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- 生産管理に興味のある人
- 製造業に関わるエンジニアやマネージャー
- 工場での業務改善に関心がある人
- 製造プロジェクト管理の手法を学びたい人
- アイシンの企業文化に興味がある人
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この記事を読むことで、製造業における生産管理、特に工務の役割についての理解が深まります。生産管理者は、完成車メーカーからの受注に基づいて製品の生産計画を立案し、工場内の各部署と協力して期限内に必要な数量を納入できるように生産を管理する業務を行います。製造工程には多くの部署が関与しており、材料調達、製造、検査、物流など多岐にわたるため、各部署の協力を得て計画を実行しなければなりません。また、関係者と良好な関係を築くコミュニケーション能力も求められる仕事です。
さらに、実際のプロジェクトとして、自動車部品の生産ラインを別の工場に移管する際の困難と成功の要因についても触れています。このプロセスでは、生産設備の移動、生産ラインの停止タイミングの調整、品質評価、物流の問題解決など多くの課題が発生しますが、関係者の協力と現場でのコミュニケーションが鍵となります。
加えて、作業環境や人的なネットワーク構築の重要性、多国籍な文化背景を持つ人々とのコミュニケーション経験が仕事にどのように生かされるかについても述べられており、グローバルな視点での生産管理のアプローチが紹介されています。これにより、読者は製造業界での生産計画や管理の複雑さと、その中でのコミュニケーションの重要性について理解を深めることができます。
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生産をコントロールする事務系職
工場の生産ラインでは、日々「いつまでにどれくらいの量をつくる」という計画に基づいた生産が行われています。私が所属する生産管理室では、この計画通りにものづくりが進むように担当工場内の生産活動全般をサポートする業務を担っています。
アイシンの生産管理にはいくつかの領域があって、私は「工務」と呼ばれる業務に携わっています。これはお客さまである完成車メーカーからの受注をもとに製品の生産計画を立案し、工場内のさまざまな関連部署の協力を取り付けつつ、必要な数量を期日内に納入できるよう生産をコントロールしていくというものです。
しかし自動車部品の製造工程には複数の部署が絡むので、これが一筋縄ではいきません。仕入先から材料を調達する部署があり、製品をつくる部署、つくった製品を検査する部署、製品を納入先に運ぶ物流を担う部署があります。それら一連の工程が無理なく、計画通りに進むよう各工程の日々の稼働状況を把握するとともに、現場で働く人の声や要望を吸い上げながら、ひとつの計画書にまとめあげていくのは、なかなかに骨が折れる仕事です。
それに加え、みなさん忙しく働いていらっしゃる中、新しい業務をお願いするわけですから、私の立てた計画に難色を示す方もいます。もちろん必要であれば計画の見直しを行いますが、どうしても多少の無理をお願いしなければならないケースは出てきます。そこをいかに気持ちよく納得して引き受けていただけるか、多くの関係者と良好な関係を築く力が問われる仕事でもあります。
えっ?量産を止めずにラインを移管?
2017年、入社3年目のことでした。西尾機関工場で量産中の自動車のピストン製品の生産ラインを、長野県にあるグループ会社の工場に移管するというプロジェクトを任されました。それも量産を止めずに、です。
ピストンはまず、溶かしたアルミを型に流し込み(鋳造)、できあがったものを切削加工で形を整えるという流れでつくられます。そこで私はまず、鋳造は西尾で行いながら、加工工程だけ先にグループ会社に移し、段階的にすべての工程を移管していくという計画を立てました。
クリアすべき課題は山積みでした。量産を止めずに、今まさに西尾機関工場で使われている生産設備を長野にもっていくとなると、どのタイミングで生産ラインのどの部分を止め、どこの部署にどう動いてもらえばいいのか。生産拠点を分けても同じものがつくれることを証明するための品質評価はどこで行えばいいのか。
さらには長野県という立地特有の問題もありました。鋳造品を運ぶ時間が余分にかかるだけでなく、冬には積雪により物流が滞る事態も想定されます。それを未然に防ぐ「越冬在庫」をいかに確保するのか、西尾機関工場には先んじて越冬在庫を製造するだけのキャパが果たしてあるのか。経験したことのない数々の問題を解決するため、工場内を奔走しながら、長野県にも何度も足を運ぶなど、目の回るような日々を送りました。
この前例のない移管作業は、周囲のサポートもあってなんとか完了しました。かなり無理もお願いしましたが、みなさんとても協力的でスムーズに進んだことに感謝しています。アイシンでは早い段階から大きな仕事を任されることが多く、若い時期に力を伸ばせる環境だと思います。
わかりあえない人とわかりあっていく
私は普段から、特に用がなくてもいろいろな部署へ出かけ、「最近、調子はどうですか」と雑談することを日課にしています。これにより各現場がどのような人たちの手で、どのように動かされているのかを知ることができ、過去に経験したことのない問題にぶつかった時にも「これはあの人に聞けばわかる」と判断できたんだと思います。
工場で「このままじゃ納期に間に合わない!」というトラブルも何度か経験しました。移管プロジェクトの時もそうでしたが、私はそういう時、とにかく現場に足を運ぶことにしています。多くの人と顔を合わせながら一丸となって壁を乗り越えたときに、生まれる信頼関係ってありますよね。私はそういう一体感が好きなんだと思います。とにかく初対面の相手に臆するようなことはまったくないですね。どちらかというと「どんな人なのかな?」と首を突っ込んでいく方です(笑)。
なんでこんな性格なのかな?と考えてみると、おそらく小学生時代をアメリカで過ごした経験によるところが大きいのかなと。アメリカの学校にはいろんな国籍の人がいて、価値観も考え方も、日本人である私とは違う人ばかりです。わかりあえないという前提のもとで、多くの人たちとコミュニケーションをする難しさ、そしてわかりあえた時の嬉しさをそのときに知ったんだと思います。
もともとグローバル志向があってアイシンに入社したので、将来は世界の生産拠点を巻き込むような仕事を手がけていきたいと考えています。自分が行くというより、いろいろな国のいろいろな企業や人と関わりながら進める仕事ですね。こちらの方が私自身は「グローバルな仕事」という感じがします。