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受験するかどうかは、かかる「コスト」で決める──エンジニアにとっての「資格試験」を考える(3)

この記事のAI要約
Target この記事の主なターゲット
  • エンジニアやITに携わる人々
  • 資格試験を受けようと考えている人
  • 情報セキュリティに興味のある人
  • 自己学習に関心のある人
Point この記事を読んで得られる知識

この記事では、エンジニアが資格試験を受ける際に考慮すべきコストについて論じています。サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが、セキュリティ業界で活躍しているはせがわようすけさんに取材し、特に情報セキュリティスペシャリストなどの資格について話を聞いています。セキュリティ関係の資格を持っていない理由は、学習内容が自身の興味と異なるからだと述べています。さらに、資格には免許のように持っていないとできないことがあるものと、知識確認のためのものがあるとしています。資格取得の価値は、取得のためのコストと見合うかどうかに依存するという視点が示されています。また、他を犠牲にせず、楽しみながら学べる場合は資格を取得する価値があるとしています。資格の取得が報奨金のためだった場合でも、資格を持つことで得られる客観的なスキルの評価基準がメリットとして挙げられています。次回の記事では資格の価値について他の専門家へのインタビューを通じてさらに深掘りしていく予定です。

Text AI要約の元文章

tech

受験するかどうかは、かかる「コスト」で決める──エンジニアにとっての「資格試験」を考える(3)

サイボウズ・ラボの西尾 泰和さんが「エンジニアの学び方」について探求していく連載の第12回(毎週火曜日に掲載、火曜日がお休みの場合は翌日、これまでの連載一覧)。

「資格試験」テーマの第3回です。

本連載は、「WEB+DB PRESS Vol.80」(2014年4月24日発売)に執筆した「エンジニアの学び方──効率的に知識を得て,成果に結び付ける」の続編です。(編集部)

文:西尾 泰和
イラスト:歌工房

「資格試験」シリーズの第1回では大手ITベンダーのAさんにお話を伺いました。その記事へのTwitterでの反響に「Webやモバイルなどの変化の激しい業界ではどうなのだろう」という疑問がありました。そこで今回はWebとも関わっている、変化の激しいセキュリティ業界で活躍されているはせがわようすけさんにお話を伺いました。

セキュリティ関係の資格ってあるんですかね?

情報セキュリティ関係の資格というと、代表的なのは情報処理技術者試験の情報セキュリティスペシャリストですね。それ以外にも、監査に関連したものなどあるようです。すみません、あまり詳しくないです……。

はせがわさんは、どれかを持っていますか?

情報セキュリティに関連するものは何も持っていませんね

それはなぜですか?

取得のために必要な学習と自分の興味範囲とが異なるからというのが大きいです。

なるほど。取った資格は何ですか?

情報処理技術者試験では初級シスアド、2種、1種、エンベデッド、それ以外に実用的なものでは工事担任者(デジタル1種)ですね。いずれもずいぶん前ですので、資格の名称が変わっているものも多いです。

それらはなぜ取ったのですか?

情報処理技術者試験については、前職で取得に伴う報奨金がもらえたのでそれ狙いです。工事担任者については完全に趣味です。自分で工事したいから取りました。本当は電気工事士も取りたいのですが、自分の中では今のところ優先度が低くてまだ挑戦していません。

工事担任者の資格がないと公衆ネットワークに接続する工事は行えないという理解で正しいですか?

簡単に言うと、モジュラージャックで接続する電話機器であれば問題ありませんが、モジュラージャックより向こう側、例えば、モジュラージャックそのものの設置や事業所内の交換機などに関しては工事担任者の資格がいりますね。で、その回線の種別(アナログ、デジタル)や回線速度、回線の数によって資格種別が異なります。

やりたいことがあって、そのために免許的な意味で資格が必要だったということですか?

はい、昔住んでいた家のモジュラージャックの位置が気に食わなかったので。IT系の多くの資格試験は、英検同様に習熟度の確認という位置づけですが、世の中でいう資格試験の多くはこれ同様に免許という位置づけが多いですね。

なるほど。情報処理技術者試験に関しては報奨金狙いだったとのことですが、受けてみて報奨金以外でのメリットは何かありましたか?

どうでしょうね、自分のスキルを単一の切り口とはいえ客観的に評価できる基準を与えてくれているという点ではメリットと言えるんでしょうけれど、幸いなのか残念なことなのか、そういう機会(例えば、資格を基準に採用される、みたいなの)は今のところないですね。

もし報奨金の出ない会社に勤めている友だちが情報処理技術者試験を受けるかどうか悩んでいたらどうします?

大きな投資なしに取れる見込みがあるのならば取るべきだと思います。

大きな投資というのは具体的にはどのようなものですか?

時間や日常での優先順位、あるいは参考書籍への投資などに関して、他を犠牲にしていると本人が感じる程度、ですかね。同じコストや時間をかけていても、本人がその時間を楽しんでいるのならそれでいいと思いますし。

苦痛を感じたり犠牲にしていると感じたりしないで取れるなら、取るべきということですか。それはなぜですか?

その状態であれば、取得できてもできなかったとしても、あるいは取ったあとでその資格を役立てる機会がなかったとしても、失うものがきわめて少ないからですね。

なるほど。

私の考え方はおそらく合理的な方向へよりすぎていると思います。実際には、取得することやその過程の学習で意気が上がる、そのことを目標として資格を取得しているといった人も多いと思います。

◆     ◆     ◆

一言に資格と言っても、免許のような「それを持っていないとできないことがある」ものと、英語検定のような「どの程度の知識があるかを確認する」ものの2通りがあることが分かりました。前者の資格は「何のために取るのか」が分かりやすいですね。

また、資格を取るのが良いかどうかは、取るのにかかるコストによって変わるという視点も興味深いです。知識確認系の資格は受けることで得られる価値が不明確なので、価値の可能性のために自分がどの程度のコストを投資できるかが問われるのですね。

次回は、資格を持っていることの価値について大手SIerの研究開発部門に所属のBさん(仮名)と、Web系の企業の経営者をしている凄腕プログラマのCさん(仮名)にお話を伺います。(つづく)


「これを知りたい!」や「これはどう思うか?」などのご質問、ご相談を受け付けています。筆者、または担当編集の風穴まで、お気軽にお寄せください。(編集部)


謝辞:
◎Web+DB Press編集部(技術評論社)のご厚意により、本連載のタイトルを「続・エンジニアの学び方」とさせていただきました。ありがとうございました。


この記事を、以下のライセンスで提供します:CC BY-SA
これ以外のライセンスをご希望の場合は、お問い合わせください。

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