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本を通して未来を「考え直す」ことで、豊かな組織を想像できる――TSUTAYAウイングタウン岡崎店・中嶋あかね

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 本好きな人々
  • 働き方や組織開発に関心がある人々
  • 書店員や出版社関係者
  • キャリア相談を求める人々
  • 未来の働き方に興味がある人々
Point この記事を読んで得られる知識

このインタビュー記事では、TSUTAYAウイングタウン岡崎店の中嶋あかねさんが「働く+ミライ」というテーマで選んだ本について語っています。彼女は、未来の働き方に対するポジティブな視点を提示する本を選び、時間の流れと共に変化する働き方の多様性を強調しています。特にAIとの共存を描いた野﨑まどさんの『タイタン』や、組織内の個性を活かすことを提案する勅使川原真衣さんの『働くということ 「能力主義」を超えて』が紹介され、個々の特性が組織として大切であることが語られています。

また、情報の消費ではなく、読者が本を通じて自分自身で考えることの重要性が強調されています。本は、映像や音が含まれないため、読む人が自ら想像し考える余地を持ち、自己内省の機会を提供するメディアです。本を通じて、働き方や社会の在り方を考え直すことで、新しい発見やインスピレーションを得られることが訴求されています。さらに、組織や採用に悩む人々が個々の特性を見過ごさず、組織開発の一助とするために読むことを推奨しています。

Text AI要約の元文章
働き方・生き方

本とはたらく

本を通して未来を「考え直す」ことで、豊かな組織を想像できる――TSUTAYAウイングタウン岡崎店・中嶋あかね

働き方の価値観が多様化している時代に、本が教えてくれる働き方のヒント。

その可能性を掘り下げるべく、サイボウズ式の出版チームである「サイボウズ式ブックス」では、本のプロである書店員さんにお話を伺うことにしました。

今回お越しいただいたのは、TSUTAYAウイングタウン岡崎店の中嶋あかねさん。 魅力的な本を紹介するフリーペーパー「TSUTAYAウイングタウン通信」が評判で、本を手渡す試みを続ける書店員さんです。

中嶋さんには、シェア型書店「ほんまる神保町」で開催中の企画「書店員さん選書リレー by サイボウズ式ブックス」にご協力いただきました。

未来はなるようになるし、できることを考えればいい

中嶋さんには「働く+ミライ」というテーマで本を選んでいただきました。SF的な要素がありつつも間口が広く、すごくバランスがいいラインナップですね。

「ミライ」は素敵な言葉ですが、どう考えられたんですか?

森潤也(もり・じゅんや)。出版社勤務。宣伝プロモーションとデジタルマーケティングに携わりながら、編集者として書籍の編集も手掛ける。主な編集担当作に、凪良ゆう『わたしの美しい庭』、ほしおさなえ『活版印刷三日月堂』、やなせたかし『わたしが正義について語るなら』など。SNSで本についての発信を行っており、noteでは本づくりの裏側や、魅力的な書店の紹介記事を投稿している。

「書店員さん選書リレー」 中嶋さんの選書(2025年1月~2月)

選書テーマ:「働く+ミライ」
  • 『タイタン』野﨑まど 講談社文庫タイガ
  • 『ガーンズバック変換』陸秋槎 早川書房
  • 『東京都同情塔』九段理江 新潮社
  • 『本心』平野啓一郎 文春文庫
  • 『コンビニ人間』村田沙耶香 文藝春秋
  • 『働くということ 能力主義を超えて』勅使川原真衣 集英社新書
  • 『松岡まどか、起業します AIスタートアップ戦記』安野貴博 早川書房
  • 『山手線が転生して加速器になりました』松崎有理 光文社文庫
  • 『宙わたる教室』伊与原新 文藝春秋
  • 『アガタ』首藤瓜於 講談社
  • 『AI法廷の弁護士』竹田人造 ハヤカワ文庫JA
中嶋
「働く」を考えたときに、まず野﨑まどさんの『タイタン』を入れようと思いました。人類が労働から解放された近未来で、急に機能不全になったAIをヒトがカウンセリングする……というSF小説で、すごく面白いんですよ。

AIの進化はヒトの仕事を奪ってしまうと言われがちですが、この本はAIとヒトが共存できるポジティブな未来を提示していて、働くことの可能性を感じたんです。そこからテーマを「ミライ」に決めました。

中嶋あかね(なかしま・あかね)。愛知県岡崎市にある「TSUTAYAウイングタウン岡崎店」書店員。主に文芸書を担当し、出版社からの依頼で書評や書籍の推薦コメント執筆も多数。

どんな想いを込めて本を選ばれましたか?
中嶋
自分の子供が就職活動をしているのを見ていると、未来を想像するのが難しい時代だなと思います。

でも、私はあまり未来を悲観していないんです。なるようになるし、できることを考えればいい。

科学や技術が進歩する中で、どういう未来を目指すのかをみんなで思い描くきっかけになるような本を選びました。

人それぞれに価値があると教えてくれる本とは?

働くことを考えるうえで、一押しの本はありますか?
中嶋
選書に入れた勅使川原真衣さんの『働くということ 「能力主義」を超えて』もおすすめですが、同じく勅使川原さんの『職場で傷つく リーダーのための「傷つき」から始める組織開発』という本が特に一押しです。

職場で起きている問題例がケーススタディのように盛り込まれていて、考えなければいけない課題をイメージしやすく読むことができます。

『職場で傷つく リーダーのための「傷つき」から始める組織開発』(勅使川原真衣/大和書房刊)
『「能力」の生きづらさをほぐす』で鮮烈なインパクトを残した気鋭のコンサルタントが、なきものとされてきた「職場の傷つき」に着目し、これからの組織開発のあるべき道筋を探る意欲作。 1ON1、対話、パーパス、人的資本経営、ウェルビーイングなど、目新しい言葉に飛びつく前に、まずその「傷つき」に「気づく」ことから、始まる。 「能力主義」の限界に気づき始めたすべての人へ。 (大和書房ホームページより)

実例がたくさん書かれているのはイメージしやすくていいですね。テーマも含め、すごく興味が湧いています。具体的にどういう本なんですか?
中嶋
能力の高い人が集まっているのが良い組織ではなく、それぞれの個性を活かし合えるのが良い組織である……という内容が語られています。

能力が優秀な人を採用しても、組織がうまく回らないことがありますよね。いっぽうで仕事上の評価は低いけど、人間関係をうまく取りまわして働きやすくしてくれる人もいるじゃないですか。

それって大人数で働くうえで素晴らしいスキルなんですよ。
たしかにそういう人はいますね。社内の情報を妙になんでも知っているとか、相談しやすいとか。数字で評価されにくいですけど、実はすごく組織を支えてくれています。
中嶋
学校教育も同じで、学力や学歴で順位付けされて将来が決まってしまい、取り残される子供もいます。

でも学力では測れない良さを持っている子もたくさんいて、その力が活かせる場所もあるはずです。

みんながいいところを活かしながら幸せになれる方法はないのかなあと考えるきっかけをくれた本でした。
豊かな社会って、本当はそういうものなのかもしれませんね。
中嶋
そうなんです。お金を稼ぐことや地位を得ることだけが価値ではなく、この世界に生きている意味を誰もが感じられるような社会になってほしいです。
この本は、どういう人に読んでもらいたいですか?
中嶋
採用や人事、経営に携わっている人に読んでもらいたいですね。

わたしたちはつい、個人の欠点にばかり目が行き「あの人は優秀ではない」みたいに判断しがちですが、組織の求める機能に合わせれば、個人の欠点が長所に変わることもあります。

組織や採用のあり方に悩んでいる人がいたら、きっとヒントになると思うので、ぜひおすすめです。

本は「考え直す」機会をくれる

働くことを考えるうえで、本がヒントをくれることはありますか?
中嶋
さきほど組織のありかたについて偉そうにお話ししちゃいましたけど、私自身が人事採用に関わっているわけではありません。

でも『職場で傷つく』を読んだことで、あってほしい社会を思い描けましたし、自分なりの言葉が生まれました。

本を読むと考えるんですよ。それが新しい気付きに繋がり、働くことのヒントになるんだと思います。
本は新しい知識をくれますが、それ以上に自己内省できるメディアなんでしょうね。

考える刺激をくれるものは本以外にもありますが、本ならではの良さはありますか?
中嶋
エンタメという視点だと、映画との違いについて考えたことがあります。

映画は映像や音が含まれていて、すべてが表現されています。でも本には文章しかないので、登場人物のイメージや物音を想像しないといけません。逆に言うと、書かれていない余白を自分の想像で埋められる楽しさがあります。

考える機会を必然的に与えてくれるのは本の良さですね。
自分で考えるから人それぞれのイメージがあるし、それぞれの解釈が生まれます。その自由さも本の良い所ですね。

本の読み方に正解はないのかもしれません。
中嶋
本の読み方に正解はないけど、むちゃくちゃな深読みをして変な読み方はしないようにしています。

作者と読者の一対一のやり取りだと思って、誠実に読みたいですし、そうやって本に向き合うことが良い考え直しにつながるんじゃないでしょうか。
当たり前のことですが、ちゃんと考えるって大切ですね。

動画でなにかを学ぶときに、倍速で観ることがあります。それは情報を食っているだけで、考え直しになっていないのではないか……と反省しました。
中嶋
今の時代の情報消費量はすごいですよね。媒体ごとの性格があるので、どれが良い悪いではなく、情報を咀嚼して、自分の中で腑に落ちることが大切なんだろうなと思います。

企画・編集:小野寺真央(サイボウズ) 執筆:森潤也 撮影:高橋団(サイボウズ)

サイボウズ式特集「本とはたらく」

働き方の価値観が多様化し、どのように働き、どのように生きるのかが問われている現代。そんな時代にあって、「本」というメディアは「働くこと」を自分で見つめ直すきっかけをくれるのではないでしょうか。「本を読むこと」を通じて、私たちと一緒に、仕事やチームワークに繋がる新たな発見を探しに行きませんか?

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執筆

ライター

森潤也

出版社勤務。宣伝プロモーションとデジタルマーケティングに携わりながら、編集者として書籍の編集も手掛ける。SNSで本についての発信を行っており、noteでは本づくりの裏側や、魅力的な書店の紹介記事を投稿している。

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撮影・イラスト

編集部

高橋団

2019年に新卒でサイボウズに入社。サイボウズ式初の新人編集部員。神奈川出身。大学では学生記者として活動。スポーツとチームワークに興味があります。複業でスポーツを中心に写真を撮っています。

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編集

編集部

小野寺 真央

サイボウズ式ブックス副編集長。メーカー、出版社勤務を経て、2022年にサイボウズ入社。趣味は読書・演劇・VTuber・語学勉強・ラジオ・旅行。複業で小説の編集をしている。将来の夢はラジオパーソナリティ。

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