サイボウズ株式会社

「兼務の選択肢がなければ、サイボウズを辞めていたかも」──他部署での新たなチャレンジを支える仕組みとは?

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 社会人
Point この記事を読んで得られる知識

サイボウズの記事では、社内でのキャリアの幅を広げるための制度である「兼務」の取り組みについて紹介されています。この記事では、他部署での新しい分野への挑戦を望む社員にとって、完全な異動に比べて低リスクでその体験を可能にする「兼務」という選択肢のメリットが強調されています。この制度は、従業員が週の数日間を現在の部署で働き、残りの日を興味のある別の部署で働くことを許可するもので、サイボウズ内でのキャリアの柔軟性を高める手段となっています。

記事では、兼務を通じて新たな役割や自分の適性に気付くことで、キャリアの充実度や仕事に対する貢献感が高まる実例として、開発本部と人事本部を兼務している社員のケースが紹介されています。さらに、兼務は異なる視点やスキルを他のチームに提供できる機会としても評価されており、チーム間での相乗効果が生まれやすいと説明されています。

また、兼務にはコミュニケーションコストの増加や業務の優先順位の明確化といった課題もありますが、可視化された情報共有によってそれらの問題を対処する方法が紹介されています。最終的には、兼務によりミスマッチを避け、自分に合ったキャリアを模索するための手段として、本人のやりたいことと周囲との認識合わせが重要であることが強調されています。

このように、サイボウズの「兼務」制度は社員の自己成長や自立心を後押しする仕組みとして機能しており、会社を辞めるという選択をする前に多様な経験を通じて適性を模索するための有効な手段となっています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

サイボウズのつくりかた

「兼務の選択肢がなければ、サイボウズを辞めていたかも」──他部署での新たなチャレンジを支える仕組みとは?

違う分野にも経験してみたら、もっと自分の特性に合う仕事が見つかるかもしれない。でも、未経験の業務にいきなり携わるのは不安だ……こうした悩みは多くの社会人が抱えるものでしょう。

社会人3年目の今井豪人もその1人。人事部長の青野誠に相談したところ、サイボウズでひそかに流行っている「兼務」という選択肢が見えてきました。

サイボウズの兼務とは、一体どのようなものなのか、どんなメリット・デメリットがあるのか。開発本部と人事本部を兼務する岡崎一洋を交え、議論しました。

畑違いの分野への異動が不安なら、スモールステップで体験する「兼務」を

今井
社会人3年目となり、いまの仕事にも慣れてきたのですが、今後のキャリアについてはまだまだ漠然としていて……。

特にサイボウズは、自分で異動先を選べるので、キャリアをより広げるために、ほかの分野への挑戦をしたいです。実は……人事に興味があって。

今井 豪人(いまい・かつと)。新卒で酒類・食品メーカーに入社。2020年7月にサイボウズに転職し、コーポレートブランディング部に所属。日々の仕事にやりがいを感じている一方、社会人3年目となり、自分のキャリアについて悩み始めている

青野
いいじゃないですか! ぜひチャレンジしてみてください!
今井
ありがとうございます(笑)。

でも正直、ミスマッチが怖いんです。人事領域の仕事に興味があるけど、現在のマーケティングとはまったくの畑違いなので、そもそも自分に適性があるのかも心配で……。

いざ異動しても思うように成果を上げられず、周囲に迷惑をかけるかもしれない、という不安があります。
青野
よくわかります。僕も営業本部から畑違いの人事本部に異動したとき、同じように不安を抱えていました。

なるべくミスマッチのリスクを慎重に見極めながら、自身のキャリアを形成していきたいですよね。
それなら、スモールステップで人事の仕事を経験するために、「兼務」を活用していくのはどうでしょう?

青野 誠(あおの・まこと)。2006年に新卒でサイボウズに入社。 営業やマーケティング、 新規事業の立ち上げなどを経験後に人事部へ。 現在は採用、育成・研修、制度づくりなどを担当

今井
えっ、兼務ですか?
青野
はい。たとえば、週4日はいまのマーケティングの仕事をして、残り1日は人事の仕事をする、といった働き方です。

いきなり完全に異動するよりは、リスクは減らせるかもしれません。サイボウズではこれまで開発と法務、クラウド運用と経営企画、営業と人事など、多岐にわたる兼務実績がありますよ。
今井
そんなことができるんですね! でも、それって実際どんなふうに働くのか、ちょっと想像しづらいですね……。

いまより忙しくなりそうですし、周囲に迷惑をかけないかも心配です。
青野
じゃあ実際に兼務をしているメンバーにお話を聞いてみましょうか?

兼務という選択肢がなければ、サイボウズを辞めていたかもしれない

岡崎 一洋(おかざき・かずひろ)。2007年にサイボウズ中途入社。開発本部に軸足を置きながら、2019年から人事本部を兼任し、エンジニアのキャリア(中途)採用にも携わっている

青野
そんなわけで、ただいま開発本部と人事本部を兼任している岡崎さんをお呼びしました。
今井
よろしくお願いします!

興味がある人事領域の兼務ということで、岡崎さんの働き方を根掘り葉掘り伺えればと思います。
岡崎
いやぁ、こんなふうにお話できる機会をもらえるのは、自分としても嬉しいですね。

わたしは兼務という選択肢がなければ、サイボウズを辞めていたかもしれませんから(笑)。
今井
!? いきなりの衝撃発言。
岡崎
というのも、わたしが兼務をはじめる少し前に、開発本部は組織改革でマネジャーをなくしたんです。

当時マネジャーだったわたしは、そこでサイボウズでの自分の役割やキャリアパスを見つめ直すキッカケになって。実は、少し転職活動もしていたくらいでした(笑)。
今井
なんと。
岡崎
でも、そんな折にたまたま人事といっしょに仕事する機会があり、人事領域に興味が湧いてきて。これもいい機会だと捉えて、人事での「兼務」に挑戦してみたんです。

そして兼務を続けるうちに、サイボウズで自分が貢献できることがまだまだあるじゃないか、と気づけた。だから、いまサイボウズで楽しく働けているのは、兼務のおかげでもあるんです。
青野
「サイボウズを辞めていたかも」というのは僕も初耳で、いますごく驚いています(笑)。当時、そんな悩みを抱えていたんですね。
今井
このエピソードこそ、兼務を通して新しいキャリアステップを見つけられる可能性そのものですね……!

岡崎の「大人の体験入部」kintoneスレッド。業務に必要な情報は随時ここで更新・集約されていた。この制度を通じて、人事本部に3ヵ月間の体験入部をした後、正式に兼務することになった

兼務を受け入れる側は迷惑? 既存のチームにない視点による相乗効果

今井
軸足を持ちながらも、新しい分野に挑戦できる。そうした兼務の良さは、何となく分かってきました。

でも、フルコミットを前提としていない別部署のメンバーがいきなり入ってくるのは、受け入れる側としては迷惑じゃないですか?
青野
いや、むしろいいことがたくさんあると思いますよ!

実際、人事本部のキャリア採用チームでは、岡崎さんが開発のタスク管理の手法を取り入れたことで、業務改善しましたからね。
今井
え、そうなんですか!?
岡崎
当時、キャリア採用チームのメンバーは2人しかいなくて、業務に関する情報や知見が属人化していたんです。

そのため、開発チームで行っている「カンバン」というタスク管理方法を導入して、チームとして仕事ができるようにしました。

これにより採用チームのメンバーから「これまで自分のタスクが滞らないよう働き詰めだったが、いまはチームでタスクを回せるので、安心して休めるようになった」と嬉しい声をもらいましたね。

kintoneをカスタマイズすることで作成した「カンバン」。週1回、チームが抱えるタスクを書き出し、メンバーが共同で業務を進められるようにした

今井
すごい、エンジニアとしての知見があったからこそできた業務改善ですね!

ただ、それって岡崎さんがマネジャー経験のあるベテランだから、できたことじゃないですか?
青野
たしかに、岡崎さんのようにここまで具体的で目に見える貢献は、スキルが伴っているベテラン社員のほうが多いかもしれませんね。

ただ、純粋にほかのチームからの視点が入ることによる相乗効果は大きいと感じます。現にサイボウズでは、今井さんと同年代の若手メンバーも数多く兼務して活躍していますよ。
今井
あー、言われてみると、うちのチームにも兼務でバリバリ活躍している若手メンバーがいます。

兼務とは思えないくらい、鋭い指摘を頻繁に繰り出していてスゴいんですよね……。

できない仕事が発生するのは仕方ない。大事なのは、メンバーに可視化して共有すること

今井
なるほど。これまで兼務のいい話ばかり聞いてきましたが、逆に困り事はないんでしょうか?
岡崎
やっぱり複数チームに所属するので、チーム間のコミュニケーションコストは高くなることですね。

わたしの場合、開発:人事=7:3くらいで業務時間を割いています。人事本部では、主に開発系の人材採用と業務改善を行うほか、定例会議に参加しています。

打ち合わせがバッティングしないようにしたり、各チームの情報を追ったり、作業時間を確保したりと、配分を調整するのはいまだに課題ですね。
青野
兼務している人からは「メインの仕事が忙しくて兼務先の業務があまりできず、申し訳なさを感じる」という話も寄せられていて。

たしかに調整の難しさは共通の課題となっていますね。
今井
そうした課題に対してどう向き合えばいいんでしょうか?
青野
よくアドバイスしているのが、週報や月報で業務内容を可視化すること。たとえば、人事本部内の採用育成部では、毎月どんなことに時間を取られていて、どんな問題を抱えているかをメンバーで共有し合っています。

兼務することで、できない仕事があるのは仕方がありません。だからこそ、できないことをわかる形でしっかり示すのが大事なんです。

岡崎の月報。その月の業務の割合やその振り返りが書かれている。月報は、所属チームのみならず全社で見えるようになっている

マネジャーからは「兼務の評価をどうするか?」という懸念も。大切なのは、本人が軸足を持って選択すること

青野
もう一つ業務の割合に関してよく懸念の声が上がるのが、評価をどうするのかということ。
今井
たしかに! サイボウズではどうなってるんですか?
青野
サイボウズの場合、給与評価はメインで所属する本部のマネジャー(本部長)が最終承認します。

通常、兼務社員がメインで所属するのは、業務割合が一番大きい本部です。そのため、業務割合が少ない本部のマネジャーからは、その本部内での貢献度について共有してもらいます。メイン側の本部マネジャーは、それを参考としつつ評価し、最終的な給与金額を決定しています。

そのため、メインで所属する本部とサブで所属する本部は必ず決まっています。
今井
なるほど。でも、兼務している人の評価って、難しくないですか?
青野
そうですね。特殊な兼務をしている人の市場価値を図るのが難しい、というのはあったかな。

たとえば、開発と法務や、経営企画とクラウド運用の兼任など仕事の領域があまりに異なるケース。そういう場合は、「社外では、どんなポジションで転職して、どんな金額になる方か」と考えて、その社外価値を給与を決める1つの指標にしています。
今井
どちらの職域をメインとしていくか、ってことですね。
青野
はい。言い方を変えると、「いろんなことやっているけど、結局何をする人なんだっけ?」となると評価されにくいのは、正直あると思います。

兼務するにしても、「自分は何をやりたいのか・できるのか」を明確にして、軸足はどこにあるのか、本人の中でも周りの関係者とも、しっかり認識を合わせていくのが大事になるんじゃないでしょうか。
岡崎
わたしの場合だと、軸足はあくまでエンジニア。その知見を生かして、チームの業務改善や開発人材の採用に取り組んでいる形です。

いまは自分がそれぞれのチームに貢献できている実感がありますし、開発も人事も楽しいのでしばらく兼務は続けていこうと思っています。
今井
自立が強く求められそうですね……。

でもお話を伺ってみて、注意点はあるものの、選択肢として兼務があるのはすごくありがたいことだなと思いました。今後のキャリアの参考にしようと思います。
青野
よかったです。ぜひぜひ。

あと1点言うとすれば……実際に兼務してみて、貢献できることが少なくなったり、かえってやりづらくなったりしたら、スパッと兼務を辞める選択肢があるのも大事かなと思います。
今井
スパッと辞める。
青野
はい。兼務をしていくうちに、自分の適性や方向性がわかり、異動する人、はたまた転職する人もいます。

あくまでも兼務は、キャリアのミスマッチを減らすための1つの手段ですから、上手く使っていただけるといいかと思います。
今井
なるほど……!

「異動」という大胆な選択肢でしかチャレンジできないと思っていたので、今日お話を聞けてすごく安心しました。上手く活用して、リスクを最小化しつつも、積極的に挑戦していこうと思います。 

本日はお時間いただき、ありがとうございました!
青野
自発的にチャレンジしてくれるメンバーが増えるのは、人事としても嬉しいです。応援しています!

企画:今井豪人(サイボウズ)/執筆:中森りほ/写真:栃久保誠/編集:野阪拓海(ノオト)

変更履歴:事実関係の表記に誤りがあったため、以下の箇所を変更いたしました。(2021/6/23 12:30)

変更前:経営企画と法務の兼任など

変更後:経営企画とクラウド運用の兼任など

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執筆

ライター

中森りほ

旅が大好きな東京在住のフリーライター&編集者。生き方・働き方系を考えるインタビュー、グルメ、旅、温泉、カルチャー系が好きです。

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撮影・イラスト

写真家

栃久保 誠

フリーランスフォトグラファー。人を撮ることを得意とし様々なジャンルの撮影、映像制作に携わる。旅好き。

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編集

ライター

野阪 拓海

コンテンツメーカー・有限会社ノオトのライター、編集者。担当ジャンルは教育、多様性など。

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