サイボウズ株式会社

「自分の仕事に注目してくれる」リーダーがいると、メンバーはうれしい——チームの肯定感が高まれば、自然と業務はすすむ

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • リーダーを目指すビジネスパーソン
  • マネジメントに興味がある人
  • 働く女性やワーキングマザー
  • 在宅勤務を考えているビジネスパーソン
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読んで得られる知識は、効果的なリーダーシップとはメンバーの肯定感を高め、彼らが自然と業務を進めることができる環境を整えることだという点です。リーダーは、業務が滞った場合にメンバーへタスクを振り分けるだけでなく、メンバーの働きぶりに注目し、その努力や成果を認めることが重要です。畑野奈美さんは、在宅勤務を導入することで家庭の事情を抱えながらも働き続けられるようにし、メンバーが仕事に対して持つ肯定感を高める取り組みを行いました。また、"お仕事ビュッフェ"という仕組みを通して、メンバーが自分ができることややりたいことに合ったタスクを自主的に選べる環境を作りました。メンバーの多様な状況に配慮しながら業務を進めることで、チーム全体の効率も上がり、周囲からの評価も得ることができました。リーダーの役割は、メンバーが最大限に力を発揮できるような環境を作り、会社におけるチームの役割を支えることであるという認識です。

Text AI要約の元文章
働き方・生き方

「自分の仕事に注目してくれる」リーダーがいると、メンバーはうれしい——チームの肯定感が高まれば、自然と業務はすすむ

もしあなたがリーダーなら、チームの仕事が滞ってしまったとき、どのような行動をとりますか?

溜まった業務をメンバーに分配したり、「足りない分は自分がカバーすればいい」とひとりで踏ん張ったり……。つい「業務をさばくこと」に目がいきがちなのではないでしょうか。

しかし、會澤高圧コンクリート株式会社の畑野奈美さん曰く、「チーム全体の肯定感が高まれば、自然と業務はすすむ」のだそう。

どうすれば、チームの仕事が自然とすすむ仕組みをつくれるのか? リーダーに求められる本当の役割とは? 畑野さんの「チームづくり」から紐解いていきます。

家庭崩壊の危機。崖っぷちで社長に頼みこんだ「在宅勤務」

深水
わたしはサイボウズに入社して4年目なんですが、まだリーダーとしてチームをまとめた経験がありません。

でも周りを見ていると、メンバーへの仕事の振り分けがむずかしく、自分で抱え込んでしまうリーダーが多そうだと感じて……。

いつか自分がリーダーになったら、どうやって周りを巻き込めばいいのだろう? と思ったのが、今回の取材のきっかけです。
畑野
まさに、昔のわたしです(笑)

畑野奈美(はたの・なみ)。1982年北海道帯広市生まれ。北海道苫小牧市に本社を置くコンクリートの総合メーカー・會澤高圧コンクリート株式会社で、常務取締役、未来開発本部 本部長を務める。2012年よりkintoneを活用した業務改善に取り組み、社内の作業効率アップに寄与

深水
畑野さんにも、ひとりで抱え込んでしまった時期があったんですか?
畑野
がんばりすぎて、何度かプツンと糸が切れそうになりましたね。そのひとつが、2013年に結婚したときです。

当時は、毎日夜中まで働いて、一回家に帰ってごはんを食べて、また職場に戻る日々でした。

そんなわたしを見て、主人に「仕事を辞めてほしい」って言われてしまったんです。
深水
なんと……。
畑野
最初のうちは、主人も応援してくれていました。でも、ずっとわたしの体調は悪いし、機嫌も悪い。新婚旅行にいく余裕もない。そりゃ、辞めてほしいと思いますよね。

じゃあどうする? ってなったとき、社長に「家庭崩壊の危機なので、在宅勤務させてほしいです。それが無理だったら、これ以上働けないかもしれません」と相談しました。
深水
ちなみに当時、社内には在宅勤務の制度はあったんですか?
畑野
それが、なかったんですよ。
深水
え!?
畑野
本当に崖っぷちだったので、だめもとで頼むしかないと腹をくくりました。

すると社長が「いいよ。パソコンがあればどこからでも働けるもんね」とまさかのOK。「え、いいの?」って拍子抜けしました。

パソコンと持てるだけの荷物を持って、その日から在宅勤務をスタートしました。
深水
畑野さんが在宅勤務の先駆けになったんですね……!
畑野
自分と家族のために必死だっただけなんですけどね(笑)

そこから少しずつ、在宅勤務という選択肢が社内に広がり始めて。

子育てや親の介護など、いろんな境遇を抱えながらも、仕事を続けられるメンバーが増えたことはすごく嬉しかったです。

子育てしながら働いて、初めて感じた「職場への怒り」

畑野
いっぽうで、だんだん悔しい気持ちも芽生えて……。
深水
悔しい、ですか?
畑野
子育てや親の介護をしながら働くメンバーは、少なからず「申し訳なさ」を抱えています。

「みんなに迷惑をかけて申し訳ない」という罪悪感で潰されそうになりながらも、一生懸命チームのために働いてくれます。
深水
はい。
畑野
家庭の事情で在宅勤務をしているメンバーは、どうしても働いている様子が見えづらい。

そうすると、ほかのチームリーダーから「おたくのチームって、全然仕事していませんよね」って言われてしまったんです。

その状況に、ものすごく腹が立って
深水
一生懸命働いているメンバーのがんばりに気づいてもらえなかったんですね。
畑野
メンバーが悪いんじゃなくて、メンバーのがんばりに目を向けていないリーダーの責任でしょ?」って、悔しくて。

いろんな境遇を抱えながら一生懸命に働くメンバーのがんばりを、もっと周囲のチームに知ってもらいたい。

それと同時に、わたし自身もリーダーとして、メンバーの働きを正しく評価したいと思いました。

手伝ってほしい業務はあるけど、メンバーに割り振る余裕がない

畑野
ただ、いろんな境遇のメンバーが増えるにつれて、だんだん余裕がなくなってしまったんです。

お願いしたい仕事があっても、タスクを分解して振り分けると、かなり工数がかかってしまう。

「じゃあ、メンバーに自分からタスクを選んでもらおう!」ということで、「お仕事ビュッフェ」を始めました。
深水
「お仕事ビュッフェ」ですか?
畑野
部署やチームとして「やるべき仕事」を一覧にして、その中からメンバーに「できる・やりたいタスク」を進めてもらう仕組みです。

自分のキャパシティや関心にあわせて仕事を選び取れるので「お仕事ビュッフェ」と名付けました。
深水
できること・やりたいことベースで進められるのは、ワクワクしますね!

「お仕事ビュッフェ」を始めて、畑野さんのチームの仕事はどうなりましたか?
畑野
みんなの協力のおかげで、業務が効率化しました。

それと同時に、メンバーの肯定感も高まったように感じます。
深水
肯定感、ですか?
畑野
会社から求められる仕事と、自分のできること・やりたいことがマッチすると、メンバーは「自分はちゃんと会社の役に立っている」と実感できますよね。

チームの仕事をすすめるには、まずこの肯定感をつくることが大事だと思います。
深水
メンバーの肯定感のおかげで、チームの仕事が前に進むんですね。

子育てや介護をしながら働くメンバーは「肯定感」を求めている

深水
一方で、「お仕事ビュッフェ」はメンバーの主体性に委ねる面もあると思います。

「自分の仕事を増やしたくないから、タスクをとらない」という人はいましたか?
畑野
ほかに抱えているタスク量や自分のコンディションによって、「ビュッフェ」の量を調整する人はいたと思います。

でも、ほとんどの人が「自分にできることがあればやりたい」と言ってくれました。

きっと、誰もが少なからず「自分は会社に必要とされている」という実感が欲しいと思うんです。
深水
先ほどの「肯定感」ですね。
畑野
特に、子育てや介護をしながら働くメンバーは「肯定感」を求めていると思います。

わたしにも4歳の娘がいるんですが、急に「お子さんが発熱したので迎えに来てください」と、幼稚園から呼び出されたことが何度もありました。

もうね、みんなの苦しさがすごくわかるんですよ。
深水
自分の努力だけではどうにもならないですよね……。
畑野
ただひたすら、周囲への申し訳なさが募っていくんです。

「自分はいないほうがいいんじゃないか」「役に立っていないんじゃないか」

そんな葛藤を抱えながら、みんな一生懸命働いてくれます。
深水
うんうん。
畑野
子育てや介護に限らず、急な体調不良などで、従来の働き方やパフォーマンスが出せなくなる可能性は、誰もが持っていますよね。

「お仕事ビュッフェ」のように、チームの仕事をみんなで協力できる仕組みがあれば、自分もメンバーも安心だなって思うんです。

「評価されづらい仕事」をがんばるメンバーの存在を肯定する

深水
「お仕事ビュッフェ」を始めてほかのチームからの反応はどうでしたか?
畑野
「畑野さんのチーム、みんな意識が高いですね」って言ってもらえる機会が増えました。

「そうなんですよ! うちのチーム、みんな本当にがんばってくれるんです!」って、もう嬉しくてたまりませんでした。
深水
「やっと周囲に伝わった!」っていう達成感もありそうですね。
畑野
会社って、評価されづらい仕事もあるじゃないですか。

どんなにがんばっても「それがお前の仕事だろ」って言われてしまったり、「こなしてあたりまえ」のルーティンだと思われてしまったり。

誰からも「ありがとう」って言われなくても、チームのためにがんばってくれる人たちが、会社にはたくさんいると思うんです。
深水
うんうん。
畑野
家庭の事情で、100%仕事にフルコミットできない人もいますよね。

「あの人って早退ばかりで、全然仕事やらないよね」ってレッテルを貼られてしまう。でも、ちがう、そうじゃないんです。

選択肢を与えて、やるべきことと、そのやり方をちゃんと伝えれば、みんなチームのためにがんばってくれます
深水
「お仕事ビュッフェ」は、単純にチームの仕事を可視化するだけじゃなく、評価されづらい仕事をがんばるメンバーの存在も肯定してくれる仕組みなんですね。

メンバーの「やりたいこと」を叶える環境づくりは、リーダーにしかできない

深水
最後に、畑野さんにとって「リーダーにしかできない使命」はなんだと思いますか?
畑野
メンバーが力を発揮し、やりたいことを実現できる環境をつくること。これに尽きるなと、本当に思っています。
深水
メンバーができること・やりたいことを最大限発揮できれば、いいチームになると。
畑野
自分のチームだけでできることには限界がありますよね。ほかのチームと連携すれば、できることは格段に広がります。

とはいえ、現場の人間がほかの部署・チームに協力を仰ぐのって、なかなかハードルが高いと思いませんか?
深水
もともと繋がりが少ないチームだと、とくに頼みづらいですよね。
畑野
「あの部署の◯◯チームといっしょにやりたいんだ」となったら、まず自分の上長に相談して、上長から本部長にお伺いを立てて、人選してもらって……。

現場の人間が到底できることじゃないですよね(笑)
深水
たしかに。
畑野
でも、メンバーの「やりたいこと」を叶える環境づくりは、リーダーにしかできない。だから、そういう「繋ぎ」の役目は、リーダーが引き受ける

メンバーには「やりたい」をあきらめてほしくないので、そこの1点はがんばろうかなって思うんです。
深水
「メンバーがやりたいことを実現するために、わたしは環境を整えるから!」ってリーダーが言ってくれると、メンバーとしてはすごく救われます。
畑野
わたしはそんなリーダーを目指していますが、なかには「24時間365日働けます」っていうリーダーもいます。

そういう人も、会社としては尊い存在で、否定されるものではありません。
深水
リーダーのあり方に唯一の正解はないんですね。
畑野
「売り上げをあげている営業が一番偉い」という声も聞きますが、わたしはそうじゃないと思います。

売り上げを支えるために、図面を書いてくれる人や、泥まみれになって製品を作ってくれる工場の人がいる。

その仕事一つひとつが会社というチームを支えているからこそ、メンバーそれぞれが肯定感をもって働くことはすごく大事だと思うんです。

だからわたしも、自分ができることをやろうと思います。

執筆:深水麻初(サイボウズ)/撮影:田口裕貴

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執筆

編集部

深水麻初

2021年にサイボウズへ新卒入社。マーケティング本部ブランディング部所属。大学では社会学を専攻。女性向けコンテンツを中心に、サイボウズ式の企画・編集を担当。趣味はサウナ。

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