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SDV実現のカギはソフトウェアエンジニアが握っている
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- 自動車業界の関係者
- ソフトウェアエンジニア
- AI技術に興味のある人
- デンソーの取り組みに関心がある人
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この記事を読むことで、デンソーが自動車のソフトウェア開発においてどのような取り組みをしているのか、特にソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)の実現に向けた具体的な活動や考え方について知ることができます。また、デンソーのモビリティにおけるUX(ユーザーエクスペリエンス)の重要性や、生成AIなど最新のIT技術がどのように活用されているかについても理解を深めることができます。
藤守規雄氏が語るように、車載ソフトウェアはエンジンやブレーキなどのコアな部分を、メカニカルから電子制御へと移行させることでイノベーションを起こしていることが説明されます。また、CECやADAS、コックピットなどのシステムが電子制御化されており、それらがすべてソフトウェアで扱えるようになることが新たな変革の鍵となることが示されています。
さらに、デンソーの掲げる5つのUXコンセプトや、AIを活用したDevOpsの推進についても詳しく述べられています。この記事を通じて、今後の自動車業界がソフトウェアによってどのように進化していくのか、その方向性や目指すべきビジョンについて具体的なイメージを得ることができます。
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2025.1.23
ビジョン・アイデアSDV実現のカギはソフトウェアエンジニアが握っている
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株式会社デンソー 執行幹部(フェロー)
モビリティエレクトロニクス事業グループ 電子PF技術開発担当藤守 規雄
デンソーでは、ソフトウェアエンジニアが画像処理、AI、クラウドなどのIT技術を駆使し、クルマづくりに取り組んでいます。デンソーの取り組みや技術活用の舞台裏を語る【DENSO Tech Night】第一回は、車載ソフトウェアにおける取り組み、SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)の実現、生成AI活用の事例などを語りました。
続いて登壇したのは、車載メーターのソフトウェア開発、海外での開発経験などを経て、現在は執行幹部(フェロー)として、電子プラットフォームシステム部門を担当する藤守規雄です。
「車が好きでデンソーに入社しました」という藤守は、サーキットで開催されるカーレースにも定期的に参加しているといいます。自宅でバーチャルに行う際にソフトウェアの技術を活用して練習していると紹介しました。
サーキットでの実際の走行の様子ならびに、自宅でのバーチャルの練習風景を動画で流しながら、「シフトアップやダウンなど、ほぼサーキットと同じように自宅で体験できます」と楽しそうに話しました。
100年に一度の大変革期と言われる自動車業界では、CASEやコネクティッドカーといったキーワードに続き、SDVという言葉が特に使われるようになってきました。
デンソーにおけるSDVとは、「素性の良いメカにハイパフォーマンスECUの上でソフトウェアが活き、そのソフトウェアがイノベーションを起こすことです」と、藤守は説明します。
「エンジンやブレーキをはじめ、ボディ制御がメカから電子制御に変わりました。さらに最近ではADAS(先進運転支援システム)、コックピットなど電子制御できる部分が増えてきました。これらクルマ全体のセンサーやアクチュエータをすべてソフトウェアで扱えるようにすることで、新しいイノベーションが起きると考えています」(藤守)
藤守は、ソフトウェアでイノベーションを起こすためには、UXならびにDevOpsの思考や取り組みがポイントであり、実際、UX思考でシステムを開発する部門も設けたと説明します。そして、デンソーでのソフトウェアにおける取り組みを紹介しました。
まず語られたのは、UXについてです。これは、モビリティに対する安心感ならびに、人を理解するインテリジェントな体験を提供するものです。
「特に昨今はジェネレーティブAI(生成AI)など人工知能が急激に発達してきていますので、一味違った車になるのではないかと考えています」と、藤守はイノベーションに対する期待を語りました。
デンソーが掲げる5つのUXコンセプトも紹介しました。例えばコンセプトBは、点のサービスではなく、運転免許を取得してから返納するまで、ヒトのライフステージに寄り添うかたちの車を提供するものです。
なおA~Cのコンセプトはドライバー向けですが、DとEは開発者に関するUXです。具体的には、個々のユーザーの体験をリアルタイムでフィードバックしたり、多様な業界とコラボレーションすることで、これまでになかった規模での共創価値を生み出していきます。
藤守はここで、特にAのコンセプトを実現する「人と車のハーモニー」をテーマとしたイメージムービーを紹介しました。
現在の車にはさまざまな機能が搭載されており、ユーザーはそれらの機能が正しく動いているかどうかを重視します。逆に車側には、その機能が正しく情報を伝えることが求められている、と説明しました。
車側の機能が多いために、特に人側はすべての機能を正確に把握することが難しいです。そこでデンソーでは、両者をつなぐマネージャー(下イラスト内オレンジ色の服を着た人)のような存在を提唱しています。
マネージャーは、ユーザーの行動から性格までを認識し分析することができ、個々のユーザーの専属マネージャーと言える振る舞いをします。それは運転中の操作だけではなく、ユーザーの車両周囲状況まで把握し、これから運転し始める際に近くで子どもが遊んでいるから注意を促すということまでを可能にします。
デンソーではすべての車にこのマネージャーが搭載され、マネージャー同士が連絡を取り合うことで、すべての人が安心安全で快適なカーライフを過ごせるようになると考えます。また、「人と車のハーモニー」がもっと親密になっていく。そのような世界の実現を目指しています。
そしてここでも昨今のAIの急激な技術進化などにより、「このような世界の実現も確信が持てるようなっています」と、藤守は力強く述べました。
続いてDevOpsについて語りました。ここでもキーワードはAIです。デンソーが掲げるDevOpsでは、機械学習をサイクルに加えているからです。具体的には市場に展開したのちに不具合などが生じた際、データを自動的にアップロードするなどのリトレーニングを行い、改めてデプロイするようなフローをイメージしています。
また、いわゆるプロダクトアウトにならないように、市場の声も積極的に取り入れるべく、ビジネスディベロップメントもサイクルに加えています。
このようなUXを短期間で実現していくために、スマートフォンのアーキテクチャを参照しています。藤守は次のように述べ、セッションを締めました。
「ソフトウェアが車の価値を、どんどん変えていく時代だと思っています。多くの方が車載用ソフトウェアの開発を体験し、活躍するような時代です。そのような社会になるのが私の願いです」(藤守)
- Vol. 1:ソフトウェアエンジニアがクルマのコアを語る
- Vol. 3:新技術の活動で乗車体験はどう変わる?
※役職などは2024/9/13講演当時のものです
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