サイボウズ株式会社

なぜ中古車売買トップのガリバーは社内ソーシャル活用に成功したのか?

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 経営者
  • 企業のプロジェクトマネージャー
  • 社内コミュニケーションの向上に興味のある人
  • 中古車販売業界関係者
  • 社内ソーシャルメディアの活用に興味のある人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事から得られる知識は、中古車販売企業のガリバーインターナショナルが、社内ソーシャルメディアを効果的に活用していることについての詳細な事例です。ガリバーは、Yammerというツールを通して社内のコミュニケーションを活性化し、新たな販売展示場「WOW! TOWN」の成功に寄与しました。この記事は、プロジェクト立ち上げにおける社内ソーシャルの導入が、単なる情報共有を超えて、異なる部署間の横のつながりを生み出し、そこで得られた複数の現場からの意見を迅速にプロジェクトに反映する方法を具体的に示しています。

ガリバーが中古車販売業に新しい風を吹き込むために、アイデアの形成過程からYammerを活用し、多様な視点を取り入れたことが詳細に説明されています。また、このプロジェクトでは、新しい社風を築くための経営陣のビジョンと、社員一人ひとりが創意工夫を持って取り組む環境の形成についても語られており、企業変革のモデルケースとして示唆に富んだ内容です。さらに、ソーシャルメディア時代における組織のあり方や、現代に必要な革新的な販売手法の追求を通して、企業全体の活性化を目指す示唆がされています。

Text AI要約の元文章

あのチームのコラボ術

なぜ中古車売買トップのガリバーは社内ソーシャル活用に成功したのか?

「あの企業はどんなツールを使って、アイデアをカタチにするチームを作っているんだろう」。今回は大槻編集長が、年々勢いを増すあの企業にインタビュー。

ガリバーインターナショナルは2012年、ユニークな工夫を凝らした販売展示場「WOW! TOWN(ワオ!タウン)」をオープン。同展示場を作り上げるために、現場スタッフなど全社員の意見を取り入れようと社内ソーシャル「Yammer(ヤマー)」を導入したそうです。

「いろいろな人を巻き込みたかった」と語るのは、WOW! TOWNの立ち上げに貢献した山畑直樹さん。そして、山畑さんの思いを聞きYammerの導入を提案したところ「予想を超える効果が出ました」と語るクラウドプロジェクトリーダーの椛田泰行さん。 今回はこのお二人に、WOW! TOWNというプロジェクトを通して実感したという社内ソーシャルの活用方法と効果についてお伺いしました。

WOW!TOWNプロジェクトを起案された株式会社ガリバーインターナショナル 直営戦略室の山畑直樹さん(左)、Yammer導入を担当された椛田泰行さん(右)

お客様にスマートなカーライフを提案する中古車展示場

とてもユニークな中古車展示場があると聞いて、取材に伺いました。まずは、この展示場の概要をお聞かせいただけますか?

大槻

日本の自動車業界の市場規模は約7900万台と言われていて、これ以上は増えることはありません。経済状況も影響して、中古車オークションでの販売価格はどんどん下がっています。そこで、自動車の売り方自体を掘り下げて見直してみました。

WOW!TOWNのWebサイトから、販売展示場の全景。まるでテーマパークのような作りです。

ここは、ガリバーが提唱する「スマートカーライフ」を体感しながら、自分に最適な自動車を見つけられる販売展示場です。買い取り事業で培ったノウハウを活用するほか、他業界の販売方法なども参考に弊社独自の小売店を目指しました。

具体的にどのような特徴があるんですか?

大槻

今までは一人の営業マンが、お客様からライフスタイルや予算などあらゆる情報を聞いて、最適な車を提案していましたよね。これには営業力が必要です。しかし、WOW! TOWNでは、お客様自身が自動車選びをする中で、自然と自分が欲しいと考えている車が見つけられる仕組みを施しています。

実際に編集長も体験!まずはiPadで自分のライフスタイルや車に求めるニーズを登録していきます。後ほど、このiPadを持って展示場内を回ります。

一例ですが “セダン”や“ステップワゴン”などのカテゴリー分けではなく、弊社独自のカテゴリーを設け、お客様が自分の生活をイメージしながら自動車選びができるように工夫をしているんですよ。

このエリアは「スタイリッシュ」ゾーン。デザインにこだわりたい人のための車が集められています。

お母さんを想定したエリアの展示。荷物がどれだけ積めるかが一目で分かるよう、小道具も配置。1つ1つのディスプレイにこだわりを感じます。

営業マンの個人力に頼るのではなく、車が持つ魅力を展示で表現して、お客様に体感してもらうということですね。

大槻

その通りです。「スマートカーライフ」は、自分の物差しで本当に欲しいと考えている車を購入しましょうという考え。せっかくの高い買い物ですから、満足してもらいたいですよね。ただ、中古車は、どうしても安かろう悪かろうのイメージが強いです。事故車を売らないというのは当たり前だとしても、中古車に対するこうしたイメージを払拭するには、中古車の概念を根本的に変えていかないといけませんでした。そして、生まれたのがこのWOW! TOWNです。

WOW! TOWNが誕生するまで

WOW! TOWNのプロジェクトは何名ぐらいで行ったのですか?

大槻

今は社内では10名ほど、社外を含めると20名弱ですね。コンセプトや戦略を決める際は3~4名ほどで意見を出し合っていました。当時はこのメンバーと飲みに行ってもその話ばかり(笑)。

WOW!TOWNプロジェクトを起案した山畑さん。

元々のきっかけはどのようなものだったのでしょうか?

大槻

きっかけは方針転換プロジェクトですね。リーマンショック以降、これからは販売チャネルを増やしていくべき、という考えが会社に生まれました。今までは「買い取り専門店のガリバー」というイメージが良い意味でブランド力となっていましたが、これからのガリバーにはそれが邪魔にもなってしまうのではないか。そう考えて、2009年にCIを全面的に刷新。スローガンを「クルマのこと、ガリバー」から「スマートを、たのしもう」へ変更し、イメージカラーも黄色から白と緑へ一新しました。

企業ロゴのビフォー&アフター。デザインもシンプルに。

それは企業の新陳代謝という意味でとても大事ですよね。

大槻

プロジェクトの一環には、販売展示場という構想もありました。実は僕はあまり自動車が好きじゃありませんし、詳しくもない(笑)。だからこそ、「自分ならどのようなお店に足を運ぶだろうか」と考えていました。そんな中、2011年12月ぐらいに社長直轄のプロジェクトチームが立ち上がり、自分のアイデアを発表する機会に恵まれたんですよ。私は現在のWOW! TOWNの元となる「車横町」というプランを出しました。このプランの内容は、一言で言うと「自動車版IKEAを作りたい」です。

横町・・・シブいですね。。「自動車版のIKEA」というのはつまりどういうものなんですか?

大槻

これまでの自動車販売は、車種や年式、走行距離、色、傷などを元にお客様に購入を考えていただいていました。しかし、今後はこうしたマニュアル的な売り方では通用しません。お客様のニーズを把握して、販売のプロとして最適な一台が提案できる、それが求められます。IKEAさん、Appleさんのような提案方法をベンチマークし、クルマの利用シーンや、クルマのあるライフスタイルがイメージできる提案を行うことにしたんです。自動車業界にはない考え方でもあったので、斬新な試みができると感じました。

「車横町」の企画書。「回遊、滞留からのレジャー感覚と購買意欲の向上」というコンセプトが図示されている。

反応はいかがでしたか?

大槻

上々という感じだったのですが、いつの間にか話が消えてしまって…そこで再度、内容は全く同じで名前を「車銀河」に変更して提案してみたところ、「しつこい!じゃあやってみろ」と社長に言っていただけました(笑)。ただ、「銀河じゃ男臭い」と意見をいただきましたので、「WOW! TOWN」という名前に変更しました。これが2012年3月のことです。

この頃はコンセプトや戦略を生み出す段階でしたので、まだ山畑を含めた少人数で進めており私も入っていません。

まだ椛田さんは参加されてなかったんですね。

大槻

僕が椛田に声をかけたのがWOW! TOWNのオープン3ヶ月ぐらい前でしょうか。コンセプトが決まったので、より多くの人を巻き込んでいきたいと考えて、良い方法はないかと椛田に尋ねたんですよ。

そこで社内ソーシャルとして「Yammer(ヤマー)」を薦めました。WOW! TOWNのコンセプトや山畑の気持ちを聞いて、複数の人間が複数とコミュニケーションできる環境が必要だと感じました。Yammerなら、様々な部署の人材が混在しても、それぞれが仕事の合間で情報を投げ込めますし、まさにうってつけだなと。Yammerを導入してインフラが整ったので、チームのメンバーを増やしていきました。

Yammer導入を実行し、プロジェクトをITの面から全面的にサポートした椛田さん。ITを統括される責任ある立場にありながら、特定の部署に所属せず、名刺も持たない、不思議な存在の方です。

Yammerで常にビジネス脳を働かせる

Yammerを導入した当初は何名ぐらいが使っていたんですか?

大槻

30名ぐらいでしょうか。関係のない人までたくさん入ってきた記憶があります(笑)。

導入から使用するまで、スムーズに行きましたか?

大槻

僕は食わず嫌いをしていました。椛田に「文句を言わず使え!」と言われていたので、抵抗感があったのかもしれません(笑)。最初の一ヶ月はなんだか面倒臭いツールだな~と感じていたのですが、だんだんと便利さが実感できていつの間にか自分のインフラになっていました。

レスポンスが速く情報共有を行う上で、社内ソーシャルは便利ですね。

大槻

使用方法がシンプルという点も大きいと思います。Yammerには、WOW! TOWNに関する資料を集約できる機能がありました。そのほかにもファイル添付や検索機能を搭載するなど、シンプルだけど足りないと感じる機能がない。こうしたことが影響してか、会社としてYammerの利用を指示したことも強制したこともないのですが、今ではガリバー全社員2,200名のうち1,400名が使用しています。

WOW!TOWNプロジェクトのYammer画面。活発に情報交換がされています。

あと、いつでもどこでも仕事ができるという利点があります。飲んでいる時でもYammerを開けば、すぐにビジネス脳が動き出す。議論したい時に議論が出来て、パッと思いついたアイデアも思いついた時にすぐ投げられる。

それだと公私の切り分けが難しくなりませんか?

大槻

僕自身は会社に拘束されているという気持ちはありませんね。企画を考える上で大事なのって、常に考えていて忘れないことではないでしょうか。企画の枠組みだけ決めるのであれば会議の時だけ考えれば良いかもしれませんが、細かい仕組みも考えていくためには常にビジネス脳を刺激するYammerのような仕組みが必要不可欠でした。

「Yammerが、僕のビジネス脳を刺激してくれました・・」と、素敵なドヤ顔をご披露頂いた山畑さん

「タテ」組織に「ヨコ」のつながりを生み出す社内ソーシャル

1,400名が利用しているということですと、現場でも活用されているんですね。

大槻

はい。先日、営業から「千葉方面で取水制限が出るので、ガリバー全体で洗車サービスをPRするのは控えませんか?」という書き込みがありました。今までなら取水制限に気付いた営業マンが店長に話すだけで、全社へとは広がらなかったでしょう。こうした現場にいないとわからない情報がYammerに投稿されれば、本部が把握しなくてもすぐに関係する他店に共有することが出来ます。

サイボウズ式で高木先生の組織論の記事を拝見しました。あの記事の定義に合わせてみると、ガリバーは社長を中心にトップダウンで戦略を実行する「タテ型」組織です。ただ、販売事業に挑戦するなかで、これからはお客様と直に接している現場スタッフも意見を出してほしい、と考えていました。しかし、当時はまだこれが実現できる最適な方法や仕組みがなかったんですよ。

現場でも、「ヨコ」のコミュニケーションが定着しつつあるということですか?

大槻

そうですね。Yammerのおかげで、物理的に離れた場所にある店舗、またはスタッフが自ら発案したことを共有できる「ヨコ」のつながりを生み出せました。社内ソーシャルは、こうした「ヨコ型」組織を創り出せる、最適なツールだと実感できました。ちなみに、オンラインだけでなく、社内イベントなどのリアルな仕掛けも実施しています。全社員を横浜アリーナに集めて行った運動会なども、普段は顔を合わすことがない事業所のスタッフに「ガリバーはこんなに大きな企業なんだ」と一体感を感じてもらっています。リアルでのつながりがソーシャルでのつながりにも良い影響を与えてくれるのではないかと期待しています。

最後に、今後ガリバーさんが目指している組織についてお聞かせいただけますか?

大槻

社長が以前から「2,000人の脳を動かす組織、会社にしたい」と言っています。これは社員全員が創業者意識をもって取り組むことだと思います。つまり自分の業務だけに固執するのではなく、会社の全ての取り組みを自分事と捉えてアイデアや知恵を出しあうことです。一見専門ではない、部署が異なる、しかしユニークなアイデアを持つ人材のアイデアをどんどんプロジェクトや業務に取り入れることで、化学反応も生まれますし、社員のモチベーションも上がり会社としての勢いも増していくのではないでしょうか。幸いYammerを通して、そのような人材が見つけやすくもなっています。「福岡の営業スタッフの誰々さんは面白いからプロジェクトチームに加えよう!」なんてこともしやすくもなっているんですよね。

人材それぞれのスキルにタグ付けして、タスクを任せるということですね。横のコミュニケーションが強固ならば、組織が自然とその方向に向かって行くようにも感じます。

大槻

現在はSNSから逃れられない時代になって、お客様の声もどんどんソーシャルメディアに投稿されます。こういう時代に閉鎖的な世界や旧来のやり方にしがみついていては、時代に取り残されてしまいますよね。一人でも多くのお客様に「いいね!」と思ってもらうためにも、私たちがインターネットを活用したコミュニケーションを熟知しておく必要もあると思っています。WOW! TOWNを作るに当たって、その基盤も出来上がりました。この成果を通して、より面白い会社になるよう社員全員で会社を育てていく環境を作っていきたいと考えています。

会社を変革するために、前のめりでプロジェクトを楽しんでいるお二人でした。

(写真:橋本 直己

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橋本 直己

フリーランスのカメラマン・エディトリアルデザイナー。趣味は尺八。そして毎日スプラトゥーン2をやっています。

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