キャノン株式会社

[Vol.1] ネーミング

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • マーケティング担当者
  • 広告やプロモーション企画を行う人
  • 商品開発者やブランドマネージャー
  • 文学やメディア学に興味がある方
  • ビジネスにおけるネーミングに関心がある方
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を読むと、商品や作品のネーミングにおける音と表記の重要性について深く理解できます。例えば、宮崎駿監督の作品におけるタイトルの付け方を通じて、日本語の助詞や動詞の形によって受ける印象がどのように変わるかを見ることができます。また、覚えやすいネーミングには特定の音や文字数が重要であることが示されています。具体的には、「NやMの音は女性に、濁音は男性に好まれやすい」とされ、ターゲット層に応じた音選びの考慮が必要です。

さらに、年配者にはひらがなを、多くの消費者に親しみやすい音を使用することがポイントであり、日本語の豊かな表記方法の選択が、商品名の受容性に影響を与えることが分かります。また、リズム感のある表現や駄じゃれ風な造語を用いる事例も紹介され、覚えやすさやユーモアが商品の認知に貢献することが指摘されています。これらの知識は、商品名を考える際、特定の文化や対象に合った効果的なネーミング戦略を立てるために役立つでしょう。

Text AI要約の元文章

ネーミングで重要な要素は「音」と「表記」


(Illustration:shoko terata)

宮崎駿監督の長編映画引退作となった『風立ちぬ』。このタイトルを見た瞬間、監督の引退を予感した。タイトルに「の」がなく、完了形の「ぬ」で終わっていたからである。『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』『崖の上のポニョ』といった宮崎作品は、タイトルに「の」を入れることで一つのまとまった名詞句に置き換え、作品のエッセンスを分かりやすく伝えてきた。もし引退を決めていなかったら、次の作品も「の」を入れた題名にしたように思う。監督がどんな気持ちで、「の」を封印したのか。タイトルの中のひらがな一文字が、いろいろなことを教えてくれる――。

商品のネーミングで最も重要なことは、「覚えやすさ」である。最近は、インターネットで検索する人が多いことから、一文字間違えただけで、異なる商品にたどり着きかねない。今は「覚えやすい」文字数が好まれ、4~6字が適切だといわれている。

「覚えやすいネーミング」には、音や表記が重要な要素となる。ヒット商品を見ていくとそこに気付くはずだ。例えば女性向け商品には、NやMの音がよく含まれている。雑誌『nonno(ノンノ)』や化粧品『マキアージュ』は代表例。一説には、女性の場合NやMの音を含む名前が多く、自分の名前と同じ音には親しみを持ちやすいからだという。また、20代の女性は「ぱぴぷぺぽ」などの両唇を使う音を好む傾向にある。タレント『きゃりーぱみゅぱみゅ』の若い女性からの絶大な支持は、彼女の名前が持つ音にも関係がありそうだ。

ネーミングで意識したいポイント

  1. 「覚えやすい」ネーミングに最適な文字数は、4~6字
  2. 女性には「M、N」、男性には「濁音」、年配者には和語など、ターゲットを意識して音や表記を選ぶ
  3. 「商品は何か」、特長を表す「形容詞」「その製品にしかない個性や特長」をターゲットが好む言葉で表現する
  4. 音引きや促音を使ってリズムを良くする

一方、男性はGやZをはじめとする濁音を好む傾向にある。『ギャツビー』『ジェレイド』など男性化粧品に濁音を使った商品名が多いのはそのためだろう。男性が濁音を好むのは、発声するのにエネルギーが必要だから。「じ」や「ぎ」といった濁音は声帯を振動させなければ出ないため、力強い印象を受ける。このことが、男性に"自分向け"商品だとインプットしているようだ。

日本語の表記には、ひらがな、カタカナ、漢字、アルファベットなどの選択肢がある。いかにターゲットに合うものを選ぶかが重要。年配者がターゲットなら、カタカナやアルファベット表記は避けた方がいい。『なごみ』『いろどり』などの和語を好み、ひらがなに親しみを覚える傾向があるからだ。タレント『くりぃむしちゅー』は『海砂利水魚』からの改名だが、ひらがな表記によってお笑い芸人らしさも生まれ、身近な存在として受け入れられたのではないだろうか。

音と表記の両要素を備えている好例は、小林製薬の『熱さまシート』『のどぬ~る』『爪ピカッシュ』『キズアワワ』といった商品名だ。駄じゃれ風な造語はユーモアがあり、一度聞いたら忘れない。「覚えやすく」「リズム感があり」「1秒で分かる」3本柱を軸に考えられたネーミングは、競合他社より一歩抜きん出ている。

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    言葉のリストを作り表現の幅を広げる

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