野本 纏花
デジタルマーケティングを専門とする元マーケターのフリーライター。ビジネスメディアを中心に多数のWebメディアで執筆中。
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この記事では、料理写真を美しく加工するアプリ「ミイル」を提供する株式会社FrogAppsが、どのようにしてアプリを開発し、チーム内でのコミュニケーションをどのように行っているかについて詳しく紹介されています。ミイルの開発を主導する中村社長は、もともと飲食店経営者としての経験を活かし、食を通じた新しいコミュニケーションの形を模索していました。ミイルは、ただの料理レビューサイトとは一線を画し、食の嗜好や来店履歴など、より深いレベルでの口コミを提供することを目的としています。これにより、お店と顧客の間にファンの関係を構築しようとしています。
また、ミイルの運営体制やツールの活用についても言及されています。開発チームはリモート作業を基本とし、高度なスキルを持つメンバーが効率的に業務を進めています。当初は少人数で始まったミイルの開発は、コミュニケーションにメールと電話のみを使用していたとのことです。しかし、チームが拡大するに伴い、サイボウズLiveやチャットワークなどのツールを導入し、情報共有の効率を向上させました。
チーム内では、全員が同じツールを使用することが重要だと考えられ、そのための意思決定は合議制で行われています。さらに、ミイルを通じて外食と家庭料理の新たな関係性を模索し、食生活に影響を与えるコンテンツを提供することを目指しています。このような取り組みが、人々の食体験を豊かにし、持続可能な食文化の拡充に寄与する可能性を秘めていることが強調されています。
あのチームのコラボ術
中村さんはもともと六本木を中心とした、都内で飲食店を営む社長さん。お客さんとのソーシャルメディアを通じたコミュニケーション方法を模索する中でミイルという答えにたどり着いた。
まずはミイルが生まれた背景を教えていただけますか?
大槻
食を通じたコミュニケーションの中にある、「お店」と「お客さん」のコミュニケーションだとか、「お客さん同士」のコミュニケーションを健全に活性化したいというのがミイルの原点です。これって一種のクチコミなんですよ。 でも同じクチコミとはいえ、いわゆるレビューサイトのクチコミとはまったく別物。レビューサイトのクチコミが“新しいクチコミ”だとすると、ミイルが大事にしたいのは、来店履歴やその人の食生活、食の嗜好といった、昔からある“本来のクチコミ”です。それを残していく仕組みを作りたいなと。
昔からクーポンサイトのようなものではなく、お店とお客さんがファンの関係でつながる仕組みがあれば良いのにってお話されていましたよね。
大槻
まさにそれ。「食」って相性があるんですよね。おいしいと思うもの、もう一度行きたいお店は、人それぞれ違って当たり前。その相性の良い人同士、もしくは相性の良いお店とお客さんをどうつなげられるのかというところが肝になるので、そのためにまずは毎食記録を残してもらうところから始めようということで写真という方法に辿り着きました。
ミイルに至る発想の道筋を読み取ることが出来る、中村さんの著書「小さなお店のツイッター繁盛論」。編集長の大槻もチラッと登場する。
なるほど。でも写真を撮れるアプリはすでにいろいろありますよね?あえて独自開発しようと思われたのは、なぜでしょうか。
大槻
レビューサイトにアップされている写真って、どれもまずそうなんですよ。行ってみたい、食べてみたいと思えないものばかり。お店もお客さんも、誰も得をしないんですよ。ぼく自身、写真を撮ることが好きで、食の写真はこんな風に加工したらおいしそうに見えるというポイントがわかっていたので、食専用の加工アプリを作ろうと思いました。 シズル感がちゃんと伝わるよう、必ずおいしそうに見えるフィルターなり加工の仕方にこだわっているので、ミイルを使えば、誰でも簡単に“おいしそうな写真”が撮れるように作ってあります。
まずかった料理をわざわざおいしそうに加工する人はいないでしょうから、お店からも歓迎されるでしょうね。
大槻
ミイルはiOSとAndroid用のアプリが提供されている。編集長のお勧めフィルターは「Bokeh」。周辺がボヤけるフィルターだが、目の錯覚のせいなのか中心付近がものすごくシャープでクリアに写っているように演出してくれる。
中にはがんばってまずそうに加工する人もいるのかもしれませんけど(笑)。ただミイルは、レビューサイトのようにお店という“場”があって、そこへみんなが見に来るという形ではなく、ソーシャル上で繋がっている人しか見ないようになっているので、悪意は伝わりづらい仕組みにはなっています。わざわざまずそうな写真ばかりアップしている人をフォローしようとは思いませんからね。基本的にミイルに上がってくる写真は、お店や料理に対して、何らかの好意があるものになっているんじゃないかな。
実際ミイルをやってみると、「思った以上に外食って人の食生活のほんの一部でしかなかったんだ」ということに驚かされました。ぼくらの外食費って高かったんだなって(笑)ミイルの利用者を見てみると、一番熱狂的に支持してくれているのは、自炊している人たちなんです。自分が作ったものをちゃんと盛りつけて、ランチョンマットも敷いて。やっぱり、気を使えば使うほど「食べたい」もコメントも多くなるんですよね。
確かに、みんなに見られるものなら、少しでもよく見せたいという心理が働くでしょうね。
大槻
そうなんですよ。自宅でごはんを作るのって、主婦にとっては、大変な割に結構孤独で報われない、つらい作業のひとつ。絶対、毎日やらないといけないけど、毎日やっているからこそ、ありがたみもなく、「ごちそうさま」も「ありがとう」も言われない。それがミイルという発表の場を持つことで作品に変わるんですよ。ある種の創作活動になる。みんなが評価してくれることで、作る喜び、見せる喜びが生まれ、手応えを感じることができるんです。 ミイルで投稿するようになって、絶対に手間は増えているはずなのに、料理が苦痛から楽しめるものに変わることで、単なる作業ではなくなったことが大きいんだと思います。今後は、この辺りの可能性をもうちょっと探っていきたいですね。
ミイル開発チームは何名体制で運営されているんですか?
大槻
Kiznaからリスタートした当初は、ぼくを含めて4名でした。iPhoneのエンジニア・サーバーのエンジニア・デザイナー・ぼく。その頃は、それぞれ自宅で作業をしてもらって、ぼくだけオフィスに来ている感じでしたね。
遠隔地でどのようにコミュニケーションされていたんでしょうか。
大槻
そのときはメールと電話だけで事足りていました。サーバーのエンジニアなんて作業は1人でするものだから誰かに相談する必要もないし、iPhoneのエンジニアともAPIを渡すだけだし。みんなスキルが高いので、週に1回集まってちょっと打ち合わせするだけで、後は持ち帰ってそれぞれが進めるという形で、コミュニケーションをとる必要はほとんどなかったですね。最初のリリースまでは、そんな感じでした。
それはすごいですね。現在はどうですか?
大槻
14~15名になりました。そのうちフルタイムの社員は8名です。
コミュニケーションツールに変化はありましたか?
大槻
ストックの情報はサイボウズLiveを使っています。フローの方はFacebookメッセンジャーを使っていたんですけど、さすがに最近は人数も増えてすべての発言でアラートが出るのはつらくなったので、チャットワークをトライアル中です。
Facebookはプライベートと仕事の切り替えが難しいですよね。チャットワークのトライアルは、中村さんは反対だったんですけど、社内の多数決で決まりました(笑)
サイボウズLiveにチャット機能があれば、一番いいんですけどね。
「チャットがあれば・・・・それでいいんだけど・・・・」 編集長「・・・はい・・・」
実は最近プロダクトマネージャーの丹野に聞いたところ、サイボウズLiveでもチャット機能の搭載を具体的に検討開始したそうです。これはちょっと楽しみですね。チャットといえば、LINEはどうですか?
大槻
LINEはログが残らない時点で、ビジネス用途はありえないですね。IDが端末ごとだから、携帯を2台持っているとIDが別になっちゃうし。そうなるとすごく使いづらい。片方の電池がなくなったら、一切連絡が取れなくなるっていうのもちょっと…万が一のときに怖いですよね。
あと、チームによってはSkypeを使ってグループ通話したりもしていますね。
サイボウズLiveでは、どのようにグループ分けをされているのでしょうか。
大槻
以前は業務ごとにグループを5つか6つ作っていたのですが、チャットワークを使い始めてから3つに集約しました。「取締役だけが参加しているグループ」「マネージャーだけが参加しているグループ」「全社共通のグループ」の3つです。 全社共通のグループでは、経緯を残したいものや、フローで流れていっては困るものを、掲示板に議事録のような形で残しています。この“全部を残す事で経緯がわかる”というのがポイントですね。逆に、取締役のグループでは、掲示板はほとんど使わず、ToDoリストだけを使っています。決議しないと行けないもの、相談しないといけないものをToDoリストにすべて落とし込んでおいて、月に一度の会議でそれを潰していくという使い方をしています。
中村さんのサイボウズLiveホーム画面。「全体共有」や「マネージャー会議」など、様々なグループが作られやり取りされている。
チームでツールをうまく使いこなすコツを教えていただけますか?
大槻
とにかく全員が参加すること。それに尽きるかな。全員がひとつのサービスを使うと、みんな動き始めるんで。やると決めたら一気に移行しないと、意味がない。ぼくは2~3日間、一部の人にテストをさせて良さそうなら、一気に全員追加して動かしちゃいます。 Eメールは絶対ないですね。ちょっと目を離すと、すぐに未読200件とかになっちゃうでしょ?その中で全部忘れずに対応するのは難しいし。外部の人もチャットワークに入ってもらって、会話の流れを見てもらうことで、何が起きているか把握してもらえるようにしています。
きっと、みなさんリテラシーが高いから、いろんなツールを試せるんですよね。
大槻
まぁ、逆に言うと、みんなリテラシーが高いから、いちいちうるさいんですけどね(笑)それぞれにこだわりがあるから。ぼくの一存で強制的に使わせるようなことはしませんよ。ちゃんと合議制で決めています。本当のことを言うと、個人的にチャットワークは苦手なんだけどなぁ(笑)
笑顔で苦手意識を語る社長に、いい加減にして下さいという素敵な表情の朝妻さん
ミイルの今後の展開について教えてください。
大槻
今までの外食産業のマーケティングは、お店とお客さんの相性は無視して、金額だけ安くしたクーポンをばらまいて一気に送客をしていましたよね。でもそのやり方では、2回目以降の来店にほとんど繋がらない。それって、そもそもクーポンを渡す人が間違っているんですよ。クーポンを渡す相手を正しく見極められるようにすることが、食のO2O(Online to Offline:ネットショップからリアル店舗への送客)の入口で一番大事なことだと思っています。
なるほど。闇雲に配るのではなく、マッチングが大切なんですね。
大槻
ただ、いきなりそこまでいくのはまだちょっと距離があるので、まずはもう一歩引いたところから、いろんな食の楽しみ方を探ってみようかと思っていて。ミイルを始めたことで、新しく見えてきたことがたくさんあるんです。
それは例えば、どのような?
大槻
7月に「丑の日のパワー飯」っていうコンテンストをやってみたら、うなぎに限らず、焼き肉の写真を投稿する人がいました。ミイルを通じて「丑の日に焼き肉ってアリなんだ」っていう気付きが生まれたら、さらにそれが広がったら、ミイルは人の食生活を変えられるメディアになれるんじゃないかと感じたんです。そんな風に、やりたいことや試したいことが日々、いろいろと出てきているので、今後それらにどんどんチャレンジしていこうと思っています。
これからも食の未来とおうちでご飯を作る方々の創作意欲のために、がんばれ!ミイルマン
(写真撮影:kumadaiworks.jp さん) ミイルのアプリ開発における情報共有の詳細は、こちらの記事で。 500万件の「食べたい!」気持ちが集まるソーシャルアプリ「ミイル」――成功するスタートアップの情報共有スタイル
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