クリーンなエネルギー社会実現を目指す、デンソーの燃料電池「SOFC」開発
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デンソーは、クリーンなエネルギー社会の実現を目指し、カーボンニュートラル達成のために水素の有効利用を重視しています。特に、再生可能エネルギーから生成されるグリーン水素を低コストで生産し、それを有効に活用することが課題とされています。その中でも同社は、SOFC(固体酸化物形燃料電池)の開発を進めており、環境性と経済合理性を兼ね備えた技術を追求しています。
SOFCは高温で動作することで高い発電効率を持つ燃料電池として知られ、都市ガスなど多種多様な気体燃料を使用できます。デンソーは、このSOFCの発電効率と長寿命化を目指して、モビリティ製品開発で磨いた熱マネジメント技術とリサイクル技術を駆使しています。例えば、未使用の燃料を再利用することでエネルギー効率を高めるシステムを開発しています。
さらに、デンソーは経済合理性確保のためにカーボンニュートラルな燃料の導入を試みており、都市ガスにグリーン水素を混合した燃料に適応可能なSOFCの開発を進めています。将来的には、バイオメタンなど、多様なカーボンニュートラル燃料に対応することで、CO2排出量のさらなる削減を目指しています。これらの技術革新は、脱炭素社会の実現に向けた重要なステップと考えられています。
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2023.1.24
技術・デザインクリーンなエネルギー社会実現を目指す、デンソーの燃料電池「SOFC」開発
熱マネジメント技術で、環境性と経済合理性の両立を目指す
カーボンニュートラルの実現のために、水素の適切な利活用が期待されています。水素の中でも、再生可能エネルギーから生成されるグリーンな水素を安価に作り、さらにはその水素を効率よく活用することが求められています。
デンソーでは、水素をはじめとする燃料と酸素の化学反応によって電気と熱を発生させる燃料電池「SOFC(Solid Oxide Fuel Cell / 固体酸化物形燃料電池)」の開発に取り組んでおり、カーボンニュートラルに貢献するために、環境性と経済合理性の両立を目指した挑戦を行っています。
この記事の目次
SOFCとは? 効率が特徴の燃料電池の概要
燃料電池は、水素をはじめとする燃料と酸素の化学反応によって電力と熱を発生させます。水素を燃料とした場合は発電の際、発生するものは水のみであり、CO2は発生しません。燃料電池は用いられる電解質と、作動温度によって種類が分かれます。
FCEV(燃料電池自動車)に用いられている燃料電池はPEFCと呼ばれ、電解質に樹脂膜を使っています。樹脂膜は100℃ほどで反応し、起動までの時間が短いことが特徴です。SOFCはセラミック製の膜を用いているため、700℃ほどの高温まで上げることができます。
高温である分、起動時間はPEFCよりも長くかかりますが、高効率であることがSOFCの最大の特徴です。そのため、定置型で用いるのが利用に適しているとされます。
また、SOFCは気体燃料として市場で最も多く使用されている都市ガスをはじめ、カーボン由来の燃料をそのまま利用し発電できることも特徴です。
SOFCにおけるデンソーの果敢なる挑戦
SOFCは家庭用・商業用ともに実用化が進んでいる製品です。では、なぜ今デンソーはSOFCの開発に取り組むのか。デンソーの環境ニュートラルシステム開発部の大杉乙允は「SOFCの環境性をさらに高めていくために、デンソーのテクノロジーが貢献できると考えているからだ」と語ります。
「カーボンニュートラルは、一足飛びに実現できるものではありません。環境性と経済合理性を両立させていくためには、一歩ずつ進んでいくことが必要だと考えています。SOFCにおいても、カーボンニュートラル燃料を使えばCO2排出量はゼロになりますが、カーボンニュートラル燃料はコストやデリバリーの面で、まだハードルが高いように思えます。そのため、環境負荷の少ない都市ガスを燃料としたSOFCの利用を通じて省エネ化を極めていくところから挑戦しています。
SOFCはそもそも発電効率が高いという特徴を持ちますが、さらに高い効率を目指すことで、エネルギーを無駄なく使えるようにし、CO2排出量削減に貢献したいと考えています。」
しかし、高い発電効率を実現するためには、超えなければならない課題があります。
「一般的に燃料電池は燃料の20%ほどを反応させずに後工程に流している状態です。なぜなら、発電を担うセルは非常にセンシティブで、燃料をすべて反応させようとすると、セルが劣化してしまうからです。劣化を防ぐためとはいえ、エネルギーのロスが生まれるために、発電の効率向上を妨げてしまっています。いかにエネルギーを無駄なく利用するかが課題です」(大杉)
大杉は、発電効率の向上だけでなく、長寿命化という課題にも挑戦したいと語ります。
「耐用年数が短いと、その分部品交換やメンテナンスに費用がかかり、経済的な面で導入が難しくなってしまいます。
長寿命化を実現する上での大きな課題は、発電を担うコンポーネントや金属材料に求められる耐久性です。内部が700℃という高温ですので、温度変化が寿命に直結します。発電効率にも関係しますが長寿命化を実現するには内部の温度コントロールが非常に重要となってきます。」(大杉)発電効率のさらなる向上と、長寿命化という大きな課題。デンソーは、モビリティ製品開発で培ってきた熱マネジメントの技術を用いて、解決への挑戦を行っています。
SOFCの課題をクリアする、デンソーのノウハウ
デンソーの環境ニュートラルシステム開発部にて、SOFCの開発に取り組む小代卓史は、熱マネジメント技術をどう活かしているかについてこう語ります。
「セルスタックから排出される未利用燃料20%のうち、10%を入口側へ戻し(リサイクル)、残りの10%は燃焼器で燃やした後の熱を改質器などで再利用することで、エネルギーを有効活用しています。デンソーでは高温でも動作可能な流体ポンプであるエジェクターを使い、リサイクルさせることで高い発電効率を実現しています。
また、高い発電効率に加え、長寿命化を実現するためには、セルスタックや各コンポーネントを狙いの温度に収めることが重要になります。この課題に対しては、もの同士が直接触れていなくても、電磁波となって伝わる輻射熱を利用した技術やコンポーネント配置と高温流体の流し方などの熱マネジメント技術により解決を目指しています。
このように、リサイクル技術と熱マネジメント技術を活用することで、火力発電所の発電効率を超える、65%超という最高レベルの発電効率の実現と、長寿命化を目指して開発を進めています。」(小代)
SOFCを社会に出していく上で重要なのは、いかに高い品質のものを安定して量産できるか。デンソーは、人の命を乗せるモビリティ製品の製造を行っているため、品質に対する並々ならぬこだわりがあります。そして、高品質な製品を大量生産できる生産技術があります。SOFCのプロジェクトでは、早いタイミングから製造の部署を巻き込んで進めることで、設計段階で実現している高い性能のSOFCを、量産できるよう進めています。
カーボンニュートラルな未来を見つめ、SOFCのさらなる進化を目指す
デンソーは自社の強みを活かし、発電の高効率化、長寿命化などの課題を乗り越えていこうとしていますが、SOFCのさらなる可能性を見据えた開発も進めています。SOFCの環境性を上げ、よりカーボンニュートラルに貢献できるものに進化させていくためには、多様な燃料への対応が鍵だと、小代は言います。
「現状、SOFCは都市ガスを燃料にしていますが、環境性を高めていくためには、カーボンニュートラルな燃料を活用していく必要があります。しかしカーボンニュートラル燃料はまだコストが高く、経済合理性に課題があります。そのため、次のステップとして、都市ガスにグリーン水素を混合した燃料に対応できるSOFCを開発しています。混合燃料に対応できるようにすることで、CO2排出量を大幅に削減することが可能となります。
社会の脱炭素化が進んだ先には、グリーン水素や、バイオメタンなどのカーボンニュートラル燃料の普及も考えられます。デンソーのSOFCでは、多様なカーボンニュートラル燃料の可能性も見据えて開発を進めています」(小代)
デンソーは、地球規模で未来を良くしていく挑戦をしていきます。そのために、発電効率を追求していくことや、多様な燃料への対応など、SOFCの様々な可能性を見据えながら開発を進めています。目指す未来に共感してくださるパートナーの方々と共に、さらなる挑戦を行っていきます。
2023年1月25日から27日にかけて東京ビッグサイトにて開催する「グリーンファクトリーEXPO」にSOFCも出展予定です。SOFCの詳細について知りたい方は、ぜひ現地にお越しください。
- デンソー、「グリーンファクトリーEXPO」に出展
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https://www.denso.com/jp/ja/driven-base/tech-design/sofc/
・カーボンニュートラルな社会の実現には水素の利活用が期待されており、デンソーは水素をはじめとする燃料と酸素の化学反応により電気と熱を発生させる燃料電池「SOFC」の開発に取り組んでいる
・SOFCの「高い発電効率の追求」と「長寿命化」に向けて、デンソーがモビリティ製品開発で培ってきた熱マネジメントやリサイクル技術を活用している
・現在、SOFCは都市ガスを燃料にしているが環境性を高めるためにはカーボンニュートラルな燃料の活用が重要。そのため、都市ガスにグリーン水素を混合した燃料に対応できるSOFCを開発中。今後はグリーン水素やバイオメタンなどの多様なカーボンニュートラル燃料の可能性も見据えて開発し、CO2排出量の大幅な削減を目指すお問い合わせはこちらRELATED
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