボードの購入依頼はフォームに入力するだけでよく、電話やメールは使わない。

仁田坂
ここに依頼内容を入力すれば、書類を提出したりハンコを押したりする必要はないんですね。
鶴村
はい。どの依頼がどこまで進んでいるのかも一目でわかります。

キントーンに寄せられた依頼の一覧。依頼ごとにステータス管理ができるようになっている。

鶴村
また、「このキーボードで間違いないですか?」「購入したので取りに来てください」などのやりとりもシステム内で完結するので、電話やメールを使わずにすんでいます。

購入に必要なやりとりは、オンラインで完結する。

仁田坂
効率的ですね。

ただやっぱり、ここに記入するだけでいいなんて、制度を悪用して高いマウスやキーボードを買いまくる社員がいないか心配になります(笑)。
鶴村
それが意外といないんですよね。
青木
実はキントーンに登録された依頼内容は、全社員にオープンになっています。
仁田坂
なんと。
青木
サイボウズでは「公明正大」を大事にする理念があって、こうした申請内容も含め、社内のやりとりが基本オープンなんです。

なので、合理的な理由もないのに高額なキーボードの申請をしている人がいたら、周囲からの信頼度が下がってしまう。

サイボウズには「質問責任」と「説明責任」という文化があるので、「あれ?」と思った購入依頼があれば僕たちも理由を確認しますし、質問された人は自分がなぜその備品が必要なのかを説明する責任があります。
仁田坂
オープンな申請が、良い意味での抑止力になっているということですね。

あとは、社員一人ひとりの要望に合わせて端末を配布していると、端末管理が煩雑になると思うのですが……。
鶴村
端末管理もキントーンで効率化しています。

誰がどのPCを借りているのか、リアルタイムで把握できる

鶴村
エクセルだと大変かもしれませんが、キントーンならいつでもリアルタイムの貸し出し状況がわかるので、誰が何を借りているかは一目瞭然です。
仁田坂
キントーンがあれば、どこにいても情シスの実務ができそうですね。
青木
そうですね。実際うちの情シスメンバーは子育て世代が多いので、時短勤務やリモートワークをしている社員は多いです。複業をしているメンバーもいますよ。
仁田坂
さすが!

拠点の増加に伴い、社員をどうサポートできるかが今後の課題

仁田坂
サイボウズは在宅勤務用PC配布など、やりすぎなシステム投資をしている印象でしたが、あくまでも理念にもとづいて必要な投資をしているのだとわかりました。
青木
そうですね。セキュリティを担保しながら働きやすい環境を追求していくのは難しいこともたくさんありますが、それがまたやりがいでもあります。
鶴村
実は2018年の年末に行われた「サイボウズ・オブザイヤー」で、情シスが一番感謝されている部署としてMVP表彰されたんですよ。

会社のMVP的なイベント。社員からの「ありがとう」を多く集めた人やチームが表彰されるんだけど、今年受賞したチームは情報システム部…!

ふつう業務部門と対立しがちなことが多い情シスという部署が、サイボウズでは1番多くのありがとうを多く集めていたことに、なんだかとても感動した。 pic.twitter.com/RismL0ld5i

— ゆうこ (@yuucha810) 2018年12月21日

※サイボウズ社内の年間MVPを決めるイベント。社員が「ありがとう」を伝えたい人にコメント付きで投票し、一番多かった人が選ばれる仕組み。

仁田坂
情シスといえば業務部門と対立しがちな印象ですが、そんな情シスが社員から一番感謝を集めている部署だなんてすごいですね。
青木
あれは嬉しかったですね。普段からお礼の言葉をいただけることは多いのですが、まさか自分たちのチームが表彰されるなんて思っていなくて。今年も受賞できるようにがんばりたいです。
仁田坂
今後はどのようなことに取り組んでいきたいですか?
青木
ここ数年でWeb会議システムの刷新を行なった結果、在宅勤務などはかなりやりやすくなりました。最近はサイボウズがこれまで掲げてきた「100人100通りの働き方」が文字通り実現されてきていると感じます。

おかげさまでビジネスも好調で拠点も増えているのですが、すべての拠点に情シスメンバーを配置できるとは限らない。

在宅勤務している社員も含めて、「情シスがいない拠点のメンバーをどうフォローできるか」が今後の課題になると思います。
鶴村
今年はオフィス増床や新拠点追加、新しいビデオ会議システムの導入など、また新しいチャレンジが目白押しなので、引き続きサイボウズの柔軟な働き方を支えていきたいと思います。

変更履歴:「フルタイムで在宅勤務をする人に在宅勤務用端末を与えるのは当たり前ではないか?」というご指摘があったため、 文言を以下のように変更しました。

仁田坂:あと、サイボウズでは「在宅勤務用のPCもほしい」といえば支給してくれると聞いたのですが……。

→仁田坂:あと、サイボウズではふだんオフィスに出社している方でも「ノートPCを家に持ち帰るのが大変だから」と言えば、在宅勤務用のPCも追加で支給してもらえると聞いたのですが……。

 鶴村:支給していますね。なんなら、在宅勤務用のディスプレイも支給しちゃいます。

→鶴村:支給していますね。オフィスと家用で、会社支給のPCを2台使っている社員は多いです。

執筆:仁田坂淳史(株式会社ZINE)/撮影:内田明人 /企画編集:熱田優香

節約志向だったサイボウズの情シスが変わったきっかけは?ー在宅用PC支給、キーボード選び放題の裏側を語る|サイボウズ ワークスタイル百科

2017年5月24日サイボウズのPC標準機はどれもメモリ32GB積んでるって、正直ムダじゃないですか?

情シス業務を効率化させるキントーンの詳細はこちら

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執筆

ライター

仁田坂 淳史

現在複数社のコンサルタント・編集長を兼務するメディアの立上げ屋。紙媒体・Web媒体にとどまらないこれからのメディアづくりを目指し、2015年に出版ベンチャー株式会社ZINEを設立。担当したメディアはmixi・Find job! Startup、ビズリーチ・日刊キャリアトレックなど。

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撮影・イラスト

写真家

内田 明人

主に人物撮影を中心に活動をしており、会社案内、社内報、人材採用広告等の経験が豊富です。

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編集

編集部

熱田 優香

1993年生まれ。サイボウズ製品の価値をおもしろいコンテンツとともに伝えるプロモーションに挑戦中。

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