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「宇宙・物質のはじまりがわかる量子力学」──techな人にお勧めする「意外」な一冊(1)

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 技術者
  • 物理学に興味のある人
  • 量子力学に興味のある人
  • SFファン
  • 高校生・大学生
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を通じて、読者は「宇宙・物質のはじまりがわかる量子力学」という書籍が紹介されており、この書籍が物理学、特に量子力学の基礎を理解するための良い参考書であることを知ることができる。また、量子コンピュータの実用化が進む今日において、技術者はしばしば過去に熱中したものに立ち返ることで新たな視点やインスピレーションを得ることができるという筆者の経験も共有されている。

さらに、記事では物質が波と粒子の両方の性質を持つことに対する理論と感覚的な理解が述べられ、この理解を助けるための具体例としてド・ブロイ波長の計算が挙げられている。この内容は、物理に対する興味や理解を深めたい人にとって非常に役立つもので、物理学の面白さや理解の醍醐味を伝えるものとなっている。技術書や科学書を通じて、知識を更新する重要性についても触れ、科学や技術の進化に常に目を向けていることの意義を説いている。

Text AI要約の元文章

tech

「宇宙・物質のはじまりがわかる量子力学」──techな人にお勧めする「意外」な一冊(1)

tech@サイボウズ式のアドベントカレンダー企画、techな人にお勧めする「意外」な一冊のトップバッターは、笠原 規男さんです。笠原さんは、私(風穴)が「月刊Linux Japan」という雑誌をやっていたときに、筆者として連載を持って頂いていました。(編集部)

文:笠原 規男

私がお勧めする一冊は、広瀬立成著「宇宙・物質のはじまりがわかる量子力学」です。

宇宙・物質のはじまりがわかる量子力学
朝日おとなの学びなおし![物理学]シリーズ
著者:広瀬 立成
出版社:朝日新聞出版
ISBN:9784023310858
定価:1470円(税込)
発売日:2012年6月20日
判型:四六判
ページ数:224ページ

高校時代にアイザック・アシモフの「永遠の終り」を読んだ私は、本気で物理学者になりたいと思いました。なぜ、ハードではないSF(なんせタイムマシンものですから)で物理学者を目指そうしたのか、何に当てられたのかは今となっては思い出せないのですが。

結局、あまりに英語の成績が悪く、理学部受験をあきらめざるを得ず、物理学者への夢はついえました。

中学時代からパソコンに没頭、プログラミングが大好きでしたが、IT技術者になろう(仕事にしよう)とは露ほども思っていませんでした。ダグラス・エンゲルバートにもアラン・ケイにも憧れたことはありません。しかし、夢もプライドも破れた自分は、得意分野に逃避、工学部へ進学、現在のメシの種を得たのです。

最近、量子コンピュータがときどき話題に上るようになり、「重ね合わせの原理」なんていう言葉を聞くと「懐かしいなぁ、久しぶりに物理の本でも読んでみようかな」と。

「techな人にお勧めする」理由は、量子コンピュータが実用段階を迎える日も近いので予習しておきましょう、なんてことではなく、ときには仕事を忘れ、昔好きだったこと、熱中していたことに関する本を読んでみるのもいいですよということです。ですから、本当のお勧めの一冊は人それぞれということで。

私は、中高時代は講談社のブルーバックスなんかを読み漁っていて、実家から持ってきたものが本棚に何冊かあります。熱力学について書かれた 「マックスウェルの悪魔」なんて何度読み返してもおもしろいです。しかし、四半世紀前の書籍からの知識ですから、アップデイトしておかないとまずいかなと思い、たまたま書店に並んでいた量子力学ものの中で、出版が新しめのものを選んだのが、掲題の一冊です。

この本、大統一理論以降の内容はあまりなかったので、当初の目的は果たせませんでしたが、目からウロコの点が一つ。自分としては、物質が波と粒子の両方の性質を持つということが、理論的に正しいことは分かっても、感覚的に腹落ちしていなかったのです。しかしこの本で、時速100km、質量150gの野球のボールのド・ブロイ波長を計算するという一節があり、その結果波長は1.6×10-34m。周波数(振動数)を計算すると(今計算してみました)、1.7×1035Hz。あまりに微細に高周波で振動しているので、どんな高精度の機器でも測定不可能というわけです。

波は波長が長いほど、遮へい物の後へ回り込む「回折」という現象が顕著になります。だから、波長の長い(周波数の低い)帯域は、プラチナバンドと呼ばれ電波の争奪戦になるわけです。しかし、野球のボールほど波長が短ければ、回折も検出できないでしょう。バッターの横を通り過ぎたボールが、回折によって曲がったせいでパスボールする心配をキャッチャーはしなくてよいわけです。

マクロの世界で物質が波の性質を示さない理由が分かりました。ふんふん、納得。やっぱ物理っておもしろい。

物理に興味がない人には何のこっちゃかもしれません。しかし、私がそうだったように、純文学、旅行記、あるいはエッセイ、ジャンル問わず、自分の「熱量」が一番高かった時代に好きだった本を読んでみるのは、当時の「勢い」を思い出し、日常生活の位置エネルギーを少しだけ高めてくれるのではないでしょうか。(了)

笠原 規男さんのプロフィール:
メーカー系ソフトハウス、BtoC ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)、コンサルティングファームとIT業界で20年のキャリアを積み、2010年からはフリーランス。名刺にはITアーキテクトをうたうが、コーディングからPMOまで何でもこなすユーティリティプレイヤー。著書に「Oracle C/C++ 実践入門」「注文の多いJ2EE料理店」。


変更履歴:
2013年12月2日:「マックスウェルの悪魔」(ブルーバックス)へのリンクが間違っていたのを修正しました。申し訳ありませんでした。


この記事(書籍の表紙画像を除く)を、以下のライセンスで提供します:CC-BY-SA
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