
LiDARによる認識とは

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この記事を読むことで、LiDAR技術についての基本的な理解が深まります。LiDARは「Light Detection And Ranging」の略称で、レーザー光を用いて得られた反射光から対象物の形状や距離を認識する技術です。主に車両の周囲の3次元情報を取得するために使われ、近年では速度の測定も可能になっています。
記事では、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式のLiDARを用いたAIによる物体認識の開発事例が紹介されており、AIとルールベースによる認識の両方を組み合わせて、認識技術の精度向上を目指す開発状況が説明されています。また、LiDARは水に弱く、悪天候時の測定に限界があるため、シミュレーション環境と実車データを併用した開発が行われています。
さらに、技術開発においてエンジニアが持つべきスキルについても述べられており、高いコードスキルのみならず、論理的思考や行動力が重要であるとされています。このようなスキルが顧客満足、ひいては安全で事故のない世界の実現につながるとしています。
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2025.4.17
技術・デザインLiDARによる認識とは
――LiDARや画像認識など、エンジニアに必要なスキル
この記事の目次
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株式会社デンソー
セーフティシステム事業部
セーフティセンサ&コンポーネント技術2部 担当課長髙木 雅成
続いては片山と同じく、車両や歩行者などの対象物の画像認識の研究開発を担当した後、LiDARの開発に従事。トヨタ自動車のLEXUSやMIRAIといったハイブランドの高度運転支援技術、「Advanced Drive」向けの製品の開発に携わってきた髙木雅成が登壇しました。
- Vol. 1:ソフトとハードに精通するデンソーが語る「先進安全・自動運転のアルゴリズム開発」
- Vol. 2:ADASアプリケーション「Global Safety Package」のアルゴリズム開発
- Vol. 3:車両周辺情報を高性能に検知するカメラ・画像認識のアルゴリズム開発
前回までの内容はこちら
この記事の目次
LiDAR:Light Detection And Ranging
髙木はまずは、LiDARについて解説しました。「Light Detection And Ranging」の略でもあるLiDARは言葉どおり、レーザー光を照射し反射光から対象物の形状や距離を認識します。
TOF(Time of Flight)や、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)といった方式があり、「LiDARはカメラと比較すると、模様・テクスチャがわかりにくく、解像度も高くありませんが、周辺環境の3次元情報を取得できることが強みで、最近は速度も測れるようになりました」と、髙木は特徴を述べました。
元々は、機能部でカメラの画像認識を担当していた髙木。担当が事業部でのLiDAR点群認識に移ったが、特にハードルはなかったと述べるとともに、次のように振り返りました。
「部門間の開発プロセスの違いや、認識で扱う情報が2次元から3次元になりましたが、信号処理された後の情報には大きな差はなく、これまでの経験は十分に生かすことができたと考えています」(髙木)
FMCW方式LiDARのソフトウェア開発事例
髙木は、FMCW方式のLiDARによる、AIを使った物体認識の開発事例も紹介しました。ただし、こちらも先の胡桃沢と同じく、ルールベースによる認識もしっかりと取り組んでいることを補足しました。
そして「AIベース、ルールベース両方をフュージョンさせ、お互いの苦手なところを補うかたちで進めています」と、髙木は現在の開発、活用状況を語りました。
さらに、Grid Mapベースの走路認識にも取り組んでいることを紹介します。
一方で、LiDARのような光を使ったセンサは水が苦手であり、大雨の日などは測定に限界があると言います。そこで、実際に自動車メーカーの方に試乗してもらい、どこまでセンサにがんばってほしいのか、性能や判断の限界について膝を突き合わせて話し合うなど、「裏では泥臭い開発をしています」と、開発舞台裏の苦労を吐露しました。
ソフトウェアエンジニアに必要なスキルにおいて、あくまで個人の考えだと前置きした上で髙木は、「高いコードスキルは、持っていればもちろん武器にはなると思いますが、必ずしも必要ではないと思っています」と、語ります。
一方で、「顧客の要求を理解し、達成するために様々な手段を講じることができます。その際には、論理的思考、色々な角度から考えることができる力、まずはやってみるという行動力などのスキルの方が大事だ」という持論を述べました。そして次のようにセッションを締めました。
「このような思考や姿勢がお客さまの満足へつながり、安全・安心・快適・利便を達成する。その先に、交通死亡事故ゼロという世界が待っていると思いますし、デンソーとしてそのような世界の実現に貢献したいと考えています」(髙木)
【Q&A】参加者からの質問に登壇者が回答
セッション終了後は、参加者から寄せられた質問に、登壇者が回答する時間が設けられました。抜粋して紹介します。
Q.テストにおいて、デジタルツインなど3Dシミュレーションも活用しているのか?
胡桃沢:画像認識に使えるレベルの3D映像を作成し認識を行ったり、ミリ波レーダーやLiDARのセンサモデルも作ったり、実際の公道評価を代替するシミュレーションが行えるようにシミュレーション環境を構築しています。一方で複雑なシーンはシミュレーションでの再現が難しいため、実車データと平行して使うような状況です。
片山:AIの発達により、我々が見てもリアルな映像なのかどうかの判断がつかないレベルとなっていますので、活用していますし、今後も拡張していく予定です。また、リアルだと誤差が生じますが、シミュレーションでは真値がわかるのも魅力です。
Q.雪や雨、路面凍結などの道路環境でも画像認識は可能か?
片山:霧や逆光など画像認識が厳しいシーンはいくつかあります。そのような中で、画像認識のやるべき使命は2つあると考えています。1つ目は、ドライバーがなんとか認識できるような状況では、画像認識も同じくロバストに認識することです。
2つ目は、ドライバーもまったく認識できないような、あまりにひどい霧などの場合は、画像認識システムは稼働できないことを、クルマやシステムに教えてあげる、フェイルセーフの考えが重要だと思っています。
Q.AI活用における学習データの検証について
片山:学習データも大事だと考え、検証しています。具体的にはAIを製品に使う規格が整いつつあるので、それらの規格を活用し、データの管理なども含め品質の良いデータを使うように心がけています。
Q.認識、判断後の操舵や加減速でもAIを活用していくのか?
胡桃沢:AIプランナーの出力は、時系列の走行軌跡と速度情報を含んでいるため、加減速や操舵の動きもAIで演算していることになります。
Q.人とセンサによる判断において、得意・不得意のシーンの違いなどはあるか?
片山:人間は隠れた標識を推論し、その場の空気を読むなど、センシングというよりもふわっと感じ取るのが強いです。一方でセンサはバッテリーがあれば、確実に同じ精度で測定しますが、人間は長距離運転などをしているとどうしても精度が落ちていく、という違いがあります。いずれは、人間を超える機能ばかりを持つセンサを開発したいと考えています。
※役職などは2024年11月講演当時のものです
- Vol. 1:ソフトとハードに精通するデンソーが語る「先進安全・自動運転のアルゴリズム開発」
- Vol. 2:ADASアプリケーション「Global Safety Package」のアルゴリズム開発
- Vol. 3:車両周辺情報を高性能に検知するカメラ・画像認識のアルゴリズム開発
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