Q「成功のコツは?」、A「全要望を叶えようとしないと割り切った」――人事部感動課、400人級の社員旅行を振り返る
-
-
- 企業の人事部門で働く人
- 社員旅行を企画する担当者
- 企業のイベントプランナー
- 社内チームビルディングに興味のある人
-
-
この記事では、サイボウズの人事部「感動課」が2014年に実施した選択型社員旅行の企画と運営について詳述しています。この社員旅行は、10年以上ぶりに行われたもので、東京、大阪、松山の異なる拠点にいる400人以上の社員を対象に自由な選択が可能な形式で行われました。まず北海道での旅行を皮切りに、複数の選択肢を準備し、参加者が自分の興味に合わせたプランを選べるようにしています。北海道旅行ではボードを楽しむ選択肢を中心に、多様な取り組みを行いました。次に松山では和風の温泉付き料亭で、東京では洋風のレストランで、グアムでは海辺での合同お食事会を実施。特にグアムでは、フィナーレに花火が打ち上がるなど特別感を演出しました。
旅行の成功のコツとして紹介されているのは、全員の要望を叶えることが難しいと割り切り、一人一人の楽しみ方を尊重しつつも自由度を大きくしたことです。また、旅行中の様子を社内のグループウェアで共有することで、例え異なるプランや場所にいても一緒に楽しさを共有できたことが社内の満足度向上に寄与していると述べています。最も重要なことは「楽しませたい」という気持ちを持つと同時に、「自分も楽しむ」という姿勢で取り組むことであると強調されています。これにより多くの社員が満足できた社員旅行を実現しました。また、予算内での計画の柔軟性や平等性を保ちつつ割り切ることの大切さも触れられています。
-
-
サイボウズ
Q「成功のコツは?」、A「全要望を叶えようとしないと割り切った」――人事部感動課、400人級の社員旅行を振り返る
サイボウズ人事部「感動課」の福西です。2014年に10年ぶりぐらいにサイボウズの社員旅行がありました。東京、大阪、松山と複数拠点に散らばる400人以上が、北海道、東京、グアムという別の場所を自由に選び、それぞれの場所で合同お食事会をする「選択型の社員旅行」です(前編はこちら)。
後編では、一人で400人規模を巻き込む「選択型お食事会」の実際と、終わってからの振り返りをまとめます。ちなみに感動課って何よ? と一瞬でも思った方は『感動課の不思議な毎日』をどうぞ。
北海道だけで10パターン以上の選択肢
「選択型社員旅行」のはじまりは、3月の国内旅行でした。場所は北海道のニセコになりました。なぜか? 下記から決めました。
・予算的に候補の1つだった宮古島が難しかったこと
・開発メンバーの同期が毎年集まってボード旅行に行ってたこと
・kintoneの(よく鼻血を出す)プログラマーが日報で、国内旅行は北海道にボード旅行とかだとうれしいと書いていたこと安く予約がとれる3月8日の週末を候補日としました。ボード旅行を考えましたが「あまりボードとか興味ないし…」といった声がちらほら聞こえてきたので、さらに選択肢を増やしたり、いろんなアレンジを加えたりしました。
・金曜日休んで、金土日の3日間の人 :ニセコでたっぷりボードをする人
・月曜日休んで、土日月の3日間の人 :後半は札幌に移動して観光する人こうしていると、「(感動課は)結構要望を聞いてくれる」といううわさが広まり、最後は国内旅行だけで10パターン以上になってしまいました。70名弱が北海道に行くことが決まっていて、この人数でこれだけのパターン数があったのです。最後の方は1人1人の調整をした方が早いんじゃないかと思うくらいでしたが……。
大きな旅行をとりまとめるときに大事なのは「予算配分」です。今回は航空券と宿泊費、北海道での移動費が会社持ちです。ボードのリフト券なども会社負担としました。逆に、夜の合同食事会と朝食を除くご飯は、すべて社員の持ち出しとなります。
選択型お食事会1:北海道での合同お食事会というメインイベント
僕は感動課として、「合同お食事会」のすべてに参加することが決まっていました。半分参加者、半分添乗員として、まずは1つ目の北海道の合同お食事会に行きました。
空港に着いたら松山オフィスの社員と合流し、貸切バスの駐車場所まで移動します。各自に選んでもらったお弁当を渡し、空港でお別れしました。この後の最終便で来た人とニセコまでバス移動。次の日が合同お食事会で、その次の日の夜は、2日目から参加の方と一緒に札幌に移動し北海道ラーメンを食べてました。こんな感じで3日が経ちました
空港ではこんな格好で出口で待っていました。子どもに好評だったことと、どこかで遊びどこかで仕事みたいな社員旅行な感じを出せたのではないかなと思っています。とりあえず移動で疲れた人が見事に笑顔になっていたので成功です
みなさんがボードに出かけた2日目。実はその数時間前、僕は空港に戻っていました。この日は土曜日で、東京からの便は1つだけ。空港で松山のメンバーと合流し、そのままニセコに戻りました。
この日の夜は合同お食事会です。貸し切りのレストランで、立食を楽しみました。「普段直接話さない他部署・他拠点の方と交流できて良かった」など、満足コメントが多かったです。
旅行中も自由行動が多かったので、写真は各自で撮影していました。唯一集まる合同お食事会だけが集合写真が撮れる唯一のチャンス。東京・松山・北海道・グアムで撮影した4枚の写真が貴重な思い出に残る写真です
そんな感じで北海道旅行は無事に終わりました。怪我やドタキャンがなかったのでほっとした感じです。
選択制お食事会2:「肉増し!」呪文が飛び交う松山道後
2つ目のお食事会は松山です。4月11日、松山の道後にある温泉付きの松山で有名な料亭で開催されました。
松山は温泉付きにして、社長の青野にも参加してもらいました。派遣社員の方も食事会にご参加いただき、普段あまり話す機会のない方同士が、美味しいものを食べながら会話を楽しんでもらえたと思います。
料理もちょっとした「選択制」に。元々のコースに好きなメニューをプラスできるもので、具体的には「肉増し」「魚増し」「デザート増し」「酒増し」「全部増し」など。どこかのラーメン屋みたいですね
「肉マシマシ」という無茶っぷりのオーダーをしていました。あれ、あんまりマシマシ感が……!?
松山と東京の食事会はあえて和と洋に分けました。松山の会場は古き良き昔ながらの日本の宴会場みたいな感じで、舞台で写真を撮りました。この後は、温泉に入る人そのまま帰る人、ほんと自由な感じです
選択制お食事会3:東京でお食事会
翌週の4月18日、東京・恵比寿で3つ目の合同お食事会を実施しました。お城なような建物で有名なレストランを貸しきりました。こちらは当日の雰囲気を写真でどうぞ。
松山から一週間後に実施された東京の合同お食事会。お城のような建物の一階を貸しきり、貴婦人のパーティーのようなふるまいに。着席でゆっくり食べたい気持ちを抑え、交流を優先するため立食形式としました
すべての合同お食事会で「お祝いのプレートが乗ったケーキを出すこと」を統一しました。どれもおいしかったですが、食べ比べできたのは全部に参加している自分だけなので、コメントは控えめにさせていただきます
東京でのお食事会の集合写真です。人数的にはどこかのホテルの宴会場を予約した方がいいのかもしれないのですが、思い出により残るかなということであえて名の知れたレストランを選びました
選択型お食事会4:パーッと使うグアムでフィナーレ
「選択型社員旅行」も残すところは4つ目のグアムだけ。ここまで来ると慣れたもので、段取りもかなりスムーズに進みました。160人ほどが一斉にグアムに行きます。グアム旅行も「金曜日発と土曜日発の2泊3日の人」「自腹で延泊する人」などいくつかのパターンがあり、飛行機は1日で2便(JALとUA)に分かれました。
部屋割りは、基本的に2人部屋で仲の良い人同士になるように調整しました。家族は、コネクトルームに変更したり。部屋のグレードを無料で変更できるサービスもありましたが、他とのバランスを見ながら僕の独断で自由に変えていきました。
旅行代理店の方からは、「役員の方とかの部屋のグレードを上げられます」と言われていたのですが、元々サイボウズでは、役員だからと変に気を使う文化は皆無です。社長にも「社長の部屋を良くしますか? とか聞かれたので、即座にうちにそんな社長はいない! って言ってやりましたよ」と笑い話として伝えていました。
なるべく平等にしようとしても差が生じます。「これは仕方ない」と割りきって色々なところでバランスをとる。そのこと自体を楽しむ。これ大事ですね。
旅行中は、ほんとみなさん自由です。何人かで人を集めてツアーを申し込み、レストランをおさえ、セスナ機に乗っている人もいました。自分たちで選択して自分たちで楽しむ。そんな旅行がグアムでも繰り広げられました
さて、4つ目の合同お食事会のグアムです。場所がグアムになろうと「選択型社員旅行」の工程は変わりません。ほぼ自由行動で、1日だけ夜ご飯を全員で合同食事会とする。これだけです。グアム旅行の食事会では、浜辺で沈んでいく太陽を見ながら食事と会話を楽しみました。途中はダンスなどで盛り上がり、最後にしめのあいさつとなります。
グアムでの集合写真です。実はこの写真だけ自分で撮影したのですが、よく見るとちゃっかりと影が映り込んでいました
創業者の1人の畑さんのあいさつの終わりに「最後にひとつプレゼントがあります。みなさん浜辺に移動してください」とアナウンスをしてもらいました。移動が終わったところでカウントダウンしました。
この一連の社員旅行のフィナーレを飾るべくグアムの夜空に花火が打ちあがりました。基本花火は禁止されているようなのですが、特別に許可をいただいたんです。「ぱーっと使おう」の象徴が、この花火だったんですね。おかげで予算の残金は1000円ちょっとになりましたが。
海岸から打ち上げられた花火です。この企画中に国立競技場で行われたとあるコンサートに行った際に、フィナーレとして夜空に上がる花火を見たんですね。これだと思い、ひそかに準備を進めてきました。この花火よりも、この花火を見て喜んでいる社員の顔が見たかったのです。結果は大成功でした! ちなみに、グアムで雨が降ったら花火は買い取りになるので、最後までヒヤヒヤでした
社員旅行を振り返って
こうして10数年ぶりの社員旅行は終了しました。改めて、今回のような大規模な社内旅行を取りまとめる際に、重要なことを考えてみました。まずは満足度。高い満足度を得られたポイントは2つだと思っています。
1点目は「それぞれが考えて、それぞれが一番楽しめる方法で参加してもらった」から。旅行を選択制にし、食事会以外のほとんどを自由時間にしたことで実現しました。大半は仲の良いメンバーで行動し、会社の人とはほどよく出会う。このバランスがちょうど良かったのかなと思います。
2点目は「社内のグループウェアで旅行の様子を共有したこと」だと思います。北海道以外の別プランを選んだ社員もグループウェアにコメントをするなど、オンライン上の交流も生まれ、より多くの社員と楽しさを共有できたと思います。
こんな感じの写真を旅の途中にグループウェアにアップしていました。ほかの人が働いているときに楽しむのは申し訳ないという意見もありましたが、実際に現地に行ってしまってからそんなことを考えても仕方がないですし、うらやましがられるくらいの写真を載せていきました。もちろん、遅れて参加する人にネタバレしないように気をつけて写真は選んでいました
「大人数が集まる社内イベントで、全員の満足を求めるのは無理じゃないか」――となかばあきらめモードになることもあります。「全員が満足する」という目標を達成するのは難しく、「より多くの参加者が満足する」という目標に変わり、その葛藤は最後まで続くことになります。
一番大事なのは「楽しませたい」という気持ちと「自分も楽しむ」っていう強い気持ちの双方を持つことです。これがないとみなさん賛同してくれないですからね。「単なる仕事」だと思ったらやっていられなかったと思います。
また大規模な社内イベントで社員の満足度を高めるためには「欲張らないこと」です。「社員全員の要望を叶えるのは無理」としていい意味で割り切りができた後、判断・決断がしやすくなりました。平等にしようとしても結局自分で不平等にしているところもありますし、全員の意見は反映できない。その上で目に見えないバランスを取るのが大事なのだと思います。こう考えないと、後で社内でも説明できないですしね。
今回の選択型社員旅行では旅行に行けなかった人に記念品を渡しました。福利厚生費には「社会通念上許される金額」の上限が設定されていて、実は旅行と記念品でその金額の上限が異なっていました。金額のことは共有しないで進めたのですが、上限があることをあらかじめ伝えておいた方が良かったと今では反省しています……。ちなみに、どうしても一番安くなってしまう記念品は非売品のものにしています。値段が付けられなくなったので、ほかの合同お食事会と比較もできませんし!
最後に
グアムの集合写真を撮っているときの自分を写真です。あれこれ大変でこのときはじめてグアムの海に入りました。なかなか冷たくて気持ち良かったです
サイボウズ流社員旅行の一番の良いところは。改善して変わっていくことだと思っています。もし今年も予算を達成してごほうびが出る場合は、今回とはひと味もふた味も変わったイベントになると思います。
来年になるのかもう少し先になるか……業績のみぞ知るという感じですが、再び訪れる(であろう)その時を楽しみに、日々の仕事を頑張ろうと思える。そんな社員旅行だったと思います。そのときは軽く「下見とか行くなら手伝いますよ」って言わないようにします。
長々となりましたが、あれこれと考えて工夫・実施したのが、今回の社員旅行でした。大勢が参加するイベントの企画は本当に大変です。でも、目の前で喜んでいる姿が見えたり、お礼を言われたりするので、やりがいのある仕事だと思います。ここだけの話、来年も社員旅行の企画があるようで、来週あたりにまた旅行代理店に向かっているかもしれません。
社員旅行のような大規模のイベントを考えている方に、少しでも参考になれば幸いです。
前編:「グアム旅行(仮)」の仮がとれるまで――「人事部感動課」流 1人で400人を巻き込む社員旅行の作り方
SNSシェア
- シェア
- Tweet