株式会社デンソー

技能五輪の金メダルがゴールじゃない。

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • モノづくりに興味を持つ学生
  • 技能五輪を目指している若手技術者
  • キャリアを模索中の技術系社会人
  • 人材育成に興味がある技術者
  • 人生設計に悩む若者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事では、デンソーの清水源樹さんのキャリアと彼が得た教訓が紹介されています。清水さんは中学校卒業後、デンソー工業学園でモノづくりの技術を習得し、卒業後は技能五輪で金メダルを獲得しました。しかし、彼の目標は金メダルではなく人間力を高め、モノづくりを次の世代に伝えることにあります。

清水さんのモノづくりへの興味は幼少期のプラモデル作りから始まり、高校時代には陸上競技の分析力が彼の技術力の向上に役立ちました。技能五輪では、完璧にこだわり過ぎず、変化を受け入れる力が大切であることを学びました。彼が得たモノづくりにおいて必要なことは、実際に使う人の視点を大切にすることや高精度とスピードを意識することです。

現在、清水さんはコーチとして次世代の育成に励んでおり、人間力こそがモノづくりの真髄であると考えています。彼は父をお手本にし、人の役に立つ仕事を追求したいと語っています。技能五輪はあくまでモノづくりを学ぶためのツールであり、それがゴールではないというメッセージが伝えられていました。

Text AI要約の元文章

2025.3.27

キャリア・生き方

技能五輪の金メダルがゴールじゃない。

磨いた人間力で照らす、モノづくりの道

この記事の目次

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    • 清水 源樹(しみず げんき)

      中学校卒業後、2018年にデンソー工業学園に入学し、工業高校課程で3年間学ぶ。卒業後、デンソーの技能人財養成部 卓越技術修練室に配属。技能五輪では22年の全国大会(精密機器組立て)と24年の国際大会(産業機械)で金メダルを獲得した。現在は技能五輪をめざす後進の育成に携わっている。

    世界の若手技能者がさまざまな分野で技能を競う「第47回技能五輪国際大会」が2024年にフランスで行われ、産業機械職種で金メダルを獲得したデンソーの清水 源樹。デンソー工業学園を卒業後、選手として腕を磨いてきた清水が直面した壁や、「金メダルがゴールじゃない」と語る先に見据えるものを明かします。

    この記事の目次

      自らの動きを客観視する陸上競技が、技能の修得にも生きる

      ──まずは清水さんの原点について聞かせてください。どうしてモノづくりが好きになったのですか?

      4歳の時に、6歳上の兄が機動戦士ガンダムのプラモデルを作る姿を見て、自分も作ってみたいと思ったのがきっかけです。実際に自分の手を動かして作ってみると、とても楽しくて。徐々に難しいグレードのプラモデルにも挑戦するようになって、完成したものを親に見せて褒められた時のうれしさは今でも覚えています。

      その後もプラモデル作りを続けながら、父が勤務しているデンソーのアイデアコンテスト「夢卵(ムーラン)(※)」に参加してモノづくりを体験してみたり、アニメ『進撃の巨人』に出てくる立体機動装置を発砲スチロールで作って遊んだりしていました。

      ※ 夢卵とは、デンソーが主催し2年に1度開催されるアイデアコンテストイベント

      ──中学校卒業後にデンソー工業学園に進学しましたが、当時すでに将来の道を決めていたということでしょうか?

      そうですね。私とは年の離れた2人の兄が、それぞれスポーツ、勉強に励んで進学先や就職先を決めているのを見てきたので、自分のキャリアについても早い段階から意識していました。デンソーで働いている父のように「自分もモノづくりの職に就きたい」と思い始めた頃、出会ったのがデンソー工業学園です。

      施設や設備が整い、勉強とモノづくりの両方に打ち込めることに惹かれ「ここでモノづくりの力を試したい」と思いました。

      ──学園では工業高校課程で3年間学びながら陸上競技部でも活動し、その取り組みが今の技能にも生きているそうですね。

      はい。私は走り高跳びが専門で、中学生の時には全国中学校体育大会にも出場しました。その延長で学園でも競技を続けて、練習では自分の跳躍を動画で見ながら「体をどう動かせばもっと高く跳べるか」「上手な選手との違いは何か」をずっと分析してきました。

      そうして自分を客観視してきたことが技能の修得にも生きているようで、上手な先輩の動きを見てまねるのが得意でした。やはり、うまい人の動きをコピーするのが上達への近道だと思っています。

      技能五輪全国大会でつまずき、引退を考えた後に得たもの

      ──学園で学んだ内容に関しても教えてください。

      国語、数学などの学科と、実践的な技術や技能を身につける実技を1週間ごとに交互に学ぶカリキュラムです。

      実技では、鉄を削ったり電気配線をしたりと、卒業後にすぐに職場で生かせるような内容を学びます。入学から半年ほどは全員共通の実習に参加し、その後は選抜された人が技能五輪全国大会(以下、全国大会)をめざすコースに進むという流れです。私もそのコースでした。

      ──学園生活を送る中で印象深かった出来事はありますか?

      2年生の時にカナダで体験した海外研修ですね。1週間、ホームステイをしながらデンソーの現地工場を見学しました。品質や安全への意識が工場全体で高く保たれ、従業員一人ひとりに妥協がないという点は、日本のモノづくりと共通していると実感しました。

      ──海の向こうで大きな刺激を受けたのですね。学園の魅力とは何でしょうか?

      自分の技能がさらに成長できるだけではなく、「人としての成長」、そして「自立できる環境」が魅力だと感じています。まず、1学年30人ほどの少人数制を敷き、一人ひとりの成長に重きを置いています。さらに、充実した施設・設備で学ぶことができ、遠方に住む生徒向けに寮も完備しています。

      一方でさまざまな行事も多く、他企業とのスポーツ大会や駅伝大会など、課程や企業の枠を超えた交流も活発なんです。運動を通して、チームワークを学ぶことができます。

      ──多くのことを学んで学園を卒業し、その後は全国大会出場をめざす選手としてひたすら腕を磨く日々だったそうですね。くじけそうになったことはないですか?

      実は卒業1年目の2021年、練習では金メダルをめざせるほどの成績を残せていたにもかかわらず、本番では力を出し切れずに敢闘賞でした。自信があっただけに、かなり落ち込み「自分は向いていないのでは」と選手を引退することも考えました。

      でも、コーチから「もっと好きなようにやればいいんじゃない?」と言われて、気がついたんです。結果にとらわれすぎて自分を追い込みすぎていた、と。それからは、結果を意識するのではなく、自分の力を出し切ることにフォーカスして練習を重ねるうちに気持ちが吹っ切れて、翌年には優勝することができました。周りの支えに感謝しています。

      想定外の事態は思考力や対応力を試す絶好のチャンス

      ──2024年9月、いよいよ第47回技能五輪国際大会を迎えてどんな気持ちでしたか?

      どの選手にとっても一生に一度しか出られない大会です。指導してくださった方や両親など、今まで支えてくれた方々の期待に応えたいという思いが強くありました。本番は今までやってきたことを信じてやるだけ。結果は、金メダルを取れて本当にうれしかったですし、ホッとしました。

      ──4つの課題に計20時間かけて挑む産業機械職種で、ヤマ場はどの場面でしたか?

      メインモジュールと呼ばれる、負荷と配点が高い課題でした。ベースユニットを一から作った上で、ポンプとモーターを載せて設備として稼働できる状態にするための作業が必要なのですが、想定外のことが多く起きたんです。

      使用する工具は選手が持ち込むことができず、大会側が用意するんですが、現場になくて(笑)。そのため、別の工具を使って進めました。あと、予定時刻になってもスタートせず、45分ほどその場でずっと待機せざるを得ませんでした。

      ──そんなことがあるんですか!?

      海外の大会では準備がアバウトに進められることもあるようです。でも、想定外の事態が起きた場合にどう対応するかは、大会前に練習していました。通常とは違う工具を使ってみたり、開始時刻をずらしてみたり。なので、ある意味想定内とも言えました。

      結果的に、制約のある状況でもできる限り精度高く手がけて加点につなげ、他国の選手に差をつけられることなくこの課題を終えることができました。

      ──イレギュラーが発生した際に心がけていることはありますか?

      完璧を求めすぎないことですね。焦って思考を止めるのではなく、できること、できないことを冷静に区分けするのが大事かなと。その上で「できることを多くこなして加点をめざそう」と気持ちを切り替え、心に余裕を持ってどんどん作業していくようにしています。

      ──今大会を通して、どの部分に自分の成長を感じますか?

      メンタル面です。想定外の場面に出くわした時こそ動じることなく、培ってきた論理的な思考力や対応力を試す絶好のチャンス。大会の場でもそう考えて、持てる力を最大限に発揮できたと思っています。

      精度とスピードにこだわる先輩たちの技能、マインドを次世代へ

      ──モノづくりにおいて大切にしていることを教えてください。

      それは、実際に使うお客さまが何を求めているのかを客観的に捉えようと、常に意識することです。技能五輪に置き換えると、採点する側の視点に立って、誰が審査しても確実に加点するような高精度のモノをスピーディーに作ることになりますね。

      私はこれまで、デンソーの先輩たちが1,000分の1㎜の差を感じるほどに手先の感覚を研ぎ澄ませ、精度とスピードにこだわる姿を見てきました。その技能とマインドを次の世代につないでいきたいと思っています。

      ──現在は選手活動を終え、コーチを務めているんですよね?

      はい。今は、私と同じように技能五輪国際大会の産業機械職種で金メダルをめざす後輩に教えています。感覚的な部分は人それぞれ異なるので、技能をいかに言語化して伝えるかが難しいところですね。どうすればわかりやすく伝えられるかを日々考えることで、私自身も成長していけたらと思っています。

      また、2028年の技能五輪国際大会は、地元の愛知県で開催することが決定しています。多くの方に応援してもらえるよう、僕自身も後輩と共に頑張りたいです。

      ──モノづくりや技能の継承には、人間力も問われそうですね。

      まさにそうです。メンタル面や、技能をどう生かすかという考え方も含めた「人としての成長」こそ、デンソーでは重視されていると思います。技能五輪に関しても、大会を通じて何を身につけたいのかという視点を持って腕を磨き、成長していくことが大事ですし、最終的にはそれが結果にもつながってくるはずです。

      技能五輪はあくまで、お客さまを意識したモノづくりを学ぶためのツールであり、技能五輪自体がゴールではありません。

      ──技能五輪での経験を生かし、今後挑戦したいことはありますか?

      形のない状態から、形にしていくような仕事に携わりたいです。まだこの世にないものや未知の部分が多い分野に興味を持っています。自分のキャリアを考える上で、お手本にしたいのは父です。父はデンソーでエアバッグ関連の仕事に関わり、人の命を救うことに貢献しています。

      私も世の中のためになる仕事に情熱を傾けながら、将来的にはさまざまな人たちから頼りにされる存在になりたいと思っています。

      ※ 記載内容は2025年1月時点のものです

      【動画】技能五輪金メダリスト 清水源樹の未来への挑戦

      清水の1,000分の1㎜へのこだわり、そして金メダルの先に見据えるものは──。動画もぜひご覧ください

      キャリア・生き方

      執筆:talentbook 撮影:talentbook

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