先進運転支援システムの先行開発で「交通事故死亡者ゼロ」に挑む
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- 自動車業界の技術者
- ADAS開発に興味のあるエンジニア
- 自動車関連の研究者
- 職業選択を考えている理系学生
- 企業での技術開発に関心のある人
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この記事を読むことで、読者はデンソーのセーフティシステム開発部が目指す「交通事故死亡者ゼロ社会の実現」のために何を行っているかを理解できます。具体的には、5~10年先に市場投入される次世代ADASの先行開発に力を入れており、研究開発の成果を実際の製品開発に繋げるためのシームレスなプロセスを構築している点が特徴です。
また、セーフティシステム開発部は自動車の中でのAI活用の効率化を目指し、最新技術を活かしてADASを開発していること、そしてその成果を世界の市場に届けていることも学べます。開発部は「認知・判断・操作」の3要素への理解を深め、運転者の安全と快適さを提供するために様々な機能を実装しています。
さらに、デンソーは「Tier0.5」として自動車メーカーと密接に連携し、システム全体の最適化に取り組んでいることも重要な知識です。技術者だけでなく、ビジネス感覚も重視し、市場環境やエンドユーザーのニーズを分析しながら開発の方向性を決定する能力の重要性についても説明されています。
最後に、デンソーの文化として、全社員が協力し合う姿勢や現場主義のアプローチが紹介されており、組織の風土や環境についての理解も深まる内容です。技術と文化が相互に支え合い、新たな価値を創出していく会社の姿勢が示されています。
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2024.10.18
キャリア・生き方先進運転支援システムの先行開発で「交通事故死亡者ゼロ」に挑む
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セーフティシステム開発部 部長/稲田 純也
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セーフティシステム開発部 第一開発室 室長/田中 崇剛
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セーフティシステム開発部 第一開発室 担当/安田 愛佳
急速な技術革新を背景に「100年に1度の大変革の時代」と呼ばれる自動車業界において、同社のセーフティシステム開発部はその最前線に立ち、ADAS(先進運転支援システム)の開発を手掛けています。そんな同部の強みや今入社する面白さについて、セーフティシステム開発部に在籍する3名にお話を伺いました。
この記事の目次
研究して終わりではない、事業につながる先行開発の手応え
──セーフティシステム開発部の概要について教えてください。
稲田: 当社は、2035年までに「交通事故死亡者ゼロ社会の実現」という目標を掲げています。セーフティシステム開発部ではその目標に寄与するため、5~10年程度先に市場投入される、ドライバーの安心・安全をかなえる次世代ADAS(先進運転支援システム)を先行して開発しています。自動ブレーキシステムや、ストレスフリーな移動を実現する走行/駐車支援アプリなどがその一例です。
また、私はよく「私たちがハブの役割を果たそう」と言っており、社内外の関連部門との連携を密にしている点もセーフティシステム開発部の特徴です。
開発部門と聞くと、部内で黙々と研究・開発に没頭するイメージがあるかもしれません。しかし私たちの場合は、関連部門とコラボレーションしながら、少し先の未来に世界中のクルマへ搭載されるADASの開発に日々取り組んでいます。
──セーフティシステム開発部の強みを教えてください。
稲田: 個人的な印象ですが、先行開発を担うR&部門では、良くも悪くも研究開発のアウトプットが部門内で完結してしまう企業が少なくありません。言い換えると、R&部門の研究結果が製品開発には結び付かないことも多いのです。
一方、当社のセーフティシステム開発部は、セーフティシステム事業部の傘下にあり、研究開発の成果が事業や付随する製品につながります。実際に、製品開発を行う部門とかなり近い距離感でコミュニケーションを取りつつ、製品化への道筋を立てながら先行開発を行っています。例えば、カメラの製作部門とは、走行時におけるカメラの対象物検出範囲などについて、その実現性のフィードバックをもらいながら、私たちがカメラの要件定義をしています。
このように、開発が製品化までシームレスにつながっていく体制が整っている。これこそがデンソーのセーフティシステム開発部の強みだと考えています。
次世代ADASを市場に届け、事業戦略にもコミットする開発部門として
──今このタイミングで、セーフティシステム開発部に参画する面白さは何だと思われますか。
稲田: 現在、自動車業界は「100年に1度の大変革の時代」といわれ、ソフトウェアの相対的な価値が上がっています。そのようななか、グローバル自動車部品メーカーである当社は、今まで培ってきたハードウェアの知見とAIに代表される最新技術を掛け合わせたADAS開発に取り組んでいます。「計算リソースの限られるクルマにおいて、AIをよりうまくADASに組み込んで作動させるにはどうしたらいいのか」といったテーマに挑戦しているのです。
このように最新技術を用いて、試行錯誤をしながらADASの開発ができ、しかもその開発したADASを搭載したクルマが世界中で走ることになります。このような経験ができるのは、今のセーフティシステム開発部ならではだと思います。
──今後、セーフティシステム開発部をどのような組織に発展させていきたいですか。
稲田: 技術面において貢献するだけでなく、事業部傘下の開発部として、事業戦略も主体的に組み立てられる組織づくりを目指しています。
また、ADAS領域は当社の注力分野の一つです。そのため、セーフティシステム開発部の取り組みが、会社全体の成長につながるのだという強い意気込みを持っています。その意気込みを、今まで以上に結果へとつなげられる部門にしていきたいですね。
高度なセンシング技術と実装力が生きる、デンソーのADAS開発
──セーフティシステム開発部では、具体的にどのようなADASを開発しているのでしょうか。
田中: 私たちは「ドアtoドア」と呼んでいるのですが、例えば自宅の駐車場でクルマに乗り込み、目的地にクルマを停めて降車するまでのさまざまな走行シーンにおける、ドライバーの安心・安全を実現するADASを開発しています。
具体例を挙げると、電波を送信することで対象物までの距離や方位を検出するミリ波レーダと、AI技術の活用により高い識別性能を持つ画像センサを組み合わせたシステムとして衝突回避支援ブレーキなど安全に寄与する機能から、先行車両追従や車線維持、車線変更など快適な運転を支援する機能まで幅広く対応しています。
──セーフティシステム開発部の技術面での強みを教えてください。
田中: 人が行う運転は「認知・判断・操作」の3要素で構成されています。ADAS開発においては、その3要素への知見・ノウハウが求められ、デンソーではこれらの各領域において長年技術力を磨いてきました。
私たちは、当社が持つセンシング技術を組み合わせ、クルマ外界の360°全周囲や車室内のドライバーの状態を「認知」し、より安全により快適に走行するためのクルマの振る舞いや最適な走行経路を「判断」するソフトウェア、またその判断結果をもとにクルマを制御するため「操作」指示を行うアプリの開発も多数手掛けています。「認知・判断・操作」の各領域で当社が培ってきた技術をフル活用できる点が、まさに私たちの強みです。
さらに、デンソーは画像センサやミリ波レーダといった車外環境を認識する製品や車室内の画像認識システムであるドライバーステータスモニターなど、車内外の環境を正確に認識するセンサ群を豊富に有しています。これらの製品を支える高度なセンシング技術を踏まえてADAS開発ができる点が、セーフティシステム開発部の大きな強みだといえるでしょう。
「Tier1」にとどまらない、「Tier0.5」の役割も担う存在へ
──セーフティシステム開発部で得られる成長には、どのようなものがありますか。
田中: まず技術面については、セーフティシステム開発部は5~10年後のクルマに搭載される次世代ADASに関わる技術を先んじて探索しているため、ADAS領域の開発経験だけではなく、AI活用を含む最新技術の知見・ノウハウを存分に身に付けられるはずです。
そのうえで当社としては、現状の「Tier1」というサプライヤーの立ち位置を軸にしつつも、カーメーカーのお客様と同じ目線でクルマに必要な機能・システムの提案を行う「Tier0.5」の役割も担いたいと考えています。
Tier0.5の役割を担うためには、システム全体を把握し、その実現に向けて自ら要件定義する力が求められます。最適なシステムの具現化のためにADASおよび周辺ドメインの技術的知見やノウハウが必要なことは当然ながら、変化の激しい市場環境や業界動向、エンドユーザーのニーズなどを分析し次世代を先読みすることで、複数考えられる選択肢から技術開発の方向性を見極める企画力も重要です。
また、事業部に所属する組織として、事業戦略との整合性を取ることも含めて幅広くアンテナを張りつつ実行に移すことが欠かせません。言うまでもなく、お客様であるカーメーカーの方々との対話も重要です。
そのため、技術的なスキルアップはもちろん、市場環境を分析するスキルや対話力、将来を予想したうえで仮説立案・検証しながら最終的にそれをシステムに落とし込むスキルなど、ビジネス側面も含めたさまざまなスキル向上が期待できるのではないかと思います。
──セーフティシステム開発部が求める人物像を教えてください。
田中: 技術面に関しては、ソフトウェア開発に関する知識が一定程度ある方を求めています。もちろん、ADAS領域に知見がある方は即戦力としての活躍が期待できます。ただ、一定のソフトウェア開発知識を持つ方であれば、入社後に車載システムならではのポイントを押さえることで、技術的には問題なく業務に入れます。
技術面だけに限らず、私が着目しているのは、個人の素養です。単にソフトウェア開発のスキルがあるだけでなく、世の中の動きにアンテナを張り、自ら課題設定をして将来を切り開いていけるような推進力のある方に、ぜひ応募していただきたいですね。
ユーザーの負を解消し、移動体験をより良くするやりがい
──安田さんは新卒入社されたそうですが、これまでにどのような経験を積まれてきましたか。
安田: 私はまずエアコンの操作パネルやセンターディスプレイなどを扱う設計部門へ配属され、エアコンやマルチメディアの操作パネルの企画や要素技術開発業務に主に従事していました。
同業務において特に印象に残っているのが、当時のメンバーが一丸となって企画・開発した着せ替え操作パネルのプロジェクトです。同プロジェクトでは、回路などの内機共通で、使い手の好みに合わせた意匠デザインやボタン配置に着せ替えができる操作パネルを開発しました。「使い手はどのような体験をしたいのか」「使い手の気持ちをどのように製品に落とし込むのか」というエンドユーザー目線で開発をする大切さや、使い手の要望に技術で応える面白さを学ぶことができ、非常に良い経験ができました。
──セーフティシステム開発部での現在の業務内容を教えてください。
安田: 現在の主な業務は、運転支援アプリや駐車支援アプリの先行開発で、主に要求定義の領域を担当しています。
運転支援アプリについては、例えば高速道路の合流支援アプリを開発しています。同アプリ開発では、「高速道路の本線合流に苦手意識がある」というユーザーに着目し、彼らが抱く不安や恐れを紐解き、本来はどうありたいのかを導いて、それに必要なシステムの要求を定義しています。どんなドライバーも不安なく本線へ合流ができる世界を実現したいです。
駐車支援アプリとは、大型駐車場などで多くのクルマが密集して駐車されているシチュエーションにおいて、ユーザーの駐車を支援するアプリです。狭いスペースに駐車する際に、ユーザーの不安を軽減し、駐車をポジティブな体験にすることを目的としたアプリの開発を進めています。
ユーザー体験を起点としたアプリ開発プロジェクトへの挑戦
──印象に残っているプロジェクトについて教えてください。
安田: 先述した高速道路の合流支援アプリや大型駐車場での駐車支援アプリの開発プロジェクトは、思い入れが強いです。
これまで当社のADAS領域の開発は、プロダクトアウトの考え方で進めることが多く、マーケットインの視点が不足しがちでした。一方、両アプリは、ADAS領域の製品開発としては初めてユーザー体験を起点として開発を進めています。両プロジェクトで成果を上げることは、セーフティシステム開発部として大きな成功体験となり、今後の大きな強みになり得るのではないかと期待しています。
このユーザー体験を起点とした先行開発は、私と同じようなマーケットイン視点での開発経験を持つメンバーと上長たちへその必要性を訴求した結果、開発工程に組み込むことが認められました。「交通事故死亡者ゼロ」は私たちが取り組むべき使命だと考えていますが、私はそれに加えて、「クルマに乗る時間が、その人にとってもっとワクワクする時間になるよう貢献したい」という思いも持っています。そして、デンソーでならそれが実現できると信じています。
──デンソーの風土について、魅力に感じられていることはありますか。
安田: デンソースピリットである「総智・総力」「現地現物」が非常に魅力的だと感じています。
「総智・総力」とは、相互理解・尊重のもと、社員全員が個人やチームに全力を尽くすことです。例えば誰かが壁にぶつかった際にも、上長・先輩・同期・後輩を問わず、誰もが力を貸してくれる文化が当社にはあります。
一方の「現地現物」は、現場を大事にする姿勢のことです。例えば問題や課題に対しても、机上の空論ではなく、現場に足を運んで現物を見て対策を考える文化が根付いています。私の業務に関しても、実際にクルマに乗って得た気づきやエンドユーザーへの調査を通して得た生の声を要求定義に反映させられれば、クルマに乗る人がうれしいと感じる、魅力的なアプリがつくれるはずだと考えています。
多種多様な人と連携しながら、さまざまな現場を知って新たな気づきを得られる当社で、ぜひ一緒に新しい製品や価値を生み出していきましょう。
出典:ビズリーチ 公募ページ「株式会社デンソー」(2024年10月3日公開)より転載
キャリア・生き方BizReach
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