サイボウズ株式会社

「楽しく働けない諸悪の根源はマネジャーだよね」――いい加減、昭和のマネジメントを抜け出そう

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業のマネジャー
  • 経営者
  • 組織改革に関心のあるビジネスパーソン
  • 働き方改革に興味がある人
  • 企業文化の改善を目指す人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事により、読者は現代のマネジメントにおける問題点や改善の方向性について深く知ることができる。特に、マネジャーがどのように組織文化を形成するかが重要であり、彼らの行動や価値観の押し付けが時に社員の働きがいや職場の雰囲気に悪影響を及ぼすことがあるという視点が提供される。

記事は、サイボウズ副社長の山田理、三越伊勢丹のマネジャーである神谷友貴、そしてONE JAPAN代表の濱松誠が、これからのマネジメントのあり方について対話をするという形で展開している。彼らは、成功をチームの功績として認め、失敗はマネジャーが責任を負うべきだという考え方、多様な働き方が求められる現在の企業においては、一つの価値観を押し付けるのは困難だと強調している。

また、マネジャーの役割はメンバーを無理に動かすのではなく、共に仕事を楽しく、面白くする方向へ舵を切ることで、組織の活性化を図ることが目標だとされている。これにより、マネジャーはまるでキャンプファイヤーの火を焚く役割、つまり、目的のために中心となって雰囲気を盛り上げ、自然と人が集まるような環境を作ることが求められている。これからのマネジメントは、個々のエゴに基づいた権限集中ではなく、メンバーとのコミュニケーションを重視し、意見を聞く態度を持つことが重要であることが伝えられる。

Text AI要約の元文章
カイシャ・組織

これからのマネジャーについて、話そう。

「楽しく働けない諸悪の根源はマネジャーだよね」――いい加減、昭和のマネジメントを抜け出そう

「これからのマネジャー」について話すために集まったサイボウズ副社長・山田理と、現在マネジャーとして活躍する三越伊勢丹に勤める神谷友貴さん、そしてONE JAPAN発起人・代表の濱松誠さん。

前編では「成功したらメンバーのおかげ、失敗したらマネジャーの責任だと考える」「オープンな場に情報を出しておくべき」「無理やり人を動かそうとすると、強制力が働いて一方通行のコミュニケーションになってしまう」といった話題が広がりました。

そして鼎談が中盤に差し掛かったとき、山田の口からは「楽しく働けない諸悪の根源はマネジャーだよね」という言葉が飛び出しました。

経営陣と違って、与えられた状況のなかでやりくりするしかないマネジャーという立場。これからのマネジャーにはどんな心構えが必要なのでしょう。

マネジャーは「うちの会社ではこれが正しい価値観だ」と押し付ける存在

濱松誠
山田さんが出版予定の本の原稿、読みましたよ!  あれは売れますね。
山田 理
ははは、ありがとう。濱松くんは『仕事はもっと楽しくできる 大企業若手 50社1200人 会社変革ドキュメンタリー』で、組織のチームワークについて書いていたよね。自分の本と重なっている部分を知りたいから、どんな内容か改めて教えてくれないかな?
濱松誠
もともと考えていた本のテーマは「会社を楽しく」でしたが、サイボウズの青野さんがおっしゃる通り、「カイシャ」は実在するものじゃない。

それなら、結局はどうやって楽しく仕事をするかが大事だと思い直して。
2018年3月 7日「会社さん」は存在しない。変えるべきはそこにいる同じ人間──副業と会社についてサイボウズ青野社長と考えた
濱松誠
会社を辞めるという手もあるなかで、職場環境に閉塞感を抱いていたり、上司の悪口を言ったり、モヤモヤしながら残っている人が多いんですよね。

でも、会社に残るんだったら、悪口を言っていてもしょうがない。仕事で面白いことをやって、楽しく働こうよっていう提案をしています。
山田 理
うんうん。
濱松誠
楽しく働く50人の奮闘を通して「どうやったら仕事を面白くできるか」「どうしたら顧客に価値が提供できるだろうか」といった悩みや、それに対する工夫、乗り越えてどうだったかを書いた実例集ですね。
山田 理
僕、思うんだけど、楽しく働けない諸悪の根源はマネジャーだよね
濱松誠
んんん? どういうことですか?
山田 理
もちろん経営者の場合もあるだろうけど、実際に職場で一番コミュニケーションを取るのはマネジャー。その人がどういう振る舞いや理解、行動をするかによって、組織の雰囲気は本当に大きく変わる。

マネジャーは結局、マネジメントや教育という言葉で「うちの会社ではこれが正しい価値観だ」と押し付けているだけだな、と。

「これってマネジメントとして正しいことなのか?」と疑問に思うようになったんだよね。
濱松誠
なるほど……。
山田 理
それに、いまは働き方も多様化して、個人に焦点が当たるようになった。いろんな人がいるのに、「これがうちの会社の考え方だ」と、全く同じ価値観を押し付けるのは難しい。

これからの時代に個人がいきいき働くためには、価値観が昭和のままのマネジメントはダメだよね
濱松誠
人々が多様化して、マネジメントはさらに難しくなっていると。
山田 理
結局誰もできひんやんっていう。世の中に一番多い役職はマネジャーだと思うんだけど、マネジメントって本当にすごく難しい。
神谷友貴
本屋にもマネジャーの本はたくさんありますね。
山田 理
そうそう。みんな悩んでる。そこで、たまたま「山田さん、本出しませんか?」と声をかけてもらったのもあって、このタイミングであらためて、マネジャーがどうあるべきか考えようということで、出版の企画がはじまったんだよね。

「上手くいかないのはマネジャーの能力不足?」決断できなければ「質問責任」を全うすることが大事

神谷友貴
私は山田さんの本の原稿を読んで、マネジャーになってから悩んでいたことの答えを見つけられて。

神谷友貴(かみたに・ゆき)。株式会社三越伊勢丹に新卒入社。2年間婦人服の販売に従事したのち、婦人服のアシスタントバイヤーを3年経験し、百貨店事業本部MD戦略部MD政策ディビジョンに異動。現在はデジタル事業部新規事業ディビジョンカリテにてマネジャーの職務についている。濱松さんが代表を務めるONE JAPANにて富士通担当者と出会ったのをきっかけに、ドレスレンタルサービス「CARITE(カリテ)」のトライアル検証を2018年8月に銀座三越でスタート。

山田 理
うれしいですね。たとえば、どんなことですか?
神谷友貴
いま、私が担当しているドレスレンタルサービスの「CARITE(カリテ)」を進行するにあたって、経営陣と投資についての判断をする必要があります。

経営陣と私の間に複数の上司がいるので、どうすればうまくやりとりや進行ができるのかを悩んでいました。
山田 理
うんうん。
神谷友貴
最初はなかなかうまくいかなかった。その原因は、担当マネジャーである自分の能力のせいだと思っていたんです。

でも、「上の人にうまく動いてもらう」という考えが足りなかったんだな、と本を読んで実感しました。

何かわからないこと、決断できないことがあれば、「判断で困っていることはありますか?」のように質問する「質問責任」を全うすることが大事なんだ、と
濱松誠
「質問責任」はいい言葉だよなー。
2019年3月 5日「会社でモヤモヤしたことを言いづらい……」とためらっていたら、同僚に一喝されてしまった
神谷友貴
マネジャーだからといって、自分一人で決める必要はないし、私だけが悪いわけではないことを知れてよかったです。

山田さんの考えを知れば、世の中のマネジャーが、効率よく仕事を進めるための割り切りができるようになるだろうなと感じました。
山田 理
マネジャー当事者の神谷さんに届いてよかった。

部下は上司に、上司は部下に歩み寄らなきゃダメ

山田 理
知らないことを「知らない」と伝えるのも情報共有。マネジャー自身が「私はこれができない」と周りに共有するのは大切だよね

そうすることで、その仕事が得意な人が「できる」と名乗り出てくるかもしれないし。
濱松誠
みんなが理解してくれればいいですけど、部下やメンバーから「あの人、やたら聞いてくるな」とか「あの人は努力もせず聞くばかりだな」とか、内心で思われそうじゃないですか?

個人的には、部下からもマネジャーの状況を理解して、双方が歩み寄らなきゃダメなのかなと。

濱松誠(はままつ・まこと)。1982年京都府生まれ。大学卒業後、2006年パナソニックに入社。海外営業、インド事業企画を経て、本社人材戦略部に異動。グループ採用戦略や人材開発を担当。2012年、若手主体の有志団体「One Panasonic」を立ち上げ、組織の活性化やタテ・ヨコ・ナナメ・社外の交流に取り組む。2016年には同社初となるベンチャー企業(パス株式会社)への派遣人材に抜擢。同社家電部門にて、IoT家電事業の事業開発に従事。現在、ONE JAPAN共同発起人・共同代表。

山田 理
それはあるね。松下幸之助の考えをまとめた『部下の哲学』と『上司の哲学』という本を知ってる? 昔は新人が入ったときに読んでもらってたの。
濱松誠
『上司の哲学』も新人に読んでもらうんですか?
山田 理
そう。それで上司にも『部下の哲学』を読んでもらう。

両者に読んでもらって初めて「上司って結構大変なんやな」「部下はこういう風に思ってるのか」と気づけるんだよね。
濱松誠
いいですね。管理職研修を新人にも受けてもらったほうがいいですよね。

鎖をつけて塀を高くしてメンバーを出にくくすることは、マネジャーの仕事じゃない

濱松誠
山田さんはメンバーを鼓舞したり、モチベーションを上げたりもするんですか?
山田 理
僕は「キャンプファイヤー」スタイルがマネジャーの理想だと思っていて。

マネジャーは、真ん中で、火を焚いて、歌い踊り続けることが大事。
2018年2月22日アクセルを踏みたい社長とブレーキを踏みたい副社長──かみ合わなかったふたりは今、「会社さんなんていない」と思っている
濱松誠
ふむふむ。
山田 理
マネジャーは「僕らはこういう目的があって、こういう風にやろうと思っている」っていう想いの火を焚くの。それで、何人集まろうが減ろうが、歌い続ける。

それでみんなが去っていくなら、所詮その火はその程度の火だし、それが良いものであればあるほど人は集まってくると思う。
濱松誠
なるほど。
山田 理
メンバーを囲いに入れようと勧誘したり、鎖をつけて塀を高くして出にくくしたりすることは、マネジャーの仕事じゃない。

さらにいえば、役割を終えたら、火は消えてもいい。
濱松誠
目的は達成された、と。
山田 理
そう。それなのに企業によっては、塀だけが残っているからって、火がないのに「誰が火を起こす?」 って押し付けあって、放火犯みたいに新規事業を起こしたり、経営者が鎮火したりしている。
神谷友貴
うんうん、ありますね。
山田 理
だから、マネジャーは現状のチームメンバーとどうするかが大事。

「この人がこうだったらいいのに」「成長させよう」なんて考えるのは、おこがましい。これは、自分がやってきての大反省でもある。

山田 理(やまだ・おさむ)。サイボウズ 取締役副社長 兼 サイボウズUSA(Kintone Corporation)社長。1992年日本興業銀行入行。2000年にサイボウズへ転職し、責任者として財務、人事および法務部門を担当し、同社の人事制度・教育研修制度の構築を手がける。2014年からグローバルへの事業拡大を企図し、米国現地法人立ち上げのためサンフランシスコに赴任し、現在に至る

山田 理
参加する人を操作せず「いいね!」と思われるようなキャンプファイヤーを続けることが大事なんじゃないかな。

うまくいかなかったら、「ごめん、会社!」でいい。

神谷友貴
与えられたもののなかで、どこまでやれるかを考えるってことですね。
山田 理
麻雀とかゲームもそう。配られたカードの中で、最高の手を尽くす。

どう楽しく生きるかっていうのは、ゲームと一緒だと思っていて。そのゲームをみんなが楽しめればそれでいいかなって。

うまくいかなかったら、それでいいじゃない。「ごめん、会社!」って。それくらい僕はサイボウズのために働いていない。
神谷友貴
ノマドみたいな感覚ですね。
山田 理
うん、ダメだったら、世の中で必要とされているところに行けばいいと思うよ。

でも、いま火を燃やしているのがめっちゃ面白いし、その火をもっと大きくしようと思っているからサイボウズにいるっていうだけで。
濱松誠
たくさん人が集まると、神格化されてしまうこともありますよね。

信者のような受け身スタイルではなく、能動的に参加してもらうためにはどうしたらいいんでしょう?
山田 理
繰り返しになるけど、マネジャーが権限を持たないことだと思う。自分が物事を決めない。ただ歌い続ける

あとはルールをつくったり、メンバーの意見にイエスやノーを言ったりしない。言うと神格化されてしまうからね。
濱松誠
なるほど。
山田 理
ある意味、教祖的な組織があったことで世の中は変わったと思うし、組織を大きくしようと思ったら、権限を持ちたくなる。

自分で動いたほうが、組織の統制が取れて効率よく早く会社は大きくなるけれど、それはその人のエゴ

みんながそのエゴに付いていって幸せだったらいいけど、いまそうじゃない人もたくさんいるじゃない。

だからこそパラダイムシフトというか、もう一回マネジメントや経営のあり方が問われる時代になっているのかな。
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文:中森りほ 編集:松尾奈々絵(ノオト) 撮影:小野奈那子 企画:明石悠佳

2018年2月22日アクセルを踏みたい社長とブレーキを踏みたい副社長──かみ合わなかったふたりは今、「会社さんなんていない」と思っている
2019年3月14日アメリカでも、カイシャが人を幸せにする方向に進んでいないのではないか──社長 青野×副社長 山田、海外に再挑戦する理由

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執筆

ライター

中森りほ

旅が大好きな東京在住のフリーライター&編集者。生き方・働き方系を考えるインタビュー、グルメ、旅、温泉、カルチャー系が好きです。

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撮影・イラスト

写真家

小野 奈那子

人、物、食を中心に撮影しています。ライフワークはアート収集。

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編集

ライター

松尾 奈々絵

コンテンツメーカー・有限会社ノオトのライター、編集者。担当ジャンルは働き方や街紹介メディアなど。

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