サイボウズ株式会社

「いそがしくて業務改善なんてムリ」は言い訳――残業頼みの採用チームを変えたのはスクラムだった

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • ビジネスリーダー
  • HR担当者
  • 経営者
  • プロジェクトマネージャー
  • スクラム手法に興味のある人
  • 人事戦略を改善したい企業
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、サイボウズの採用チームが直面した業務の課題と、その解決に向けたスクラムの導入過程と効果について知識を得られます。旧来の残業頼りの業務スタイルでは非効率であったところ、スクラムの手法を取り入れて業務の可視化を行い、カンバンを用いることで効率化を進めたことに気づかされます。これにより、業務が属人的になることを防ぎ、チーム全体でフォローし合える体制を築いたことが重要であることがわかります。さらに、毎週のKPTの振り返りを通じて継続的な改善が行われ、結果として残業時間が減少し、新たな施策に挑戦する時間が確保できるようになったプロセスも学べます。また、改善の効果がすぐに現れなかった時のチーム内の雰囲気や、理想に向かって粘り強く改善を継続したうえで成果に結び付けたことから、対話に基づくチームビルディングの重要性も理解できます。最後に、社内全体を巻き込み、各チームのメンバーと共同で採用活動を行うことで、よりマッチングする人材の獲得に繋げたという、全社的な協力体制の築き方についても知識が得られます。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

サイボウズのつくりかた

「いそがしくて業務改善なんてムリ」は言い訳――残業頼みの採用チームを変えたのはスクラムだった

採用戦略の立案にはじまり、書類選考や面接、イベントの企画運営、応募者のフォロー、広報活動など、採用担当者がこなさなければいけない業務は多岐にわたります。

書類選考1つとってみても、Excelにエントリーシートの情報を手作業で転記したり、1人ひとりの応募者に選考結果を通知したりと、採用プロセスごとに煩雑な作業が待っています。

かつては、こうした業務に忙殺され、残業続きの毎日を送っていたサイボウズの採用チーム。しかし、チーム一丸となって業務改善を続けた結果、いまでは「新たな採用活動に費やす時間が生まれた」と言います。

採用チームが変われた秘密とは? サイボウズ採用推進部新卒採用チームのリーダーである綱嶋航平に聞いてみました。

※新型コロナウイルスの感染拡大リスクを考慮し、オンラインで取材を行いました。

働き方改革をアピールする一方、毎日残業していた

流石
サイボウズでは、複業採用やポテンシャル採用、キャリアBARなど、次々と新たな採用方法にチャレンジしています。

ただ、その精力的な活動の裏で、採用チームでは残業続きの日々を送っていたと、お伺いしたのですが……。
綱嶋
そうですね。会社説明会で「サイボウズは働き方改革に力を入れている」と話す一方、僕たちは21〜22時くらいまで残業していました

入社1年目のころの日報。当時は遅くまで仕事をすることが多かった

綱嶋
僕は新卒で入社後、すぐ採用チームに配属されたので、「このチームは一年中いそがしいのが当たり前なんだ」とずっと思っていたんですよ。

綱嶋航平(つなしま・こうへい)。2017年に新卒でサイボウズに入社。入社以来一貫して新卒採用に携わる。2019年10月より、採用推進部新卒採用チームのリーダーを務めている。

流石
どの業務に時間がかかっていたのでしょう?
綱嶋
説明会や面接など、採用プロセスごとに発生するタスクの処理ですね。目の前の膨大なタスクをこなすのに、とにかく精一杯でした。

それでもなんとか続けてこられたのですが、応募者数の増加に伴い、タスク量も膨大になっていき……。ついには、残業をしても業務が回らなくなってしまったんです。

そこで「いまの仕事の進め方に限界が来ている」と感じて、2018年1月に業務改善をスタートさせました。

タスクを可視化し、チームで業務改善を進める

流石
業務改善にあたって、どんなことをしたんですか?
綱嶋
これまでは属人化していた業務が多く、チームとして効率的に動けていませんでした。

そこで、社内のエンジニアチームで定着していた「スクラム開発(※1)」の手法を導入しました。これを実現するための手段として、タスクを細分化して進捗を可視化する「カンバン」を使っています。

※1:チームで仕事を進めるための枠組み。短期間で「計画」と「振り返り」のサイクルを行い、開発を進める。

採用チームで実際に使っていた「カンバン」。ホワイトボードにタスクを記載したふせんを貼り、チーム全体で進捗管理をする

綱嶋
まずはチームのタスクをカンバンに貼り出します。そのとき、「それぞれのタスクの処理に必要な情報」をチーム全体で書き出して、業務内容を確認します。

そうすることで業務の属人化をなくし、あるメンバーが担当しているタスクが遅延していても、ほかのメンバーがフォローできるようになるんです。
流石
なるほど、大きな課題が1つクリアできたわけですね。
綱嶋
またスクラムでは、振り返りが重要です。だから、毎週の定例ミーティングで「KPT(※2)」を使って振り返りをしています。

※2:KPT:「Keep(良かったこと)」「Problem(悪かったこと)」「Try(次に挑戦すること)」の3要素から現状を分析する振り返り手法。

流石
KPTはどのように管理していたのでしょうか?
綱嶋
キントーンの「採用推進部ふりかえり」アプリを使っています。 ここに、たとえばP(悪かったこと)に「面接の設定を間違ってしまった」と書き込むと、それが「改善すべきこと」としてタスク化されます。

このように改善点を登録して可視化することで、チーム内に「それを改善していこう」という意識づけができるんです。

「採用推進部ふりかえり」アプリの一覧。KPTを登録することで、採用チームとしてやるべきことが見えてくる

流石
実際に改善した業務には、どのようなものがあるんですか?
綱嶋
たとえば、会社説明会の運営です。改善前は、紙のリストで参加者の出欠をチェックして、それをExcelに転記したあと、キントーンに登録していました。
綱嶋
そのフローを見直して、説明会終了後に「出欠フォーム」のQRコードを提示し、参加者自らに登録してもらうようにしました。

そして、その情報をキントーンと自動連携させ、参加者を確認できるようにしたんです。
流石
なるほど。手間のかかっていた人力での作業を減らしたんですね。
綱嶋
はい。ほかにも、オンライン説明会を実施したり、面接官の管理をスプレッドシートからキントーンに移行したりと、さまざまな改善を重ねていきました。

面接官の情報もキントーンで管理している。面接の対応可否などを面接官自身が編集できる

1年かけて「どんな問題に直面しても、乗り越えられる」と自信が持てるチームになった

流石
業務改善の効果は、いつごろから現れてきたんですか?
綱嶋
スクラムをうまく回せるようになってきた、2019年1月ごろからです。気づいたら、毎日30分〜1時間くらい残業するだけで、帰れるようになっていました。
流石
成果が出るまでに、丸1年かかったんですね……。どうしてそんなにかかったんですか?
綱嶋
前半の半年間は、スクラムという新しい業務の進め方を受け入れるマインドの浸透に時間をかけました。

後半の半年間で地道に改善を重ねるなかで、じわじわと効果が出てきたものと思います。
流石
なるほど。その間、チーム内はどういう雰囲気でしたか?
綱嶋
正直、いそがしい時期は殺伐とした雰囲気になることもありました。残業が全然減らなくて、「この業務改善の努力はいつ報われるんだろう?」みたいな気持ちにもなって……。
流石
それでも、チーム一丸となって、続けられた理由が気になります。
綱嶋
やっぱり、共通の理想を持てたことが大きかったなと。僕たちのチームは「もっと効率的に仕事をして、本当に時間をかけるべき採用業務にワクワクしながら取り組みたい」という理想がありました。

その理想に立ち戻ってみると、目先の業務よりも、現状の改善のほうが大切だと思えて。だからこそ、「時間がない」を言い訳にして、業務改善を止めるという選択肢はありませんでした
流石
チームの意志は固かったんですね。
綱嶋
はい。だから、理想を達成するためなら、手段は何でもよくて。たまたま今回はスクラムにチャレンジしただけです。試せるものはとりあえずやってみて、失敗したら、また別の方法を考えようと思っていました。

だから、「サイボウズの社員は特別に物わかりがいいから」という理由ではないと思いますよ。
流石
たしかに、「同じゴールに向かっている」とわかっていれば、すぐに結果が出なくても冷静になれそうです。
綱嶋
あとは、キントーンに「改善の経緯」を蓄積したことが、モチベーションの維持につながりました。

採用推進部のスペースに、カンバンでの業務改善に関するスレッドを立て、そこに活動の軌跡をすべて残していました。

ある週の定例MTG。チームで出し合ったKPTが記録されている

綱嶋
それを見ると、「これだけのことを、ちゃんとやってきたんだ。次もがんばっていこう」って思えるんです。
流石
活動の軌跡を残すことで、一歩一歩前に進んでいる実感が持てたんですね。成果が出た現在では、チームはどう変わりましたか?
綱嶋
「今後どんな問題に直面しても、それをみんなで共有して、知恵を出し合って改善を繰り返していけば乗り越えられる」と自信を持てるチームになりましたね。

いまでは、業務改善で生まれた時間を使って、新たな採用活動にも挑戦できるようにもなりました。

チームの意志と可能性を信頼して、求める人材の採用につなげていく

流石
これからどんな採用活動を目指していきたいですか?
綱嶋
「全社での採用活動」ですね。

サイボウズの理念である「チームワークあふれる社会を創る」を目指すとき、これまでのように採用チーム主体ではなく、全社が一丸となって採用活動を進めていきたいと考えています。
流石
なぜ「全社での採用活動」が必要なのでしょうか?
綱嶋
そもそも、チームに必要な人材を一番知っているのは、社長でも、採用チームの担当者でもなく、各チームのメンバーだと思っていて。
流石
ほう…!
綱嶋
僕らはチームの意志や可能性を信頼しています。各チームの自発性に任せれば、よりマッチするメンバーの採用につながると考えているんです。
流石
どうして、そう考えるようになったんですか?
綱嶋
採用チームの担当者だけが、がんばって採用活動をすることに限界を感じたからです。

働き手の人口が減ってきている現在、採用の重要性はより一層高まっています。一方で、職種の専門性も高まり、採用担当者が応募者の能力やスキルを正確に評価するのは難しくなっている。

だからこそ、従来のように採用担当者だけが奮起するのではなく、各チームで知恵を出し合って採用活動を進める必要があるんです。
流石
なるほど。ただ、そうなると採用チームの役割って変わってきますよね?
綱嶋
そうなんです。それぞれのチームがいっしょに働きたい人を見つけてアピールするとき、僕たちはその活動を支援したり推進したりする立場が求められると思っていて。
流石
だから部署名が「採用推進部」なんですね! 実際に、それぞれのチームで主体的な採用活動はできているのでしょうか?
綱嶋
はい。たとえば先日、新卒採用の面接官から「いっしょに働きたい応募者に、面接で深掘って話したほうがいい部分をフィードバックしたい。ただ、その時間がいまはないので、何かよい方法はないか?」という相談がありました。

こちらの相談の窓口は、キントーンを使って全社的に公開した形で用意しています。

「採用相談箱」をキントーンアプリで作成し、採用にまつわる要望を全社から受け付けている

綱嶋
それに採用チームが返信していたとき、他チームのメンバーから「横からすみません。よい提案だと思うんですけど、個人的には……」とコメントがついたんです。

流石
まったく異なる視点からの意見があったんですね。
綱嶋
はい。それで改めて検討した結果、新しい案を出すことになりました。

こんなふうに、オープンな場所に意見を公開するからこそ、いろいろな議論が生まれて、採用チームだけではたどり着けないアイデアが見つかり、全社での採用活動がさらに進んでいきます
流石
自分の声が採用活動に生かされることがわかれば、「もっと採用にかかわっていこう」と意識も変わっていきそうですね。
綱嶋
そうですね。さらに営業本部では「営業人材開発部」という専門の部署まで新設されたんです。彼らは、本業務と並行して営業メンバーの採用と育成に注力してくれています。
流石
専門のチーム? 本業務と並行してやってくれるってすごいですね。どうして自発的に動いてくれるのでしょう?
綱嶋
1人ひとりの応募者と向き合うことに共感してくれているからですね。

多様なチームワークのあり方を提案するサイボウズの営業には、多様な個性を持つメンバーが欠かせません。そうしたメンバーを採用するためには、自分たちが応募者とかかわり、いっしょに働きたい人材を見つける必要がある。

だからこそ、営業メンバーが主体となり、独自の採用活動を進めてくれているんです。
流石
すごい、本格的ですね!
綱嶋
そうなんですよ。営業本部をはじめ、ほかのチームでも能動的な採用活動が進んでいますね。

よりよい採用のあり方を突き詰めた結果、採用チームだけで頑張らなくていいようになるなんて、不思議な話ですよね(笑)。 でも、そんなまだ誰も見たことのない未来をつくっていくことに今はすごくワクワクしているんです。

だからこれからも、サイボウズのみんなが採用にもっとコミットできる方法を探し続けていきたいですね。
企画:綱嶋航平(サイボウズ)/執筆:流石香織/編集:野阪拓海(ノオト)/アイキャッチ:藤田倫央
2017年11月8日サイボウズなのに早く帰れないー激務の営業チームが自分たちで働き方改革をしてみた
2017年11月 8日ここまで見せていいの?──サイボウズの「給与評価」と「キャリアパス」の裏側を、人事が赤裸々に語る

人事の業務を効率化できるキントーンの詳細はこちら

サイボウズの採用情報はこちら

タグ一覧

  • サイボウズ
  • サイボウズの社員たち
  • チーム
  • ワークスタイル
  • 働き方改革

SNSシェア

  • シェア
  • Tweet

執筆

ライター

流石 香織

1987年生まれ、東京都在住。2014年からフリーライターとして活動。ビジネスやコミュニケーション、美容などのあらゆるテーマで、Web記事や書籍の執筆に携わる。

この人が書いた記事をもっと読む

編集

ライター

野阪 拓海

コンテンツメーカー・有限会社ノオトのライター、編集者。担当ジャンルは教育、多様性など。

この人が編集した記事をもっと読む

Pick Up人気の記事