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覚えられない企業ビジョンは意味がない──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • ベンチャー企業の経営者
  • 人事担当者
  • 企業のビジョン浸透に悩むマネジメント層
  • 人材マネジメントに興味のある読者
Point この記事を読んで得られる知識

この記事は、ココナラの南章行CEOとサイボウズの山田理副社長が、人事制度と企業ビジョンの浸透について議論を交わす内容をまとめたもので、特に創業期のベンチャー企業でビジョン浸透の難しさに焦点を当てています。創業者の思いが社員に浸透しない原因としてビジョンが曖昧であったり、共感を共有する仕組みが不十分であることが指摘されています。

南CEOは、ココナラでのビジョンとして「良い会社」よりも「良い事業」を作り上げることを掲げ、その達成に向けての指針「7 Standards」を掲示しました。しかし、社内で完全には浸透していない現状を共有し、より簡潔で覚えやすい表現にすることが重要であると述べています。

また、人事評価がビジョン浸透に直結することの重要性が議論され、具体的な行動指針を作成し、それを基に社員同士が信頼を深め合うコミュニケーションの必要性が強調されています。特にビジョンの浸透には、評価基準と結びつけることが不可欠であり、それによって社内全体が同じ目標に向かって行動をする動機付けが可能になると示唆しています。さらに、言語や行動指針の明確化がコミュニケーションコストの削減に寄与することも示され、共通理解を作り出すための具体的な方策についても考察が述べられています。

Text AI要約の元文章
サイボウズ

覚えられない企業ビジョンは意味がない──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談

2014年で創業3年目を迎えるベンチャー企業のココナラ。メガバンクからMBAを経て、同社を立ち上げた南章行CEOとサイボウズの山田理副社長による対談の後編。

創業期の人事制度の組み方がメインテーマだった前編にかわり、後編では創業期ベンチャーの難題の1つである”ビジョンの浸透”について、対談から答えを探ります。

なぜベンチャーで創業者の思いが社員に浸透しないのか?

私達は今年ビジョンを決めました。「良い会社を作りたいんじゃなくて、良い事業を作りたくてこの会社を作っています」と。両方大事だけど、良い事業を作るためのプロジェクトチームであると。ビジョンはこれですと宣言し、達成するために7つの考え方も作りました。それが「7 Standards」です。

ココナラ社内に貼りだされている「7 standards」

「このビジョンに共感できた人とは一緒に働きたいし、共感できない人に一緒に来ていただく必要はありません」と言っています。逆に、ココナラのビジョンは僕の価値観でもあるので、「これをやることでミッションが達成に近づきます」と話しています。ただ、全社でこのビジョンを完全に把握するまでには至っておらず、社内に本当に理解してもらえているかどうかは微妙なんです……。

ビジョンが浸透していないのはなぜでしょうか?

ビジョン達成の基準がボンヤリとしているからかもしれません。人事評価やフィードバックの基準も取り入れるべきか迷っています。 この感覚の場合、「バリュー」「スキル」「実際の成果」の3つをどのように従業員にフィードバックし、全員が納得のできる仕組みを作れるかを決めないといけないと思っているんです。

スキルとバリューはどう違いますか?

スキルは、本当の意味での業務に直結したスキルですね。コードがより早くかけるとか、デザインがよりうまくできるとか、実務的なものをイメージしています。バリューは“Will(意志)”です。スキルをみがく行動をしているか、などですね。だから私のバリューは“Will”で、スキルは文字通りスキルで、スキルとWillでアウトプット、エグゼキューション、そんなバランスなのかなって。

なるほど。

私たちのビジョンは完全に事業に向かっています。ビジョン達成の中心にある仕事を重点的にやりますし、個人としてどうビジョンを達成できるかというあり方を重視しています。この考え方を毎日繰り返し実践し、半分くらい浸透してきた感じです。

全社員に浸透するビジョンを作るには?

人数が増えていく中で重要だと感じたのは、「言葉を合わせること」「分かりやすくしていくこと」です。「ミッションとは何?」と聞くとみんなが同じことを答えてくれるし、「ミッションを達成してほしい」と伝えたら、期待通りの行動をしてくれる。この状況を作り出すことが重要だと思っています。

人によって言葉の定義や使い方がぐちゃぐちゃになると、意味を浸透させるのにものすごくコストがかかるんですよね。徹底的に理論を体系立て「この部分のこの階層のところをこう呼んで、ここをこう呼んで」と定義する。この方がコミュニケーションコストは下がると思います。

確かに。創業メンバーのみで会社を始めたときは、ビジョンは大体共有できていました。うまくいかなくなったのは、その後に順次人材を採用してからです。私達のビジョンを何度も言っていたけど、全然伝わっていませんでした。

そこで社員全員で共通理解を作るべく、「バリュー」や「ミッション」を突き詰める合宿を3日間やりました。出たアイデアを創業メンバーで練りに練って、最後に「これ!」と言って1月の頭に提示しました。2,3ヶ月間、一文一文すごい練りに練ったんですよ。

ベンチャーなので1日でも早くプロダクトを作らなければいけないいと思いながらも、「これを後回しにすると採用した人が不幸になる」「私達の理想通りにみんな働いてくれないと嘆くのは、経営陣の怠慢だ」と気付き、ようやく完成しました。明文化してからは、すごくコミュニケーションコストが下がりましたね。

すごい! 私たち、こういうステートメントをまともに作ったのは上場後くらいですよ。

創業メンバー3人のうち2人がNPO出身という特殊な状況もあったかもしれません。 会社は雇用関係がありますよね。「お前、バカか」と叱責しても、翌日に社員は一応来るじゃないですか。お金ももらえるし。でも、NPOってお金を払っていないし、契約もないんです。同じように言ったら翌週から来なくなるんですよね。実は非営利団体のマネジメントって、めちゃくちゃ難しくって。

確かに言われてみるとそうですね。

NPOでメンバーを結びつけるものって、ビジョンしかないんですよね。目標をとにかく全員で共有し、そこに共感した人だけが集まる。意見が食い違った時の行動指針が明確にあることも必要ですね。そうしないと成り立たないですから。

人事評価と結びつけて初めてビジョンは浸透する

それはいいですね。私も一緒で、最初「7精神」とか作ったんですけど、社内では浸透しませんでした。7個を覚えるのって案外大変なんですよね。なので「やる!」「考える!」「知る!」「伝える!」「続ける!」のようなものにしました。

すごくシンプルにしたんですね。

会議室の壁にすべて書いたりもしたんですけど、やっぱり覚えてくれないんですよね、なぜか。これをやっても自分の評価は上がらなかったからです。評価のほとんどはミッション(=売り上げをいくら上げるといった諸タスク)側で評価されるんですね。結局、評価の時には「これができたか」「できていないか」がより大事であって、「ビジョンを覚えているか」なんてどうでも良いんですよね。

同意です。ビジョンを作ってもそれが人事評価と結びつかない限り絶対に浸透しませんよね。なので「人事評価でフィードバックすべき」と感じているんですけど、「それをどうやろうかな?」「それだけで良いのかな?」と迷っているのが今ですね。

サイボウズもまだ試行錯誤の途中ですけど、私達の行動指針ってアウトプットが前提なんです。例えば営業で売り上げを上げるミッションがあるとすると、そのための行動って必ずありますよね。営業の製品知識をつけることだってそうですし、コミュニケーション能力や考える力を身に付けることも、アウトプットにつながる行動の1つです。

なるほど。ミッションや理想を達成するために絶対しなきゃいけない行動が「Action5+1」という行動指針になっているんですね。

おっしゃる通りです。サイボウズでは評価の軸を「市場価値」っていうお金を決める査定という軸と、「社内での信頼度」の2つに分けています。

社内の信頼度もとても大事です。上司と部下の間で「あなたがもっとこうやってくれたら、私はよりあなたを信頼するよ」というコミュニケーションを、社内共通でできるようにする。そのためのツールがAction5+1です。(サイボウズの人事制度の詳細は前回記事を参照)

ミッションを達成することを理想としながら、上司と部下で「それができたら信頼できるよね」という関係になることをポイントとするのですね。

そういうことです。

なるほど、確かにそうだな。いろいろと参考にしながらさっそく試してみます!

こちらこそ、たいへん参考になる部分が多かったです。刺激になりました。

[前回記事] 人事評価は適当でいい?──ココナラ南CEO×サイボウズ山田副社長 人事制度対談

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