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サイボウズでも、地方支社だからキャリアは諦めていた──拠点の壁は全社テレワークで変わったのか

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 企業経営者
  • 人事担当者
  • 地方支社勤務の社員
  • キャリア開発に興味がある人
  • ワークスタイル改革に関心がある人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事は、サイボウズにおけるテレワークの導入がもたらした地方支社におけるキャリア選択の変化と、働き方の改善について述べています。新型コロナウイルスによってテレワークが普及したことを契機に、地方支社の社員もキャリアの選択肢が広がったことが紹介されています。

以前は、本社勤務でなければ重要なポジションに就くのが難しいという固定観念がありましたが、全社員がテレワークを実施するようになったことで、地方と本社の情報格差が解消されつつあります。例えば、サイボウズでは会議の参加人数に制限がなくなり、情報共有がオープンになったことで、地方支社の社員でもリーダーシップを発揮できる機会が増えてきました。

具体的な事例として、地方支社の社員が本社メンバーと同等にプロジェクトに参加し、データの一元化などの企業全体戦略に関わる業務を担当できるようになったケースが挙げられています。また、kintone上で情報をテキスト化することで、情報の透明性とアクセスのしやすさが向上し、トラブルを回避しやすくなったとも報告されています。

さらに、テレワークの進展によって、社員は自分の意思でキャリアの選択肢を広げられるようになり、「地方にいるからキャリアが制約される」という見解が薄れました。これにより、実力に応じたキャリア形成がしやすくなり、地方拠点の社員も責任ある仕事を担う機会が増えています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

サイボウズのつくりかた

サイボウズでも、地方支社だからキャリアは諦めていた──拠点の壁は全社テレワークで変わったのか

「会社から転勤を命じられたら断れない」「支社で偉い立場を担当しないと、本社で偉くなれない」「責任あるポジションは本社勤務の人しか就けない」……。

そんな独特のキャリア通説がまだまだ残っている日本社会。しかし、コロナ禍でテレワークが広がったいま、その状況は変わってきているかもしれません。

サイボウズでは、2020年2月末より全社原則テレワークをスタート。現在も社員のほとんどが在宅で仕事を進めています。そのなかで、地方支社メンバーからは、「以前よりキャリアの選択肢も広がってきた」という声が上がってきています。

今回はサイボウズ大阪支社で事業戦略室に所属する林田恵美と販売代理店(パートナー)営業を担当している杉本裕樹の2人に、その実態について聞いてみました。

※新型コロナウイルス感染拡大リスクを考慮し、オンラインで取材を行いました

本社と支社の裁量の差が生み出す「支社ならではの働きづらさ」

中森
サイボウズに転職する前、おふたりとも大企業の支社に勤めていたんですよね。

当時から「支社ならではの働きづらさ」を感じていたそうですが……。
杉本
そうですね。昔いた会社では支社社員が何か大きな業務を行う際、本社の担当社員に相談する必要があって……。

その都度、本社の方の時間を押さえて、会いに行っていたんです。その時間をつかって、お互いもっといろいろできることがあるんじゃないかと思っていました。

杉本裕樹(すぎもと・ゆうき)。新卒で大手ITベンダーへ入社し、自治体向け基幹システム・端末の営業を担当。その後、関西の某SIerに転職し、システム・ネットワーク営業などを経て、2018年1月にサイボウズへ入社。現在はパートナー第2営業部、およびリージョナル営業部に所属し、民間・公共問わず、kintoneやGaroon、サイボウズ Officeを提案している

林田
それは大企業あるあるかもしれませんね。支社には重要な意思決定を行うといった、本社機能がないケースが多い。だから、支社配属だと必然的に、キャリアの選択肢が狭くなりがちなんです

わたしも前職時代、大阪支社で営業として働いていたんですが、キャリアを広げるには東京本社での勤務が必須だと感じていました。

けれど、家族は大阪にいるので、自分一人だけで転勤はしたくない。当時は「この先のキャリアをどうしよう……」と悩んでいましたね。

林田恵美(はやしだ・めぐみ)。2018年、大手食品企業からサイボウズに転職し、営業として大阪オフィスに所属。2019年に本社にある営業戦略部を兼務しながら、大阪オフィスと東京本社との合同プロジェクトを実施したのち、現在は大阪を拠点にしながら全国各地のメンバーと協力し、事業戦略室の仕事を行なっている

林田
もちろん、支社での責任あるポジションを経て、本社のポストに就くという出世コースもあると思います。

ただ、わたしはその出世コースに懐疑的で。そもそも社員の意思とは関係なく、会社が住む場所を決めたり、住む場所でキャリアを大きく制限することに「なんでなの?」って思っていました

本社メンバーだけで話が進むため、モヤモヤを感じていた

中森
そこから、おふたりとも大阪にいながら自分が望むキャリアを歩むために転職されたと。

では、サイボウズにきて、地方支社メンバーとしてのモヤモヤはめでたく解消されたんでしょうか?
杉本
いえ、実はそうでもなくて。
中森
えっ。サイボウズではテレワークも随分進んでいて、拠点問わず自由に仕事できるイメージがありましたが……。
杉本
地方と本社の働きやすさの違いについては、課題はたくさんあったんですよ。

コロナ禍以前は物理的に会議室に入れる人数に限りがあったので、パートナー企業との会議に参加できるメンバーが制限されていたんです

だから、会議では両社とも本社メンバー中心の参加になりがちで。結果、支社メンバーがトピックとなる案件を取ってきても、本社の議題が優先的に挙げられてしまう。

そういう格差には、モヤモヤしたこともありました。
中森
支社での活動が注目されづらかったんですね。林田さんはいかがでしょうか?
林田
本社メンバーだけで、なんとなく話が進んでしまうのも、支社ならではの働きづらさかもしれませんね。

わたしは本社メンバーとZoomで会議をして仕事を進めています。ただ、わたしの知らないうちに、本社メンバーが立ち話していて決まったことがあって。
杉本
あるあるだよね……。
林田
あと、わたし以外のチームメンバーは東京オフィスの同じ会議室に集まっていて、私だけZoomのような形だったんです。

東京オフィスのメンバーには、そんなつもりはなかったと思いますが、どうしても「わたしのためにZoomをつないでもらっている」と意識せざるを得ませんでした

コロナ禍がきっかけで本社と支社の情報格差がなくなってきた

林田
けれど、コロナ禍がきっかけで、そうした本社・支社間の格差が徐々になくなってきたように思います。

というのも、みんなが在宅ワークになって、Zoomに一人ひとりの顔が並ぶようになったから。わたしはそこで初めて、「やっと同じ感覚で話せるな」と思うようになりました
中森
1人だけ離れた場所にいると、どうしても疎外感がありますよね。具体的に同じように話せていると感じた経験は何かありましたか?
林田
はい。わたしはいま、営業が使用するデータを、拠点を超えて全社で一元化して、情報基盤を整える仕事をしています。

ある日、本社メンバーが「支社のメンバーから見て使いにくいところがないか、事前に確認してから進めたほうがいいよね」っていう声を上げてくれて。

コロナ禍以前はそういう支社目線の意見が出ることはめったになかったので、ちょっと感動しましたね。
杉本
変わりましたよね。僕の場合は拠点を越えて、社内のいろいろな人とコミュニケーションが取りやすくなりました。

コロナ禍前は拠点を問わず、営業メンバーは外出続きで、週1の定例会でしか話す機会はありませんでした。でも、いまはオンラインで頻度高くコミュニケーションを取るようになって

テレワークが始まったばかりの頃はどうザツダンをしていいかわからなかったのですが、次第にkintone上でも気軽に話せるようになりましたね。

サイボウズでは、ほぼすべての仕事のやりとりをkintone上で行っている

必要な情報を全てオンラインに集約することは、トラブル回避につながる

中森
オンラインだと物理的制約が取っ払われますもんね。
杉本
そうなんです。加えて、自社で担当しているパートナーさんの情報を、全国の営業メンバーで共有するルールが設定されました。

その結果、全国の営業とテキストでやりとりするようになり、社内での認識の齟齬もなくなったように思います。

拠点を超えて、定期的にkintone上で営業に関する情報の共有が行われている

中森
あいまいだった部分が文字でしっかり表現され、トラブルが減った、と。
杉本
はい。自分を含め以前より積極的にテキストで発信をする社員が増えたので、欲しい情報が簡単かつスピーディーに手に入るようになりましたね。
林田
kintoneで情報共有しているとはいえ、やっぱり本社と支社のメンバー間には、かつては情報格差はあったんですよね。

そのため、以前は情報を知っていそうな東京本社のメンバーに、意識的に自分から必要な情報を聞き出していたんですよ。
中森
意識的に行動しないと、情報格差が埋まらなかったんですね。
林田
はい。けれど、いまは定例会議で必要な情報を得られるし、そうでない情報もみんな積極的にテキストに残しておこうという雰囲気になって。「この人に聞いておかなきゃ」という焦りがなくなりました。
杉本
テキストで残してあるほうが、あとからでも見返しやすいし、トラブルも防げますからね。

テレワークが進んだおかげで、地方拠点にいても責任ある仕事を任されるようになった

中森
全社にテレワークが広がったことで、在宅勤務メンバーだけでなく、支社で働いていたメンバーも働きやすくなったんですね。

そうなってくると、本社勤務しなくても、より責任ある仕事に就けるようになるのではないでしょうか?
杉本
それは特に僕が強く感じていることですね。もともとサイボウズでも、東京本社勤務のメンバーでないと、営業チームのリーダーにはなりにくいという雰囲気があって。
中森
所属拠点によって、キャリアに天井があったと。
杉本
はい。別にもともとそんなルールはなかったんですよ。でも、「地方支社にいるなら、こういうキャリアパスは無理」といった思い込みは、自分も周りもあったように感じるんです

けれど、コロナ禍で働き方が変わり、所属の壁が一気に取り払われてきたように感じます。実際、今年1月に、僕が東京のパートナー企業の担当リーダーに任命されました。
林田
杉本くんはもともと実力あったもんね。その話を聞いたときはよかったと思った。
中森
離れた場所で責任ある仕事を任されるにあたり、不安はありませんでしたか?
杉本
いやぁ、それはありましたよ。

加えて実は、自分がメイン担当になってチームを持つことも今回が初めてで……。その上、いきなり東京のメンバーやパートナーとリモートで仕事を進めることになるのか、と。

けれど、現在はWeb会議のやりとりにパートナー企業やメンバーの協力もあって、やりとりを重ねていくうちにメイン担当者の仕事はどこにいてもできるなという手応えを感じています。
林田
サイボウズでも徐々に、場所を越えた働き方が盛んになってきていますよね。わたしが入社した2018年当時、大阪で募集されていたのは「関西の企業向けの営業職」だけで。

いまは大阪に住みながらでも、全社の事業戦略にがっつり関わる仕事をできて、すごくハッピーですね。

「地方にいるからこれしかできない」と自分で線引きしていたけど、「あれもやってみたい」って言っていいんだって思えるようになりました。

「大阪にいたら、この仕事しかないから先が見えてしまう」と絶望したこともあったので、変わりましたよね。
中森
サイボウズに限らず、今後いろんな企業でも場所を越えた働き方は広がっていきそうですよね。

他社でそうした働き方を実践していきたいと考えている場合は、どんなことが必要になると思いますか?
林田
個人的には、経営層を含む本社にいる方が、情報が少ない場所に一度身を置いてみることをおすすめしたいです。

わたしの夫も他社で働いていますが、物理的に在宅勤務はできています。ただ、「やはり出社して働く日と比べると、在宅して働く日は情報が入ってきにくい」って言うんですよ。

テレワークでも快適に業務を進める職場を作っていくのであれば、少数派の立場を想像できるようになることは必須だと思います。
杉本
その点で言えば、遠慮せずささいな情報もオープンにするってことにチャレンジした方がいいかなって思います。

「わざわざ伝える必要はないかな」と遠慮して、削ぎ落とした情報にこそ、必要な情報やアイディアが隠れていたりしますので。
林田
めっちゃ分かる。削ぎ落とされて伝えられがちな「経緯」や、少し話から逸れた「余談」こそ、実は重要なことって少なくないですよね
杉本
もちろん、完全テレワークにこだわるわけではなく、リアルに会って進めた方がいい業務もあると思います。

今後はそこをうまく使い分けつつ、場所を問わない働き方やキャリアステップを広げていくことが重要になってくるのかなと。

世の中にそういう働き方が広がれば、いままで「本社勤務じゃないから重要なポジションに就けない」と思い込んでいた支社メンバーの心持ちも変わっていくはず。
中森
そうなると、働く人たちは幸せですよね。
杉本
はい。個人的にはこの働き方を体験してしまうと、もう元には戻れないですね。私生活も仕事もあきらめずに済むとは思っていませんでしたから。

今から「物理的に東京に異動しろ」と言われても、全力で断ると思います(笑)。

企画:吉原寿樹(サイボウズ) 執筆:中森りほ 撮影:栃久保誠 編集:野阪拓海(ノオト) 

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ライター

中森りほ

旅が大好きな東京在住のフリーライター&編集者。生き方・働き方系を考えるインタビュー、グルメ、旅、温泉、カルチャー系が好きです。

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撮影・イラスト

写真家

栃久保 誠

フリーランスフォトグラファー。人を撮ることを得意とし様々なジャンルの撮影、映像制作に携わる。旅好き。

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編集

ライター

野阪 拓海

コンテンツメーカー・有限会社ノオトのライター、編集者。担当ジャンルは教育、多様性など。

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