本田技研工業株式会社

開発も働き方も、場所にとらわれない──距離を超えた共創で新たな開発環境を構築

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 技術者やエンジニア特に自動車関連
  • 仮想空間技術に興味がある人
  • リモートワークに興味のある人
  • 自動車産業に関心のあるビジネスパーソン
  • Hondaでのキャリアを考えている求職者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むことで、読者はHondaが仮想空間での車両開発環境を構築していることを知ることができます。この記事は、同社の竹原洋三氏と吉井侑典氏が、仮想空間による車両開発環境(DPG)の構築を進めている様子を紹介しています。これは時間や場所にとらわれない働き方を採用し、東京と大阪を結びつけて柔軟に作業を進めていることが理解できます。

このDPGは実車で行っていた検証作業を仮想空間上で行うことを目指しているため、開発のスピード感が向上すると同時に、働き方もより柔軟になります。また、プロジェクトに関わる職員が海外拠点とも連携しながら進行中であることも強調されています。具体的にはAWSとの協働で、クラウド技術を使って幅広い範囲での連携が実現されていること、そして彼らが経験してきたハイブリッド制御やテレマティクスの知識が大いに活かされている点を見ることができます。

さらに、ホンダ内の柔軟な働き方の文化や、挑戦を奨励する企業文化が従業員にとってのモチベーションになっていることも伝えられています。記事を通して、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の普及や業界のトレンドがどうなっているかについての知見も得られるでしょう。これにより、仮想空間を活用した新たなプロジェクトの成長可能性や、業界の未来に対する見通しを得ることができます。

Text AI要約の元文章

仮想空間に一元的な車両開発の環境を構築することで、時間や場所にとらわれない「爆速」の開発をめざすHonda。その開発環境を作るメンバーも、場所にとらわれない働き方で共同開発しています。東京と大阪をつなぎながら開発に取り組む竹原と吉井が、プロジェクトを通じた自身の成長などを語ります。

竹原 洋三Yozo Takehara

電動事業開発本部 SDV事業開発統括部 コネクテッドソリューション開発部 コネクテッドソリューション課

大手電機メーカーでカーナビゲーションの開発に従事。スマートフォンとの連携機能などを担当する。2013年10月Hondaにキャリア入社。モバイルアプリやグローバル規模のサーバー開発などをプロジェクトマネージャーとして担当。2021年から3年間のアメリカ駐在を経て、仮想空間での車両開発環境(DPG)構築に携わっている。

吉井 侑典Yusuke Yoshii

電動事業開発本部 SDV事業開発統括部 モビリティシステムソリューション開発部 ソフトウェアエンジニアリング課

自動車関連のアウトソーシング企業でハイブリッド制御のシステム開発に従事。その後、地元である大阪に戻るタイミングで、完成車メーカーに転職。4年ほど制御システムの開発に携わった後、2024年4月Hondaにキャリア入社。大阪拠点に勤務し、仮想空間での車両開発環境(DPG)構築を担当している。

東京と大阪を結びながら、柔軟な働き方で仮想空間での車両開発環境を作る

近年、モビリティ業界で広がりを見せるSDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)。クルマづくりがソフトウェア先行に変わりつつあるなかで、Hondaはスピード感を持った開発ができる環境づくりに挑戦しています。

その一つが、アマゾン ウェブサービス(以下、AWS)と協働で進めている「デジタル・プルービンググラウンド」(Digital Proving Grounds:DPG)と名付けた仮想空間での車両開発環境の構築です。これまで実車で行っていた検証作業を仮想空間上で行うことで、時間や場所にとらわれずに開発作業ができる環境をめざしています。

DPGがめざす「時間や場所にとらわれない開発」は、その環境構築を担うメンバーも同じ。竹原は東京、吉井は大阪の拠点に勤務しながら、物理的な距離を超えて開発に携わっています。

竹原

「DPGは、クルマの開発環境をクラウド技術で爆速にしていくための取り組みです。私はこれまで経験してきたコネクテッド領域の知見を還元しながら、開発を支えるための基盤づくりをサポートしています」

吉井

「私が担当するのは、クルマの制御システムを開発するメンバーが使う環境の構築です。Hondaに入社する以前は、他の完成車メーカーで車両側の制御開発に携わっていたため、その経験を活かしながら、今度は開発のための環境づくりを行っています」

普段はおよそ500km離れた場所で働くふたり。他にも、国内の別の拠点はもちろん、海外拠点とも連携しながら開発を進めています。

竹原

「一緒に働いているメンバーがどこの拠点にいるのか、じつはよくわかっていません(笑)。それくらいアドレスフリーな仕事の仕方です。

とはいえ、リモートだけでの連携にこだわっているわけでもありません。実車を使った検証は必要ですし、多拠点で連携する上で、どうしてもコミュニケーションなどでやりにくさを感じる時はありますから、プロジェクトの状況次第で東京や大阪に集まって進めることもあります」

吉井

「必要に応じて調整できる点がいいですよね。われわれの場合、上司の理解もあり、自分が必要だと判断すればすぐに東京に行く許可をもらえます。そういった柔軟さがあるからこそ、多拠点が連携した開発体制が可能なのだと思います」

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ハイブリッド制御とテレマティクス領域。これまでの知見を活かしながら次なる挑戦へ

吉井は2024年4月にHondaにキャリア入社。それまでも、自動車業界でキャリアを積んできました。

吉井

「以前は開発のアウトソーシングを請け負う企業で、MBD(モデルベース開発)に関わる案件を担当し、主に完成車メーカーでの、HEV/EV(ハイブリッドおよび電気自動車)や自動運転車の車両試作に関わる業務に携わっていました。

その後、地元である大阪に戻ることを決めましたが、クルマに関する仕事は好きだったので、関西にある完成車メーカーに転職。そこでも、ハイブリッド制御を担当していました」

4年ほど勤めた頃、Hondaの求人を目にしたことが再び転職をするきっかけになったと言います。ただ、吉井が当初応募したのは、これまでと同じ電動車両の制御開発。選考の過程で開発環境構築の領域に変更になったことは、予想外だったと振り返ります。

吉井

「私のこれまでのキャリアや勤務地との兼ね合いなどもあって、車両側の制御開発ではなく、その開発を支える環境構築の仕事に挑戦してみないかという話になったのです。それまでも開発ツールを作る経験はしていましたし、会社もいろいろと変化していることは聞いていたので、新たな挑戦をしてみようと決めました」

竹原のキャリアのスタートは、大手電機メーカーでのカーナビゲーションの開発でした。スマートフォンの普及に伴い、カーナビとスマートフォンの連携機能の開発へ移行。当時、Hondaもスマートフォンとの連携機能を強化していく動きがあることを知り、2013年10月にキャリア入社します。

竹原

「入社後は、モバイルアプリやサーバー開発など、クルマのIoTと言われるテレマティクス領域の仕事を幅広く担当してきました。

2015年からは、グローバルにクルマをつなげていくためのサーバー開発にプロジェクトマネージャーとして参画。AWSと協業しながら、クラウド技術を総動員して世界5地域に同時デプロイできるサーバーを構築しました」

その後、2021年からはアメリカ駐在も経験した竹原。自身が携わったサーバーを地域展開する業務に従事したことで、グローバルなサーバー構築からお客様に使っていただくところまでを経験できたと振り返ります。

竹原

「DPGの開発に関わるようになったのは、2024年7月から。これまではクルマの外側の機能を扱ってきたので、クルマがどう作られているのかはあまり知りませんでした。その知識を学びながら、今まで培った経験を活かしていこうと考えています」

立ち上げ期ならではの苦労を感じながらも、コア事業に関われることがやりがい

多拠点が連携して開発するという体制のみならず、DPG自体がHondaにとっても自動車業界にとっても新たな試み。立ち上げ段階だからこその苦労もたくさんあると口をそろえます。

竹原

「開発環境を作る私たちだけではなく、ユーザー側も立ち上げ段階です。すでに確立された方法に合わせて環境を作ることができないので、ユーザーが何を求めているのかを探りながら進めなければいけません。

加えて、DPGはクロスドメインでの開発を実現するための環境なので、めざしているのは全体最適です。そうなると、どうしても個別最適に比べてスピード感が落ちてしまうのです」

吉井

「汎用的に作れば作るほど、パラメーターや設定オプションが増えて、使いにくくなるという難しさがありますよね」

全体最適をめざす上で重要となるユーザー側との対話。その際に大切にするのは、「プラットフォーム・エンジニアリング」の考え方だと言います。

竹原

「AWSをはじめとするプラットフォーマーは、ユーザーが自分で物事を解決できるような環境を整備しています。ユーザーが自ら勉強して、自分たちで良くしていく、いわゆるセルフサービスに近い形です。私たちもそういった世界をめざしていることを伝えています」

吉井

「私は前職までユーザー側でしたから、その難しさも実感しています。でも、対話を重ねてお互いの認識合わせをしながら、最適解を探っているところです」

ふたりにとっても新たな挑戦。もちろん、大きなやりがいも感じていると続けます。

吉井

「AWSをはじめ、外部のお取引先も含めて関わる人がとても多いので、これまでより広い世界に引っ張り出された感覚があります。英語でのやりとりも出てくるので、英会話の勉強も始めました。Hondaでは、自己学習にかかる費用の一部を補助してくれる制度があるのですが、こういった後押しがとてもありがたいです。

さらに、クルマの開発に特化してきた人、アプリケーションを作ってきた人など、それぞれのバックグラウンドで価値観も違います。皆の当たり前が異なるなかで進めていくことは大変ですが、やりがいがあります」

竹原

「SDVは業界的にも大きな流れですし、Hondaにとっても重要な戦略の一つ。そこを支えるプロジェクトに参画できることがうれしいですね」

従業員の成長を支える能力開発の制度についてはこちら▶︎
https://www.honda-jobs.com/environment/training/

「まずはチャレンジしてみる」がHondaの文化。DPGの可能性を世界へ広げたい

試行錯誤しながらも、新たな挑戦を楽しんでいるふたり。吉井は、こういったチャンスに挑戦できることがHondaの魅力だと話します。

吉井

「私のキャリアを振り返った時、他の会社だったら今の仕事ができる機会を得られただろうかと考えることがあります。

私自身、初めてのことばかりで手探りしながらですが、それは周りのメンバーも同じ。皆がもがきながら、勉強しながら進めています。でも、『失敗してもいいから、まずはチャレンジしてみよう』という文化があり、後押しもしてくれる。それは、Hondaならではだと思います。

自分のなかのチャレンジへの意識も更新された気がしますし、視野も広がりました」

竹原

「Hondaは、他者を認める意識が強いですよね。その代わり、自分の意思も試されます。『自分はどうしたいのか』を常に持っていなければいけませんが、その意思があれば、やりたいことに挑戦できる環境があります」

自分の感覚や価値観もアップデートしながら、DPG構築を進める先には、それぞれの目標も。

吉井

「DPGは、ユーザー同士でノウハウの横展開ができる環境を作れると思うので、私も皆が使いたいと思えるものを作りたいですね。もともとはユーザー側だったので、DPGができたら自分で使って開発したいという想いもあります。バイクが好きなので、DPGをバイクの開発にも展開して、自分で使ってみたいです」

竹原

「DPGはまだ日本でしか取り組んでいませんが、世界に展開してみたいですね。Hondaの拠点は世界中にありますから、グローバルに良いモビリティを作れるようにしたいと考えています」

また、吉井の勤務する大阪オフィスは、2025年春にグラングリーン大阪に移転予定。グラングリーン大阪は、さまざまな企業や研究機関、商業施設、市民が融合しながらイノベーションを創出し、新たな価値を共創するエリアです。新オフィスは、「見る・見せる・魅せる」をコンセプトに、フロア全体がシームレスにつながる空間となる予定です。

吉井

「働き方だけではなく、オフィスの環境面でもさらに働きやすさが増すと思うので楽しみです。

大阪だけではなく、各地に拠点があることはソフトウェアエンジニアの採用においても大きなメリットがあります。全国のエンジニアたちと連携しながら、Hondaの可能性を広げていきたいですね」

開発環境も働く環境も場所と時間にとらわれない新たな働き方に挑戦しながら、「爆速」での価値創出をめざします。

※ 記載内容は2025年3月時点のものです

大阪エリアでの採用情報はこちら▶︎
https://www.honda-jobs.com/lp/osaka/

その他の開発拠点の情報や、HondaのSDV開発の全体像をご紹介!
SDV事業開発統括部ブランドサイトはこちら▶︎
https://software.honda-jobs.com/

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