サイボウズ株式会社

なぜ今まで「本業だ、複業だ」と境界線を引くことにこだわってきたのだろう?

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 地方で働くフリーランスや複業者
  • NPO法人の関係者
  • 企業の人事担当者
  • コミュニケーションに興味のある人
  • 働き方改革を考えている人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、本業と複業の境界線をどのように引くべきかについての新しい視点を得ることができます。著者の竹内義晴は、NPO法人を運営しながらサイボウズで複業しており、長年にわたり両方の仕事を明確に分けてきた経験から、本業と複業の知識やスキルをそれぞれの場に持ち込むことに対して疑問を持つようになったことを述べています。そして、両方の仕事が通じるテーマを持っていることから、二つの仕事を融合させることで双方にメリットがある可能性に気づき、具体的な行動としてコミュニケーション勉強会を開催する試みを始めています。

また、複業にはさまざまな形があることを認識し、複業をしている他の人もそれぞれに合ったスタイルを見つけることができるという考えを示しています。このように、本業と複業の境界線を柔軟に考えることができるようになると知識やスキルを活かしたより自然な働き方が実現する可能性があることがわかります。

Text AI要約の元文章
働き方・生き方

長くはたらく、地方で

なぜ今まで「本業だ、複業だ」と境界線を引くことにこだわってきたのだろう?

地方でNPO法人を運営しながら、サイボウズで副(複)業している竹内義晴が、実践者の目線で語る本シリーズ。今回のテーマは、本業と複業の境界線。状況にもよるが、もし、両方にとってメリットがあるなら、本業と複業の境界線はきっちり引かなくてもいいのかもしれない。

サイボウズで複業を始めて1年半になる。

私の本業はNPO法人の運営なのだが、今まで、本業とサイボウズでの複業をきっちり分けることをかなり意識してきた。なぜなら、お互いの業務に影響を与えないことが、複業をする者の当然のたしなみだと思ってきたし、それがきっちり守れるからこそできるのが複業だと思ってきたからだ。

例えば、サイボウズの就業時間中にNPOの仕事をしていたら「お前、何やってんの?」ということになるだろう。時間的にもそうだし、仕事の内容的にもそうだ。会社のリソースを、他に使うのはもってのほかだ。

逆の言い方をすると、私がサイボウズのリソースを本業で使わないように、本業の知識やスキルを、複業であるサイボウズに持ち込むこともあまりよくないことだと思ってきた。

この考え方は、今も基本的には変わっていない。

だが、最近、本業と複業の境界線を厳密に引きすぎることに、ジレンマを感じるようになった。

私の本業とサイボウズでの複業

ここで、私の本業とサイボウズでの、それぞれの仕事内容や役割について簡単に触れておきたい。

私の本業はNPO法人しごとのみらいの運営である。職場の世代間ギャップや険悪な人間関係、ストレスなどの問題を解決するコミュニケーションの専門家だ。「もっと『楽しく!』しごとをしよう。」をテーマに企業研修や講演、メディアや専門誌への寄稿、コーチングやカウンセリングを行っている。

サイボウズでの複業は、主にブランディングと認知活動である。サイボウズ式の記事を企画・編集・執筆している他、サイボウズのワークスタイルやチームワークメソッドを社会に広げる事業の認知活動を担当している。

しごとのみらいの事業目的は「働きやすい職場を作り、楽しく働くビジネスパーソンを増やすこと」であり、サイボウズの理念「チームワークあふれる社会を創る」と通じるところが多い。実際、この理念に共感したから、サイボウズで複業を始めた。

一方、業務的には、しごとのみらいはコミュニケーション、サイボウズはブランディング・広報と異なるため、これまでは意識的に分けることができたのである。

複業の問題を本業のスキルで解決できないジレンマ

だが、サイボウズの業務や社内の雰囲気に慣れれば慣れるほど、本業と複業を切り分けることにジレンマを感じるようになってきた。それを一言で言えば、「サイボウズの問題を、本業の知識やスキルで解決したいのにできないジレンマ」である。

例えば、これはサイボウズ チームワーク総研でよく使う講演資料だが、サイボウズには在宅勤務や人事評価、育児休暇や採用などの「制度」や、情報共有クラウドや遠隔で仕事ができる会議システムなどの「ツール」、さらには、多様性重視、個性の尊重、公明正大といった「風土」がある。

これらは、他社からもご評価いただいている仕組みである。複業を始めた当初は、私の知識やスキルを持ち込む必要はない、むしろ、持ち込まないほうがいいと思っていた。なぜなら、サイボウズの優れた仕組みを、他のノウハウを持ち込むことで濁らせないほうがよいと思ったからだ。

でも、サイボウズに全く問題がないかというと、そうではない。例えば、以前、ある社員から、グループウェア上で次のような発言があった。

制度、風土等については研修を受けているが、1on1(※著者訳:1対1でざっくばらんに話をすること)やフィードバックのやり方(コーチングとか?)については各自独自な気がする。サイボウズとして 1on1 はこういうことを聞いて欲しいとか、マネージャーとしてこの部分を押さえて欲しいとか。そもそも 1on1 やフィードバックのやり方はこうすると良いよ?とかあっても良いのでは?

一言で言えば、「サイボウズには制度や風土はあるけれど、それを具体的に運用するためのコミュニケーションのやり方があったほうがいいのでは?」という提案である。

実は、このような印象を持ったことが私にもある。私自身も1対1で上司と会話をしたり、同僚とグループウェア上でやりとりすることが多々あるが、「ここをもう少しこう変えると、もっとコミュニケーションが円滑になるのにな」と思うことが何度かあった。

そもそも、「制度」「風土」「ツール」を下のレイヤーで支えているのはコミュニケーションなのではないか。

だが、本業であるコミュニケーションの知識やスキルを持ち込むと、本業と複業を混同することになってしまう。

しかし、目の前には困っている人がいて、自分の知識やスキルを活かせる課題がある。それなのに、それを活かすことができないなんて……。社内から「外部のコミュニケーション研修に行ったほうがいいのではないか」という声が聞こえてきたとき、「外部に研修に行くぐらいなら、ボクに聞いてよ―」と思ったのだ。

本業のスキルを生かしたほうがお互い幸せなのでは?

そこで、このジレンマを解消すべく、できることから動いてみたいと思った。

私は新潟在住で、東京のオフィスには月に一回出勤する。そのタイミングで、ランチを兼ねたコミュニケーション勉強会を始めることにした。ランチの時間なら、誰にも迷惑をかけることもない。グループウェアに「コミュニケーションの勉強会をやりますよー」と書き込んだら、10名ほどの人が参加してくれた。初回のテーマはコーチングにした。

反応はまぁまぁよさそうだ。

今後は、さらに発展させて、社内外に向けた勉強会を定期的に開催したり、社内研修にしたりできたらおもしろいと考えている。本業の知識やスキルを活かすことによって、サイボウズの社内がよりよくなるなら、私にとってもうれしいことだ。

また、更に発展させて、チーム作りに必要なコミュニケーションの知識やスキルを一緒に開発してもいいし、成果が実ればチームワーク総研の研修として社外に提供してもいい。また、しごとのみらいが研修の社外パートナーになってもいい。

このように、本業と複業を融合すれば、幸せになれる人たちが増えそうだ。

このことに気がついてから、私はこう思った。「なぜ今まで、本業だ、複業だと境界線を引き、分けることにこだわってきたのだろう」と。そこで、2019年を迎えた今年の個人的なテーマとして「本業と複業の融合」を掲げた。

100人いれば100通りの「複業の形」があっていいのでは?

とはいえ、実際には「そこは、切り分けておいたほうが……」ということもあるだろう。理想通りにならないこともあるかもしれない。

また、『サイボウズで働いて「複業には4種類ある」と痛感し、やっぱり複業はいっしょくたには語れないよねと思った話』でも触れたが、複業の形は本当にさまざまだ。

2017年8月31日サイボウズで働いて「複業には4種類ある」と痛感し、やっぱり複業はいっしょくたには語れないよねと思った話

私のように、今までの知識やスキルを活かした複業の形もあれば、全く関係のない業種・業態の複業もある。この例が、すべてに適用できるとはさらさら思っていない。融合するにも、社内の理解が必要であろう。

だが、私にとっては(あるいは、サイボウズにとっても)、融合させるほうが良さそうだし、境界線を引かなくてもいいのなら今までより自然体でいられそうだ。まずは、社内に伝え、勉強会を続けることから始めてみたい。

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執筆

編集部

竹内 義晴

サイボウズ式編集部員。マーケティング本部 ブランディング部/ソーシャルデザインラボ所属。新潟でNPO法人しごとのみらいを経営しながらサイボウズで複業しています。

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撮影・イラスト

イラストレーター

松永 映子

イラストレーター、Webデザイナー。サイボウズ式ブロガーズコラム/長くはたらく、地方で(一部)挿絵担当。登山大好き。記事やコンテンツに合うイラストを提案していくスタイルが得意。

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