サイボウズ株式会社

連載「続・エンジニアの学び方」を始めます

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • エンジニア
  • 技術者
  • IT業界の学習に興味のある人
  • 教育関係者
  • 学び方を効率化したい人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事では、サイボウズ・ラボの西尾泰和さんが「エンジニアの学び方」をテーマに連載を開始したことについて述べられています。彼は学ぶことを通じて人間の知的能力を増幅することができると考え、特に共同作業が学習に与える効果を強調しています。記事では、グループウェアの歴史とその発展に触れながら、知識を得る効率的な方法を探ることの必要性についても言及しています。

特にペアプログラミングの例を挙げ、共同作業が双方の学びを促進することを示しています。西尾さんは自身の経験を元に、学ぶ速度を向上させることが重要であると説き、将来的にはグループウェアが「学び」を支援する方向に進化していくべきだと考えています。

また、彼の学び方に関する過去の執筆活動も紹介され、連載内では他のエンジニアへのインタビューを通して様々な学び方の実践を探求し、それを整理して解説する予定であるとされています。記事は学びの重要性を強調し、さらに多くの知識を得るために工夫することの必要性を読者に伝えています。

Text AI要約の元文章

tech

連載「続・エンジニアの学び方」を始めます

サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載(毎週火曜日)の第1回。「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に執筆した「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編という位置づけです。「本編」のほうも、gihyo.jpにて公開されていますので、ぜひご一読ください。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

こんにちは、西尾泰和です。サイボウズの研究開発部門であるサイボウズ・ラボで、未来の製品の基盤となる技術を研究開発しています。今回「学び方」をテーマに連載を始めることになりました。よろしくお願いいたします。

ところで、みなさんは「グループウェア」がどうやって発明されたかご存知でしょうか?

1960年代、コンピュータを使って人間の知的能力を「増幅」することができないか、という研究が行われていました。 その研究者の一人がダグラス・エンゲルバート(Douglas Engelbart)です。今みなさんが目にしているようなマウスやウィンドウ、ハイパーテキスト(図やリンクのあるテキスト)などは、彼が発明しました。そして、彼は1968年に遠隔共同作業支援システムをデモンストレーションしました。これがグループウェアの起源だと考えられています[1]

それから45年経って、今ではコンピュータを介して遠隔で共同作業をすることは珍しくなくなりました。当たり前すぎて、そこに共同作業を支援するソフトウェアがあることを意識しないことも多いでしょう。たとえばメールで仕事の打ち合わせをするとき、相手は遠くにいても構いません。メールサーバは、メールを介した遠隔共同作業を支援する、グループウェアです。何度も返信を繰り返していると、複数のメールに情報が散らばってしまい、見落としなどにつながります。そこで、複数のメールを「スレッド」という形でまとめて表示するソフトウェアが現れました。みなさんが今Gmailなどを使うと、メールは勝手にスレッド表示になっています。長い時間をかけて少しずつ問題が解決され、進歩してきたのです。

今存在するグループウェアにも、まだまだたくさんの問題があります。今後その問題が少しずつ改善されていくことで、グループウェアは進歩していくのです。

なぜ「学び方」をテーマに連載を?

ここでグループウェアのことはいったん忘れて、そもそものコンセプトである「人間の知的能力を増幅する」方法について考えてみましょう。みなさんは知的能力を増幅するために何が重要だと思いますか?

筆者は「学ぶことの支援が重要だ」と考えました。学び以外の能力を増幅するようなツールや方法論もあります。しかしそのツールや方法論を上手く使うためには、使い方を学ぶことが必要です。学ぶ能力を増幅することが一番根本的な能力増強なのです。

ところが、なぜか現時点のグループウェアには、あまり学びを支援する機能がありません。なぜでしょうか? 学びは個人的なものだという思い込みがあるからでしょうか?

しかし、共同作業が理解を深めるために有効だという実験結果があります[2]。たとえば、「ペアプログラミング」というプログラミング教育の方法について考えてみましょう。これは、詳しい人とそうでない人がペアになって、1つのコンピュータでプログラムを書く、という教育方法です。詳しい人は自分でコンピュータを操作してはいけません。このルールによって、詳しい人は自分の知識を言葉で伝えなければいけない状況に置かれます。これが参加者両方にとってよい効果をもたらします。

このように、チームワークによって個々人の学びが増幅されうるわけです。そして、グループウェアがそれを支援することもきっと可能だろう、そして有用だろう、と筆者は信じています。

どうして筆者が書くのか?

筆者は以前から学び方に興味がありました。学びたいことはたくさんあるのに、学習に割ける時間はいつも不足しています。学ぶ速度を向上させる方法を学ぶ必要がある、と強く感じていました。学ぶ速度を向上させ、指数関数的速度で学ばなければ、全体としての学びの総量はとても少なくなってしまいます。

拙著「コーディングを支える技術」でも、まずその章を書きました。指数関数的速度で学ぶことの必要性と、現時点で知られている方法論について解説する章でした。哲学と経済学をベースにした章でした。しかし、この章は抽象的すぎ、編集判断でボツになりました。その後、一部抜粋が余白にコラムの形で埋め込まれました。

このコラムが好評だったので、WEB+DB Pressの特別企画として書き直したものが「エンジニアの学び方」です。現在、gihyo.jpにて公開されていて、こちらから読むことができます。

このように筆者は「学び方」について、考え、書いてきました。しかし、学び方について学ぶうちに、理解したことがあります。それは「一人で考えていたのでは駄目だ」ということです。何かを学ぶためには、まず自分の盲点(気づいていない未知のもの)に気づく必要があります。

この連載について

この連載では「エンジニアの学び方」をテーマにインタビューを行い、どういう「学び方」が行われているのかを探求していきたいと思っています。また、ただインタビューするだけではなく、筆者なりに整理して解説しようと考えています。

「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けますので、筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(了)


[1]「グループウェアのデザイン」(石井 裕、共立出版、1994年)
[2]「凡才の集団は孤高の天才に勝る」(キース・ソーヤー、ダイヤモンド社、2009年)


謝辞:
Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。本当にありがとうございました。


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
これ以外のライセンスをご希望の場合は、お問い合わせください。

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