サイボウズ株式会社

長時間労働の規制は賛成、反対? 勝間氏とNTT、モーハウス、サイボウズ経営者のディスカッション

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • 経済分野に興味がある人
  • 労働時間や働き方改革に関心がある社会人
  • ダイバーシティとジェンダー平等に関心を持つ人
  • 企業の人事労務担当者
  • ワークライフバランスを求める働く女性や男性
Point この記事を読んで得られる知識

この記事では、長時間労働の規制および女性の社会進出に関連するパネルディスカッションの内容が詳述されています。ディスカッションには、経済評論家や複数の企業経営者が参加しています。まず、女性の活躍と国民一人当たりのGDPに関するデータが示され、日本は女性の活躍度や労働生産性で遅れているという指摘がなされています。

次に、サイボウズの取り組みとして柔軟な働き方を支える制度の紹介があり、長時間労働が経営を圧迫しないという見解が示されます。また、モーハウスの光畑由佳氏は授乳服を手がけ、子連れで働くスタイルを普及し、女性の社会進出を支援する試みを紹介しています。

記事では、NTTのダイバーシティ推進や育児休暇制度、短時間勤務の取り組みについても触れられ、これらが女性の活躍にどのように寄与しているのか議論されます。記事全体を通じて、個々のニーズに応じた柔軟な働き方や、評価基準の見直しが重要とされています。また、働き方改革が多様な価値観を尊重する方向に向かうべきだとの意見が強調されています。

Text AI要約の元文章

長時間労働の規制は賛成、反対? 勝間氏とNTT、モーハウス、サイボウズ経営者のディスカッション

左から経済評論家の勝間和代氏、サイボウズ代表取締役青野慶久氏、NTT取締役島田明氏、モーハウス代表取締役光畑由佳氏

内閣府主催の「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」が2013年6月28日、メルパルクホールにて開催された。パネルディスカッションでは経済評論家の勝間氏とダイバーシティを推進する大企業NTTの島田氏、子連れワークスタイルを実践するモーハウスの光畑氏、男性で2度の育児休暇をとったサイボウズ青野氏がコーディネーターのNHKキャスター飯田香織氏が意見を交わした。

EU並みの長時間労働規制を

最初に各パネリストが「女性の活躍」についての具体策を発表した。 勝間氏は過去6年間で一番インパクトがあったという図表を紹介。

横軸が女性の活躍度(GEM)、縦軸が国民1時間当たりのGDP。OECD諸国の中で日本は女性の活躍度30位、1時間あたりのGDPは40ドル弱と下位。

1時間当たりの労働で付加価値を高く生み出している国ほど女性が活躍しています。 これはにわとりと卵の関係です。長時間労働を必要としないので、女性が参画しやすくなるのです。意識や能力の問題ではなく制度の問題です。なぜ長時間労働やさまざまな所得の規制が進まないのか。これは国民や経済団体が反対しているから。官僚、政治家、大企業の方が長時間労働をしているからです。私たちがやるべきことはボトルネックが何かを見極め、外すよう努力することです。わたしがしたいことは2つ。103万円配偶者控除の壁をなくすこと。EUと同じように週40時間以内の労働時間規制を加えること。この2つが主張となります。

自由な制度を入れてもそんなに大変でもない

続いてサイボウズ青野社長が2度の育児休暇をとったこと、6年までの育児・介護休暇、勤務時間を柔軟に選択できる制度、辞めても戻れる育自分休暇制度などを紹介した。

サイボウズは離職率が28%と高かった。「これではまずいね」と社員の人といろいろな制度を作りました。「自由な制度を入れると会社の経営を圧迫するのではないか」と経営者はすぐビビるのですが、実はそんなことはない。時短勤務は給料が低くなるので「経営的に大変でもない」というのが言いたいことです。

「制度」を生かす「風土」について語る青野社長

働き方を多様化するとおもしろい人がいっぱい入ってきます。「ディスカッションし新しいイノベーションが起きていく」と日々実感しているところです。この会社をすごい会社にして「女性を活用するといいことがあるよ」ということを知らしめていきたいです。

NTTグループのダイバーシティ推進の取り組み

NTTグループはダイバーシティ推進担当を設置しワークライフバランスの支援を行っています。女性の管理職は3%と低迷していますが、新卒採用は3割と女性の割合が増えつつあります。育休は3年間で短時間勤務は小学3年までできます。退職した社員が戻れる制度もあります。短時間勤務が多い30代後半は、管理職になる年代でもありいかにリーダー経験を積ませるかが重要 です。

2012年の有給休暇取得率ランキングでは、1位2位がNTTグループ

事業所内の保育所の整備、時間外勤務の削減、有給取得向上、効率的な働き方に取り組んでいます。道半ばですが、着実に女性の活躍のために努力しています。

おっぱいを飲ませながら真剣に会議

モーハウスの光畑氏は、授乳服を通じての情報発信や子連れで働くというワークスタイルについて紹介した。

お母さんの社会進出を支援しています。16年前、生後1ヶ月と3歳の子どもと出かけた際、電車の中で子どもが大泣きし服のボタンを開き車内で授乳をしました。この経験が強烈な印象となりどうしたらもっと自由に外に出られるか。自分で解決したいと思い授乳服を作り始めました。「お母さんが自由に外に出られて社会に参加できる」そういうライフスタイルを発信しています。

モーハウス社の社内風景。左は子連れで仕事をする母親を真似る子ども。

会社では変わった働き方をしています。子どもがいるスタッフは赤ちゃんを連れてきます。育児をしながら家事をできるなら仕事もできなくはないでしょうという考えです。おっぱいを飲ませながら真剣に会議し、赤ちゃんを抱きながら接客します。お客様にはびっくりを体験してもらいます。「こんなのもありなんだ」というきっかけになればいいと思います。

長時間労働を規制すればいいの?

勝間さん、長時間労働の規制と配偶者控除の見直しをということですが、どうやったら進みますか?

マニフェストに載せている政党を私たちが投票する。以上です。日銀の問題も、ほぼ同じプロセスで解決しました。リーダーシップと仕組みの問題です。NTTでは長時間労働を是正する考えはありますか?

残念ながら本社は異常な長時間勤務が続いています。働き方、仕事の仕方を考えることは、新たなクリエーションにつながる。なるべく効率的に仕事をするようにしています。

評価の問題に切り込む勝間氏

長時間労働そのものが、マイナスの評価になるしくみは?

やっているんですよね。ある一定の時間を過ぎると上司に「あなたの部下、こんなに働いています。それ以下にしてください」という指導がいきます。

そこが甘いんですよ。外資はクビになるんです。クビになるから死ぬ気で頑張る。やっぱりそこの問題じゃないかなと思います。

長時間労働に関してですが青野さんはバリバリと働いていたと聞いています。

長時間労働について僕は賛成でも反対でもないんですよ。「みんな好きなように働きゃいいじゃん」と思っています。一律であることから、多様性が失われてつまらない会社になっていくと。僕が前にいた電機メーカーは20年くらい前から長時間労働が問題になっていて毎週水曜はノー残業デーでした。新入社員だった僕はもっと仕事をしたいのに定時になったら帰りましょうと。「女性をなんとかしよう」ではないと思う。男性でも女性っぽい人もいるし、女性でも男性っぽい人もいる。いろいろな人がいるのだから「1人ひとりちゃんと見ようぜ」と。短く働きたい人もいれば、育児大好きな人もいれば、仕事が好きな人もいるわけです。そういう人たちが集まって1人ひとりが働きやすい会社を作ろうという考え方でいかないと。結局ルールを決めてやりましょうとなった瞬間、また働きにくい人、生きにくい人がでます。まずは「1人ひとりをみよう」という発想が大事なのではないかと思います。

20年ぐらいしたら自動的に解決する?

なんでサイボウズにできて他ではできないんですか?

本当ですよね。仮説ですけど。もともと僕は昭和モーレツ社員なんです。バブル期を学生時代に味わい「むちゃくちゃ働いて稼ぐぞ」というのもどこかにあった。そうはいいながらも入社してずっと不景気です。価値観的には狭間にいるのです。僕より上の経営者の人たちは、右肩上がりの成功のイメージがあって、あそこで価値観ができちゃっている。価値観を変えるのは難しいです。基本的にこの問題に関しては、あと20年ぐらいしたら自動的に解決するんじゃないかなと思う。

青野さんに家族を愛する優しいパパですねというと、そうではないとおっしゃっていましたがどういう意味ですか?

育休を取って育児の過酷さを知ったと語る青野社長

心のどこかで育児を妻にやってほしいなと思っているんです。ただ、そういう時代ではないこともどこかで思っています。育休をとってわかったのは、育児は1人に任せるような仕事ではないだろうということです。もし何時間か放っておいたら、命に関わったりするわけですよ。過酷な仕事です。「1人に任せるってどうよ」と気がつき僕なりに頑張っています。毎日楽しくやっているかというと、そこは葛藤してやっている。そんな感じです。

青野さんの「好きなようにやればいいじゃん」というのがいいなと思ったのですが光畑さんはいかがでしょうか?

青野さんの考え方にすごく賛成です。私たちの会社は普通と違って、赤ちゃんが生まれると入社して大きくなると出ていくというケースが多いです。好きなようにやればいいのは基本ですけども、社会全体としてそのトリガーとなるような取り組みをしたいなというのがあります。赤ちゃんを保育園に預けないで抱いたまま仕事をするのというのは無理だろうと思いがちです。けれども社会の中で一番難しそうなところを見せることで「これすらできるんだったら、ほかのいろな選択肢があるよね」と思ってもらいたい。私もバブル期を過ごしていますし、バリバリ仕事をするのを否定しません。いろんな選択肢を選んでいただくために、極端にカリカチュアした例としてこういう仕事をしています。

男性がどれだけ育児に責任を持つか

雰囲気や風土についてどうお考えですか?

おもしろいデータを教えていただきました。大企業と中小企業、育休をとる男性はどちらが多いか。中小企業のほうがとっている。エリートコースに乗っちゃった人は制度はあっても取る勇気がない。風土の差ですよね。制度を作って「俺は仕事した」的なことをいいがちですが活用されて満足されていい仕事となるのだと思います。

NTTさんのきめ細かい素晴らしい制度を紹介していただきましたが、使われない雰囲気、風土はないんですか?

制度があっても魂が入ってないとだめです。実は女性の議論ではなくて男性の議論だと思うんですよね。男性が育児にどれだけ責任を持つかというとだと思うんです。わたしが言うと家内に怒られちゃいますけどね。

アメリカの男性社員について語るNTT島田取締役

アメリカの会社で勤務していたときに、男性社員が「家に帰って食事をしないといけない日なので絶対に帰る。そうしないと離婚されちゃう」と帰っていった。風土とか考え方は変わってくると思います。50代、60代に変わろうといっても変わらないと思うので若い世代に期待したいです。

おじ様たちが多い職場で仕事と家庭の両立に理解を得るのが難しい現状があると思いますがどうですか?

50代くらいの人は、実はあんまり長時間労働をやっていないかもしれません。割りきっていたり、ある程度は自分でコントロールできるようになっている。35才から40才にかけての子育て中の夫の考え方が重要だと思います。いっしょにシェアをするという価値観をもたないと。社会的な動きが必要なんじゃないかな。

風土や意識ではないんですよ。要は評価ですよ。評価基準が男女共同参画と噛み合っていない。それだけですよ。風土とか意識という言葉は大嫌いです。今変えなければいけないのは、日本全体の評価基準だと思います。そこのところが浸透していないというのが、一番の問題点でだと思うんです。青野さんはわかっておられるんだと思います。だから評価を変えられているんですよね?

妻からどう評価されるのか

すごく共感します。評価について男性がなぜ育児しないかに絞っていきます。評価するのは、会社だけではないんです。男性が育休をとりました。会社から評価が下がりました。それが怖い。そこを変えれば解決するかというとそうではない。じゃあ、妻からどう評価されるのか?武蔵大学の田中先生という男性学の先生から教えていただいたんですけど、平日昼間問題というのがあります。平日の昼間に男性が子連れで街中を歩いていると、女性に白い眼で見られる。そういう評価がされるんですね。そこは高い評価をしてほしいわけです。男性も育児しやすいようにぜひ評価基準を変えていきたい。

「評価は会社だけではない」と語る青野社長

評価基準の見直しはどうして変わらないと思うのですか?

時間がかかるんですよ。単純に評価基準というのは。歴史がありますので、徐々に変えていく必要があると思うんです。新会社は評価が変えやすいと思うんですがNTTさんの評価基準を一から変えるのは大変ですよね?

けっこう変えているんですよね。例えば、かつて転勤しないと課長にしないという暗黙のルールがあった。能力があってパフォーマンスを出している人がキャリアを伸ばさないでもいいやと思っちゃう。それは会社にとっては不幸です。だから転勤しなくても管理職にしていくように変えました。

光畑さんのところは、評価基準はどうしているのですか?

モーハウス社の評価基準について語る光畑社長

社内の評価基準は制作中で今のところ非常にあいまいです。本人のアピールの問題となっています。外部からの評価は厳しい面があります。表面的には素晴らしい職場ですねといわれますが、頑張って仕事をしてきた女性の多い百貨店などでは「子どもを連れて仕事するなんてなめているじゃないの?」という声も恐らくあったと思うんです。ですが、結果として百貨店の中での売り上げげのアワードでは、ベストショップをいただきましたしミステリーショッパーでも最高基準をいただくことができました。サービスの絶対評価をしていく中で子連れ出勤を言い訳にせずパフォーマンスを出していくのがとても重要かなと思います。

管理職として偉くなると男性はかっこいいとなりますが女性は逆ではないでしょうか。男性の眼からみてどうでしょう?青野さん。

女性の管理職の割合を増やそうということは男性の管理職比率を下げようということですね。みんなさん、そういう男性を温かい眼でみてくれますか?勝間さんがいうように、世の中の価値基準を変えていかないと問題は解決しません。多様な価値観に対してリスペクトしていく。自分らしく生きている人は、昇進しようがしまいがかっこいいよね。男性だろうが女性だろうがかっこいいよね。日本人だろうが外人だろうがかっこいいよね。こういう風に自分と違う人たちをリスペクトするような価値基準が根本的には必要じゃないかと思います。

勝間さん、女性の側の意識はどういう風にみていますか?

今の管理職にはなりたくないです。毎日10時間12時間働いて、そのうえ子どもを育て部下のストレスだのぎゃんぎゃんとやってというのが嫌なんです。例えば海外のようならいいんです。2人管理職を知っていますか?パートタイマーで管理職を2人一組でやるのです。多様な価値観で多様なポジションをマッチングさせるような環境が必要だと思います。

個性を活用しろ

最後に「女性の活躍」に何が必要かをパネルに書きその心を語った。

「50/50」です。人数も50/50。仕事にも家庭にも50/50の気持ちをもたないと。ワークライフバランスというと仕事を一生懸命やっている人はワークのほうにバランスがいってしまいます。ジョブファミリーバランスということで考えればいいのではないでしょうか。家族はものすごく大事。仕事よりもはるかに大事です。

「ワークライフミックス」です。ワークライフバランスという言葉は好きですが、効率化していきましょうというところがあり、ともすれば仕事を早くやめて帰って仕事をしないほうがいいんだよと硬直して考え過ぎてしまいがちです。仕事と生活を混ぜちゃう。そういう考え方もあるんじゃないかという提案です。いろんな選択肢のひとつ。「できない。制度が整っていない」そういう風に考えるんじゃなく。「目の前でできることをやっていこう」というというメッセージです。

「ひとつひとつの個性を生かそうと考えるならば自然と女性も男性も活用される」と語るサイボウズ青野社長

「個性」と書きました。「女性の活用と言うな。個性を活用しろ」というメッセージです。女性だから男性だからという考え方自体が古い。ひとつひとつの個性を生かそうと考えるならば、自然と女性も男性も活用されるという考え方です。

「労働生産性の向上↑↑“ムダな仕事”を官民ともしないこと!」です。労働生産性が悪いから企業が儲からない。女性も活用できない。利益につながらない社会貢献につながらない仕事が多すぎる。労働生産性をもう少し官民で意識するのを推奨し続けたい。まずリーダーが始めるべきですね。

それぞれのお立場で大変率直なご意見ありがとうございました。

参考リンク:

なぜサイボウズは、働く「時間」と「場所」の制約をなくせたのか?(前編)

なぜサイボウズは、働く「時間」と「場所」の制約をなくせたのか?(後編)-変革のカギは社員の自立-

少子化が止まらない理由は「オッサン」にある?-「男性学」の視点から「働き方」を考える-

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