サイボウズ株式会社

「人を大切にする経営」は理想論か? コロナの危機にも曲げない、クルミドコーヒーの「結果を手放す」経営哲学

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 経営者
  • 企業経営に興味がある人
  • 持続可能なビジネスモデルを模索している人
  • コロナ禍で経営の在り方を見直したい人
  • 企業の人事担当者
  • カフェや中小企業の経営者
  • 新しい働き方を考えるビジネスパーソン
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むと、クルミドコーヒーというカフェの経営者、影山知明さんが実践する独自の経営哲学を知ることができます。影山さんは、売上や利益を最優先しない姿勢を貫き、「人を利用するのではなく支援する経営」を重視しています。このような方針のもと、事業計画書を作成せず、偶発性を大切にした経営を行っており、お客様の喜びを事業の目的に据えながら、売上はあくまで目標として据える考え方に基づいています。

クルミドコーヒーは、経済の不確実性が高まる中でも社員ひとりひとりの幸せと組織の経済的成功の両立を目指しています。売上だけを追い求めることへの限界を指摘し、誰かを喜ばせたいという情動が仕事に魂を込めるために必要であるとしています。また、影山さんは「決定権を手放す」ことによって、より大きな自由を得られることを経営として重視し、社員とともに決めるプロセスを大切にしています。

さらに、コロナ禍においても経営のスリム化を進め、人の幸せと経済の両立を証明するための道を歩み続けています。このような経営者のマインドセットとして、「結果を手放す」こと、すなわち結果をコントロールする発想を離れ、覚悟を持って日々の仕事に向き合うことの重要性が強調されています。影山さんの経営スタイルは、単なる理想論ではなく、実際の危機にも対応できる現実的なアプローチであることが示されています。

Text AI要約の元文章
カイシャ・組織

「人を大切にする経営」は理想論か? コロナの危機にも曲げない、クルミドコーヒーの「結果を手放す」経営哲学

従業員一人ひとりに幸せな人生を送ってほしい。それは、経営者なら誰もが抱く思いかもしれません。

一方で経営には数字の重みがのしかかります。先行きを読めない社会情勢のなかで、ときには一人ひとりの幸せより組織の利益を優先してしまうこともあるかもしれません。

個人の幸せと経済は両立できるのか? この問いにヒントを与えてくれるのが、東京・国分寺に2店舗を展開するカフェ「クルミドコーヒー」の取り組みです。

創業者の影山知明さんは、売り上げや利益を最優先することに背を向け、「人を利用するのではなく支援する経営」「事業計画をつくらない経営」を実践してきました。コロナ禍で打撃を受けつつも、その経営方針は変えていないといいます。

「自信満々に『経営がうまくいっている』と言える状況ではありません。でも、いろいろな葛藤を踏まえてもなお、僕はこのやり方しかないと確信しています」

取材依頼のメールへの返信で、そう打ち明けてくれた影山さんに、独自の経営スタイルの背景にある思いを聞きました。

*読者の皆様からのいただいたこの記事への質問に、影山さんに動画でお答えいただきました。こちらからどうぞ。

事業計画書をつくらずに、年率20パーセントで成長

編集部
影山さんの著書『ゆっくり、いそげ』『続・ゆっくり、いそげ』を読ませていただきました。

本では、金銭的な価値のために人を手段化せず、「一人ひとりが大切にされる社会をつくるには」という問いのもと、これからの経済のあり方について書かれていました。なかでも驚いたのは、「そもそも事業計画書さえつくらない」という点でした。

どういった背景からこの取り組みがはじまったのでしょうか。
影山
あえて事業計画書をつくらないのは、僕たちの業種がカフェだということも大きいとは思います。

カフェはいろいろな人がいろいろな過ごし方をして、思いがけない出会いや発想が多発する場です。

影山 知明(かげやま・ともあき)。1973年、西国分寺生まれ。東京大学法学部卒業後、マッキンゼー&カンパニーを経てベンチャーキャピタルの創業に参画。その後、株式会社フェスティナレンテとして独立。2008年、西国分寺の生家の地に多世代型シェアハウスを建設し、その1階に「クルミドコーヒー」をオープンさせた。2017年には2店舗目となる「胡桃堂喫茶店」を開業。出版業や書店業、哲学カフェ、地域通貨、お米づくり、まちの寮などにも取り組む。著書に『ゆっくり、いそげ 〜カフェからはじめる人を手段化しない経済』(大和書房)、『続・ゆっくり、いそげ 〜植物が育つように、いのちの形をした経済・社会をつくる〜』(査読版、クルミド出版)。

影山
僕は、その時その場で偶発的に起こることには理由があって、そこには必然性があると考えています。

そして、起こったことに対して機会を与えることで、結果的にそのアイデアが花開き、実っていくことに経営的な可能性を感じています。

ですから、そうした偶発性を大切にしようと思うと、強固な事業計画が邪魔になってしまうこともあるんです。

せっかくおもしろい出会いに恵まれている場所なのに、「これは事業計画にない」からと受け止められないのはもったいないじゃないですか。
編集部
新しい動きを妨げずに、偶発性を受け入れるためには、事業計画をつくらないことが大切なのだと。
影山
はい。

ただ、これは誤解されがちなのですが、僕たちは経営の計数管理についてはかなり細かく行っているほうだと思います。

売り上げや収支の確認は、ていねいにやっていますし、スタッフにはつまびらかに情報共有してもいます。

それは、いま自分たちがやっていることが、お客さんによろこんでもらえているのかや、間違った方向にいっていないのかを確認するためです。

大切なのは「目的」と「目標」のすみ分けです。日々の売上目標があったとしても、それを目的にはしないということです。
編集部
詳しく教えてください。
影山
目的は”Why”に応えるもの、目標は”How”や”How much”に応えるものだと考えています。

「今日の売上目標として10万円を目指そう」と設定するとします。でも、僕たちは売上目標を達成するために店をやっているわけではないし、目標達成が第一でもありません。
編集部
そうなんですね。
影山
僕たちがお店を開く目的は、お客さんによろこんでもらって、来たときよりも元気になって帰ってもらうことです。それを力を尽くしてやっていけば数字は付いてくるはずです。

そして、それが10万円という目標と比べてどうだったかということは、事後的に検証していけばいいという考え方なんです。

実際にこの考え方で経営を続け、売り上げベースでいうと、クルミドコーヒーの開業当初5年間は年率20パーセントほど、その後もコロナ前までは年率9パーセントほどで成長してくることができました。

真面目な人ほど目的と手段が入れ替わってしまう

編集部
それでも、人によっては、目標と目的あるいは目的と手段というものが、いつの間にか入れ替わってしまうということがあると思うのですが。
影山
僕たちも、以前は毎週の定例会のなかで、 週次目標を設定していたことがありました。たとえば、客単価を意識して、コーヒーを飲んでくださったお客さんにおかわりやケーキをおすすめしてみるといったことです。

しかし、そのことで、あくまで目標だということがわかっていながらも、真面目な人であればあるほど目標が意識の最上位にきてしまう。その結果、コーヒー1杯だけを注文したお客さんにネガティブな感情を抱いてしまうことがあります。実際、自分自身がそうでした(笑)

経営のサイクルのなかに目標が大きな存在感でもって組み込まれてしまうと、いつの間にかそれが目的化してしまうということが起こるように思います。
編集部
それを避けるために、スタッフの方たちとのコミュニケーションはどうされていますか?
影山
週に一回、定休日を使って、お店ごとに社員全員で集まる定例会があります。そこが、お店づくりのエンジンです。

いまの状況を共有し振り返り、どう力を注いでいくか。ぼくらが「なんのためにお店をやっているのか」についての葛藤も、こうした場で、きちんと話題に出てくることが大事だと思っています。

ただ、フォーマルな場で自分の感情を言葉にすることは難易度の高いことなので、結果的にはそれ以外の場や余白の時間でコミュニケーションを取ることもあります。

また、回数は少ないですが、僕自身もシフトに入り続けています。僕が現場の状況を多少なりとも知っていることで、スタッフが自分の感情を言葉にすることの心理的ハードルが下がればと考えています。

決定権を手放したことで、より大きな自由を手に入れた

影山
そもそも僕は、お金や売り上げだけを目指しても、最後の最後で人は踏ん張りきれなくなると思うんですよね。

「この人に喜んでほしい」とか「困っている人を何とかしたい」という情動が起きたときにはじめて、仕事に魂がこもるんじゃないかと考えています。
編集部
お金や売り上げだけのために頑張っていても限界があると。
影山
はい。

メンバーを見ていても、誰かに言われたからでもない。お金のためでもない。よろこばせたい人がいるとか、実現したいことがあるとか、自分自身の決定においてここにいる。そのことが、きちんと腑に落ちている人とそうでない人とでは、店頭に立っていても表情が違うと感じます。

世の中を見まわしてみると、上場企業を中心にほとんどの人がお金のために働く仕組みになってしまっています。

でも皮肉なことに、お金を追い求めてやった仕事の結果、仕事の中身が空っぽになり、追い求めていたお金も手に入らないということが、いま日本で起こっていることだと思います。
編集部
この経営を実践するために、影山さんが経営者として手放したことやあきらめたことはありますか?
影山
「決定権」でしょうか。

僕は僕で、何事においても「自分ならこうする」という意見を持っているつもりですが、だからといってその通りに会社の意思決定がなされるかというと、必ずしもそうではありません。

「こんなに社長の意見が通らない会社ってあるだろうか?」と思うくらい(笑)
編集部
自分の考えを伝えるときはどうされるんですか?
影山
アイデアを出すときにはトップダウン的なやり方ではなく、「こう思うが、どうだろうか?」という形で、自分も含めてみんなで議論します。

それは、みんなで話したほうが、よりよい結論にたどり着けるということもありますし、そうでないと、働いているメンバーも楽しくないだろうとも思うからです。

「誰かに決められたことをやる」のと、「自分たちで決めたことをやる」のでは、意味がまったく違います。こうした過程を大事にすることで、お店での一つひとつの所作にとどまらず、「自分がここで、この仕事をする」ということを、その人がちゃんと引き受けられるようになっていくのだと思います。
編集部
サイボウズでも同じようなことが起きます。

サイボウズでは検討段階の事項をどんどんグループウェア上で共有するのですが、社内から賛否両論、いろんな意見がたくさん出て、結果的にグループウェアが炎上状態になってしまうこともあります。
影山
なるほど(笑)。感覚的には近いですね。

僕は、決定権を手放すことによって、「自分一人ですべてを決められる」という経営者の自由を失ったのかもしれません。

だけど「みんなで話してみんなでやる」というやり方をすることで、自分一人ではできなかったようなこともできるようになりますし、よろこびや達成もいっしょに味わえるし、結果、実は自分自身の荷物も軽くなる。

そういう意味で、「小さな自由」を手放すかわりに、より「大きな自由」を手に入れたのだととらえています。

店内に設置された大正時代の振り子時計。この時計の購入を決めたのも、影山さんではなくスタッフの方だそう

「お金のために働け」という力学をせき止める。でも、一人では受け止めきれなくなった

編集部
そうした経営を続けられてきたなかで、今回のコロナ禍がありました。

飲食業全般が大きな打撃を受け、カフェも例外ではなかったと思います。
影山
経営的な観点でいうと、コロナ禍の1年で集計すると売り上げは前年比85パーセントほどでした。

業種的には健闘しているほうかもしれませんが、2店舗目となる胡桃堂喫茶店を出店してからのここ数年は、初期投資の重さもあり、経営的に順風満帆というわけではありませでした。そうした状況での売上減は厳しかったです。

実際、今年の2月には、スタッフを集めて「このままの状況が続けばみんなの給料を払えなくなるかもしれない」と打ち明けました。
編集部
そんなに厳しい状況だったんですか。

スタッフのみなさんに状況を打ち明けるときは、どんな思いでしたか?
影山
もちろん怖さがありました。組織に動揺が走るだろうなと思いましたし、自分が責められることもあるだろうと思いました。

経営者として最後の最後まで残る責任は、いっしょに働いてくれているメンバーにちゃんとお給料を支払うことだと考えていますので、その最後の一線を超えてしまうような感覚もありました。

借金の返済や利子、家賃の支払いなど、資本主義の数珠つなぎのなかではどうしてもお金が必要で、そうしたお金の引力みたいなものから僕たちは自由にはなりきれません。

以前は、そうした資本主義や金融が持っている「お金のために働け」という力学を、僕が防波堤になってせき止めておくから、みんなには「お客さんによろこんでもらうため」に意識を向けて、のびのびと働いてほしいと思ってきたのです。

でも2月に、その防波堤がはじめて決壊しました。自分だけでは受け止めきれなくなってしまったんです。

危機を乗り越えるなかで培った力

編集部
そうした思いを伝えてからの、スタッフのみなさんの反応は?
影山
ありがたいことに、落ち着いて受け止めてもらうことができました。

もちろん一人ひとりの内心ではいろいろあったと思うのですけど。むしろ、それぞれがこの事態を自分事として受け取ってくれて、話を聞いてくれましたし、率先して身を切るような提案をしてくれたメンバーもいました。

おかげで、気持ちも少し軽くなりました。そして月末には、なんとかお給料も支払うことができたのです。
編集部
どうやって危機を乗り越えていったんですか?
影山
コロナ禍に際しては、自分たちの店をどうしていくのか、何度も何度も話し合いました。

先ほど話したように、僕に決定権があるわけではないので、そもそも店を開けるべきなのか、開けるとすれば僕たちはどんな対策をしていくのかといったことを、一つひとつみんなで決めていきました。
編集部
そこでも決定権は手放されたんですね。
影山
はい。

「かけるべき時間や手間をちゃんとかける」という僕らが大事にしてきたことは引き続き大事にして、お客さんに提供するものの質をできるだけ下げないようにしながら、それでも抑えられる支出や、見直せる仕事のやり方が何かないか、みんなで突き詰めて議論しました。

実際そのことによって、この一年間で、経営のスリム化、筋肉質化ができたと思います。

また、「稼ぐためにこの仕事を取りにいく」ことを正面から議論する機会もありました。
編集部
稼ぐための仕事というと?
影山
以前から「撮影やイベントのために場所を貸してくれませんか?」と相談されることがありました。お店を使って稼ぐという意味では貴重なご依頼です。

ただ僕たちはずっと、店の通常営業こそが大事だと考えていました。僕たちは「お客さんに元気になってもらうため」にこの店をやっています。

だから、お客さんがいつも通りに店に来て、時間を過ごせるよう、平日に急に貸し切りイベントをやるようなことはしなかったんです。でも、今年の3月にはじめて店を1日閉め、CM撮影のために貸し出すことをしました。

ずいぶん議論もしました。でも結果的には、それによって世界が広がったり、新たな出会いや喜んでくださるお客さんもいたりして、やってみてよかったと思っています。

お店に入ると大きな書棚が目に飛び込んでくる。「胡桃堂書店」として本を扱うほか、自社で出版も手掛ける。これらも偶発性のなかから生まれた事業だという

「一人ひとりの幸せ」と「経済」が両立可能だと証明するには、このやり方しかない

編集部
コロナ禍で新たな取り組みをはじめているとはいえ、影山さんは「お金や売り上げを最優先にしない」経営を続けているわけですよね。

今後もこのやり方を続けていくのでしょうか?
影山
はい。このやり方を続けていこうといます。

やっぱり、ぼくらがお店をやるのは、お客さんによろこんでもらいたいし、売り上げやお金のためにメンバーを手段にするようなこともしたくないからです。

クルミドコーヒーや胡桃堂喫茶店にかかわってくれる一人ひとりが、のびのびと自分の人生を生きるための力になりたいと思うんです。
影山
そして、一人ひとりの幸せと経済が両立可能なのだということを証明してみせたい。それは僕のライフテーマと言ってもいいですね。

そしてそのことを証明するには、このやり方しかないと思っています。
編集部
なるほど。
影山
二宮尊徳が「道徳なき経済は罪悪であり、経済なき道徳は寝言である」という言葉を残しています。とてもいい言葉だなと思って、僕にとっての座右の銘のひとつです。

僕の本のタイトルとも重なりますが、「ゆっくり」という中心点と、「いそぐ」という中心点を2つ持って、この2つの点から等距離にある点をつないでいくと楕円になります。

ある時は「ゆっくり」方向に振れて、お金になろうがなるまいが、自分たちの想いに忠実に仕事をしていく局面があって、一方で今回のように経営的な危機の局面では「いそぐ」というほうに行くこともある。でも「いそぐ」ほうに行ったとしてもそれで終わらずに、ちゃんと戻ってくる。

ぐるぐると回りながらこの運動を続ける物体の楕円軌道には遠心力が働くから、ちょっとずつ軌道が大きくなって、よりたくさんの「ゆっくり」とよりたくさんの「いそげ」が実現できるようになる。そんなイメージを持っています。
編集部
影山さんの考えに共感する人も多いのではないでしょうか。

一人ひとりの幸せと経済を両立するために、経営者が果たす役割はとても大きいと思います。経営者にはどんなマインドセットが必要だと考えていますか?
影山
たしかに経営者は、この世の中の重大なキャスティングボートを握る存在です。

部長や課長がどんなに頑張っても、経営者が「組織の目的のために人を利用する」という姿勢だったら、現場はその力学から逃れられません。

僕は「利用(take)から支援(give)へ」という言い方をします。
編集部
「利用(take)から支援(give)へ」ですか。
影山
はい。

理念や目的のためにチームや人を利用するのではなく、経営者や会社がチームや人のためにどんな支援をできるか。それを考えることは、結果的には経営者自身にも利益をもたらしてくれるはずだと信じています。

「ゆっくり、いそ」ぎたいと思いながら、組織の力学から自由になれず、組織から求められる数字や成果と、現場で目の前の人を大事にしたい気持ちのはざまで苦しんでいる人たちの話を聞くことも多いので、経営という重荷を背負う全国の仲間たちには、「こういうやり方もあるかもよ」と伝えたい気持ちです。

もしつぶれたとしても「やってよかった」と思える経営を

影山
これからの経営ということで考えるなら、究極的には「結果を手放す」ことこそがこれからの極意となるような気がします。
編集部
結果を手放すとはどういうことでしょうか?
影山
僕はお店を始める前コンサルティング会社や投資ファンドで経営支援の仕事をしていました。結果を出すために戦略的・論理的にやり方を組み立てて、実行していく仕事です。

そうした場面で重視される成果主義を全否定するつもりはありません。そういうやり方をするからこそ、短期に成果が出たり、資源が有効活用される面があるのは事実でしょうから。

ただ根本的には、結果をコントロールするという発想には無理があるんじゃないかとも感じています。
編集部
たしかに、コロナ禍にしても予測して計画的に対処することは不可能でした。
影山
今後も同じなんですよね。未来というのは最後まで予測できないものです。

そのなかで僕がいつも意識しているのは、もしつぶれたとしても「やってよかった」と思えるような経営ができているかということです。

少なくとも、僕はいまそう思えているので、何かがあってお店がつぶれたとしても、あまり後悔しない自信はあります。

もちろん会社をつぶしたいなんて思っているわけではありませんが、中途半端な仕事をして、自分に嘘をついて、どこかで怠けてしまった結果として会社をつぶしてしまったら、後の後悔はとても大きなものになると思うんです。
編集部
確かに、そうかもしれません。
影山
弓道に「正射必中」という言葉があります。「的に当てようとするのではなく、正しく弓を射れば必ず当たる」という教えです。

僕たちが日々店舗に立ち、一つひとつの仕事や、一人ひとりのお客さんとの関係を大切にしていくことも同じだと思っています。

ここまでやって、ここまで手を尽くしてもダメなんだったら、それはそれでもうしょうがない。そう思えるくらいに、覚悟をもって日々の仕事であり経営に向き合うことができたなら、逆説的ですけど、結果的にその事業は長続きするんじゃないかとも思うのです。

「死中に活あり」。

いきいきと、のびのびと、日々を生きて、結果は未来に委ねたいと思います。

サイボウズ式Youtubeライブ内で、読者の方からいただいた影山さんへの質問にお答えいただきました!

各質問へは以下のリンクからどうぞ。

【質問①】ともに働く仲間たちと関係性づくりで意識していることは?
【質問②】メンバーに幸せを見つけてもらうために支援していることは?
【質問③】様々な事業のアイデアはどこから生まれる?
【質問④】トップダウンの危うさはなんですか?
【質問⑤】一体なんで株式投資をしているんだろう?
【質問⑥】次世代メンバーの育成のためにやっていきたいことは?
【質問⑦】店頭でスタッフと接するときに気をつけていることは?
【質問⑧】バランス感覚のない経営者に中間管理職以下の社員はどう向き合う?

執筆:多田 慎介 撮影:加藤 甫 企画・編集:高部 哲男

2021年2月17日「合理性よりワクワクを選ぶ」。無理はしないけど利益は出す、すこやかな事業のつくり方──マール・コウサカ×木村祥一郎
2020年8月18日従業員が苦しむ会社はつぶれても仕方ない。腹をくくって「わがまま」を受け入れたら、前に進めた──武藤北斗×青野慶久
2019年7月18日世の中は、行き過ぎた資本主義から「人の幸せ」に戻ってきつつある──『売上を、減らそう。』中村朱美×サイボウズ副社長 山田理

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  • 経営論
  • 胡桃堂喫茶店

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執筆

ライター

多田 慎介

1983年、石川県金沢市生まれ。求人広告代理店、編集プロダクションを経て2015年よりフリーランス。個人の働き方やキャリア形成、教育、企業の採用コンテンツなど、いろいろなテーマで執筆中。

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撮影・イラスト

写真家

加藤 甫

独立前より日本各地のプロジェクトの撮影を住み込みで行う。現在は様々な媒体での撮影の他、アートプロジェクトやアーティスト・イン・レジデンスなど中長期的なプロジェクトに企画段階から伴走する撮影を数多く担当している。

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編集

編集部

高部 哲男

コーポレートブランディング部サイボウズ式ブックス所属。編集プロダクション、写真事務所、出版社などを経て、2020年サイボウズ入社。「はたらくを、あたらしく」を合言葉に、多様な働き方、生き方、組織のあり方などをテーマにした書籍制作に日々奮闘中。複業として社外での書籍編集にも関わる。

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