地主恵亮
1985年、福岡県生まれ。基本的には運だけで生きているが、取材日はだいたい雨になる。著書に『妄想彼女』(鉄人社)、『ひとりぼっちを全力で楽しむ』(すばる舎)がある。
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この記事を読むことで、多様性に関連する未来の働き方やライフスタイルについて知識を得ることができます。記事では、外出困難者が遠隔操作で接客を行うロボットカフェでの体験を元に、その仕組みやこの働き方が実現できる理由を詳しく紹介しています。具体的には、外出が難しい状況にも関わらず、テクノロジーを活用することで就労の可能性を広げている事例として、分身ロボットカフェが紹介されます。パイロットと呼ばれる従業員が遠隔で操作するロボットを介して、外出せずに接客業務が行える仕組みです。これにより、身体的な制約があっても接客の夢を叶えられることがわかります。また、カフェでのコミュニケーションがどのように生まれているか、実際にロボットを操作する従業員の声を通して、生身の人間では得られない新たな感覚の接客体験についても詳しく伝えられています。さらに、このような働き方の可能性や未来についても考察されています。この記事を通して、多様性を受け入れたテクノロジーの活用がどのように働く環境を変え、どのような新しい可能性を生み出すのかを具体的に理解することができます。
多様性、なんで避けてしまうんだろう?
「多様性」と聞くと、なんだか堅苦くて難しいイメージがあり、抵抗を感じてしまう人もいるのではないでしょうか。
でも、その心のハードルを飛び越えてみると、実はワクワクする世界が待っているかも……?
そんなワクワクを感じられる場所の1つが、今回訪れた「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」です。
同店で接客をするロボットは、AIでプログラムされているのではありません。なんと、主に外出困難者である従業員が、ロボットを遠隔操作しているのだそう。
テクノロジーを生かし、多様性ある「未来」の働き方を実現させている同店ですが、遠隔操作ロボットでの接客とは一体どんなもので、従業員の方々はどんな働き方をしているのでしょうか?
今回は、日頃から「未来」に触れたいと熱望しているフリーライター・地主恵亮さんが、分身ロボットカフェを体験してきました。
「未来」に触れたい。
時は2022年、21世紀である。わたしは子どものころ、21世紀には「未来」があると感じていた。
ロボットが普通にいて、車が街中を飛ぶ。人間は一歩間違えれば、全身タイツとも言えるような服を着ている。子どものころに思い描いた未来はこんな感じだった。
※筆者が想像する未来のイメージです
ただ、36歳になった現在、わたしの周りではあまり未来を感じられていない。
だってわたしの家には冷蔵庫も、掃除機も、テレビも、ソファも、ベッドもないから。子どもの頃より質素だ。
どうもこの記事を書いている地主です!
今日必要なものを今日買いに行くという、冷蔵庫普及前みたいな生活を送っているわたしだが、本当はもっと未来に生きたいのだ。
子どもの頃に思い描いた未来が、あとどのくらいで来るのか……。調べてみると、なんとすでにロボットが接客をしてくれるカフェがあるらしい。
行こうではないか。
やってきたのは、2021年6月にオープンした東京・日本橋にある「分身ロボットカフェ DAWN ver.β」。
「OriHime(オリヒメ)」と「OriHime-D」という2種類のロボットが、注文を聞き、配膳してくれるカフェだ。
しかし、なぜ「"分身"ロボット」という名前なのだろう……? そんな疑問を抱きつつお店へ入ると、さっそくOriHime-Dが出迎えてくれた。
こちらのカフェは、下図のとおり5つのエリアから構成されている。
今回は、OriHimeによる接客が楽しめる、「オリヒメダイナーエリア」で未来を体験させてもらう。
※2022年5月現在のレイアウト
席に座ると、テーブルにはOriHimeが目を緑色に輝かせ待っていた。注文を聞きに来る店員さんはいない。
OriHimeの隣にあるタブレットにメニューが映り、一つひとつていねいに紹介してくれる
1テーブルに1台のOriHimeがついて、接客してくれる。なんだかワクワクしてきた!
このOriHimeはAIではない。主に外出困難者である従業員が「パイロット」となり、遠隔で操作しているものだ。
今回のパイロットは、4歳から電動車椅子で生活している「ゆーちゃん」。奈良から接客をしてくれた。
こういうとき、「ゆーちゃん」と呼んでいいのか、「ゆーちゃん“さん”」と呼ぶべきなのかいつも悩む。たぶんこの悩みは未来永劫尽きないだろう
OriHimeは手や首も動く。目を見ながら話していると、その場にゆーちゃんがいるみたいで、なんだか照れる
タブレットに自分が働いているお店の画像を映し、説明してくれるゆーちゃん
そうこう話しているうちに……
OriHime-Dがコーヒーを運んできてくれた!
OriHime-Dは別のパイロットが遠隔で操縦。メニューの配膳などで店内を動き回っている
ここで、ロービーバーガーも到着。ローストビーフたっぷりです!
ロービーバーガー、めっちゃ美味しい!
未来を体験できて、食事もおいしい。パイロットさんとの会話も楽しめて、居心地もいい。最高のカフェではないか!
せっかくなので、カフェの運営について店長さんに話を聞いてみることにした。現状は予定にないけども、近い未来にわたしもロボットのお店を開くかもしれないし。
店長の杜多啓佑(とだ・けいすけ)さん。もともと、別のカフェ店舗の運営をしていたときに、期間限定でOriHimeを導入。その縁で、分身ロボットカフェDawnVer.βの店長になったそう
華やかな甘みがあり、個性的ではあるけれど、誰の口にでも合う不思議なブレンドコーヒーでした!
「ロービーバーガーには、してやられた!」って感想です!
バリスタ研修を受けたパイロットが「OriHime&NEXTAGE」(写真右)を遠隔操作し、コーヒーを入れてくれるテレバリスタエリア(火曜・土曜の一部時間のみ営業・要予約)
お店のグッズやコーヒーなどが買える物販エリアでは、OriHimeが商品説明をしてくれる。ちなみに、パイロットさんが担当する場所・役割は、ローテーションで決めているそう
ポーズはもちろん、話す際に目を合わせてくれるのも、「体温」を感じるところなのかもしれない
スマホを初めて手にしたとき、「未来のツールだ!」と感動した。ただ、分身ロボットカフェ DAWN ver.βでは、それを軽く超える感動があった。
SF映画の世界に入ったかのような、未来を感じたのだ。パイロットは遠くにいるのに、目の前にいるように感じる。
杜多さんも「将来的には地方と都会の人をつなぐなど活用を広げたい」と話していた。場所や身体的なことが関係ない未来が到来しつつあるということだ。
ロボットを介して人と人がつながることが普通になれば、いまとは異なるコミュニケーションや働き方、価値観が生まれるかもしれない。そんな未来に触れられたカフェだった。
未来に驚きっぱなしで楽しかった!
企画:深水麻初(サイボウズ) 執筆:地主恵亮 撮影:栃久保誠 編集:野阪拓海(ノオト)
ここ最近、よく耳にする「多様性」という言葉。むずかしそう、間違った言動をしそうで怖い——。そんな想いを抱えている方もいるのではないでしょうか。サイボウズでも「多様性」を大事にしていますが、わからないこともたくさんあります。この特集では、みなさんといっしょに多様性の「むずかしさ」をほぐし、生きやすく、働きやすくなるヒントを見つけられたらいいなと思うのです。
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1985年、福岡県生まれ。基本的には運だけで生きているが、取材日はだいたい雨になる。著書に『妄想彼女』(鉄人社)、『ひとりぼっちを全力で楽しむ』(すばる舎)がある。
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フリーランスフォトグラファー。人を撮ることを得意とし様々なジャンルの撮影、映像制作に携わる。旅好き。
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コンテンツメーカー・有限会社ノオトのライター、編集者。担当ジャンルは教育、多様性など。
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