株式会社デンソー

デンソーの水素ビジネス。技術者集団が取り組む新規事業とは

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 技術者やエンジニア
  • 自動車産業に興味のある人
  • 再生可能エネルギーに関心がある人
  • 環境問題に関心がある人
  • キャリアチェンジを考えている人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事は、デンソーが水素ビジネスに参入するために新設した水素事業推進部の取り組みについて詳しく説明しています。この部門は、自動車部品分野で培った知見と技術を生かして、SOEC(固体酸化物形水電解装置)とSOFC(固体酸化物形燃料電池)という製品の開発を行っています。デンソーでは、材料の製造からシステム構築まで一気通貫で開発を行い、高効率な製品を生み出すことを目指しています。これにより、カーボンニュートラル社会に向けたグリーン水素の普及に貢献しようとしています。

デンソーの水素事業の強みは、全ての工程を自社で完結できることで、効率的かつ高品質な製品を市場に提供できる点にあります。さらに、水素を「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」というサプライチェーンを構築し、水素社会の実現を推進しています。記事には、デンソーの技術者が新しいプロジェクトに魅力を感じ、成長しながら貢献している様子も紹介されています。また、水素事業推進部が求める人物像についても触れられており、新しい挑戦に興味を持つ人にとっての励みとなる内容です。

Text AI要約の元文章

2024.11.22

キャリア・生き方

デンソーの水素ビジネス。技術者集団が取り組む新規事業とは

“一気通貫の開発”を強みに!デンソーが挑む新規事業「水素ビジネス」

デンソーは、新たなチャレンジである「新価値創造」を実現すべく、水素ビジネスへの参入を目指し2024年1月に水素事業推進部を新設。同部門ではカーボンニュートラル社会の実現に向け、自動車部品分野で培った知見と技術を生かした製品開発に取り組んでいます。今回は、その取り組みや業務の魅力、今後の展望について、水素事業推進部に所属する3名にお話を伺いました。

この記事の目次

    培った技術で一気通貫の開発を行い、高品質な製品を創出

    • 株式会社デンソー 環境ニュートラルシステム開発部 システム開発室 室長中島 敦士

    ──はじめに、水素事業推進部の概要を教えてください。

    当社は現在、活動範囲を従来の自動車部品の開発からモビリティ社会全体へと広げるために、「モビリティの進化」「基盤技術の強化」「新価値創造」の三つのチャレンジに取り組んでいます。その中で、水素事業推進部は「新価値創造」を実現するために、2024年1月1日に新設された部門です。この部門は水素ビジネスの推進を担当しており、具体的には現在、以下の二つの製品開発を進めています。

    (1)SOEC(固体酸化物形水電解装置):水を電気分解して水素をつくる水電解装置 (※1)
    (2)SOFC(固体酸化物形燃料電池):水素をはじめとする燃料と酸素の化学反応により、電気と熱をつくる燃料電池 (※2)

    水素社会の実現には、水素を「つくる」「ためる・はこぶ」「つかう」という三つの領域におけるサプライチェーンの構築が必須です。この中で、水素事業推進部が開発するSOECとSOFCは、水素を「つくる」および「つかう」領域を担い、水素社会の構築に貢献することを目指しています。

    • ※1 SOECについて詳しくはこちら
    • ※2 SOFCについて詳しくはこちら

    ──自動車部品メーカーであるデンソーならではの、水素事業の強みを教えてください。

    多くの企業では、外部から調達した材料を組み合わせて一つの水素関連装置を製造するケースが一般的です。しかし、当社には、材料の製造からシステム構築まで、一気通貫で製品開発を行える体制があります。全ての工程を当社で担うことで、重複した機能を統合し、無駄を削減することが可能です。その結果、高効率で高品質な製品の開発を実現しています。

    この一気通貫の開発を支えているのは、当社が長年にわたり自動車部品メーカーとして培ってきた知見と技術です。例えば、水素をつくる水電解装置「SOEC」には、自動車部品製造で培った技術が活用されています。具体的には、装置内の温度を適正に制御するための熱マネジメント技術や、高効率で電気分解を行うためのセラミック材料・生産技術などです。

    グリーン水素をつくる・つかう製品の開発を通じ、カーボンニュートラル社会に貢献

    ──水素事業推進部の今後の展望を教えてください。

    2024年10月現在、水素を使って電気をつくる発電機「SOFC」は量産化間近のフェーズです。早期に市場投入し、お客様の期待に応える製品開発を続けていきます。

    水素をつくる水電解装置「SOEC」は、2030年までの事業化を目指して開発中です。具体的には、2025年度より日本最大の発電会社である株式会社JERAの火力発電所内で、SOECを使用した共同実証試験を実施する予定です。

    当部門が担当する水素ビジネスは、デンソーにとって新たなチャレンジ領域です。役員級の会議は通常数年に1回行われますが、水素ビジネスに関しては2~3カ月ごとに開催されています。これは、当社が水素ビジネスにどれほど注力しているかを示しています。

    現在、火力発電所や工場に置かれる発電機(コージェネレーションシステム)の多くはCO2を排出する都市ガスを燃料に使用していますが、当部門で開発に取り組んでいるグリーン水素をつくるSOEC、つかうSOFCの実現と普及を通じて、それらから排出されるCO2の削減に貢献していきたいと考えています。

    ミクロな技術でマクロな世界を変える面白さ

    • 株式会社デンソー 環境ニュートラルシステム開発部 システム開発室 室長中島 敦士(左)

    • 水素事業推進部 SOFCシステム開発室 担当課長田村 貴洋(中央)

    • 水素事業推進部 SOFCシステム開発室 担当係長吉川 達也(右)

    ──水素事業推進部で働く魅力は何でしょうか。

    中島:当部門の魅力は、材料の製造からシステム構築までを一貫して行える点です。外部から調達する場合、調達品の中身がブラックボックスとなり、組み立てる際に扱いに困ることがあります。一方で、当部門では量産を見据えて一気通貫で開発が可能なので、中身を完全に把握し、全体最適化を図ることができます。

    このあたりの特長はキャリア入社したメンバーがよく実感している部分だと思います。例えば、入社したばかりのメンバーからは、デンソーの24時間365日無人稼働の工場を見て「この工場でSOECやSOFCを量産化できれば、価格を抑えて普及させられますね。ものづくりの技術力の高さに驚いています」「これまで経験してきた業界の仕組みや慣習だけが正解とは限らないと気づけました」といったうれしい反応をよくもらいます。

    田村:水素社会が到来しても、全ての燃料が水素になるわけではありません。その点、私が担当しているSOFCは、水素に加え、都市ガスやバイオガスなど多様な燃料を使って電気を生成できる燃料多様性が特徴です。幅広い燃料が混在する水素社会と現在の社会をシームレスにつなげられるSOFCの開発に携われることは、非常に魅力的です。

    さらに、SOFCはCO2の大幅削減が可能な分散型電源、つまり小型の発電プラントであり、エネルギーの安定供給においても貢献できる点が大きな特長です。社会に直接寄与する仕事をしていると実感できることが、この仕事の魅力だと思います。

    吉川:個人的には、小学生の頃から環境問題に興味を持ち、大学では環境工学の分野でリサイクルや有害物質に関する研究をしてきました。「環境問題の解決に携わりたい」と考えていた私にとって、SOFCの普及を通じてカーボンニュートラル社会の実現に寄与できる点は大変やりがいを感じます。

    また、少しマニアックな観点ですが、SOECとSOFCは物理的に大きな装置で、そのシステムも大規模です。しかし、そんなスケールの大きい装置を支えているのは、セルスタック(※)内で起きる電気化学反応などのミクロな現象です。ミクロな現象へのアプローチがSOECやSOFCの開発、そして最終的には水素社会の実現というマクロな世界へとつながる点に、面白さと不思議さを感じています。

    ※セルスタック:SOECとSOFCに内蔵されている、燃料極・電解質層・空気極の3層からなる「セル」を積み重ねたもの

    吉川さんは、これまでのご経験を通じてどのような点にご自身の成長を感じていますか。

    吉川:技術的な課題をクリアできた瞬間に成長を感じます。例えば、SOFCの開発では「燃料の効率性に改善の余地がある」という課題に直面しました。私はある仮説を持って解決を目指していましたが、その仮説が間違っていることが判明。そこで、研究開発部隊や異なる専門領域を持つ社員と協力し、技術的な知見を集めて無事に課題を解決できました。この瞬間も、自身の成長を感じることができました。

    このように、日々の課題解決には他部門との連携が欠かせません。他部門のプロフェッショナルたちとやり取りを重ね、知見を吸収しながら課題を解決していくプロセスが、自身の成長につながっていると実感しています。

    基盤となる技術を持ちつつ、周辺知見を積極的に吸収する姿勢が重要

    ──水素事業推進部が求める人物像について教えてください。

    中島:SOECシステム開発室では、社内に知見の少ない定置用装置の設計スキルを持つ方を求めています。さらに、システム開発にはコンポーネント設計部門を含む他部門やお客様とのやり取りが頻繁に発生するため、高いコミュニケーション能力も重要です。

    田村:上記に加えて、SOFCシステム開発室では、内部が数百度という高温で作動するSOFCの特性から、熱マネジメントに関する技術やノウハウを持つ方が活躍できると思います。

    また、SOFCの開発には流体力学やシステム工学など、さまざまな分野の知見が必要です。そのため、基盤となる技術をしっかり持ちつつ、周辺知見を積極的に吸収する姿勢も非常に重要です。

    吉川:SOECおよびSOFCシステム開発室は、これまで世の中に普及していない新たな製品群を開発しています。そのため、既存の常識にとらわれず、積極的に新たなチャレンジに取り組む姿勢があると良いと思います。

    中島:キャリア入社される方からは「水素事業推進部のカルチャーになじめるか不安」といった声もよく聞かれますが、当部門にはキャリア入社者だけでなく、他部門から異動してきた社員も多くいます。実際、私自身も転職組です。当部は“新領域(非車載分野)×新事業(水素)×新製品(SOEC、SOFC)”というこれまでのデンソーの常識を作り変えることに挑む性質上、新たなカルチャーを取り入れる姿勢が強いため、水素事業を社会に普及させていくために柔軟な発想を持って、メンバー間で意見を出し合いながらチャレンジできる環境です。少しでも興味をお持ちいただけたらぜひ一緒に新しい製品や価値を生み出していきましょう。

    ※ 出典:ビズリーチ 公募ページ「株式会社デンソー」(2024年10月31日公開)より転載

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