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この記事を読むと、新卒採用における学生と企業の間にある現在の課題が理解できる。特に、就職活動を行う学生が「何をやりたいか」を必ずしも明確に持っていなくても、実際にはそれが重要ではないことが示されている。学生は企業が与える仕事をこなすことで報酬を得るという視点が基本であり、やりたいことが後からでも見つかる可能性があることも理解できる。
また、2016年の採用活動が始まるにあたり、学生と企業の間で競争が激化していることを理解する。特に「ナビ採用」やインターンを通じた非公開競争が進行している点が強調されている。さらに、就職活動においてはキャリアを考える機会が重要であり、学生が自分の内面的な変化を説明できることが必要であるとされている。
企業の視点からは、採用活動の際に学生に期待する役割や適性を明確にし、多様な学生の中から適した人材を効率的に見つけることが望ましいと述べている。採用学が示すように、学生についての深い理解と企業側の明確な基準が採用の質を高めることが強調されており、これが企業の成長につながることも学べる。
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サイボウズ
インターン大学生の疑問
面接時の「何やりたいですか」に意味はあるのか? 採用学視点で考える学生のキャリア
企業と学生の間で揺れる新卒採用の問題。そもそも現行の制度は双方のためになっているのか? 企業の採用のあり方について語った前編に続き、後編では就職活動における学生のキャリアについて迫ります。
企業の採用に関する研究「採用学」を確立した横浜国立大学の服部泰宏准教授とサイボウズ執行役員・事業支援本部長の中根弓佳の採用論・キャリア論対談。後編では、学生はやりたいことがないといけないのか? どのように企業を探し、よりよい出会いを作っていくべきなのか? 大企業に入って安定するってどういうことか? を話します。
混迷の2016採用、激化する2つの競争
大きく変わろうとしている2016年卒の新卒採用についてはどう見ていますか。
事実ベースの話をすると、基本的に2016採用は2つの意味で競争が激しくなります。1つは学生側、企業側が見える競争で、これまで通りの王道の「ナビ採用」のところです。
2つ目は、学生側も企業側も見えないところで競争が進行していくことです。例えば企業では「今年はインターンで30%握りましょう」とか、「就職協定」という表面上の規定以外のところで競争が激しくなる。これが大きなトレンドになると思います。学生側もそれに合わせて戦略的に活動しないといけないですね。
学生側も逆の動きとして、3年夏から動いている学生もいれば、就職活動が解禁される8月から動けばいいという学生もいます。
学生達がこのような2つの層に分かれて、その間にあまりわかっていない学生の層がある。「学生が3層構造に分かれている」というのが直感的な今の動向です。服部泰宏さん 横浜国立大学大学院 国際社会科学研究院(経営学部) 准教授
1980年生まれ。2009年神戸大学大学院経営学研究科博士課程を修了し、博士号(経営学)を取得。滋賀大学経済学部専任講師、同准教授を経て、2013年4月から現職。著書に『日本企業の心理的契約:組織と従業員の見えざる約束』(白桃書房,2013年)など。まさに我々も夏からインターンを始めていて、二極化を体感しています。首都圏と地方の意識差もより大きくなっています。
そうでしょうね。
就職協定によって、学生がキャリアを考える機会が逆に喪失されているのでは?と思ったりもするんですよね。中途半端な状態なだけに、みんなが気持ち悪い。学生自体も動きにくい。企業もいつ何をやれば学生がどう動くのか常に思い続けながらやるっていう。
なるほど。難しいですよね……。
就職協定の良し悪しはなかなか論じにくいですが、学生が学生のうちに自分の今後のキャリアを考える機会をいかに作れるかがすごく大事だと思っています。
その第一のステップが採用かもしれないしインターンかもしれない。でも、考えることができる学生にとっては、インターンなんていう名がつかなくても、アルバイトからたくさんのことを学び、気付けるとは思うんですけどね。おっしゃるとおりだと思います。そもそもインターンって言葉そのものがちょっとミスリードしているところもあります。例えばアメリカの「ワークサンプル」のように、実際に仕事を担当してもらうことで学生の能力を見抜くツールのように活用できればいいんですよね。
そういう意味では日本企業もインターンシップを「実は採用に使う」と言い切ってしまった方がよっぽどクリアだし、気持ち良いし、分かりやすいと思います。やりたいことがないといけない?
サイボウズ式編集部の安藤です。学生のキャリアについても伺ってみたいのですが、就職活動中の学生は「やりたいことがないといけない」ということにとらわれがちだと思います。それはないといけないと思いますか?
会社に入ってお金をもらうことってプロなんですね。学生は、お金をはらって勉強させてもらっていた。でも社会人になると、自分が何をやりたいかではなくて、会社が「やってほしい」っていうことに対してアウトプットを出し、その対価として初めてお金をもらえる。それは基本だと思います。
でもそれだけだとモチベーションが継続しない。だから、それがさらに自分が「やりたいこと」だったら、いいですよね。もちろん社員がやりたいことをやれる環境も大事ですけど、「できること」が増えることではじめて「やりたいこと」がうまれることが多いですし、それも結構変わりますし。なのでその時点でやりたいことが必ずなければいけないわけではないと思います。中根弓佳 サイボウズ株式会社 執行役員・事業支援本部長
学生のやりたいことは入社後に変わる可能性がある。そのことを企業はおろそかにしがちです。
面接時に「何したいですか」と学生の希望を聞きますが、企業側はあくまで面接の参考として聞いているだけで、配属の本当の参考としては聞いていないケースが結構あるんですよね。「10年後に何していると思いますか」ってよく就活である質問ってあるじゃないですか。そんなの誰もわからないですよね。
企業からしても「10年後にマーケターやってると思います」という学生の希望に対して、「分かりました、ではマーケターでやりましょう」なんてこと考えてるわけがないんです。
弊社も何をやりたいかは聞きます。営業や人事をやってみたいといった学生でも、他に可能性がありそうな場合には、「SEという仕事もあるんだけど、そういうのはどう?」とか「興味持てる?」と聞くようにしています。
「今は興味を持てません」と言われても可能性に対して、どう考えるか、それが合うと思えば採用しますし、逆に学生側の強いこだわりがあってマッチングしないケースもありますね。割とクリアにコミュニケーションされているんですね。なかなかそういう企業は少ないと思います。
学生はどのようにキャリアを考えれば良いのか
そういう中で、学生はどのようにキャリアに向き合っていけばいいのでしょうか。
アメリカの大学生に聞いた「就職で重視すること」と「就職活動での成果、満足度」の関連についての面白い調査があります。例えばお金やワークライフバランスについて、この調査によると就職で重視していることが一貫している学生よりも、変わっている学生の方が、意外と良い就職をしていたんです。
ただ一個だけ条件があって、変わった理由は自分なりに説明できる学生だけなんですよね。自分の中の変化に対して、ちゃんと内省できているかどうかが非常に重要なんですね。なるほど。それをうまくインターンで組み込みながら、考える機会を与えていければいいですね。何万って会社がある中で全部見るのは絶対不可能ですから。
無理ですよね。
学生でも早めに就職について考えている人と、そうでない人に分かれていると感じるのですが、キャリアはできるだけ早くから考えた方がいいでしょうか。
考えること自体は全然いいと思いますけど、自分の勝手な思い込みで選択肢を狭めるのはもったいないと思いますね。
キャリアや自分がやりたいことって2つのレベルがあるんですよね。 1つは「サイボウズに入りたい」「ITやりたい」とか「自動車作りたい」とかって、その具体的な経歴に書けるような意味でのキャリア。
もう1つは「人に貢献したい」とか、「○○を通じて△△したい」というようなキャリア。多くの学生はスタート時点で「大企業はこう。ベンチャーはこう」と具体的なところを考えてしまう。どちらかと言うと、肩書的なところで思考してしまうんですよね。 後者でのキャリアは割と早期に考えるべきなんだけど、「大企業に行きたい」といった肩書的なキャリアを先に決めてしまうと、結果としてかなり可能性を狭めてしまいますよね。そうですね。
「大企業で何がしたいのか」っていうと、「安定」とかって言うんですけど、じゃあ安定って何なのか。雇用の安定なのか、または心の安定、生活の安定なのか、生活の安定はベンチャーでも全然実現できますしね。
話を深めると実は違うことに気づくんですけど、まだまだ学生は具体的に考えすぎて視野が狭まってしまっています。真面目な大学生ほど意外と陥りがちな気がします。サイボウズは大企業ではないので、いわゆる大企業志向の学生さんは最初から私達の会社はチェックされないですよね。
なるほど。 学生達も最初から「トヨタ自動車に行って世界最先端の車を作る」くらいクリアなキャリアを描いているのならいいですが、でもほとんどの学生はそうじゃない。「なんとなく世の中の役に立ちたい」とか「大企業に行きたい」とかでとらえがちなんですよね。
また、逆に就職活動を割と柔軟にできている学生は、就活そのものを楽しめているんですよね。 どんな人事の人がいるんだろうとか、自分って何に向いているんだろうとか、不確実なものを不確実なものとして受け入れて、1年間なり半年間を過ごせていてる学生は、就職活動自体を楽しめています。入社後にやっぱりちょっと違ったかもって気づいたら、やり直せますし。
それもそれで全然ありえますよね。
学生はそもそも”多様”
最後に企業の人事・採用担当にこれだけは伝えたいことってありますか。
いくつかの企業の事例を見ていると、良い採用ができている企業は、非常に具体的に自分の会社にどんな人が向いているのか、向いていないのかがちゃんとクリアになっているんですよね。
学生って一見すると同質に見えるけど、実は細かく見てみれば非常に多様ですので、多様なその企業なりの人材の定義が生まれてくると、もっと効率的な出会いができて、日本の採用も良くなると思います。今日はありがとうございました。
文:安藤 陽介 撮影:橋本 直己
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