サイボウズ株式会社

「長山、会社やめるってよ」 イケダハヤト×アフリカで働くことを選んだ4年目社員

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • ビジネスパーソン
  • キャリアチェンジを考えている人
  • 社会貢献活動に興味がある人
  • 青年海外協力隊に興味がある人
  • 柔軟な働き方や生き方を模索している人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を通して、異なるキャリアパスを選択した2人のビジネスパーソンがどのようにして社会貢献活動に関与し、またその動機や目標について語っています。イケダハヤト氏と長山悦子氏は共に1986年生まれの世代で、プロボノやボランティア活動を通じて社会的価値を追求しています。長山氏はサイボウズに勤務しながらプロボノを行いつつ、青年海外協力隊員としての活動も計画しています。一方、イケダ氏はプロブロガーであり、NPOへの支援を通じた社会問題の解決に関心を寄せています。彼らの対談では、社会貢献が個人のキャリアに与える影響や、日本社会における働き方の選択肢の重要性が議論されます。さらに、育自分休暇制度や、社会的投資収益率(SROI)といった新しい考え方や制度が、社会貢献を考える上でどのように役立つかについても触れられています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

「長山、会社やめるってよ」 イケダハヤト×アフリカで働くことを選んだ4年目社員

(左)イケダハヤト氏、(右)サイボウズの長山悦子氏。対談時は共に27歳。インターネット普及時に思春期を迎えたいわゆるハチロク世代だ。

NPOのソーシャルメディア活用を支援する「テントセン」の代表で、プロブロガーのイケダハヤト氏。ソフトウェアメーカーのサイボウズで製品プロモーションを担当しながら、プライベートでは民宿の魅力を伝え、都市と地方を繋ぐボランティア「ヤドノマド」の代表を務める長山悦子氏。プロボノ(職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア活動)を経て、新しい働き方を選んだ二人が、選択の背景や抱える問題意識、将来への思いを語り合う。

ソーシャルメディアとNPO

イケダさんには「ヤドノマド」の件でご相談に乗っていただくなど、お世話になっています。本当にありがとうございます。

最初は、2011年ですか?

はい。初めてお会いしたのは2011年ですが、ネットでの接点は2010年です。ツイッターで「ソーシャルメディアはNPO支援にすごく使えそう!」とつぶやいたとき、それを「文脈はわかりませんが、僕もそう思います」と、イケダさんがリツイートしてくれました。「この人すごい。私の教えてほしいことを、知っている!」と思い、それからイケダさんのファンになりました。

ありがとうございます。

私にとって師匠ですね。

いえ、そんなことはないですけどね。(笑)

長山氏は、「サイボウズOffice」のプロモーションを担当している。またCSR部という部活動を作り、社外の人とCSR48としても活動している。

長山さんは、いつから社会貢献に関心があったのですか?

中学生からです。環境問題を科学の力で解決したくて16才から22才まで、高専で化学をやっていました。ですが、私は実験室でコツコツ研究できるタイプじゃないと気がついて・・・。もともと途上国の支援には興味があったのですが、技術者を目指すよりも社会貢献の現場と技術者を結ぶ翻訳家になったほうが自分の力を発揮できるのではないかと思って、国際協力の専攻で東大の大学院に進学しました。

大学院での専攻はITとあまり関係がないように思いますが、なぜサイボウズに入ったのですか?

自分が国際協力のスペシャリストになるのではなく、一般の人が国際協力を普通にできる社会にするにはどうしたらいいかと考えました。それには、まず自分が一般企業に勤めようと思ったのです。そして、世界を結ぶために必要なWebの知識を勉強したいと思い、IT企業のサイボウズに入りました。

ブレのなさ驚異的ですね。

アフリカで、スモールビジネスを起こす

次は、サイボウズを辞めて青年海外協力隊に行くのですね。

はい。来年1月から青年海外協力隊員としてボツワナ共和国にいきます。ボツワナはご存知ですか?

全然わからないです。

ボツワナは、世界で一番象がいる国

ボツワナは、アフリカ大陸の南部にある内陸国です。広大なサバンナが広がり、野生動物の楽園と呼ばれるほどの大自然があります。世界で一番象がいる国です。主要産業はダイヤモンド採鉱と観光です。政治的に安定していて、アフリカの優等生といわれているんですよ。 でも、ボツワナの経済を賄っているダイヤモンドはあと20年で枯渇すると言われています。ボツワナでは、近代化によって伝統的な狩猟生活ができなくなった人々が生活保護世帯となっていることが多く、農村部で仕事をつくるのが課題です。

わかりやすくいうと、起業コンサルタントとして活躍するということですか?

コンサルタントというよりは、村の方々と同じ目線で一緒に働きたいと思っています。住民主導でスモールビジネスを起こせるように、現地で新たな旗をたててくれそうなリーダーを見つけ自分が一番目のフォロワーになります。

現地の人々とコラボレーションする経験は、これまでもされてきたのですか?

大学院のとき、インドネシアの農村に滞在したことがあります。社会人になってからは「ヤドノマド」の活動で日本の農村に通い、現地の方と交流し、民宿のPR支援をしていました。1年半ほど東京と地方を行き来していましたが、だんだんと2足のわらじに限界を感じてきました。 このままだと、仕事もプロボノも両方が中途半端になってしまう‥と悩んでしまって。じっくり同じ地域で取り組みたいという思いもあり、「育自分休暇制度」ができたのを機に、以前から興味のあった青年海外協力隊に行くことにしました。

「育自分休暇」での経験をどう役立てるか?

青年海外協力隊は現地での生活費や、日本での生活を維持するための手当が出るそうですね。

はい。自由な働き方は、クリエイティブでスキルが高いスーパーマンじゃないと難しいイメージがありますが、もう少しハードルを下げても実現できるよと伝えたいです。私は会社の「育自分休暇制度」とJICAの「青年海外協力隊」の制度を使うことにしました。

なるほど、制度をうまく使うというアイディアなのですね。

「育自分休暇制度」は、転職や留学など自分を成長するために退職する人が、最長6年間は、復帰できるという制度です。

6年!長いですね。

青年海外協力隊への応募は、「育自分休暇制度」ができたことがきっかけになったという。

アフリカでの2年間でこんな風に成長したい、というイメージはありますか?

まず英語ができるようになりたいです。次に、全くの異文化の中でチームを作って業務を回すというマネジメント力を身につけたいです。あとは、お金のことを考えられるようになりたいですね。お金を稼ぐ仕組みを一から作るので、お金がないと何もできないということを、多分、思い知らされます。

いいですね。「異文化」というメタレベルでコミュニケーションについて学ぶのは、確かにすごく仕事に役立ちますよね。帰国後サイボウズに戻ってきてから取り組む仕事は、どんなものをイメージしているんですか?

せっかくだからグローバルな仕事をしたいです。

サイボウズは、グローバルな会社ですものね。会社は損しませんし、すごくいい仕組みですね。

はい。ただ、中には青年海外協力隊での経験をうまく帰国後のキャリアにつなげられていない方もいるようです。そもそも日本で国際協力に関する仕事のパイが少ないのに加えて、日本の企業では途上国でのボランティア経験を評価してくれるところはまだ少ないです。

問題意識が高くて社会貢献したいアグレッシブな人たちを、企業が取り込めていないのは大きな損失ですね。米国だと就職先希望ランキング上位にNPOが並んでいます。
社会貢献意識が高い人は、ビジネスから逃げていると思われている。でもビジネスの本質的価値は、問題解決だと思います。社会貢献したがる人は問題意識をもっていて課題解決能力も高いのです。うまくモチベーションに火をつけてあれば、すごく活躍できるはずなのに。

企業側も、うちの会社はこんな社会的な問題解決をしているよとわかりやすく伝えられるといいですね。

半分働いて半分ボランティアをする生き方

以前イケダさんが、「1年のうち半分はお金を稼ぐ仕事をして、残りの半分はボランティアをし家族と過ごすライフスタイルが実現できそうだ」とお話されていて、めちゃめちゃ羨ましかったです。

ははは。

イケダさんがボランティアに関心を持ち始めたのはいつからですか?

社会人になってからです。それまでボランティアには全く興味がありませんでした。会社でソーシャルメディアを担当することになり、米国のNPOがソーシャルメディアをめちゃくちゃ活用していることを知りました。事例も上手でパフォーマンスが高いキャンペーンをバンバンやっていて凄いなと。日本のNPOは全然活用できていなくて、何かやったほうがいいのではないかという問題意識だけをもっていました。 そんなときツイッターでプロボノを知り、やってみることにしました。NPOにソーシャルメディア活用のアドバイスを始めたら、社会的な意義を少なからず実感できて、すごく面白かった。イベントの集客が如実に増え、寄付が集まり問題解決ができるわけです。会社で仕事をするよりこっちのほうが面白いと思ってしまったのが、今に至る道ですね。

イケダ氏は、中学生時代からニュースサイトを運営し情報発信のスキルを磨いてきた

社会的価値を可視化したい

NPOでも、優秀な人は稼いで社会的インパクトを出せばいいと思うんです。

ご自身のプロボノ活動もいずれは収益化することを考えているのでしょうか?

もちろん考えています。僕らがコミットして、しっかりお金を産み出して成果報酬をもらう。今は現実的には難しいです。あと3年はかかる。普通のビジネスで考えたら投資期間が長いのでもちませんが、個人なので可能です。

ブロガーとプロボノの仕事は、別軸ですか?

つながりはかなりありますね。NPOの方の話を聞くのは取材活動そのものです。社会問題について語れるブロガーって、そんなに多くないんです。NPOの支援は、ブロガーとしての「ネタ探し」だったりもするんです。…とはいえ、これも、やっぱりカネにならない話なので、利益重視の会社ではできないでしょうね。

いろんな選択肢がありますね。私は、「サイボウズLive」という無料グループウェアの担当だったとき、プライベートだけでなく会社でもNPO支援ができて、ウハウハでした(笑)。プロボノとのシナジーもありました。

それは最高ですね!

仕事とプライベートが融合しウハウハだったと語る長山氏

最高でした。ですが、会社に対してのコミットができていないような気がして、悩むこともありました。結局、自分が得意なことしかしていなかったのです。「サイボウズLive」をNPOに使っていただくことには寄与できましたが、売上への貢献がわかりにくく、数年後に自分がマーケティングリーダーとしてやっている姿が描けませんでした。

社会的に意義があることが経済的な指標で評価されないということは、問題があると思います。欧米では、SROI(Social Return on Investment:社会的投資収益率)という社会的価値を可視化する指標があります。こういった指標が広がれば、世の中変わると思うのです。短期的にはお金ではかれない活動をしている人が居心地がよくなるかもしれない。お金も回りやすくなる。 僕がやりたいことの一つは、個人のSROIの算出です。端からみるとアホみたいなんですけれど、最近、自分のブログで収入と無償労働に費やした時間を公開しています。 現在、ぼくは月間60~80時間程度、無償でNPOなどを支援しています。企業向けに同じ仕事を行った場合を考えると、これは100~150万円程度の価値になります。ということは、「ぼくは無償労働によって、年間1,000万円以上の社会的価値を生み出している」みたいな計算をしようと考えています。

育児か復帰か揺れる心

イケダさんは育児もされているのですか?

けっこうしています。奥さんには、「もうちょっとコミットしてよ」と言われますが。

お子様が生まれる前と今とで、家事の分担量は変わりましたか?

出産前は、僕のほうが多かったかな。僕は在宅でしたし、奥さんは残業が多い仕事をしていたので。飯を作るのは半々で、掃除、洗濯は基本的に僕でした。今は、奥さんが育児休暇をとっているので、奥さんのやる分が増えています。

イケダ氏のお子様は、7ヶ月になった

奥様は、どういうキャリアなのですか?

仕事をめちゃくちゃ楽しんでいるというより、普通に働くという感じですね。うちの奥さんだけではないと思いますが、やっぱり子育ては楽しいらしくて、 育児を取るか、仕事を取るか、葛藤しているようです。ぼくも一応それなりに稼いでいるので、いわゆる専業主婦になるのも、不可能ではないだけに。 現実的に、時短勤務だと収入も落ちるし、通勤に往復3時間かかるので子供には12時間ぐらい会えなくなってしまうんですよね。保育園のコストも下手すると月6、7万円かかります。これはうちの奥さんに限らず、そこまでして働く意味があるのかな、と疑問に思う人は多いのではないでしょうか。難しい問題です。 うちの奥さんは復帰するつもりでいますけど、復帰せずにそのまま育児にいっちゃう人もいますよね。贅沢な話なので語っちゃいけないという感じがありますが、現実として、仕事よりも育児を取る女性はいますよね。

サイボウズは、生まれた子が小学生になるまで、最長6年間育児休暇がとれます。ライフスタイルの選択肢をゆっくり考えられるいい制度だなと思います。

すごい。めちゃくちゃいいですね。それなら葛藤も少なくなりそうです。

少しずつはみ出してみる

男女問わず、今の会社組織で自分らしいライフスタイルが実現できないと感じている人には会社を辞めてフリーランスで働くという選択肢もありますが、どう思いますか?

マッチングの問題だと思います。失職するのは安易に勧められません。よりよく生きるためのセーフティネットとして、育自分休暇制度は、いいですね。会社にロックインされ過ぎていて、もったいない人がいると思うんです。

海外協力隊にいくことを羨ましいと言われることもあります。大企業では、制度があっても使えない雰囲気とも聞きます。「雰囲気を作っていこうよ」と思うのですが。やりたい気持ちや制度があっても、なかなか行動に移すのは難しいのかもしれません。

育休の話でも同じです。男性で育休は2%しかとっている人はいません。取得したい人は30%近くいるので、28%ぐらいは我慢している。なぜ、そんなに我慢するんでしょう。僕は、育児をしたいということもフリーランスになった要因です。自分で決めました。やればいいのに、なんで動かないでしょうねぇ。

みんな、あんまり「枠」からはみ出す練習をしていないんじゃないかな?と思います。「アフリカに2年間行ってきます」というと驚かれますが(笑)、私は昔から少しずつ枠からはみ出してきたので、自分にとってはそんなに大それたことではないんです。 たとえば、理系の研究者を育成するための学校で、ひとりだけ国際協力の大学院を受験して不思議がられたりはしましたが、「みんなと同じように進学する」というレールから大きく外れてはいない。学校を卒業したら普通に一般企業で働いて、旅やイベントが好きだからという「趣味の延長」で民宿支援のボランティアをしてみた。 そして今、会社を辞めて起業したいほどの夢があるわけではないけど、制度をうまく利用してリスクを追わずにアフリカでスモールビジネスの立ち上げにチャレンジしてみる。こんな風に、ちょっとずつはみ出して、冒険しているんです。

根本的には、その人がどれくらい愛されたかという自己肯定感に直結するんじゃないかな。僕が取材するなかでも、「世の中を変えられるよ。なんだってできるよ」と、子供時代に親から言われつづけていた起業家は多いです。「自己肯定感をもつこと」と「成功体験を積み重ねていくこと」、これは活躍しているビジネスパーソンに共通する資質だと感じます。

そうかもしれないですね。

僕も子育てをしていて、そこを意識しています。「お前は、すごいんだよ」といってあげる。まぁ、すごく傲慢に育つリスクと裏腹ですけれど。

それぞれのゴール

イケダさんは、20年、30年後ってどういう風に考えていますか?

僕はモノカキが好きなので、個人的なゴールとしては、このままずっと死ぬまで書き続け、それで食いたいと思っています。 クリアになったのは、世の中には金銭的価値ではかりにくいことがあるということです。人の存在や企業、事業の社会的意義を評価できる社会制度を作りたい。そういう仕組みを創るプレーヤーになりたいです。

日本一のブロガーになると宣言するイケダ氏とプロジェクトデザイナーになりたい長山氏

私は、20年後、30年後を描けていません。こういうのが素敵というイメージはありますが、まだどうやって実現すればいいのかわからなくて悩んでいます。貨幣経済の軸に囚われないものでプロジェクトの仕組みを回していきたいと思っているのですが、自分のやりたいことがどういう職種であれば実現できるのかよくわからないんです。

肩書きを自分で作っちゃうとか。

そういえば、「プロジェクトデザイナー」という肩書きをつくろうかなと考えたことがあります。国境も組織の垣根も超えて、みんなが一緒にプロジェクトをうまくすすめられるように、場をデザインできるひとになりたいな、と。

プロジェクトデザイナー、いいじゃないですか!

そうですね‥勇気づけられます! お互い、大きな目標に向かって成長していきましょう。

写真撮影 :橋本 直己 photo credit: babasteve via photopin cc

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撮影・イラスト

写真家

橋本 直己

フリーランスのカメラマン・エディトリアルデザイナー。趣味は尺八。そして毎日スプラトゥーン2をやっています。

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