
ADASアプリケーション「Global Safety Package」のアルゴリズム開発

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この記事は、デンソーのセーフティシステム開発部でADAS(先進運転支援システム)の開発に携わる胡桃沢仁氏が語る、Global Safety Package(GSP)の開発について詳しく紹介しています。ADASは運転者の"認知"、"判断"、"操作"の3要素をセンサー、アプリケーション、制御で支援するシステムであり、これを統合することでGSPが実現されています。GSPは今までに3世代にわたり進化しており、次世代のGSP4に向けた開発が進行中です。
この記事では、ミリ波レーダーや画像センサーを用いたターゲット認識からセンサー情報を統合するFusionプロセスにより、最終的に自動ブレーキの作動を行うシステムの流れが説明されています。これにより、車両がJNCAPのアセスメントで高評価を得たことも伝えられています。
さらに、開発プロセスとして用いられるV字プロセスが紹介され、自動車特有の複雑な道路や周辺環境をテストするため、デンソーは額田と網走にテストセンターを持ち、広範囲なシーンの再現が可能であることも触れられています。これに加え、実際の道路での走行データを元に行うFOT評価の取り組みがあり、これにより精度を高める方法も解説されています。
次世代のAD/ADASアプリケーションではAIを用いたシーン認識や判断の強化が図られており、その中心となるのがAIプランナーです。AIプランナーは、複雑な道路環境での運転動作を学習し、自由で安心な移動を目指した今後の展望についても言及されています。
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2025.4.17
技術・デザインADASアプリケーション「Global Safety Package」のアルゴリズム開発
この記事の目次
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株式会社デンソー
セーフティシステム事業部
セーフティシステム開発部 課長胡桃沢 仁
続いて登壇したのは、入社以来、ミリ波レーダーや画像センサを使った、ADASアプリの開発や量産設計に従事してきた胡桃沢 仁です。デンソーが開発した同パッケージシステム、「Global Safety Package(GSP)」の量産設計などにも携わっており、現在は次世代AD/ADAS向け運転支援アプリの先行開発を担当しています。
- Vol. 1:ソフトとハードに精通するデンソーが語る「先進安全・自動運転のアルゴリズム開発」
前回までの内容はこちら
この記事の目次
ADASとは?ADASアプリとは?
胡桃沢は改めて、ドライバーの運転行動には「認知」「判断」「操作」の3要素があり、この3要素を「センサ」「アプリ」「制御」で支援するのが、ADASだと説明しました。
このような運転支援や予防安全に関する機能やシステムを統合したのが、まさしく胡桃沢が携わってきたGSP。2015年にリリースして以降、現在は3代目であるGSP3を量産しており、「次世代GSP4の量産に向けて開発中です」という展望も述べました。
具体的にGSP3が支援する領域や機能も詳しく紹介するとともに、「世界トップレベルのADASパッケージ製品だと自負しています」と、胡桃沢は強調します。
Global Safety Package(GSP)とは?
システムの構成イメージ図も紹介しました。先に登壇した夏目も触れたように、まずは画像センサやミリ波レーダーで歩行者や車両など、対象物を認識します。
その後はFusion(フュージョン)というセンサー情報を統合する処理を通り、最終的に自動ブレーキを要求するなど、様々なアプリやソフトウェアの動作を行います。
Fusionという処理を通す理由については、「ミリ波レーダーや画像センサはそれぞれ異なる強みと弱みがあるため、いいとこ取りをするためです」と、説明しました。
夏目も紹介したように、GSP3を搭載した車両がJNCAPのアセスメントにおいて、高い評価を得ていることを改めて説明するとともに、実際に夜間で歩行者が突然出てきた際にブレーキが自動で作動し、衝突を回避するJNCAPアセスメント動画も流し、性能の高さを示しました。
ADASアプリ開発の流れ(V字プロセス)
ADASアプリの開発においては、一般的なV字プロセスで進みます。しかし、「自動車の場合は、道路、自然、周辺環境などのシーンが膨大な組み合わせで発生することがあります。それぞれのシーンでロバスト性を求められるためADASアプリ開発は簡単ではありません」と、胡桃沢は開発の難しさを語りました。
デンソーではこのような市場で発生するシーンを再現してテストできるよう、愛知県の額田テストセンター、北海道の網走テストセンターの2つのテストコースを保有しています。
額田テストセンターは夜間や雨天といったシーンを再現できます。一方、網走のテストコースは東京ドーム約120倍という広大な敷地を生かし、3つの交差点がある市街地を模したテストコースなどが設けられています。
ただ、これだけの規模のテストコースで評価を行い性能が認められたとしても、市場では意図しない動きをする可能性があるため、さらなる評価を重ねています。実際に道路環境でクルマを走らせて得たデータから行う、FOT(Field Operation Test)評価という手法です。
デンソーではこのFOT評価を、製品をリリースしている各国、グローバルで実施しており、その走行距離は10万~100万kmにも及びます。そうして得たデータを前述した開発プロセスに改めて通しブラッシュアップすることで、最適なソフトウェアとして最終的にリリースしているのです。
「グループ内に、センサ認識、フュージョン、アプリケーションエンジニアという、それぞれの領域の専門家がいるのがデンソーの強みであり、専門家が密に議論した結果として効果的な解決策を導き出せていると思っています」(胡桃沢)
Field Operation Test(FOT)評価
続いて、胡桃沢が担当している次世代AD/ADASアプリケーションについて解説しました。コンセプトは運転支援シーンの拡張であり、スライドで示したように自宅を出た段階から目的地に到着するまで、あらゆるシーンで安心・自由な移動を実現することを目指しています。
従来、判断領域においてはルールベースのアルゴリズムを採用していましたが、前述した通り、市街地など複雑な交通環境のシーンに対応するために、AIを活用しています。
その核となるのが、「AIプランナー」です。現在は今まさにこのAIプランナーが、様々な道路環境のシーンにおける運転動作を学習している最中だといいます。
人間でも判断が難しい交差点での右折では失敗もあるなど、「まだまだ課題は多いですが、安心・自由な移動の実現を目指して、これからも開発を続けていきます」と胡桃沢は力強く語り、セッションを締めました。
※役職などは2024年11月講演当時のものです
- Vol. 1:ソフトとハードに精通するデンソーが語る「先進安全・自動運転のアルゴリズム開発」
- Vol. 3:車両周辺情報を高性能に検知するカメラ・画像認識のアルゴリズム開発
- Vol. 4:LiDARによる認識とは
- デンソーのソフトウェアを詳しく知る
- デンソーのソフトウェアエンジニア採用について
技術・デザインTECH PLAY
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