サイボウズ株式会社

継続を目指すより、成果が残る小さい目標を──カーネルハッカー・小崎資広(7)

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • エンジニア
  • プログラマー
  • 技術者
  • 自己改善に興味がある人
  • 習慣を作ることに悩んでいる人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事を通して得られる知識は、まずエンジニアリングや自己改善において継続を目標にすることの難しさと、それに対する代替アプローチです。具体的には、何かを継続するよりも小さな目標を設定し、それを達成することで前向きな感覚を得る戦略が紹介されています。このアプローチでは、継続を重視する代わりに成果を出すことを目指し、継続できなくても何か結果を残せる点が強調されています。さらに、この方法は精神的な安定にも寄与するとの示唆があります。

また、記事は「アウトプット・ドリブン」の考え方を推奨し、定期的にアウトプットを目標にすることで、自然と継続につながると述べています。これは継続的なインプットに依存するのではなく、アウトプットを通じた学びに焦点をあてる方法論です。

加えて、スランプ状態の時は自己分析を行う重要性が説かれ、状況に応じてアプローチを変更したり、旅行による気分転換を試みることも提案されています。これらの知識を通じて、読者はより柔軟で前向きな自己改善や学習方法を見出せるでしょう。

Text AI要約の元文章

tech

継続を目指すより、成果が残る小さい目標を──カーネルハッカー・小崎資広(7)

サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第8回(毎週火曜日に掲載、火曜日がお休みの場合は翌日、これまでの連載一覧)。

富士通のエンジニアとしてLinuxカーネルの開発に参加されている小崎資広さんへの「インタビュー:その7」。Linuxカーネルという巨大なソースコードと日々戦っている小崎さんのお話は、きっと「エンジニアの学び方」の参考になるはずです。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に執筆した「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

今回は、習慣とスランプについてお話を伺います。この連載の第2回でも「毎日やることが重要」という話がありました。でも、毎日やるのは難しいですよね。このあたりのことを深堀りしたいと思います。

小崎さん(左)

飽きっぽいのが美徳

ちなみに小崎さんは、ひとつのことを長く続けるみたいな習慣はありますか? 子どもの頃からずっと、毎日3行日記を書いてます、みたいな。

一切できません。

乾布摩擦を毎朝やってるとか、何でもいいんですけど(笑)。そういうのは、あんまりない感じ?

逆に僕は、飽きっぽくてすぐ新しいことを始めるのが美徳だと思っています。そうでないとキャッチアップが難しい業界なので。

でも「継続は力なり」とも言いますし、「よし今後はこれをやろう」とか、「これを継続しよう」とか思うことはないんですか?

あるけども、思ったからできるもんでもないしね。どっちかっていうと、継続を目標にするより、たとえ飽きちゃったとしても成果が残るくらいまで小さい目標にブレイクダウンするほうが前向きかなと。

なるほど、確かに。継続することを目標にしちゃうと、やめちゃった瞬間、何も残らなくなっちゃう。細かく分割して、A、B、C、Dと順にやってくと「Eはやらなかったけど、Dまではやったぞ」っていうふうになるわけですね。

そうそう。

そっちのほうが精神衛生上いいですね。僕もそうしよう。僕も習慣作れなくて悩んでたんです。習慣を作ろうとしたのが間違いだったんだな。もちろん習慣化できる人はやったらいいんだけど。

まあ僕はできないタイプなんで。やっぱね、ライフハック本を読むと、偉人がいっぱいいて、後ろめたい気持ちが芽生えてきちゃいがちなんですけども、そこは頑張って戦うと。

「これを継続するの、すごいな」とか思わせられる事例がありますよね。でもそれってハックっぽくないですよね。「長時間これを頑張って継続します」がハックですって言われると「いや、ハックってもうちょっと『ちょちょい』とやるもんじゃないの」という気持ちに……。どう思います、ハックという言葉。

僕も「こんなちょっとしたことでこんなすごい結果が」ってのがハックぽいイメージがあって。

すごい継続して努力しますって言われると、修行ですよね。

さっきとかぶるけどね、継続はずっとインプット、どんどん取り入れるって話になりがちだよ。それよりも定期的なアウトプットのマイルストーンを作っておくと、自然に続く。何のインプットもなしではアウトプットを作れないので。

アウトプット・ドリブンと。

アウトプット・ドリブンのほうが僕はいいと思ってる。

継続してインプットすることじゃなくて、アウトプットすることを目標にする、しかもそれに自分納期を決めると。素晴らしい。

スランプのときは旅に出る

そう言っていつも全然自分でできてないやん、って時期が結構あるんだけどね。

やっぱりスランプのときってありますよね。うまく思った通りにうまくできない。

余裕であります。正直ストレスで全然ダメで、仕事から帰ったら毎晩飲んだくれてた時期とかありますよ、余裕であります。

そういうときってどうします? のんびりする?

それはスランプの種類による。だからスランプの理由を自己分析するのがまず第一歩。

なるほど。

嫌いな仕事をやってるんだったら、立ち位置を変えるのに頭を使ったほうがいい。技術的な難易度が高すぎるって思ってるんだったら、難易度を低くする、階段の段数を増やす、ちょっとずつやる、などの方法論があるはず。はずれてもいいからまず自己分析をして、昨日とは違うやり方をしないとスランプからは抜け出せない。

そうですね、昨日と同じことをやったのでは、同じ状態が続くだけだから、何か行動を変えてみろ、と。何を変えるかは、自分がどう振る舞っているのかをよく観察して決めるわけですか?

本気でスランプのときは、心が病んで自己分析できなくなってるんで、ダメなときはすべて忘れて旅行に行く。旅行は強制気分転換のツールなので。

なるほど、「何かを変える、昨日までと違うことをする」のひとつの例として、「旅行に行ってしまう」ってのがあるわけですね。

うまくいってないときに同じことやるのは最悪なので、何でもいいから変えなきゃ。

なるほど。

しかも場所的にも移動しちゃうみたいな。

そうそう。

アメリカに赴任されてから、結構いろんなところに行かれてるイメージですけど、日本にいたときも、旅行は結構されてました?

こっちでも向こうでも、滅多に行かないです。僕は正直旅行の計画を立てるのが極めて苦手なので。特に日本にいるときは、その日に思い立ってその日に出かける、そういうノリの突発旅行をしていました。突発旅行は、効率的に移動できないんですけども、絶対意外な体験ができる。最初の期待値が低い分だけサプライズがあるわけですよ。そうすると気分転換にはいいわけです。

なるほど。最初、何も期待してないわけですもんね、何か意外な発見があるとそれだけどんどんプラスになると。

そうそう。

でも、計画を立てないことに不安になるタイプの人もいると思うんです。旅行に限らず、明確に先が見えてないと不安になってしまう人。小崎さんはどちらかというと、そうじゃなくて「行っちゃえ!」というタイプなのですか?

ええと、それはちょっと違って、仕事では割と緻密にやるのが好きなんですけども、旅行は考え疲れたときの逃避なので、緻密にやろうとしたら何のスイッチにもならない。

なるほど。普段の仕事とか元気なときの進め方としては緻密にやっているんだけれども、息抜きだからこそ緻密にせずに無計画に旅行したい。

そうそう。

なるほど。参考になります。私は、知らないお店には、なかなか入れないタイプなんで。

今は食べログとかあるからそんなの余裕でしょう。当日に適当にその場で一番近いおいしいお店とか調べれますよね。

◆     ◆     ◆

何かを継続しようとして、うまくいかなくて挫折した経験が読者の皆さんにもあるかと思います。その解決方法が「継続を目標にしない」なのは目からうろこでした。

「継続する」という目標は達成感が得られにくく、1日できなかっただけで「ああ、また継続できなかった。自分はなんてダメな人間なんだ」と自分を責めてしまいがちです。細かくブレイクダウンしてあると「よしAができた」「Bもできた」とすぐに達成感が得られます。3日目にCができなかったとしても「明日やればいいか」と前向きになれます。たとえ飽きてしまったとしても「AとBをやった」という実績が残ります。

第2回では「できなかったことを挽回しようとすると、余計腰が重くなるので、過去は振り返らないほうがいい。」という話がありました。継続やペースの維持を目標に設定しないことで、挽回の必要性を最初から消してしまうわけですね。この発想の転換はすごく心が軽くなりそうです。

「継続的にインプット」ではなく「定期的にアウトプット」を目標にするのが良いという話は、第3回で語られた「納期」のメリットとも関係してきますね。

次回は、英語圏で活躍している小崎さんに皆さんが聞きたいであろうことを聞きます。つまり、どうやって英語を習得したのか、どうやって学んでいるのか、です。インプット・ドリブンが良くない理由がもうひとつ紹介されます。(了)


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けています。筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


謝辞:
◎Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。
◎インタビュー会場として、「イトーキ東京イノベーションセンターSYNQA(シンカ)」にご協力いただきました。ありがとうございました。


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
これ以外のライセンスをご希望の場合は、お問い合わせください。

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