電気を地域でシェア。カーボンニュートラルを見据えた「VPP」の仕組みとは
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- 環境問題に関心がある人
- エネルギー管理に興味を持つ人
- 持続可能な生活スタイルを探している人
- ビジネスや産業界でのエネルギー効率向上に関心がある専門家
- 未来のエネルギーテクノロジーに注目しているテクノロジー愛好者
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この記事を読むことで、VPP(バーチャル・パワー・プラント)の仕組みとその必要性について理解を深めることができます。VPPは、発電所に頼らず、住宅やオフィス、工場などの発電・蓄電機能を利用して地域全体で電力を共有し、消費量を調整するシステムです。これにより、自然エネルギーの不安定さをカバーし、効率的に利用することが可能になります。カーボンニュートラルを目標に据えたこのシステムは、無理をせずにエコな生活を実現することを目的としています。デンソーは、このVPPの社会実装に取り組んでおり、技術を家電やクルマ、工場などにも応用していく計画をしています。特に、利用者の快適さを損なわずに利便性を最大限に保つことを重視し、そのための技術開発を進めています。このようなシステムは、電力超依存社会に向かう中においてサステナブルな社会を実現する鍵となるとされています。
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2021.3.3
ビジョン・アイデア電気を地域でシェア。カーボンニュートラルを見据えた「VPP」の仕組みとは
「頑張らないエコ生活」を叶える、エネルギーとの新しい付き合い方。
世界的な人口増加と同時に、進みゆくデジタル化社会。膨大に消費する電力を、どう生み出し、使っていくか。
これから必要となる大量の電力を、すべて火力発電でまかなうとCO2が増えてしまいますし、個人で節電するにしても、こまめに電気を消すなど、地道な努力をずっと続けていくのは難しいのが実情です。
そんな中、自然エネルギーを活用するために、電力を地域でシェアするという新しいエネルギーの使い方が注目されています。それはどのように、私たちの生活を無理なくエコに、そして豊かなものへと変えることができるのでしょうか。この記事の目次
エコってちょっと面倒くさい?
今、「できることなら環境にやさしく、エコな暮らしをしたい」という意識がより広まっています。
買い物にエコバッグを持参したり、商品の包装を最小限にしてもらったりと、「不必要にモノをもらわない、消費しすぎないように」と行動する人が、きっとあなたの身近にも増えているのではないでしょうか。目には見えないけれども毎日使い続けているモノ――例えば、“電力”も無限に湧いてくる資源ではありません。
発電の約8割を火力に頼っている日本では、電気を生み出すために日々膨大な量の燃料が消費され、CO2が排出されています。今や私たちの生活になくてはならない電気。それをまかなうための大部分を、サステナブルとは言えない手段に頼っているのが現状です。皆で使用量を減らしていけば、きっと環境への負荷は大きく軽減できるはず。そうとは分かっていても、なかなか難しいのが“節電”というもの。電気をこまめに消したり、使うたびにエアコンの温度を調整したり、追いだきを我慢したり……こうしたことを、日々の生活の中で根気強く意識していかなくてはいけません。
でも、そんな生活はなんだかちょっと大変そう。無理に頑張ろうとしても、きっと長くは続かない。
勝手に節電ができて、知らない間にエコな暮らしができたらいいのにと、つい思ってしまうのでは。実は今、カーボンニュートラル時代を見据えたエコな生活をかなえる仕組み、「VPP(バーチャル・パワー・プラント)」の導入が、世界各地で進められています。それは一体どんな仕組みなのでしょうか。
地域でエネルギーをシェアして、かしこく使う「VPP」の仕組み
これまでの電力は、主に発電所でつくり、各所に供給するという形で活用されてきました。時代が進むにつれて電力消費量は膨れ上がり、それに伴って発電所が排出するCO2の量も増加の一途をたどってきました。
2050年へ向けたカーボンニュートラル社会の実現を目指して、あらゆるモビリティの電動化が進みつつありますが、それだけでは意味がありません。電動化と同時に、従来の火力発電を、太陽光・風力などの自然エネルギーを用いた発電にシフトし、発電段階からCO2の発生を抑えていくことが不可欠です。
では、火力発電よりクリーンな方法がすでにあるのに、どうしていまだに多くの発電を火力に頼っているのでしょう。それは、自然エネルギーの発電量が天候に左右され、不安定だからです。
例えば太陽光発電では、くもりや雨の日が続けば、たちまち電力不足に陥ってしまいます。火力発電の代替として頼るには、自然エネルギーは心許ないのが現実です。発電量の不安定さをカバーしながら、クリーンな電力を安定的に使える手段はないものか。そこで考えられたのが、VPPです。従来のように発電所だけが発電し、一方的に電力を供給するのではなく、発電・蓄電の機能を持つ住宅・オフィス・工場・クルマなどを連携させることで、地域全体で電力をシェアして使用量の調整をできる仕組みです。
例えば、昼間に十分に発電できて電力が余った場合は、各戸が蓄電池やクルマのバッテリーにストックしておくことで、翌日以降のピーク時に有効活用できます。一方、電力が不足した場合には、発電所からの送電に依存せず、地域内で各戸が貯めていた電力を分け合って必要な分を補えます。
VPPにより、地域内における「発電・蓄電・消費・節約」の電力量のバランスをとることで、自然エネルギーを無駄なく活用できるのです。
デンソーは、サステナブルな社会の実現を目指して、このVPPの社会実装に取り組んでいます。目指すのは、ストレスなく頑張らずに続く快適なエコ生活。
デンソーはこれまで、環境への負荷を減らせるよう、 クルマ内部でのエネルギーマネジメントに力を注いできました。また、ユーザーの“快適性”と“利便性”を最大限に保ちながら、エネルギーをコントロールする技術を磨き続けてきました。その私たちがVPPの社会実装に取り組む意図について、VPP事業の企画に携わる伊神公博は次のように語っています。
デンソーは長年にわたって、エネルギーマネジメント関連の開発に取り組んできました。その技術力を、ビジネスとしての持続可能性を有しつつ、“クルマの外”の世界にも最大限に生かしていく。そうすれば、より広く、より大きく、エコな社会の実現に貢献できるのではないかということ。そして、日本ではまだまだ普及していないけれども、VPPはこれから世界的に普及していくべきシステムだと予見されること。
これらを踏まえて、VPPは私たちが今こそ取り組むべき事業だと判断しました(伊神)現在デンソーは、VPPに接続する家庭用機器やそれらを管理するシステム(HEMS:ホームエネルギーマネジメントシステム)、家々のエネルギー使用量を束ねてマネジメント・コントロールするシステム(リソースアグリゲーター)を提供しています。
例えば、地域の電力消費量に応じて、そこで過ごしている人たちが快適に感じる範囲内で、空調の設定温度を自動的にコントロールする。一日分の湯を沸かす時間を変更したり、蓄電機能を持つ機器で充放電を行うといったことも可能になります。また、照明のオンオフや明るさを自動調整していくことも、今後の検討項目として見ています。
伊神とともにVPP事業に携わる中井有紀は、そうすることで、さらに無駄なく自然エネルギーが活用できると言います。このシステムは利用者の皆様からのフィードバックを参照しつつ、細やかな調整を行なっています。人々の快適さを損なわない調整範囲はどれくらいなのか。そこには個人差もあるので、各家庭の使用状況を個別に分析しながら、一軒一軒に適したコントロールの範囲を見出していく必要があります。難しいチャレンジですが、生活者目線で技術を開発してきたデンソーだからこそ実現できる分野だと感じています(中井)
そうしてまで、生活者にとっての快適性・利便性を追求するのはなぜか。伊神は、「それはストレスなく、頑張らずに、エコな生活を続けてもらうため」だと答えます。
いくら省エネのためといっても、努力が必要でそのうち手間になってしまったり、生活の快適さが失われてしまったりするならば、きっと使い続けてはもらえません。『無意識に、心地よく、エコに』という3つの要素がそろって初めて、社会に広く受け入れられる持続可能な仕組みとなり、カーボンニュートラルに向けて大きなインパクトを出せるシステムになるのだと考えています。VPPが広く実装される未来を少しでも早められるよう、私たちの技術力を駆使して精度をさらに高めていきたいと思っています(伊神)
生活者に寄り添いながら、カーボンニュートラルな社会を目指す
これからの社会、世界の人口が増えていくとともに、5Gをはじめとする通信技術が進歩し、家電やクルマ、身の回りのあらゆるものがネットワークに接続され、デジタル化はさらに加速していきます。それはすなわち、今よりもさらに電力量が必要な電力超依存社会となるでしょう。生活の最大の基盤とも言える電力を、クリーンに効率よく活用するための取り組みは、今後ますます重要性を増していきます。
そんな未来を先取りし、サステナブルに暮らしていくための次世代エネルギーマネジメントシステムであるVPP。
デンソーでは、家庭だけでなくオフィスや工場などへの展開や、水素発電、廃熱発電、バイオ発電など、ほかのクリーンエネルギーもVPPに取り入れ、今後の大きな電力需要にも対応できる、より安定したシステムにしていこう、といった動きも計画しています。培った技術を生かして、ユーザー目線を大事にしながら変革をリードしていく――新たな取り組みにおいても、私たちは生活者の快適さ・利便さを重視して生活へ実装していくことで、カーボンニュートラルな世界の実現を目指していきます。
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