株式会社デンソー

「現場主義」で、QRコードを活用した新たなソリューションを社会実装する

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 技術開発に興味のある人々
  • QRコードの将来性に関心がある人々
  • 技術を活用した社会課題解決に関心があるビジネスパーソン
  • 新たなソリューションやイノベーションに興味がある若手技術者
  • 地方活性化やデジタル化を推進する自治体関係者
Point この記事を読んで得られる知識

記事は、QRコードの進化とその将来性を特集しています。1994年に導入されたQRコードは、駅のホームドアシステムや改札用、文書管理といった様々な分野での活用を経て進化してきました。2020年に設立された長崎ソリューション開発センターは、このQRコードを用いて、農業や水産業、医療や介護を含む様々な分野での現場の課題を解決するソリューションを模索しています。記事では、公開データと非公開データを両方含めるSQRCを活用し、デジタル管理を推進し、手書きの介護記録を効率化する試みが紹介されています。さらに、新たなQRコードの開発や既存の技術の枠を超える提案が、現場のニーズに基づき行われています。今後30年間のQRコードの可能性についても、位置情報を活用した新しいシステムの開発やスマートフォンを超えたウェアラブル端末など次世代技術とのコラボレーションを視野にいれ、様々な分野でその応用が期待されています。長崎ソリューション開発センターの活動は、単なる技術開発だけでなく実際の社会課題を解決することを目的としており、これによりQRコードはさらなる進化を続けることが示されています。

Text AI要約の元文章

2024.12.26

キャリア・生き方

「現場主義」で、QRコードを活用した新たなソリューションを社会実装する

「長崎ソリューション開発センター」の取り組みから考える、QRコードのこれから

私たちの日々の生活を便利にする仕組みを支える「QRコード」。1994年に誕生したQRコードは、この30年間でどのように進化し、次の30年ではどのような社会課題の解決に貢献しうるのでしょうか。

前編では、駅のホームドアシステム用の「tQR」や改札用のQRコードリーダー、長方形型の「rMQRコード」などの開発に関わってきたメンバーの取り組みを紹介しました。

後編では、QRコードのさらなる社会実装に向けて2020年に設立された長崎ソリューション開発センターの取り組みや、QRコードの次の30年に向けたビジョンについて、若手メンバーとともに考えていきます。

  • 前編:社会のデジタル化を支える「QRコード」。発明者のDNAを引き継いだ次の30年に向けた挑戦

この記事の目次

    現場に寄り添う、新たなるソリューションの提案

    2020年4月、新しいソリューションを生み出していくために、デンソーウェーブは「長崎ソリューション開発センター」を設立しました。長崎県をはじめとする自治体・企業とともに、デンソーウェーブの保有する技術の活用と、大学・企業との連携により、長崎県域で抱えるさまざまな課題を解決するソリューションの創出と全国への展開を目指した拠点です。

    QRコードの活用という観点では、「公共設備の故障をみんなでチェック」「バスの運行情報 簡単見える化」「QRコードで文書をかんたん管理」などのアイデアをウェブサイトで紹介しています。

    同センターでは、これまでデンソーウェーブが開拓しきれていなかった領域に対し、現場課題に対するヒアリングやニーズ調査を行いながら、QRコードなどを活用したソリューション開発や実証提案、事業化を推進。具体的には、農業や水産業、医療や介護分野、さらに地方創生をテーマに自治体へのアプローチなども行っています。そのメンバーのひとりが、事業戦略企画部イノベーション企画室に所属する井上昂大です。センターの設立の経緯を、井上は次のように話します。

    「デンソーウェーブとして、QRコード等のコア技術を活用したソリューションビジネスの展開を課題としており、それを開発する優秀な人材や、技術の活用先や実証の場を必要としていました。一方、長崎県はICT先進県を目指しており、私たちのような企業に対し、地元企業や大学などとのマッチング、実証の場探し等のサポートをしていただけるとのことでした。願ってもないコラボレーションが期待できると考えて設置したのが、長崎ソリューション開発センターでした」(井上)

    具体的なソリューション提案先のひとつに、リエゾン長崎があります。リエゾン長崎は、長崎市南部を中心に高齢者介護事業を展開しており、近年では介護ICTツール販売事業やレンタルスペース事業など事業を拡大。2023年4月ごろから意見交換やヒアリングなどを実施しており、10月末からは実証実験を行なっています。

    「リエゾン長崎の現場を度々訪れ、お話を伺う中でいくつかの課題が明らかになっていきました。それは、手書きのため有効活用できていない介護記録・メモ/口頭での不正確な情報共有・勘や経験に頼ったスケジュール作成など、非効率で属人的なアナログ管理でした。そこで、ひとつのコードに『公開データ』と『非公開データ』を持つことができるSQRCを活用し、記録物、シフト・予定管理をすべて手書きからデジタル入力することを目指しています。まだ実証フェーズではありますが、今後は介護以外のさまざまな分野にも広げていきたいと考えています」(井上)

    また、医療や介護分野だけではなく、農業や水産業といった分野でも、現場の課題をヒアリングしながら、さまざまなソリューションの検討を進めていると井上は言います。

    「さまざまな業界の方々とお話させていただく中で、みなさん目の前の仕事に対して真摯に向き合っていると感じました。しかし、人手不足や非効率な業務により、理想の成果にたどり着けず、悩まれている方が多いと感じています。私たちが開発してきたQRコードの技術をきっかけに、そうした方々の仕事を少しでも円滑に進められる提案をしていきたいと考えているんです」(井上)

    「現場主義」で、用途にあったQRコードを開発し、提案する

    そんな井上は、新卒入社した会社では衛星通信システムのソフトウェア開発の設計に関わったのち、デンソーウェーブに中途入社しました。「技術を活用して社会に貢献できるようなサービスの開発に携わりたい」。そんな思いが入社の背景にあり、自身も活用経験があり多くの人々の生活になじんだ技術であるQRコードに関わりたいと考えたそうです。

    デンソーウェーブに入社後、一般の方が普段は目にしないさまざまなQRコードの特徴や設計について知り、QRコードという技術自体や、それを活用したソリューション提案の可能性について実感を持っていったといいます。

    「入社したての頃に一度だけQRコード開発チームの主席技師、原昌宏さんとお話しさせていただく機会がありました。その際、原さんが『用途に合うQRコードがなければ自分たちでつくってしまえばいいんだよ』とおっしゃったことはとても印象的でした。QRコードそのものをつくるという発想がそれまでなく、既存のQRコードという枠に自分が囚われていたことに気づかされたんです。すでにある技術だけでなく、現場の課題と向き合う中で、新たなQRコードの規格も提案していきたいと考えています」(井上)

    原の言葉にあるように、先述のSQRCやrMQRコード、tQR、フレームQR(※フレームの形状、色も自由に変更でき、幅広い用途に利用可能なQRコード)などは世の中のさまざまな課題やニーズに対応するかたちで生み出されてきました。

    また井上が重視しているのが、ヒアリングや調査のみならず、「現場主義」の考え方。訪問先に伺う際もデモを実際に用意し、現場の方々に使っていただき、読み取り具合や作業面での使いやすさの検証を重ねながら、課題解決により貢献できるソリューションの提案につなげていく──。そんな日々の業務を通じて、QRコードの新たなる可能性を拓いていこうとしています。

    読み取るデータも、読み取る担い手も広げる。QRコードの次の30年に向けて

    30年間でさまざまな技術者がその発展に関わってきたQRコード。これからの30年に向けて、いまメンバーたちはどのような挑戦に向かおうとしているのでしょうか。神戸と井上は、それぞれが関わる業務の視点から、次の30年への展望を語ります。

    「これまでのQRコードで重要だったのは、格納した情報をどのように装置に読み込ませ、受け渡しをするのかという点でした。しかし、tQRで挑戦していたのは、位置情報を活用した新たなQRコードのシステム開発だったんです。今後も電車のホームドアでの活用のみならず、位置情報を軸にしたQRコードの利用については、さまざまな可能性を示していきたいと考えています」(神戸)

    「いまやスマートフォンがデジタルの世界の入り口であり、そこにアクセスするためにQRコードは使われていると思います。今後、ウェアラブル端末やゴーグル型の端末、さらにはドローンやロボットが身近な存在になる社会において、ドローンやロボットが自らQRコードを読み取って何かのアクションをするような世界が来るかもしれません。他の先端技術とのコラボレーションによる、さらなる可能性も視野に入れていきたいと思っています」(井上)

    社会の発展とともに変化する現場の課題に徹底的に向き合う中で、最適で本質的な課題解決とは何かを考えること。その解決策に、QRコードをいかに活用できるのかに常に向き合うこと。デンソーが掲げる「現地現物」で現状を正しく把握することから何事も始まるという本質的な姿勢は時代を経ても変わらず、いまに継承されています。次なる社会が直面する課題に対し、QRコードを活用した新たなるソリューションや技術開発にこれからも挑戦していきます。

    ※QRコード、tQR、rMQRコードは、株式会社デンソーウェーブの登録商標です。

    キャリア・生き方

    執筆:inquire 撮影:BLUE COLOR DESIGN

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