サイボウズ株式会社

「みんなのために」という社内イベントへの思い込みが、私たちを苦しめた──全員兼務の寄せ集めチームが、理想のチームになるまで

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業の人事担当者
  • 組織運営に関心のあるビジネスパーソン
  • イベント企画者
  • 社内コミュニケーションに悩む管理職
  • 経営層
Point この記事を読んで得られる知識

サイボウズのコミュニケーション促進チームは、全社イベントを「みんなのために」と意義を見出して開催していましたが、これが独りよがりな対応となっていたことに気付き、2020年は全社イベントを行わない方針を決定しました。チームが全員兼務で多忙を極めている中で、限られたリソースを有効活用しようと業務改善に着手し、その手段としてタスクの可視化と優先順位の設定を行いました。これにより、無駄な業務を削減し、チームのフォーカスすべきポイントに注力できるようになりました。イベントに対する参加者の意識をアンケートで確認した結果、参加者のニーズとイベントの目的がずれていることがわかり、小さなコミュニティ形成を目指した施策に切り替えました。結果として、コミュニケーションの促進方法をより効果的に再構築し、組織全体の幸福感を増大させる取り組みを実現しました。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

サイボウズのつくりかた

「みんなのために」という社内イベントへの思い込みが、私たちを苦しめた──全員兼務の寄せ集めチームが、理想のチームになるまで

歓迎会や送別会、新年会などなど……。

国内外に拠点があり、1000名近くの従業員がいるサイボウズでは、社内のコミュニケーション促進のために、数多くの全社イベントが開催されています。

メンバー全員が兼務で忙しいなか、なんとか全社イベントを開催してきた「コミュニケーション促進チーム」でしたが、 2020年は全社イベントに注力しない、という方針を決定します。

なぜそのような決断に至ったのでしょうか? コミュニケーション促進チームのリーダー・古谷ちひろに聞いてみました。

「みんなのために」と独りよがりで業務をこなしていた

わたし、全社イベントをいつも楽しみにしているんです! だから、「全社イベントの回数を減らす」と聞き、その理由が気になって……。
古谷
そうだったんですね。

回数を減らそうと思ったきっかけは、わたしたちコミュニケーション促進チームが、全社イベントを「みんなのために」と独りよがりでこなしている、と気づいたからなんです。

古谷ちひろ(ふるや・ちひろ)2015年にサイボウズに中途入社。2019年コミュニケーション促進チームのリーダーに就任、多様性理解促進チームも兼務している

独りよがりですか……?
古谷
はい。そもそも、全社イベントの運営って、企画や日程・会場の調整、出席確認……と、毎回することが多くて。

部署内のチーム編成が変わり、1000人近い社員が所属する会社の社内イベントを担当する「コミュニケーション促進チーム」が発足されました。

しかし、メンバーはたった4人、その上、全員が別のチームを兼務している状況で、企画、運営と全社イベントに関する全ての業務をいきなり引き継ぐことになったんです。

当初は、「目の前の仕事を期限内に全部こなすことが重要なんだ」と、とにかく必死にイベントを動かしていました。
うんうん。ほかの会社でも、そう思いながら動く人は少なくなさそうですね。

翠(みどり)。サイボウズ入社2年目。イベントが大好きで、全社イベントは全て参加している

古谷
今回の翠さんみたいに、まっすぐに質問してくれるのがサイボウズの特徴ですよね。

ただ、会社の行動指針にもなっている、「隠しごとはせずに正直を尊重する」という“公明正大”な意見が、時には心にグサグサと刺さってきて……(笑)
えっ、どんな意見があったんですか?
古谷
たとえば、「イベントがおもしろくない」とか「料理はこういうのがよかった」とか。

もちろん、そうした意見は今後に生かせるよさもあります。

ただ、ほかの業務で忙しいなか、時間をかけて手探りでやっているので、ネガティブな意見ばかり聞こえてくると、やっぱり疲弊してしまうというか……。

そのとき、「参加者もあまり楽しんでないし、準備しているわたしたちも楽しくない。これって誰も幸せじゃないかも?」と思ったんですよ。
あ〜なるほど。でも、そう思っても仕事なので、「文句多いから、やりたくない! やめる!」なんてできませんよね。板挟みだ……。
古谷
そうなんです! 仕事だから、やらなきゃいけないんです

当時、わたしはリーダーになりたてで、何をしたらいいのかわからなかった。でも、とにかく現状をどうにかしたい。

その一心で、チーム外のメンバーの力を借りつつ、業務改善を始めました。

まずは「自分たちの今」を知る。そして、無駄な業務量をそぎ落とし、「フォーカスすべき業務」を見つける

とはいえ、ほかのチームとの兼務で通常タスクも多いなか、業務改善を行うのは大変ですよね。

どのようにして、改善を進めたのでしょうか?
古谷
チームのリソース自体は変えられないので、タスクの量を調整して、優先順位を決めていきました。

キントーンに、各メンバーが持つ他部署の仕事も含めた、すべてのタスク量を入力。それをレポート機能でグラフ化することで、「1週間のうち、コミュニケーション促進チームにかけられる時間」を直感的に把握できるようにした。縦軸がタスク量、横軸がメンバーとなっている

古谷
最初のうちはチームメンバー全員、「1週間のうち、イベント運営にどれだけの時間をかけられるのか」がわからない状態で。

だから、そのだいたいの時間数を数値化して、確認してみることにしたんです。すると、イベント運営に割ける時間がほとんどないとわかって……。
リソースはどうがんばったって増やせない……。すでに通常タスクで、いっぱいいっぱいだったんですね。
古谷
はい。「チームとしてやるべきこと」と照らし合わせてみると、タスクがあふれていて。これは、みんな疲弊するわけだなと。

ただ、時間数の可視化によって、チームメンバー全員が「この人は忙しすぎるかも?」「逆に、この人には仕事をもっと振っていいかも?」と、それぞれの業務負荷を把握しやすくなりました。
そうなると、メンバーはリーダーから言われなくても、「手が空いているので、忙しい人を手伝おう」と率先して動けそうですね!
古谷
そうなんです。それにグラフ化すると、上司への報告のときにも活用できるんですよ。

たとえば、上司から「創業記念イベントは、この期間までに、ここまで達成してほしい」とお願いされたとします。

そのとき、このグラフを見せれば、「それには全員のリソースが足りないから、優先順位をつけて着手してもいいですか?」と現状の報告と相談がしやすくなります

コミュニケーション促進チームの上司である中根とのやり取りの際、整理した情報とグラフを使って説明した

上司といっしょに意思決定しやすくなるわけですね。
古谷
はい。こんなふうに現在の業務とリソースを見直すことで、不要な業務がそぎ落とされ、「チームがもっとフォーカスすべきこと」を考える時間が生まれました

全社イベントよりも効果的な「チームの想い」を実現する手段に気づく

その新しく生まれた時間で、どんなことを話し合ったのでしょうか?
古谷
冒頭でお話ししていた「全社イベントの改善」についてですね。わたしたちは、全社イベントをしても手応えを感じられず、ずっと苦しかったんです。

そこで、「じゃあ、どうして疲弊しちゃうんだろう?」と。業務改善のために新たに設けた“週1回の振り返りの時間”で、その理由をみんなで考えてみました。

すると、毎回のイベントで「どんな目的で来ていたのか」「参加者は何人いたのか」などの効果測定はせず、時期が来たらとりあえず開催しているからだ、と気づいて。

つまり、全社イベントの「参加者の目的」と「効果」があいまいで、自分たちの仕事をどう評価すればいいのかわからなかったわけです。
そうか、なるほど! そのことに気づいたあと、どんなアクションを取ったのでしょうか?
古谷
まずは、全社イベントの参加者数や参加目的を把握するために、2019年11月のイベントでアンケート調査をしました。

より正確にイベント参加者の声を集めるため、アナログ形式のアンケートを用意し、その場で集計

古谷
それまで、わたしたちは「いろいろな部署の人とコミュニケーションをとって、知り合いを増やしてほしい」という想いから、全社イベントを開催していたんです。

でも、アンケートの結果を見てみると、そもそも参加者が少なく、みんなが「わたしたちが意図していた目的」で来ているわけじゃなかったんですよね。
たしかに、わたしも全社イベントでは知り合いの人ばかりと話しているかも……!

なんとなく「内輪で集まって盛り上がろう!」というイメージで、イベントの趣旨をそこまで深く理解していませんでした。
古谷
それこそが、チームをずっと苦しめていた「参加者と企画側のすれ違い」だったんです! だからこそ、「自分たちの想いを実現するには、全社イベント以外の手段がある」と思い至って

そこで、今期から「周りとコミュニケーションを取りたいけれど、それが難しいと感じる人が気軽にコミュニケーションできる場所をつくる」をチームの理想として掲げ、施策を打つことにしたんです。
「周りとコミュニケーションを取りたいけれど、それが難しいと感じる人」には、どんな人が当てはまるんですか?
古谷
育児中などで時間の制限がある、金銭的な理由で何回も参加できないなど、イベントの参加に対してハードルの高さを感じている人ですね。

そういう人たちが気軽に仲良くなれる機会をつくることが、コミュニケーション促進のためには大事だと考えていて。
うんうん。
古谷
そのためにも、気軽に参加しやすい「小さなコミュニティ」の形成に注力しています。

結果、サイボウズのみんながもっと主体的にコミュニケーションできればいいな、と考えているんです。
小さなコミュニティというと、どのようなものでしょうか?
古谷
たとえば、『子どもと在宅勤務をする悩みを語る会』は、在宅勤務かつ家庭内保育をしているメンバー同士で雑談しながら、悩みや工夫を共有し合えるイベントです。
古谷
「子どもといっしょの在宅勤務でつらい」という声をキャッチして、普段だったら子どもの居る親同士で話せていたことを、社内でも相談できる場を作ることにしました。

お子さんの年齢が近いと悩みも似てくるのかもと考え、お子さんの年齢ごとにイベントを開催しています。

ほかにも『Zoom勉強会』では、みんなでZoomを使いこなすための知見を持ち寄ったあと、最後の30分間を雑談タイムにして、コミュニケーションできる形にしています。

いまは新型コロナウイルス感染症の影響で、ほとんどのイベントはリモートで開催しているんです。
それらのイベントが、全社イベントの代わりになる、と。
古谷
そうそう。これまでの全社イベントよりも参加してほしい人をより明確にして、「これは自分のためのイベントだ」と思ってもらえるような企画を立てているんです。
確かに目的がハッキリしているので、参加しやすくなりそう……!
古谷
こんなふうに、「チームが必死に考えてがんばっている」という運営から、参加者たちが求めている場所を提供し、イベントをさらに押し上げる運営に変えていったんです。

「いまのサイボウズ」に合わせたコミュニケーション促進の形を探していきたい

全社イベントの回数を減らしたあと、仕事に向き合うときの気持ちって変わりましたか?
古谷
大きく変わりました! いまは、効果検証で「参加者の本音」をデータとして拾っているから、みんなの考えを理解しやすくて。

社内で実施したテレワークについてのアンケートで、実際に交流会に参加した人から「ありがたい」という声が寄せられた

古谷
このイベントをすれば、こんな効果が生まれそう」とイメージできるので、企画するのが楽しいし、やりがいを感じるんですよね。
おお、それは大きな変化ですね!
古谷
そうですね。今回の業務改善でチームの負担は減って、より効果の高い施策に注力できるようにもなりました。

その形になれたことが、チームにとってもサイボウズのみんなにとっても、幸せなことだったんです。

文・流石香織/編集・野阪拓海(ノオト)、翠/企画・翠

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執筆

ライター

流石 香織

1987年生まれ、東京都在住。2014年からフリーライターとして活動。ビジネスやコミュニケーション、美容などのあらゆるテーマで、Web記事や書籍の執筆に携わる。

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編集

ライター

野阪 拓海

コンテンツメーカー・有限会社ノオトのライター、編集者。担当ジャンルは教育、多様性など。

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