サイボウズ株式会社

「サイボウズは、大企業病になりかけている」──チームワークの会社なのに実は縦割り主義? 中途社員の本音を聞いてみた

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業の人事担当者
  • 組織改革に興味があるビジネスパーソン
  • 転職を考えている中途採用希望者
  • 企業の働き方に興味がある学生
Point この記事を読んで得られる知識

この記事では、サイボウズという企業が直面している「大企業病」や中途社員に対するフォローの不足などの課題について、同社に転職してきた3名の社員が語り合った内容が紹介されています。サイボウズは外部から "自由で働きやすい会社" と評されるものの、内部から見ると「縦割り主義が進んでいる」「中途社員が孤立しやすい」などの現状があるとされています。

記事を通じて得られる知識としては、サイボウズが持つ課題として以下のような点が挙げられます。東京本社と関西の営業チームとの間で情報伝達の遅さがあるという課題があり、縦割りによるコミュニケーションの困難さが示されています。また、中途採用の社員が入社当初に孤立することがあり、これに対するフォローが不足していると感じられています。しかし、このような問題に直面した社員が自発的に改善に向けた取り組みを行っており、たとえば社内SNSを活用してランチ会を企画したり、勉強会を開催したりしています。

これらの改善策が実行される背景には、サイボウズ社内の心理的安全性があり、問題点をオープンに議論できる風土が整っていることが重要要素として挙げられます。社員それぞれがアクションを自ら起こすことが求められており、問題解決が進むカルチャーが存在することも一つの特徴です。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

サイボウズのつくりかた

「サイボウズは、大企業病になりかけている」──チームワークの会社なのに実は縦割り主義? 中途社員の本音を聞いてみた

「自由で働きやすい会社」。サイボウズは世間からよく、そんなふうに言われます。ただ、それが本当なのかどうかは実際に働いてみないとわかりません。

「今のサイボウズには、働きづらいところがないのだろうか」。その問いをテーマに、大企業からサイボウズに転職してきた社員3名(小林悠、三木佳世子、林田恵美)による鼎談(ていだん)をお届けします。

「サイボウズは大企業病になりかけている」「中途社員ならではの寂しさがあるんだよね」。今回は、そんなサイボウズのリアルな課題から、社員が実践している解決法までを語りあいました。

誰かが「自分の働き方」を決めてくれるわけじゃない

流石
サイボウズは外から見ると「自分らしく、いきいきと働ける会社」というイメージです。

ただ、実際のところはどうなんだろう? と思いまして、ぜひ本音で語っていただきたくこの座談会を設けました。

中途入社したあとに、ギャップはありましたか?
三木
嫌なギャップはなかったです。

最初は「本当にそんなに働きやすいのか?」と半信半疑でしたが、入社して一つひとつの仕事を経験するうちに、本当だったんだなって実感していきました。

三木佳世子(みき・かよこ)。チームワーク総研アドバイザー。テレビ局のディレクターを経て、2018年8月にサイボウズに転職。前職のディレクター時代に、代表取締役社長の青野慶久と出会う。青野から「サイボウズの働き方」の話を聞いたことが、サイボウズに興味を持つきっかけとなる

小林
僕も、転職前のイメージとのギャップはありませんでした。
三木
サイボウズでは、みんなが当たり前のように午後から出社したり、16時には帰ったりと、違った働き方をしています。ほかの人を気にしていないといいますか。

ただ、その分「自立」を求められるので自分が決めたことは、自分で責任を取る必要があって。
林田
うん、うん。
三木
「自分の働き方」を上司が決めてくれるわけじゃない。「自分がどうしたいのか」が大切になるので、意思が弱い人には厳しい職場だと思います。
小林
言い訳できませんよね。
流石
林田さんは、何か驚いたことはありましたか?
林田
新卒2〜3年目の社員が、こんなに会社をグイグイと引っ張っているとは思いませんでした。

林田恵美(はやしだ・めぐみ)。西日本営業部に所属。2018年7月に、大手食品企業から転職した。30人規模の大阪オフィスに在籍し、そこで形にした成果を東京本社に発信している。本社にある「営業戦略部」を兼務しながら、大阪オフィスと東京本社とのプロジェクトを、うまく橋渡しできるような役割を目指す。今回は大阪オフィスからリモートで参加

流石
新卒が活躍しやすい会社だな、と。
林田
そうですね。前職では、新卒は3年経つまで言われたことをひたすらやるのが当たり前で。「こんなに若手が、プロジェクトを主体的に進められる環境なんだ」とびっくりしました。
小林
社員が若手のときから、「あなたが担当者なんだから、きちんと説明をしなさい」と「説明責任」を教え込まれているからですよね。

だからこそ、若手がほかの大企業では課長レベル以上じゃないとできないようなことにも挑戦しやすいんだな、と感じます。

小林悠(こばやし・ゆう)。ビジネスマーケティング本部BPM部。2018年1月入社。新卒だけでも1000人を超える、いわゆる「大企業」の電機メーカー出身。入社後すぐに、前職で得たスキルを伝える勉強会を開催して社内各部署から30名を動員した。また、中途社員を集めたランチ会を開くなどして、社員同士が交流できる機会を積極的につくっている

サイボウズは大企業病になりかけている?

流石
逆にみなさん、サイボウズに入って問題に感じることはないんですか?
林田
いやいや、ありますよ! 私は、サイボウズが「大企業病」になりかけていると思っていて。
流石
えっ、そうなんですか?
林田
はい。私は関西の営業チームに所属しているのですが、「営業活動をもっと部門横断で協力してやればいいのに」と思っていて。

でもそれを東京の本社に伝えようとすると、とたんに動きが遅くなる。「違う部署の話だから、そっちに振って」とか。
小林
あー……あるある。大企業病になるだろうという危機感はあります。
流石
サイボウズって風通しのいいベンチャーのイメージでしたけど、従業員数は意外と700人以上いて、毎年増えていますもんね。
小林
そうなんです。僕が入社する数年前だったら、まだ全従業員がおたがいに顔見知りくらいの会社規模だったと思うのですが、今は人数が増えてきて「自分の部署のメンバーを把握するだけでも精一杯」という人も多いと思います。
林田
規模が大きくなっている分、今のサイボウズは縦割り主義になりかけている気がします。「せっかく、チームワークあふれる社会を目指している会社なのにそれでいいの?」って思うことはあります。

入社した次の日、一緒にランチを食べに行く人がいなかった

流石
三木さんは「サイボウズが大企業病になりかけている」と感じたことはありますか?
三木
うーん。大企業病とは違うかもしれませんが、中途社員へのフォローが足りていないと感じることはありますね。これは逆にベンチャーあるあるなのかな。
林田
あー、わかるかも。
三木
「サイボウズ流の仕事の進め方」についてレクチャーがなかったので、最初は戸惑いましたね。
流石
どんな進め方なんですか?
三木
前職では、自分の頭で考えるのが基本で、チームにはあまり頼らない感じでした。

一方、私の部署では「これがわからなくて困っている」「こういう風に進めてます」という情報もグループウェアで細かく共有しながら進めます。

誰かがそのコミュニケーション作法を教えてくれるわけではないので、慣れるまで苦労しました。
小林
中途社員は放置されがち問題、ありますよね(笑)。

僕も転職した当初、「中途社員ならではの寂しさ」を感じていました。
流石
寂しさ、ですか?
小林
入社前、「サイボウズには中途社員のコミュニティがある」というサイボウズ式の記事を読んで、「中途社員を受け入れる土壌は整っているんだな」とわくわくしていたんです。
2017年8月30日「仕事デキない人を採用しちゃったな」と思われる恐怖、ひとりぼっちの中途社員が自信を取り戻すまで
小林
でもいざ入社すると、その中途社員コミュニティを立ち上げた男性は育休中で、入社した次の日からランチを一緒に食べに行く人がいなくて。
林田
放置されたんだ。
小林
ははは、はい。ほかの部署を観察していたら、ほかの中途社員もみんな寂しそうで、社内で孤立しているんじゃないか? と。
流石
中途社員だと、新卒みたいに同期同士で集まらないですもんね。
小林
はい。前職の大企業では、他部署で何が起きているのか、どんな人が働いているのかがわからない状況が嫌だったんです。

このまま社内のつながりが少ないと、サイボウズもすぐ大企業病になってしまいそうだな、と危機感を覚えました。

課題を目の前にしたなら、自分から動き出さないと何も変わらない

流石
サイボウズにもいろいろな課題があると、みなさん少なからず感じているんですね。

社内の問題を見つけたら、みなさんはどうされるんですか……?
小林
僕は「ランチおじさん」の活動をはじめました。
流石
ランチおじさん!?
小林
社内SNSのキントーンで、入社したばかりの中途社員を見つけては、「ランチに一緒に行きましょう」と書き込みまくるんです。

社内SNS上で「ランチおじさん」の活動をする小林さん

流石
おお(笑)。
小林
前職では行動を起こさず、自席でランチを食べ続けていました。

でもその結果「他部署で何が起きているのかわからない」「どんな人が働いているのかわからない」という状況になってしまった。

「自分からちゃんと動かないと、何も変わらない」と思い、勇気を出していろいろな部署の人をランチに誘うようにしたんです。
流石
自分から知り合いを増やそうとしたんですね。
小林
ランチの後は、「今日はこんな人とランチをして、こういう話をした」と、キントーンで発信し続けました。

そうすると、どんどん他部署とのつながりが増えていって。
林田
今では、新しく入社した中途社員を歓迎する「中途ランチ会」が、小林さん主催で毎月開催されるのが当たり前になっていますよね。
小林
気づいたら公式行事みたいになってきました(笑)。

活動がどんどん認知されていって、転職した1年後にはサイボウズ社内の年間MVPを決める「サイボウズオブザイヤー」で新人賞をもらいました。「この方向で進んでいいんだ」と自信を持てましたね。

※サイボウズオブザイヤー…サイボウズ社内の年間MVPを決めるイベント。社員が「ありがとう」を伝えたい人にコメント付きで投票し、一番多かった人が選ばれる仕組み。他部署とのつながりをつくる活動が評価され、小林さんがMVP受賞。

流石
三木さんも、業務に慣れるのに苦労されたあと、何か行動されたんですか?
三木
私のように、サイボウズの仕事の進め方やコミュニケーションに最初慣れない人もいるだろうと思い、中途社員向けにコミュニケーション勉強会を企画しました。

三木さんが企画した「中途社員のためのツール勉強会」では、「対面とオンラインコミュニケーションの使い分け」「業務のやりとりに絵文字は使うか」「質問するときは公開スペースのほうがいいのか」などが話された

小林
あの勉強会、よかったよね。
三木
「モヤモヤが晴れてスッキリした!」「勉強会を開いてくれてよかった!」という声があって嬉しかったですね。

あとは、同じ時期に入社した中途のメンバーと一緒に、人事に対して「中途社員へのフォローが手薄なんじゃない?」と伝えました。
流石
おお、人事にも働きかけたんですね。
三木
その結果、他にも同じような声が上がっていたこともあり、社内で「中途社員のオンボーディングに力をいれよう」というプロジェクトが立ち上がりました。

人事や情シスによってオンボーディング改善が行われ、本部長会議で起案された

三木
さっそく人事が中途社員向け研修の頻度を改善してくれたり、情シスが社内システムの使い分けをわかりやすく資料にまとめてくれたりしたので嬉しかったです。
流石
すごい。林田さんはどうですか?
林田
私は「マーケティングやサポートなど、いろいろな部署と連携して営業活動を行っていきたい」という思いがあったのですが、人数が多い東京本社で動き出すのは難しそうで。

そこで、まずはスピーディーに動ける関西チームだけで、お客様のフォローを部署横断でできるようなプロジェクトを立ち上げました。

林田さんが立ちあげた「関西一気通貫プロジェクト」は、全社員に見えるようになっている

林田
そうしたら東京本社の営業部にもそれが伝わり、「いいね!」と言われるようになって。

東京本社でも「お客様の行動を部門横断できちんと把握し、フォローしていこう」という方針が広がり、今はいくつも部門横断プロジェクトが立ち上がってますね。

課題を見つけて改善できるのは、社内に心理的安全性があるから

流石
これまで「サイボウズ」というといいお話ばかり聞いていたので、サイボウズにもいろいろな課題があることがわかって、なんだか親近感がわいてきました。
林田
メディアではきれいなところばかりが取り上げられがちですが、大企業病が始まりそうだとか、中途社員へのフォローが手薄だとか、課題と感じる点はたくさんありますよ。
流石
それにしても、みなさん社内で課題を感じたら、何かしら自分で行動したり、人事や上司に伝えたりしているんですね。

ふつう中途社員って「目をつけられないようにしよう」「まずは業務をちゃんとできるようになってからそういう改善はしよう」と思ってしまいがちだと思うのですが……。
三木
なんだろう、サイボウズ自体に心理的安全性があるから、改善活動をしやすいですよね。
小林
ほとんどのやりとりがオープンになっているのは大きいですよね。

社内SNSのキントーンで問題だと思っていることをつぶやけば、共感してくれる人や解決しようとする人が集まるんです。
林田
「いいね!」の数で、誰か共感しているかわかるしね。
三木
そのあと、誰かしらが解決するプロジェクトが立ち上げてくれて、改善していくよね。
小林
前職はコミュニケーションの手段がメールだったから、何か社内で問題に思うことがあっても、それを伝えるには上司と飲みにいくしかありませんでした。

でもサイボウズはキントーンというオープンな場所でみんながつぶやいているから、自分の気持ちを表明しやすいと感じています。
三木
うんうん。社内を良くしようとしているのは中途社員だけじゃなくて、若手もやっています。
林田
最近だとマーケティング部に配属された新人4人が「副社長のTwitterアカウントが古臭いんじゃないか」といって、副社長のTwitterをプロデュースする企画を始めてたよね。
三木
若手社員が思ったことを全然隠さず言うからびっくりしました(笑)。
小林
会社で理想を達成しようとすれば、なにかしら問題が出てくるのは当たり前。そんなときに、みんながそれぞれやるべくアクションを見つけて、自分たちで改善していく。それがサイボウズだと思います
三木
自分が動かなきゃ変わらない。誰かが変えてくれるわけじゃないから辛いこともあります。

でも、声を上げればちゃんと改善する雰囲気がある。だから、みんな日々当たり前に課題解決している気がしますね。
林田
サイボウズはこれからも人数が増えていくから、新しい壁にぶち当たっていくと思います。

でも「楽しく仕事をしよう」というサイボウズが、大企業病になってコケちゃうのは本当に嫌。だから、これからも自分たちのできる範囲で努力していきたいです。

文・流石香織/編集・松尾奈々絵(ノオト)/撮影・二條七海/企画・熱田優香

「ビジネスのバラバラをひとつに。キントーンの詳細はこちら」

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執筆

ライター

流石 香織

1987年生まれ、東京都在住。2014年からフリーライターとして活動。ビジネスやコミュニケーション、美容などのあらゆるテーマで、Web記事や書籍の執筆に携わる。

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撮影・イラスト

写真家

二條 七海

写真家→ホームレス→LIG.inc→フリーランスフォトグラファー。 現在は著名人や芸能人の人物撮影を中心に行っている。 多様な作風が持ち味。好きな食べ物はハンバーグ。

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編集

ライター

松尾 奈々絵

コンテンツメーカー・有限会社ノオトのライター、編集者。担当ジャンルは働き方や街紹介メディアなど。

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