サイボウズ株式会社

人生の目的は見つけるものじゃない。いま、やるべきことにベストを尽くすだけ──ティール組織 著者の天職との出会い方

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 働いている社会人
  • キャリアに悩んでいる人
  • 組織運営に関心がある経営者
  • 人的資源管理を担当する人事関係者
  • 自己啓発に興味があるビジネスパーソン
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで得られる知識は、フレデリック・ラルー氏の人生観とキャリアの洞察です。彼は『ティール組織』の著者であり、"目的"についての新しい考え方を提唱しています。彼は、人生の目的は探し出すものではなく、現在その場でやるべきことに全力を尽くすことで自然と発現するものであると考えます。個人の目的や組織の目的も同様で、無理に探すものではなく、開かれた姿勢でその目的が現れるのを待つべきであるとしています。この視点は、伝統的な目標設定の考え方とは異なり、人生の目的が外から与えられるものとして存在すると考える点が特徴です。また、過去の経験や傷が未来の自分への贈り物となり得るという視点も示しており、苦しい出来事が逆に自分の能力や使命につながることを述べています。これらの考え方は、個人のキャリアや組織運営の新しい指針を提供します。

Text AI要約の元文章
働き方・生き方

仕事ってもっと楽に考えてよかったんだ

人生の目的は見つけるものじゃない。いま、やるべきことにベストを尽くすだけ──ティール組織 著者の天職との出会い方

「自分の人生の目的はなんだろう?」

生きていくうえで、自らにこのような問いかけをする人は多いのではないでしょうか。

新しい組織のあり方について提唱し、大きな話題を呼んだ『ティール組織』著者のフレデリック・ラルーさんは、「個人においても組織においても、実現すべき目的は突きつけられるもの。探して見つけるものではない」といいます。

個人や組織は、どのように「目的」と出会い、実現に向けて踏み出していけばいいのでしょうか。 ラルーさんが個人史を交え、目的との付き合い方について語ります。

※この記事は、9月14日に東京工業大学大岡山キャンパスで開催されたイベント「ティール・ジャーニー・キャンパス 」での、ラルーさんの講演を元に作成しました。

トップ大学を首席で卒業。マッキンゼーの仕事は楽しい。でも、人生の目的はわからないまま

『ティール組織』を読んで「今後は組織からヒエラルキーやマネジャーは不要になる」という話に反応してくれる人はたくさんいます。

ですが、この本の真のテーマである「目的の進化、人間の進化」に関心を抱いてくれる人は少ないと感じています。

ですから、今回「わたし自身の人生の目的」をテーマにお話しできることをとてもうれしく思います。

フレデリック・ラルー。『ティール組織』著者。マッキンゼーで10年以上にわたり組織変革プロジェクトに携わったのち、エグゼクティブ・アドバイザー/コーチ/ファシリテーターとして独立。2年半にわたって新しい組織モデルについて世界中の組織を調査し、『ティール組織』を執筆。17カ国語に翻訳され、40万部を超えるベストセラーとなる。現在は家族との生活を最も大切にしながら、コーチや講演活動などに取り組み、本書のメッセージを伝えている。

さて、わたしの場合は、「人生には目的があるものだ」と気づくまで、ある程度時間がかかりました。

子どものころは、いわゆる優等生で成績はトップでした。素晴らしいことのように聞こえるかもしれません。でも、当時は周囲に期待されることをやっているだけで、自分自身が何を望んでいるのか。自分が何者なのかについて、考えたことはありませんでした。

高校を卒業した時点でも、自分の人生の目的についてはとくに考えていませんでした。

大学は、ベルギーのトップ大学に入学しました。その大学には、もっとも成績優秀な学生はコンサルティング・ファームで働く、という暗黙のルールがあったので(笑)、わたしも卒業後はマッキンゼーに就職しました。

マッキンゼーの仕事はエキサイティングで楽しいものでした。一方で、ある疑問が芽生えました。わたしの仕事はコンサルタントとして、 投資銀行を始めとする、すでに裕福なクライアントがさらに利益を上げられるようにすることです。「この仕事に一体なんの意味があるのだろう?」といつも考えていました。

「半年以内に自分が本当にやりたいことを見つけ、会社を辞めよう」

そう思っていたのですが、見つからないまま、また半年を過ごす、ということの繰り返しでした。人生で何をやりたいのかがわかってきたのは、働き始めて10年後、33歳になったころでした。

コンサルタントの仕事を通して、大企業という大組織の中で仮面をつけ、自分に正直になれず、苦しんでいる人たちをわたしはたくさん見てきました。「人が組織の中で自分にとって本当に大切なことと向き合うための手助けをしたい。コーチの仕事をしたいのだ」と気づいたのです。

「いま、この瞬間に何をやるべきか」。この問いに気づいてプレッシャーから解放された

マッキンゼーを辞めることを伝えると、周囲には「信じられない。せっかく約束されたキャリアがあるのに、コーチになるなんて」と言われました。でも、わたし自身はとても幸せでした。ついに自分の人生の目的を見つけたからです。

しかし、コーチの仕事を始めて4年後、2011年の春にわたしは大きなショックに見舞われることになります。突然悲しみに襲われ、仕事に対するエネルギーがすっかり失われてしまったのです。

好きな仕事をやっているのに、なぜこんな気持ちになってしまったのでしょうか。

それまでは、大企業で働く人たちが健全な気持ちを保てるように、いわば「小さな泡のような空間」をつくり出す仕事をしてきました。でも、クライアントである大企業の本部に足を運ぶと、すべてがとても冷たい、大理石とガラスでできている世界であることがわかります 。

自分の身体が「もうこの仕事を続けたくない」と告げてきたんですね。そして、クライアントに「今進行している仕事をすべて辞めさせてほしい」と伝えました。

すると魔法のようなことが起こりました。人生で初めて自分に問うべき正しい質問がわかったんです。

それは「いまこの瞬間に、私にとってやる意味のあることは何か?」という質問です。

「いまこの瞬間に、やる意味のあることとは何か?」という質問は、「人生の目的は何か」という質問とは意味がちがいます。

この質問を自分自身に尋ねた瞬間に、プレッシャーから解放されました。そして、答えはすぐに出ました。「大企業とはまったくちがう形態の組織を新しい観点からつくることは可能か」を探ること。すなわち『ティール組織』という本を書くことでした。

目的は見つけるものではない。目的が自分を見つけてくれる

この体験はアーティストがよく言う、「アイデアが突然降ってきた」というものと同じだと思います。わたしが本のアイデアを選んだのではなく、アイデアがわたしを選んでくれたんですね。

実はこういう話はあまり人には話さないようにしているんです。「どうかしちゃったんじゃないの?」って言われるから(笑)。

それでも、みなさんにお話ししたのは、人生の目的について、勘違いしている人が多いからです。

多くの人は、「人生の目的は一度定めたら、一生変わらないものだ」と考えがちです。日本にあるかどうかはわかりませんが、欧米には「人生の目的を発見する」という名目のワークショップやセミナーが数多くあります。でも、わたしはもうそのやり方を信じていません。

わたしが信じているのは、米国の作家パーカー・J.パーマーによる、もっと美しい考え方です。パーマーはこう言っています。「長い間、わたしは自分がこう生きたい、と思って人生を過ごしてきた。でも、あるとき『自分を通して実現されるべき人生』 を生きればいいのだと発見した」 と。

いま、わたしはそういうふうに生きています。人生の目的は神秘的なもので、自分で発見するようなものではありません。わたしがすべきことは、人生の目的がわたしを通して実現されるように、できる限り自分の人生をオープンにし、目的が入ってくるためのスペースを用意することです。

この生き方を実行する過程で発見したのは、頭脳は大して役には立たないということでした。本当にすべきことか、しなくてもいいことかは、身体が決めてくれます。どうしてその決断をしたのか、それが今後の人生にどうつながっていくのかを頭で考えるのは、身体が決めた後です。この生き方を始めてから10年の人生はとても順調に進んできたと感じています。

マッキンゼーで働いたころは「どんな人生にすべきか」「でも幸せじゃないな」という考えで頭がいっぱいでした。

いまは人生が自ら語ってくれるのを待ち、その声が聞こえたらベストを尽くすだけ。人生の目的は自分が宣言するものではなく、突き付けられるもの 。自分はそれに従えばいい。

これは個人だけでなく、組織の人生にも当てはまることです。

だから、「組織には目的が必要。みんなで考えて定義しよう」という話には、違和感があります。個人の人生の目的同様、組織には、組織を通して、実現されたがっている目的がある。これがわたしの考えです。必要なのは目的を考え出すことではなく、この会社を通して、目的がどのように実現されたいのかに耳を澄ませることなのです。

心の傷がのちの人生を助けてくれる

最後に、人生における「傷」が、わたしたちの人生にとって大きなギフトになるという話をさせてください。人は、人生の中でいろいろな傷を負うものです。でも、その傷自体がギフトとなり、人生の目的の実現を助けてくれるのです。

再びわたし自身の話に戻ります。8歳のころ、クラスメイト全員から突然無視されたことがありました。とてもつらかった。

休み時間もひとりぼっちだったので、クラスメイトを観察することにしました。すると、関係性の力学がわかったんです。実は、わたしにいちばん意地悪をする子は、次に無視されるのは自分なのではないかととても恐れていました。また、リーダー役の強い子はいつも強い存在でなくてはならないから、 ちっとも幸せそうじゃない。

この小学校時代の経験が、わたしにとってのギフトです。この経験を通して、人を観察する能力を持つようになり、のちに『ティール組織』という本を書くことにつながったのだと思います。

「傷」がギフトとなり、その後の人生によい影響を与えてくれることは、個人だけでなく、組織にも当てはまることです。

だから、わたしは「自分の組織をティール組織に変えたい」と言うリーダーによく伝えています。

「あなたの人生を振り返ってみてください」 と。

すべて過去の傷が結果的にギフトとなって、あなたや組織を通して実現されることを望んでいる目的とにつながっていることがわかるはずです。

人生に対するギフトを受け入れる準備はできていますか?

執筆・編集:鈴木統子/撮影:高橋団
本記事の後編・ラルーさんとガイアックス上田さん、サイボウズ青野の対談記事はこちら
2019年10月31日個人をないがしろにする組織はもう生き残れない──ティール組織 フレデリック・ラルー×上田祐司×青野慶久
September 25, 2019In Work As in Life, Let Your Purpose Find You
2018年10月10日ティール組織って何? 誤解されがちなポイントは?──第一人者 嘉村賢州さんに聞いてみた
2018年9月 5日「人生の目的を見つけて邁進している」なんてウソ、「仕事の意味」ばかり考えてもしょうがない──田端信太郎×青野慶久

タグ一覧

  • やりがい
  • やりたいこと
  • ティール組織
  • フレデリック・ラルー
  • 人生の目的

SNSシェア

  • シェア
  • Tweet

執筆

編集部

鈴木 統子

サイボウズ株式会社コーポレートブランディング部に所属。 児童書やビジネス関連のコンテンツなどの編集を経て、2018年にサイボウズに入社。

この人が書いた記事をもっと読む

撮影・イラスト

編集部

高橋団

2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。

この人が撮影した記事をもっと読む

Pick Up人気の記事