「テレワークってラッキーだな」としか思っていなかったぼくは、家族に寄り添えることの良さを知った
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- 働く親や夫婦
- テレワークを実施している人
- 家族との関係を大切にしたいと考えている人
- 地方移住に興味がある人
- 仕事と家庭のバランスについて考えている人
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この記事を読むと、テレワークが家族との関係を深める良い機会になり得ることが理解できます。特に、コロナ禍によって強制的に始まったテレワークを通じて、移動時間や対面での職場のしがらみがなくなることで、効率的な働き方が可能になりました。その中で、この記事に登場する人物は、テレワークを導入することで家族との時間が増え、家族に寄り添いやすくなったという経験を共有しています。テレワークにより通勤時間がなくなり、家庭内での役割を再考する機会が訪れ、地域に戻って親族との距離感が変わるなどの社会的な影響があったことも指摘されます。また、地元にUターンして生活を始める際の理由としては、経済的なメリットや住環境の向上も挙げられていることがわかります。そこで、テレワークによって家族と最適な距離を保ちながら気軽に頼り合える関係を築くことが、家族関係を豊かにする手段としても評価されています。
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家族と仕事
テレワークを、家族のために。
「テレワークってラッキーだな」としか思っていなかったぼくは、家族に寄り添えることの良さを知った
家族関係をより豊かにするものとして「テレワーク」をとらえる人たちを特集する「テレワークを、家族のために」。
第1回目は、東京から地元にUターンをしてフルリモートで働き、両親や義両親との距離感が自然と変わったという、高橋さん(仮名)のお話です。
終電や朝帰りがあたりまえだった新卒時代
昔からぼくは、仕事が大好きな人間だった。
新卒で入社した広告代理店では、終電で帰るのはあたりまえ。さらには飲み会も大好きだったので、同僚と仕事終わりの深夜0時頃から会社近くの居酒屋に飲みに行って、朝帰りになることもざらにあった。
大学時代から付き合っていた彼女と結婚をして、彼女が妻になってからも、その生活は変わらなかった。
妻も仕事熱心だったため、新婚なのに2人で一緒に過ごす時間は少なかった。けれど、その分休日は一緒に時間を過ごしていたので、この生活スタイルについておたがいにあまり深く考えることはなかったように思う。
「テレワーク、ラッキーだな」
そんな生活に大きな影響を与えたのが、2020年3月ごろに日本全土を襲った、新型コロナウイルスの感染拡大だ。
あっというまに緊急事態宣言が発令されて、ぼくの勤めていた広告代理店も、世の中の多くの会社と同じようにテレワークの対応がなされた。
ぼくはその会社で、クライアントを複数担当してさまざまな企画を提案する、企画営業という職種に就いていた。
クライアントとの打ち合わせ前には、100枚にもおよぶ企画書を、出席者全員の分印刷する。そして、クライアントのオフィスまでは電車で片道約1時間。打ち合わせがある日には、それだけで半日が過ぎていく。ぼくにとっては、それがあたりまえの日常だった。
でも、そんな日常はコロナをきっかけに180度変化した。なくなった飲み会、オフィスやクライアント先への移動、紙の印刷作業……。
最初テレワークになった時、ぼくは正直なところ「ラッキー」だと思った。移動時間が短縮されてオンラインで完結するのは効率的だし、さらには好きな時にごはんが食べられて、好きな音楽を流しながらだって仕事ができる。妻と過ごす時間も格段に増えた。
もちろん、テレワークならではの難しさを感じることはあった。対面でのコミュニケーションは好きだったし、何気ないアイデアの壁打ちやクライアントへの提案は、オンラインではやりづらい。
いいことばかりだったわけではないけれど、そんな短所を差し引いても、テレワークはぼくにとって「ラッキー」なものだった。
サイボウズへの転職、地元へのUターン
テレワークが続いてしばらくして、ぼくはサイボウズに転職することになる。
クライアントワークではなく自分が心に決めた商材に深く取り組んでみたいと思ったこと、「広告」の領域だけでなく事業全体に関わりたいと思ったこと──。そんな理由から、自分が好きだと思える事業会社を中心に転職活動を続け、縁があったのがサイボウズだった。
転職を決めた理由の多くは「事業」に対するものだったけれど、転職に付随して「暮らし方」もガラッと変わった。サイボウズに勤めるタイミングで、妻とともに、ぼくの地元にUターンをすることに決めたのだ。
Uターンを決めたのは、両親のそばにいて親孝行がしたかったとか、両親が病気になったとか、そういう理由からではない。ぼくの家は「家族大好き!」といったような雰囲気でもなく、両親にLINEや電話で連絡をしたり、実際に会ったりするのも、せいぜい半年に一度くらいだった(家族のことはふつうに好きだけれど)。
じゃあなぜかというと、祖父母が住んでいた家が空き家になったから。祖父が亡くなり、それを機に祖母がグループホームに入居することになった。
祖父母が住んでいた広い一軒家。妻もぼくもテレワークだし、何度も繰り返される緊急事態宣言などから東京に住む理由もなくなっていた。それだったら広い家に住もうと、引っ越すことを決意したのだ。
家賃がかからず、広い家に住める。またまた「テレワーク・ラッキー案件」である。
家族と、気軽に頼り合えるようになった
ただ、実際に長いあいだテレワークを続けていると、「ラッキー」だけではない、家族に対する想定外の発見があった。
それは、家族と気軽に頼り合えるようになったことだ。
たとえば一年ほど前、妻の祖母が体調を崩し、施設に入居することになったときのこと。
妻はちょうど転職のあいだの時期だったので時間があり、「手伝いに行こうかな」と漏らしていた。だったらぼくも一緒に行くかと、2週間ほど彼女の地元へ行って、施設への入居を手伝いながらテレワークをした。
2週間も一緒にいると、お盆や正月の帰省などとは違って「暮らしている」感覚が生まれる。妻の両親ともぐっと距離が近づいた。
以前からぼくは、妻の実家ではなくぼくの実家がある場所を居住地として選んだことに、少し申し訳なさを感じていた。だから、妻の実家で何の滞りもなくテレワークができるのであれば、たまにこうやって妻の実家で過ごす時間が作れるといいと思うようになった。実際に今年のお盆も、1週間彼女の実家で過ごした。
ぼくの家族についても、地元に帰ってきてから、両親とのコミュニケーションがなんだかんだ爆増した。母親が骨折してしまった時に病院に付き添いに行ったり、家族の誕生日会を開催したり──。ぼくたちも、実家にごはんを食べに行ったり、野菜や果物のおすそわけをもらったり、両親の浴衣を借りて夫婦で夏祭りに行ったりと、存分に頼らせてもらっている。
離れた場所に住んでいて、忙しかった時にはわざわざ連絡しなかったとしても、近くにいたり、移動が自由なことで気軽に頼り合える。
これまでは忙しさを言い訳に、家族を想うことは正直少なかった。でも、時間と余裕が生まれると、なんでもないちょっとしたことで、家族と一緒にいようと思えるのだ。
テレワークで感じたのは、家族への「寄り添いやすさ」
最初は「テレワーク、ラッキーだな」としか思っていなかったぼくが、実際にその働き方をしてみて感じたのは、家族に対する「寄り添いやすさ」だった。
家族のコミュニケーション量は、体感として100倍以上になっていると思う。思い出もたくさん共有できるようになって、親たちも喜んでいるように見える。おたがいに照れ臭いから、直接的にはあんまり伝えないけれど、テレワークのおかげでハードルが下がった「寄り添うこと」が、僕たちの家族関係を変えていると感じる。
きっともう、「ごめんちょっと仕事があるから……」という言葉は、通用しないんだろうなあ。
企画:田平貴洋・高橋団2022年9月13日「パパがずっと家にいてうれしい」。息子の不登校に家族全員で向き合えたのは、きっとテレワークだったから 2019年4月11日家族が幸せになるなら、そのあり方はなんでもいい──「フルタイムで働く妻と、専業主夫」を試すことになった話 2022年1月27日「仕事がないから都会へ行け」という親の本心は……。地域複業は子どもと地元をつなぐ「未来への投資」だった サイボウズ式特集「テレワークを、家族のために。」
テレワークが、多くの企業で取り入れられつつある現在。時間や自由が増えて「ラッキー」だと思っている方も、少なくないかもしれません。そんな「ラッキー」を、自分のためだけではなく、家族のために使ってみませんか? もちろん「家族のため」がすべてだとは思いません。ただ、ひとつのあり方として。テレワークで生まれた時間を、家族のために。
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